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冥界送人  作者: てんまる99


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14/16

王城攻略

俺達は草原に立っていた。

遠くに針葉樹林が見え、更にその向こうに切り立った岩山。

山の麓には中世のゴシック建築の様な城。

周囲を幾重にも城壁が降り囲んでいる。

吹く風に少し冷たさを感じる。初秋の陽気だろうか。

頭上を小鳥が飛んでいる。

異世界と言うにはあまりに自然すぎる。まるで欧州に来たようだ。


「異世界って異世界じゃないんだね」

彩希が妙な感想を漏らす。

そう、ここには我々と同じ人間が暮らす“世界”なのだ。

と、懐に入れた軍用無線が鳴った。

本当に無線が通じる。

一層異世界感が薄れた。


『東雲さん、応答願います』

「こっちは無事に着いた‥と思う。あまりに俺達の世界と同じで異世界かどうか判断付かないが」

「そうでも無いぞ」

言うと同時にヴェルデッドは飛び上がると、上空を飛ぶ鳥を捕獲して戻ってきた。

捕まえたものを見ると、一見鳥のようだが頭部には大きな1つ目が付いている。

「き、キモい‥」

彩希が顔をしかめる。


「これは?」

俺たちの世界にこの様な鳥は居ない‥と思う。

「こやつは見ているものを術者が共有出来る魔獣‥そちらの世界でいうと偵察用ドローンだ。どうやら見つかったな」

俺は無線で上島陸佐に連絡を入れる事にする。

「見つかったようだ、急いでくれ」

『直ちに』


侵攻に備え防壁を張ることにする。

軍隊は陣形を整えるまでが一番弱い。

「永遠の漆黒よ。数多を遮る壁となれ!」

瞬時に周囲数百メートルを囲む黒壁が出現した。

と、間を置かず黒壁へいくつもの着弾の衝撃が響く。

「魔法槍か。ふん、素早い対応だな」

ヴェルデッドが呟く。

こちらの反攻も想定済みだったらしい。


「東雲さん」

「お、来たな」

生島陸佐の声だ。門を通過して部隊が到着し始めた。

「この壁はどのくらい保ちますか?」

「今の攻撃なら丸一日は持つだろう」

「助かります」

到着した部隊は素早く機材を設置したり、銃器の準備を始める。

だが、敵も丸一日手をこまねいている訳ではない。

このままここに留まれば包囲されてしまう。


「ちょっと様子を見てきてくれ」

肩に乗っていたヴェルデッドに声を掛ける。

「我をドローン扱いとは‥ぶつぶつ」

文句を言いながらも黒壁を通り抜けて飛んでゆく。

これは確かに便利だ。

ゆかりさんの先見の明に感謝する。


数分でヴェルデッドは戻ってきた。

「やつらの転送門は天守手前の大聖堂だな。嫌な気配がしておるわ。右手の街道筋からは敵の本隊が向かっておった。1万騎ほどか。王城への最短は正面の森を抜ける方だが‥」

「森は伏兵が居るんだろうな」

「そうよな」

恐らくその気配も察知しているのだろう。

ヴェルでが頷いた。


「で、あんたらはどうする?」

傍らの生島陸佐に尋ねる。

「では我々は右手へ」

「本隊とガチンコ勝負か?」

「まさか! 我々なりの戦い方を考えてあります」

「じゃ、俺達は正面だな」

「ご武運を」

「そっちもな」


言うが早く彩希と共に黒壁を通り抜け外へ出る。

俺達は陽動でもある。

少しでも早く王城へ迫ることで敵を分散させるのが目的だ。


王城へ向かう森の小道を走り抜ける。

彩希が先行し、次々と伏兵や罠を倒してゆく。

体術と共に手に持った小刀を使い、素早く敵を倒す。

小刀なんて使った事は無いと思うが、彩希のそれは見事だった。

俺は後を走りながら詠唱を始める。

彩希のお陰で詠唱に時間をかけられるので、その分威力を上げることが出来る。

「闇の暴風よ。巨大な刃で道を開け。遮る者を退かせよ‥」

初めての呪文にも関わらず、彩希はタイミングピッタリに身をかわし、目前を空ける。

「‥冥風暴刃!」

『ズガカガーーーーーン』

黒く渦巻いた巨大な暴風が、あらゆる物を切り裂きながら王城へ突進してゆく。

通った跡は50mほどの幅で地面がえぐれ、樹木が粉砕されて空間が出来た。

後はこの道を突き進むだけだ。


と、

「はい、元気補給」

彩希はそう言ってキスをしてきた。

