第1話 1000年後に人類が滅ぶことが確定した
新作です。
全部で四章の予定で、今回が一章です。
一章はだいたい完成していて18~19話くらいです。手直しつつ投稿したいです。
よろしくお願いいたします。
気ままに投稿しますので、気が向いた時に読んでくれたら嬉しいです。
私の名前はギレイ。魔王様に仕える人造人間である。人類滅亡を目指す魔王軍の手先として造られ日々働いていた。目的はもちろん人類を滅ぼすためであり、そのための研究を続けていた。魔王軍では人類を滅ぼすためにあらゆる作戦が並行して動いており、私が携わる作戦はその一つでしかなかった。
毎日の労働はとにかくキツく早く解放されたいと思っていたものだ。
しかし、ある日。突如として労働から解放された。
魔王軍で進めていたある作戦が成就し、1000年後に人類が滅ぶことが確定した。この世界から人類という種はいなくなると魔王様から発表があった。
全ての魔王軍の魔物は任を解かれることになった。
「Hwoooooooooooooooooooooooooo!!!(魔物達が叫ぶ声)」
魔王城は魔物達の喝采で埋め尽くされた。
人類滅亡を成し遂げた達成感。労働から解放される喜び。みなが涙を流し、お互いをねぎらった。
それからは宴会である。浴びるほどに酒を飲み、料理を持ち合い、歌を歌った。
宴会は一年くらい続いた。
……それから。
みんなヒマになった。
私はせっかくなので外の世界を旅することにした。
私は魔王軍に所属する魔物である。魔物は下っ端のスライムから最高幹部の四天王まで、みな例外なく『人類への憎悪』を感情に組み込まれている。無条件に人類への憎悪を抱き、人類を根絶やしにすることを至上の目的とするのだ。そのため魔王軍の下級魔物は人を目にしたら問答無用に襲いかかる。
私も例外ではない。人間と戦うことはなかったが、代わりに人類を滅ぼす研究をしていた。憎悪が組み込まれている間は『人類は実に気に食わない! 根絶やしにしてみせる!!』とそんな感じだったが、今は違う。
人類の滅亡が確定したことにより、全ての魔物の『人類への憎悪』も取り除かれている。恨んでいなくても1000年後には人類は滅ぶからだ。
もう恨む必要は無く、私の中にも人類への憎悪はない。
なぜそんなことを考えているというと。
「さて。困ったものだ」
私の目の前には人間の赤子がいる。森の中を散歩していると甲高い鳴き声が聞こえたので近づいてみると、泣いている赤子がいたのだ。篭の中に入れられ衣服も身につけている。
捨て子だと分かった。
また近くを探索してみると、少し離れた先の崖下に人間の女の死体があった。足下を滑らしたのだろう。遺体を魔法で解析してみたところ、この赤子の母親であることも分かった。
さてと。どうするか、と思案する。
以前の私ならば人間の赤子を見れば即座に殺していただろう。しかし今は違う。赤子を見ても殺意は全く沸かない。むしろ別の感情がせり上がってくる。
上手く言語化できないが、そう。この赤子を放っておけないと私は思っている。
急に愛情に目覚めたわけではない。ただ放っておけないのだ。
この感覚には覚えがある。確か……二年前のことだったか。人間の生態系を理解するために、人の生活様式を真似る研修が行われた。他の人造人間たちと共に私はその研修に参加したのだ。
研修の宿舎は人の居住地を真似た家が与えられた。宿舎には生活の彩りとして様々な家具が置かれ、その中に花瓶が一つあった。
ある日、私は花瓶の花が枯れかけていることに気づいた。誰も花瓶の水を取り替えなかったのだ。
私はその花を見て、どうにもいたたまれない気持ちになった。
この赤子に抱いている感情はまさにそんな感じだった。
二年前も結局、私は花瓶の水を取り替えたのだ。
人間も花瓶に活けた花も野生の世界では生きていけない。誰かが手を加える必要がある。
私はこの赤子を助けることにした。
ギレイ
・外見:中性的な顔立ち。小柄、細身。薄い青色の髪。髪の長さは耳が隠れるくらい。目の色は薄い青色。
・種族:人造人間。
・所属:魔王軍研究課。
・戦闘スタイル:魔力特化型。