1話 現代のある占い師のある日
私達今の占い師は歴史上、それを生業とする者たちが最も多い時代で生きていることになる。と、いうのは、スマフォやパソコン、SNSの普及によって、手近な相談者を作ることが以前より容易になったことがあげられるだろう。売れっ子ともなれば、1分電話すると500円程度稼げる人もいるそうだ。ある程度自分の裁量でできることもあり私達の界隈では人気の職業のひとつではあるのだが、それも人によりけりで、電話占いは特にスピーディーに仕事をこなさなければならないので慣れるまでが大変であったりする。
「ええ。復縁を頑張ってみてもいいと思いますよ。相手も気になっているみたいですし、あなたの幸せのためにがんばってみましょうか!」
「はい、ありがとうございます。」
相手の通話がとぎれ、ツーツーと断続音がなる。私はほんの少しばかりの達成感と、ほんの少しばかりの罪悪感の残滓のようなものがいりまじった感情で電話のフックボタンを押した。はりつけたままの薄い笑顔も解いた。私は電話を置き、椅子に深く腰かけ伸びをした。息を深く吸い込み、肺から空気がでていく感覚を意識すると、すっきりと肩の力が抜け、私は自分の部屋の中でゆっくりと緊張を解いた。
「人に触る仕事は大変である」だいたいこの手のことはなにかしらの言葉で表現されるのだが、その通りで、人の感情に触れることで脳や身体の容量というかキャパシティなんかを使ってしまうのである。それだけで結構な割合をとられているのではないか。一人でいるときのほうが落ち着いた心持でできるような、より精神の深いところで考えられるような感覚がある。
はぁ。
私はこの仕事が向いていない。
「私はこそこそと読書なり、植物をいじったり、静かに生きている方が向いているんだ」
とひとりごちてみた。しんどいなぁ。めんどくさいなぁ。アルコールの割合の低いお酒を開けつつ思う。嗜む程度に酒は飲む。あんまり飲むと疲れるようで翌日なかなか起きれないのだ。
「おいしぃなぁ」
頬が自然と緩む。
近所に小さいおにぎりがあるのでそこの稲荷ずしがいつも摘みに買ってくるのだ、甘く、しょっぱい味がおいしい。あとこれもまた近所の焼き鳥であるが、塩で、あとはたまに自前の味噌をつけて食べるのだ。野菜不足が気になるのでプランターで育てている野菜をサラダにしてもってきている。(私はいつも塩コショウにオリーブオイルとかけて、あとたまにレモン汁をかけて食べる。)
1日の終わりはたまにこんな風にして食を楽しむのだ。