第一話
僕の名前は吉水遥斗少し、カッコいい物が大好きな高校一年生だ。
今は適当にスマホで異世界転生物の漫画を読み漁りながら歩いていたのだが、ふと気づくと周りが可笑しくなっていた。別に取って代わって、周囲が地獄になったわけじゃ無い。ただ、可笑しいなと思える点が沢山あった。
「いやいや...流石に可笑しすぎるでしょ」
そう言葉を呟きながら周りを一目してみれば、地面は砕け民家の屋根は所々吹き飛んでいる。それに加え遠くからは光と炎が見え隠れしている。
こんな状況で僕は迷っていた。普通の人なら何も考えず逃走を選択するのだろう。だけど、僕的にはあっちの炎と爆炎が凄い気になる。むしろなろう読者なら行かないなんて選択肢は無いんじゃないだろうか?
そう考えると悩んでいる時間すら惜しいな。僕は矢継ぎ早にそちらの方向に向かっていった。
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「あぁ!!もう何でさっきから追いかけてくるのよ!」
制服姿の少女が町中を全力疾走で走っていた。いや、ただ走ると言うには語弊がある。厳密には逃げていた。少女の後方から神父姿の男が歩いて来ていた。その男が一歩進むごとに男の周囲は凄い音を鳴らして爆発して行く。
「なに、貴様が私たちから奪った物を返してくれれば追いかけなどしないさ」
「返さないって~の!どうせアンタらこれを悪用しようとしてるんでしょ!」
「そうか、ならば死ね」
次の瞬間少女の後ろの建物が爆発を起こし、道を瓦礫がふさいでしまう。
「チッ」
「さぁ..これで逃げ場は無いぞ、大人しくそれを返せば命だけは助けてやる」
「誰がぁ!!」
少女が叫ぶと少女の背後から無数の剣が大量に顕現し、少女を守るようにくるくると回転しだす。
「ほぅ...面白い貴様も能力者か、ならば先の言葉は撤回しよう!我々神々の使途の計画のために貴様を殺す!!」
「かかって来なさい似非神父!」
さて、なんかドンパチ始めたけど、僕何しようかな。そう何を隠そう、ここまで走ってきた訳だが役に立てそうも無かったから隠れている状態だ。誤解してくれるなよ。僕だって本当はあの少女を助けに行きたい。遠目で良く見えなかったけど、あのシルエット絶対美少女だ。
ただ、助けるって言っても能力なんて物僕は持ち合わせていないからな。普通のラノベとかだったら、この辺りで僕が能力とかに覚醒してアイツらをぼこぼこ~って感じで倒せるんだろうけど......いやいや絶対無理だ。何アレ~?頂上戦争か何かですかぁ~爆発したと思ったら剣が生えてきたり、それを避けたと思ったら爆発したり、うん無理だ。帰ろう。
別に逃げるわけじゃない....そう一時的撤退。こんだけドンパチしてたら、あの少女の仲間なんかもきっと助けに来るだろう。って事で一時撤退!!
名も知らぬ少女よ恨まないでおくれよ~
そうして僕が踵を返すように別の道に向かおうとすると目の前が爆発した。
「Ha?」
「バレておらんとでも思ったか?」
「アハハ本日はお日柄もよろしく...」
「死ね」
僕は咄嗟のところで走馬灯を見ていた。思い返せば悪い人生じゃ無かった。平凡に生まれ、小学校、中学校と女の子との関わりも無い平凡な一日。暇な時間はスマホでなろう系を読み漁りながら、自分が能力を持っていたらどんな応用が出来ただろうかと考える。
.....本当に....本当に楽しかっただろうか?思えば今までの人生何も無かったな。女の子との出会いも、友達との喧嘩も、あったのは目の前のスマホとの見つめあいだけ。やっと出会えた少女はこっちを見て驚いた表情をしている。驚いた。あの子顔が凄い綺麗だ。まるでなろうの作品から出てきたみたいな...きっと属性で言ったらツンデレなんだろうな。それでいて剣を使っていたからギル〇メッシュとかパル〇ェザンみたいな技を使って将来で会う主人公とイチャイチャするんだろうな。良いなぁ楽しそうで何で僕はこんなモブで終わりそうなのに主人公は良い思いをしているんだろう。
そうだ僕がこんな場所で死んで良いわけない。
もうあんな事あんな表情は見たくない自分が惨めで嫌いになってしまうから。
ってそんな憂鬱な考え、なろう主人公がするわけが無い考えるなやめろ.....そうだ。頭を回せ。
目の前には爆発を生身で受けて死ぬかもしれないとこちらを心配そうに眺める美少女。そして正に爆発を受けようとしている一般人の僕....これは絶対そうだ。エピローグ、ならば何とかしてやろうじゃないか。
僕は咄嗟に、敵の目線から体を隠すために制服のブレザーを投げ捨てた。次の瞬間目の前だ大爆発が発生する。やっぱりそうだ。爆発系能力者は基本的に目で見た物を爆発する。僕はこの隙にと安全そうな少女の方へ移動する。
さて、この時に重要なのが挨拶だ。挨拶とは相手への第一印象になる。ここで変な挨拶をしよう物なら剣山にでもされてしまうだろう。だが僕はなろう読者だ。少女の扱いには長けている。どうすれば照れて惚れさせられるかくらい把握しておかなければ、なろう読者とは言えないからね。見よ僕の渾身の挨拶を!!
