第五話
僕は今眺めることしか出来ていなかった。目の前で似非神父と女の子が戦う中一人、黒い炎の剣を持った僕が棒立ちしている。
いやいや!!普通はこうはならないでしょ!!何?あの「アンタ邪魔よ!!」って感情あるの??って言うかよく見たらあの女の子....前見たとき制服だったけど、今は何だか神々しい衣装って言うか、着物みたいなの着てる。
僕がいない内に何があったんだろう。うわぁ...このあるある止めてほしいなぁ..自分がトイレ行ってる間に話が全く分からない方向に進んでたみたいなそんな気持ちになるよ。どうなんだろう...僕が気絶してる間に一時休戦して着替えてきたとか...?いや、でも目が覚めた時はボロボロの制服だったよね....って事はつまり僕が少女に向かって走ってるまでの数舜か、僕がカッコつけて前に出た時に早着替えしたってこと!?
それって完全に異能の領域だよね...
つまり、結論としては彼女の能力は剣を出して操る能力ではなく、ストックした物を取り出して戦う能力だったって事かな。もうちょっと見ててみようかな...こんな事言うのもアレだけど、少女の方が似非神父の事押してるし。
傍観に徹する事にした僕は取り合えず、無意味に取り出した黒い剣を消す。あぁ...儚いなぁごめんよう次は活躍させてあげるからね。あとは念のためこれもしておこう。あんまり好きじゃないけど...まぁ仕方ない。
『感情顕現:孤独』
はぁ...自分が今独りぼっちの孤独です。って考えるの本当に嫌だな。まぁでも孤独を顕現させちゃえばバレる事なく見れるから良いんだけどさぁ....使うのは控えよう。
さて、それより観察観察...どうなってるかなぁ~。
「クックク..まさか貴様がそれを使えるとはな」
「へぇ~これのこと知ってるんだ」
「あぁ...勿論だとも...『異能開放』まさかこのような場所で見る事になるとは思わんかったがな」
なるほど?異能解放なんて技があるのか...まぁでも大体は想像つくなぁ。ようは異能力を開放して体に装備したり、規模範囲を大きくしたりみたいな感じなんでしょう...これもなろうでは定番だけど、これは決着ついたかもなぁ。だって異能開放だもん。他の作品で言うならあ、領域とか超魔法とかそういうレベルだもん。
「だが過信し過ぎだな...見せてやろう!!貴様だけが使える技で無いと言うことを!!」
次の瞬間似非神父の体が大きく弾けた。爆発と言った方が正しいかもしれない。少女も唖然としてるし....爆発した場所を眺めていると黒い煙が晴れ、王冠を被った姿の似非神父がそこにはいた。
「なるほどね...第二ラウンドってわけね」
「あぁ...私はこれからが楽しみだ...死んでくれるなよ?」
瞬間大きな爆発が周囲を焦がしたと思ったら、一つの物体が少女の方へ向かって......僕は能力を解除して、新しく別の感情を顕現させる。
『感情顕現:刹那』
目の前の景色が一瞬にして切り替わる。僕の目の前には超スピードで突っ込んでくるであろう似非神父、後ろにはきっと驚いた顔をしているだろう少女...さて、始めようか。
『感情顕現:憎悪-剣』
現れた黒い剣を握りしめる。見えはしない。だから更に強化。
『感情顕現:怒り』
体から力が漲ってくる。マイちゃんが言っていた使い方...感情なんて幾らでも湧き出てくるんだ。限界なんてあると思うなよ。飛んできていた似非神父が段々ゆっくりとこっちに突っ込んでくる。だからそれをただ、ケーキに包丁を入れるようにゆっくりと丁寧に、切る。
「ぐわぁぁあああぁあぁあ!!!!」
「いい加減飽きたから僕も混ぜてよ」
似非神父はメラメラと黒い炎に燃やされている。体に切り傷は無い。まぁ当然だよね。切る気無いしっていうか殺す気ないし。
「ねぇ..似非神父僕はね...君を殺すつもりは無いんだ。僕なろう系で唯一嫌いな点があってさ...一生懸命生きてるんだから命は無暗に取っちゃだめだよね」
「ぐぅ...熱い熱い....ぐぅぐぐ...このぉ..破ぜろ!!」
僕に対して似非神父が何かを言ったと思ったら目の前で爆発が起きる。
『感情顕現:拒絶』
その爆発は僕へは届かない。僕は僕の嫌いな物を拒絶する物を顕現させた。もう終わりだね。って危ない危ない...何も考えず、対処してたら似非神父が燃え死んじゃう。
『感情顕現:癒し』
癒しで似非神父を回復させつつ、黒い炎を消す。さて、この状態からの回復は時間が掛かるだろうし、後は.....
「う~ん一応助けた筈なんだけど、やっぱり異世界に行きたいや現実って世知辛い」
僕の背後に金色に輝く剣が突き付けられていた。はぁ...今まで見ないようにしてたけどやっぱこうなるかぁ....異世界なら「ふん、助けたなんて思わないことね」みたいな感じで許してくれるんだけど。
「それで、アンタ何者?」
「何者って言われてもさっき会ったよね?薬を飲んだあの時」
「薬って...はあぁ!?いやいや、角なんて生えてなかったわよね?」
ふむ、言われたら気になってしまうのが人間って事でぺたぺた触ってみる。ふむ、確かに何やら角みたいなのが生えてる。人間だったはずだけど...あ、もしかして能力発動中はマイちゃんの体の一部が生えてくるとかそんな感じかな。試してみたいけど、この状況だと刺される危険性あるし。よし逃げよう!!
「ホントだ...気づかない内に角が生えてる」
「なるほどね..気づいてなかったって事は本当にさっきの、って事はあの薬にあなた適応したってk」
今だ!!『感情顕現:刹那』
刹那の感情を顕現させ、視界内の最も遠い所へと一瞬で移動する。後ろの方から大きな声が聞こえたような気がしたが気にする物か...能力が手に入ったんだ。変な人に絡まれて溜まるか...なろう系の隠遁生活したい系の人たちの気持ちが分かった気がするよ。全く...
その後僕は刹那を連続使用し家まで辿りついた。因みに、能力を連続しようすると体力がごっそり無くなる事が分かった....ダメだ疲れたもう寝よう!!
そうしていつの間にか意識を落としていた。