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冥界送人  作者: てんまる99


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勝手な話だ

「私もその話に参加させて貰おうか」

突然、声が掛かる。

見ると、すぐ脇に派手な鎧をまとった男が立っていた。

細身で長身、長髪。

こんな格好でなければ、イケメン、と言えるかも知れない。


俺達はこんな間近に来るまで、全くコイツに気付かなかった。

「認識阻害術‥」

優香は苦々しく呟いた。


「あんたは?」

「先ほどその女が話していた者だ」

「メディア?」

「いかにも」

‥つまり先ほどの爆発事件の主謀者。


と、俺の気配を察したのか、

「あまり歓迎されていない様だな」

と言った。

「歓迎されると思うのか?」

「ふむ、確かにな」

殺そうとした相手の前で平然と考え込む。

その態度に無性に腹が立った。

はらわたが煮えくりかえるとはこの事だろう。

悪役らしく悪口の一つでも言えばいい。

俺は懐のヴェルデッドに手を伸ばした。


「部下が不手際で迷惑をかけた。謝罪する」

メディアは胸に手を当て優雅に頭を下げた。

「は? それで? 何人死んだと思ってるんだ」

自分でも激昂しているのが判る。

それを感じたのか、傍らの彩希が俺の腕を握った。

優香はメディアを睨みつけたまま。


「本来なら当人を罰する所だが、既にこの世に居ないのでな‥」

思案する様子のメディア。

「あんたが命じた事だろうが」

「誤解があるようだが、私は誰かに危害を加える様に命じた事はない」

「なんだと?」

「関係する物を焼却する様に命じただけだ」

「だから、自分の責任では無いと言いたいのか?」

「部下の教育不足は詫びたはずだが?」

キョトンとするメディア。

何だ、この人の事を馬鹿にした態度は?

コイツは、すまんの一言であれだけの事を済ますつもりなのか?

「明‥」

彩希が俺の様子を見て身構える。

何かあれば飛び掛かるつもりなのだろう。

だが、それは危険だ。

コイツが何も策を持たずにノコノコ来たとは考えにくい。


「あんたがこちらの世界に来なければ、あんな事にはならなかった、違うか?」

「違うな」

きっぱりと断言するメディア。

「なに?」

「その魔杖をこちらに持ち込んだ事こそが原因だ。過去にも何度も災厄を起こしているのだろう?」

「あんたのような人間が手出しをするからだ」

「我々がその魔杖を回収すれば、それで災厄が収まるとは思わんのか?」

呆れた表情でメディアは言った。


確かに一理はある。

だが、それは自分の起こした事に責任を取れる人間がいうことだ。

コイツがヴェルデッドを手に入れて、何をするか分かったものではない。


「悪いが、初対面のあんたを、そこまで信用出来ないからな」

「ふむ、平行線だな」

メディアは腕組みをして嘆息する。


そこで優香が口を開いた。

「メディア、諦めなさい。この世界はあなたの世界とは価値観が違う。そのやり方は通らない」

「その様だな。だが、国のため、その魔杖は絶対に必要なのだ」

すっとメディアは拳を俺に向けた。

俺達の足元に青白く紋様が浮かぶ。


「避けてっ」

優香が叫ぶが、一瞬遅かったらしい。

魔法陣に囚われた俺達は全く身動きが取れなくなった。

懐のヴェルデッドを取り出すことも不可能だ。

やられた。

コイツは認識阻害で見えない間に、これを準備していたのか。


「最初からこれが狙い?」

優香が訊ねる。

「あくまで次善の策だ。話し合いで解決出来るに越したことは無いからな」

ニヤリと笑うメディア。


「メディア、このまま引き下がる事をおすすめするわ」

冷静に言う優香。

「何の冗談だ?」

冷笑しながらメディアは俺の懐にあるヴェルデッドを取り上げる。


舐めるようにヴェルデッドを眺める。

「これさえあれば‥」

と、言いながらこちらを見る。

ヴェルデッドをこちらに向けながら、

「申し訳ないが、後顧の憂いを残す訳にはいかんのでな」

と、平然と言い放った。


この野郎、やっぱり悪党じゃないか!

「混沌よ‥」

メディアは唱え始める。

ヤバい、あの呪文は‥?!

思わず目を閉じる。


だが、その言葉の先が紡がれる事は無かった。

目を開くと、メディアはヴェルデッドを持ったままの姿勢で、のたうちまわっている。

メディアの周囲には何本も漆黒の稲妻が走り、体を貫いていた。


「こ、この私が?? なぜ‥そいつに使‥」

見る見るメディアの肌に生気が無くなり、頬がコケてゆく。

ヴェルデッドに生気を吸われているのだ。

それでもヴェルデッドを手放さない。

いや、手放せないのか?


「だから警告したのに」

優香はため息交じりに言った。

「契約もしないで魔杖が使えるはず無いでしょう」

呆れた様に言い捨てる。


「そ、そい‥」

それがメディアの最後の言葉だった。

身体が炭の粉になって崩れ落ちる。

鎧が地面に落ち、ガランガランと音をたてた。

同時に身体の自由が戻る。


「ど、どう言う事だ?」

残骸を見つめる優香に訊ねる。

「言った通りです」

「俺は契約したから、無事ということか?」

「そう。彼は魔杖を正しく理解していなかった。単なる魔道具と勘違いしていたのでしょう」

言うと、優香は何事か呪文を呟く。


呪文が進むにつれ、メディアだった残骸は光の粒子となって消えた。


「こ、これ、どう言う事??」

彩希が震える声で訊ねる。

「見ての通りだ。俺にもそれ以上は説明できない」

「し、死んだ‥の?」

「多分‥」

優香が補足する。

「気に病む事ではありません。私が止めたのに‥勝手に自滅しただけです」

「で、でも‥」

動揺する彩希。

こんな光景を見せられれば当然だろう。

体力はともかく、精神的には1人の少女に過ぎない。


一方で俺は意外に冷静だった。

あの時。

ヴェルデッドを最初に呼んだ時に、彩希を守れるなら、どんな事でもすると誓ったのだから。

「彩希は何も悪くないだろ」

そう言って頭を撫ぜる。

「うん‥」

彩希は力無く頷いた。


「引き揚げた方が良いでしょう」

優香の言葉で俺達は公園を後にした。

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