「待たせたね。大丈夫僕が来たから安心して休んでて」
決まった!勝った。これにキュンと来ない女子はいないはず。今のは物語では定番のピンチの少女の元に颯爽と現れ、カッコよく解決する。そんな一幕を演じてみた。大体この後は少女は顔を赤らめてもじもじとしだすんだよね~分かる分かる。
「ふ~んアンタも能力者って分けねならお言葉に甘えさせて貰おうかしら」
えぇぇ!?
そうなる?いや確かに『休んでいて』とは言ったけど、本当に休んでる事ある?普通は
『フン、アンタだけに任せておける分け無いでしょ私も手伝ってあげるわ。べ、別にアンタの事が心配で手伝って上げるわけじゃないんだからね』
くらい言うでしょ。え?どうしよう。目の前の爆弾魔完全にこちらを獲物として見てるんだけど?え?もしかして、いやもしかしなくても僕死んだ?
「なるほどな、助っ人と言うわけか。どんな助っ人がこようと私の敵では無いがな」
「ふ、ふん、そいつはどうかな僕の能力さえあればお前なんて....」
うわぁーどうしよ~完全に死んだよ。あの爆弾魔の目が好敵手を見る目に変わったもん。無理だよ。ていうかせめて能力にくらい覚醒させてくれても良くない?いやむしろ、覚醒しても勝てるかどうかなんだけど....
まだ、待て吉水遥斗焦るような時間じゃない。落ち着くんだ。周りを確認してみよう。周囲は爆発に及ぶ爆発でグチャグチャ、唯一の逃げ道は爆弾魔に塞がれている。後ろも瓦礫で塞がれてるし、少女のほうは...何やら大事そうに小瓶を抱えている。もしかしてこの小瓶がさっき言ってたあの似非神父が欲しがっている物?
だとしたらまだ何とかなるかもな。
「さぁ!行くぞ似非神父ここでお前も終わりだ!」
「ふん!ぬかせ」
次の瞬間僕は似非神父がいる方向とは真逆の方向に走っていた。
「は?」
と言う言葉は誰から漏れたのか。まぁ今はそんな事はどうでも良い。手汗なのか暖かい小瓶の蓋を開け一気に飲み干す。
「な!?」
「バカなの!?」
言うが早いか。僕の体がまるで別の生き物になるかのように書き換えられて行くのを感じる。
「うぐ...あがぁ」
僕が何かを言う前に口から何かが漏れ出した。可愛い少女がいるのだと抑え込もうとしても、止まらない。口から何かが流れ出でる。
「クククハッハハハ...大馬鹿者ではないか...まさか能力者と言うのは嘘で小娘の小瓶を奪うのが目的だったとは」
「な、何してんのよ!アンタ早くそれを吐き出しなさい出ないと悪魔に」
「もう遅いわぁ!今更吐き出した所で悪魔が貴様の体に入った。それは特別制だ起源を書き換えられ死ぬがよい」
なにを...ゴチャゴチャとうるさいな。僕が死ぬわけ...ないだろ死ぬわけ。ダメだ目の前がボヤケテきた。クソこういうのって何だかんだ乗り越えて能力獲得までがお約束だろ。くそが。