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冥界送人  作者: てんまる99


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12/16

異界作戦

自衛隊の装甲車で来たのは郊外の駐屯地だった。

途中の経路は分からなかったが、恐らく小平だろう。


「こちらへ‥」

エントランスを通り、生島陸佐に案内されたのは、半地下の会議室の様な所だった。

俺達以外に同席するのは女性の技官と思われる人、上級士官と思われる初老の男性。

参加者は意外と少ない。


「とりあえず情報を整理しましょう」

ゆかりさんが口を開いた。

「と、その前に‥」

ゆかりさんは鞄から人形を取り出した。

結構大きい。80cm位あるだろうか。

「ヴェルデッドの意見が必要な事もあるでしょうから」


取り出した人形は褐色の肌に銀髪、革のピチッとした服、曲がった角が付いている。

これは‥。

「悪魔っ娘?」

俺の漏らした言葉にゆかりさんは吹き出しながら頷いた。

「ま、まぁそうね‥ヴェルデッドの元になった魔族の姿を私の紙で作ったものよ」

「え、それってどう言う?」

「後は本人に聞きましょう」

ゆかりさんはそう言って人形の背中を開く。

中は空洞になっている。

「ヴェルデッドをここへ」

言われるままヴェルデッドを人形の中に収める。

と‥。


「随分と味なことをするではないか」

人形は言いながら立ち上がった。

うわ、動いた!

しかし、その声は何度か頭の中に響いたヴェルデッドのもの。

「ヴェルデッド、なのか?」

「うむ、真なり」

「ヴェルデッドってこんな格好だったのか??」

「我の元になった、魔族のだがな」


彩希が思わず触ろうとする。

「か、可愛い‥」

「触れるな、たわけ!」

パシンと払われた。

「えーー」

不満そうな彩希。

「言っておくが、この身体は元の半分以下の大きさだからな」

元から人形サイズでは無かったか。


「これなら全員がヴェルデッドの声を聴けるでしょう」

ゆかりさんは言った。

確かに俺の頭の中で聞くだけでは会話にならない。


しかし、生島陸佐や初老の士官もこの事態を驚かない。

当然、魔族や魔杖の事も承知のようだ。

でなければ対策など考えられる訳もないか。


「ゆかりさん、最初に確認させてくれ」

「何でしょう?」

「このヴェルデッドに危険は無いのか? それと、ゆかりさんは自衛隊の人間なのか?」

ゆかりさんは頷いて答えた。

「この人形はあくまで私の符を形にした物で、ヴェルデッドそのものでは無いので安全です。それに魔杖は契約者に直接危害を加える事は有りません」

「そうなのか?」

人形に訊ねる。

「うむ。お主が死ねば我も魔力を失うからな」


「次に私の立場ですが、日本政府のオブザーバーです。自衛隊の所属では有りません。そして、本来は両方の世界に対して公平な立場です。ただ‥」

「ただ?」

「今回は明らかにやり過ぎです」

「だから止める?」

「そうです。これでは両方の世界が不幸になる」


「我々としても好きで向こうの世界と事を構えるのではない。その事は承知して頂きたい」

初老の士官が口を開いた。

生島陸佐も頷く。

「そして、今回侵攻して来ている相手ですが‥恐らく王国軍です」

「やはりそうか」

初老の士官は溜息をつきながら言った。

「あれだけの軍を送り込む“門”を作れる組織は少ない。しかもあの禁呪を使うには‥」

ゆかりさんはヴェルデッドの方を見る。

「第二の魔杖が必要だ」

答えるヴェルデッド。

「第二の魔杖、“シヴァニール”は王国の国宝なんです」

ゆかりさんは補足する。


「その、魔杖というのは‥?」

彩希が訊ねる。

「太古に王国に倒された大魔族の体を素材として作られた6本の杖です。それぞれ独自の意志と能力を持っています」

「第二の魔杖以外は全て行方不明だがな」

「ヴェルデッドにも行方分からないの?」

「分からん。近くに有れば波動を感じるが」


「こないだのメディア、だったかは王国ではないのか?」

「メディアは王国の地方領主‥昔の大名です。そして国軍はいわば幕府軍」

「つまり国そのものが敵なのか」

あの化物を見ただけで比較に成らないほど強敵なのは理解出来る。


「その敵と戦う、と言う事で良いんだな?」

「では、作戦は私から」

訊ねた俺に、生島陸佐が答える。


「侵入した敵の兵力に関しては特装弾による制圧が進行中です。明日16時までに完了見込み」

「特装弾?」

「それに関しては後ほど」

「分かった」

「制圧完了後、対地攻撃回転翼機を含む対魔装備1個中隊で敵陣に侵攻、敵“門”の破壊を行います」

「敵の“門”の場所は分かっているのか?いや、それ以前に1個中隊で敵陣に侵攻って‥?」

「では技術的な説明は私から」

今度は女性技官が口を開いた。


「まず特装弾ですが、敵の呪術的防壁を無効化する処置を行った44mm徹甲弾となります」

「しかし、あの化物は足が速い。戦車が撃つのを待ってはくれないぞ」

「それに関しては超高周波音響制圧兵器が有効という実績が出ています」

「いつの間に‥」

「そして敵陣への侵攻に関してですが、試作型の過重空間歪曲装置を使います」

「過重空間‥なんだって?」

「要は自衛隊謹製の転移“門”です」

「転移門まで準備しているのか?! しかもヘリや戦車が通れるサイズの?」

ヴェルデッドの記憶では門を作るのには多数の術者が必要だ。

しかも戦車が通れるとなると、1000人では足りないだろう。

そんなに多くの術者が日本に居るとは‥。


「あまり使いたくはなかったのですが‥仕方ありません。それによって72時間の間、彼我の世界を接続します」

「準備が良すぎるな‥この事態を想定していたのか?」

「自衛隊が対応するとすれば、国家レベルでの危機的状況となります。当然のオプションです」

「72時間を過ぎたらもう帰れない?」

「その時は私が探しにゆきますよ」

ゆかりさんは言った。

「一度には一人しか連れて帰れないので、少し待ってもらうかも知れませんけど」

そう言えば、ゆかりさんは数少ない転移能力者だった。双方の世界を見たからこそ、懸け橋になろうとしている。

それに、時間を過ぎたら敵陣に置いてきぼり、って訳では無さそうで助かる。

勿論これは参加する他の隊員の士気にも関わる事だ。


「で、俺の役割は?」

「申し訳無いが、先陣と殿しんがりをお願いしたい」

初老の士官は言った。

「一番大変な役じゃないか‥まぁ俺が適任なんだろうな‥」

ヴェルデッドによる魔力解放を長時間続けるのは難しい。

継戦能力なら自衛隊の方が上だろう。

俺が短時間で前線を突破し、後は任せるのが合理的ではある。


やはり、厳しい戦いに成りそうだ。

俺は嘆息した。


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