戦場のど真ん中だが、それで本当に回復してしまうのだから、仕方無い。


「行くか」

「うん」

再び俺達は王城に向かって走り出す。

途中で数体の化物が現れたが、彩希の小刀で瞬殺された。


術で開かれた破壊跡は王城の城門寸前で止まっている。

ここに強力な防御の結界が張られているのだ。

「ヴェルデッド、これ破れるか?」

「無理では無いが時間が掛かるな」

結界に手を触れて確認する。

「何重もの術が織り込まれておる」


俺は生島陸佐に連絡した。

『東雲さん、どうしました』

「王城まで来たが、結界が厄介だな」

『なるほど。奥の手の出番ですか。準備しますが‥』

「どうした?」

『装備したアパッチを向かわせるのに5分掛かります。その間、敵の目を引きつけて下さい』

「敵の本丸の前でか。それは厳しいが‥分かった」

やるしか無いのだろう。

生島陸佐はサバを読むような人間では無い。


言い終わる前に頭上から何かが迫る気配。

「黒‥」

「あきらっ!」

呪文を唱える前に彩希に引っ張られた。

目前に光で出来た槍が突き刺さる。


「くそ、防壁張ってるのに向こうは攻撃は出来るのかよ!」

俺は城壁に沿って走りながら、こちらからも黒槍を打ち込む。

当然だが、結界に弾かれてしまう。

ともかく、移動しながら打ち込み続けて、生島陸佐の奥の手を待つしか無い。

アパッチに敵の攻撃が向かないようにするため、隙は与えられない。

彩希は俺と並走しながら城外の敵兵達を片付ける。

おかげで詠唱に専念出来る訳だが。


3発‥6発‥8発め!

延々と攻撃魔法を放つのは肉体的にかなり厳しい。

「こら、集中が乱れておるぞ!」

ヴェルデッドが嘆息気味にさけぶ。

「いや、結構キツイ‥」

走ることで物理的に体力を使う上、術の使用でも生命力を削られている。


“ゲホッ”

肺から血が逆流して吐血した。

生命力が削られるというのは、肉体が劣化するのと等価だ。

くそ、アパッチはまだか‥。

14発目を放ち、足がもつれて転倒する。

「あきらっ」

倒れた俺に彩希が覆い被さる。

俺を庇って光槍を身体で受けるつもりだ。

「ば‥や‥め」

その、ひっくり返って見上げた空をアパッチの機影が横切る。

『東雲さん、お待たせしました!』


アパッチは城に向けて対戦車ミサイルを放つ。

しかし、ミサイルは当然の様に防壁に遮られ空中で爆発した。

白い爆風が広がるのを見て、俺は彩希に叫んだ。

「離れろ!出来るだけ遠くにっ!」

彩希は素早く俺を抱き抱え、城から遠ざかる。


煙が漂ってゆくのに合わせて城門に居る兵士達がバタバタと倒れてゆく‥。

「ど、毒ガスっ?!」

彩希が叫ぶ。

「非致死性の即効性制圧用ガス、だそうだ」

「毒ガスじゃないの??」

「毒だが命には影響無いらしい。即効性で昏倒するんだそうだ」


どんなに術で防壁を張り巡らせても、空気は遮断していない。と言うかできない。

そうしないと中の人間が酸欠に成ってしまう。

従って、ガスを防ぐことは出来ないのだ。

彼らもガスの存在を知れば、そのうちに中和する術を編み出すかも知れないが‥。


ガスが晴れるのを待って再び王城へ向った。

「砕く者よ。黒き槍よ。遮る者を根絶せよ!」

巨大な黒槍を生み出し、城門に叩きつける。

『どーーん』

激突音とともに城壁ごと門を砕いた。

特装中隊が突入してゆく。

敵は沈黙している。

転送門の破壊は確実だろう。


「彩希は陸佐達と行け」

「あきら、一人でどこへ行くの?」

「負傷者も出てるだろう、面倒をみてやれ」

「え、あきらはどうするの?」

「ここからは俺の個人的な事情だ‥」

優香も、敵も味方も多くの人が傷付いた。

こんな愚かな事を始めた奴だけは許せない。

だが、復讐に囚われたその姿を彩希に見られたくは無かった。

「で、でもっ」

「用事を済ませたら戻る。先に戻っていてくれ」

「でもっ!」

戸惑う彩希。


「頼む‥彩希にだけは‥見られたくないんだ‥」

「う、うん‥」

気持ちが通じたのか、渋々と彩希は部隊の方へ歩き出した。

「絶対、だからねっ!」

言い残し、彩希は走って行った。


ここからは俺一人の戦いだ。



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