表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王軍の兵士が人類滅亡を阻止するまで  作者: 脱出
二章.『人との共闘』編
32/32

第32話 人類滅亡の真相②

削除予定のエピソードが削除できていませんでした。

よろしくお願いします。

 

 ギレイはふと、魔王軍でかつて行われていた研究を思い出した。

小さな瓶に敷き詰められた砂がある。

 砂の正体は魔法によって肉体を変化させられた人間であり、更に未だ生命活動は続いている。

 では、ソレはまだ人間なのだろうか?

 ――当時のギレイは、ソレを人間だと思うことはできなかった。


 中には『未だ生きているのであれば人間だ』という意見もあるだろう。


 何をもって、人間だと認識しているのか?


◇◇◇◇

  

「『魔神』は人間をどう定義しているのか? 魔族達は自らの神についての研究を深めていった」


 魔王は魔族達の研究を語り始める。

 ――自分たちの神の解釈と再定義、という研究が魔族の中で進められた。

 その研究を進める中で魔族達は一つの結論に至ったらしい。


「魔神は魔族に使命を任せるまでは、この世界に顕現していた。魔神が滅ぼしたいのは、その時代の人間だと、魔族達は結論付けた。魔力を手に入れて進化していく人間は、魔神にとっての人間とは異なってきている」


 魔力はもともと魔族から人にもたらされたものだ。

 本来の――純粋な人間は魔力を持たない生物だったはずだ。


「人類の歴史には常に争いがあった。その争い……生存競争の中で、人類が持つ魔力量は時代を重ねるごとに増えていった。

 その果てに人類が行き着く『変化』。人間は自分の持つ魔力量をコントロールすることができず、全く別の種へと変化する、と魔族達は予測したんだ」


 変化。ギレイにとっても覚えのある言葉だ。

エルド国で目撃した、大量の魔力を注入されて肉体が変質した実験体。

――あの姿は人間だと言えるのだろうか?


 ギレイは思わず口を開く。


「……それは進化だと言えるのではないのですか? 人という種は途絶えることなく、存続している」


 魔王もギレイを見て答えた。

少し困ったような笑みを浮かべて。


「変化か、進化か。もしくは滅びか。それは観測する視点で変わるんだ、と思う。

 少なくとも魔神は『滅び』だと解釈した。いずれ来る人類の変化を、魔神は『人類の滅び』だと認識するのだと魔族達は確信を持っていた」


 そして魔族は計画を立てた。

 人類を滅ぼす作戦――これは文字通り、人類という種を物理的に根絶やしにする作戦を進めつつ――平行して人類の進化を促す作戦を進めていった。


「定期的に魔物を人類の脅威として出現させ、人類の闘争を促す。裏では人類に魔法に関する知識や武器を与えて、より魔力に依存する戦闘方法を人類にとらせていった。

 魔族の狙い通り、人類はより一層強くなっていた。人が持つ魔力量は時代を重ねるごとに増加していって――いずれ臨界点がくる」


 魔力の貯蔵の限界点。

 人間が元々持つ『魂』が魔力の容れ物となる。

 魂の大きさを魔力が超える日。


「約1000年後。新たに生まれる人類は、生まれ持った魔力量をコントロールできずに生まれてくる。そして――別の種へと変化する。

 全く、別の。生き物になるんだ」


 別の生き物になる。

 ――進化ではなく、異質な生物へと変わる。


「それがどんなカタチになるかは分からない。ただ、それは魔神にとっては『人類の滅び』だったらしいね」


 魔王は背後を振り返って、広間の奥にある柱を指さす。

 柱には巨大な一つ目が埋め込まれていた。

 その目のまぶたは深く閉じられている。


「あれは『魔神の目』と呼ばれている。遠い未来をのぞき込み、人類が滅ぶのかどうかを見通す魔神の目。あれが閉じられたのは、人類の滅亡が確実になったことを指している――魔神にとってのね」


「……本当に人類の滅亡が起きる、ということなのでしょうか?」


 魔王は首を振った。


「少なくとも。魔神がそう判断した、ということが重要なんだ。魔族(彼ら)にとってはね。魔神の目が閉じられた瞬間、魔族達は長年の使命から解放されて自由になった。

 その瞬間をずっと彼らは待ち望んでいたんだ。自由になった瞬間に、予め用意していた手段で別の世界へと旅立った」


 仮に、と魔王は話を続ける。


「仮に――1000年後の人類の滅びが回避されたとしても、問題はない。魔族(自分たち)たちはこの世界にはいない。魔神はまた別の兵士を生み出し、その兵士に使命を負わせることになる」


 語り終えて、魔王は力なく笑った。


「――以上が『人類滅亡の真相』だよ。この先に人類がどう変わるかは僕にも分からない――さて、ギレイ。君はどうする?」


 その問いにギレイは答えることができなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