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第04話 甘くない異世界生活

「ルーク様、街へ出かけませんか?」


 メリーに誘われ、ルークは本から顔を上げる。


「街?」


「はい。駄目、でしょうか? 最近、ずっと家におられるようなので、たまにはどうかなと思いまして」


 ルークは考える。言われてみたら、最近は従者との関係改善を優先し、街に行けてなかった。


(ちょうど良い機会だし、街での評価も確認しておくか)


 正直、乗り気はしない。ルーク少年の状態でもわかるほど、街の人たちからは嫌われていたからだ。元々、メイカー家に対して好意的な住人は少ないのだが、【悪役ヒール魔法】を得てからは、不気味がられている。陰で馬鹿にしている者もいるみたいだが。


 ちなみに、メイカー家が良く思われていない理由は、父親のサイモンのせいだ。サイモンは領主であると同時に、メイカー銀行の頭取でもあった。それで、かなり取立が厳しいから、逆恨みもあって、嫌われている。


「……そうだな。行こう」


「はい!」


 ということで、二人は屋敷の近くにある広場へやってきた。石畳とレンガ造りの家が建ち並ぶ街並み。いくつか飲食店や小売店も見受けられたが、前世基準だと、規模や店数がしょぼく見えた。


(まぁ、その辺は前世が良すぎた)


 それにメイカー家の領地は、前世なら間違いなく田舎であるから、そういったことも影響しているとは思う。


(さてさて、住人からの反応はっと……)


 ルークは辺りを見回す。広場には多くの住人がいて、小さな子供を除けば、全員が怪訝な表情でルークを見ていた。声を潜めて、話し込んでいる者たちもいる。女子のグループに悪口を言われた悲しき過去を思い出し、ルークは胸が痛くなった。


(やっぱり、嫌われているよね。これ……)


 この嫌われっぷりは、住人たちの反逆で破滅する未来もあり得る。


(でもまぁ、何とかなりそうな気もするな)


 評判は悪そうだが、そこに強い敵意は感じない。前世の基準なら、DQNを見ている感じ。この感じなら、ちょっと良いことをしただけで、簡単に評価が上がるからだ。


(ゴミ拾いでもするか? いや、子猫を助けるでもいいかもな)


 そんなことを考えていると、メリーから声が掛かる。


「ルーク様。私は『羊のお店』へ行こうと思うのですが」


「わかった。俺は広場ここで待っている」


 羊のお店は、前世でいうところの手芸専門店だ。ルークに手芸趣味なんて無いから、行く気はなかったのだが、メリーはその返事に対し、不満の色を示したので、ルークは戸惑う。


「え、駄目?」


「駄目じゃないですけど……。わかりました。《《一人》》で行ってきます」


 ご機嫌がよろしくないメリーを見送り、ルークは苦笑する。


(あとで甘い物でも御馳走するか)


 そのとき、ルークはこそこそと裏路地に入る怪しげな人影を見かけた。


(……妙だな)


 ルークは追いかけてみることにした。人影が消えた裏路地を確認する。薄暗い路地を小走りで進む男の後姿が見えた。きょろきょろと辺りを見回し、見つかりそうになったので、慌てて身を潜める。


(ふふっ、なんか楽しいな、これ)


 探偵になった気分で、ルークは追跡を続ける。男が奥の方へ消えたのを確認すると、ルークも裏路地に入った。


 そして、男を追うこと数分。


 人気のない細い裏路地で話し込む3人の男たちを見つけた。


「……たか……」


「……ない」


 3人の会話はよく聞き取れなかった。幸いなことに、3人のそばには身を隠すことができそうな大き目の木箱があったから、そこまで近づいてみる。


「どうするんだ、これ?」


「もう後戻りできないんだぞ」


「わかってる。それは俺も同じだ」


「何とかして、探さないと」


 どうやら3人は何かを探しているらしい。3人の状況をよく確認しようと顔を出して、ルークはギョッとする。


 3人の足元に布袋があって、そこから人の頭が出ていた。


(……いや、あれはエルフ!?)


 尖った耳先に絹のように細くて滑らかな金髪。眠り顔でもわかる整った顔立ちは噂に聞くエルフだった。


(マジか)


 エルフの存在は知っていたが、前世の基準を得てから遭遇すると、その喜びもひとしおである。


 興奮していると、視線を感じた。


「あっ」


 男たちに見つかっていた。興奮して、思わず身を乗り出していたのである。


「誰だ、てめぇ!」と男の一人が怒鳴る。


 見つかってしまったのなら、仕方がない。


 ルークは毅然とした態度で3人の前に進み出る。


「俺のことを知らないのか?」


「ああ」


「なら教えてやる。俺は――ここの領主であるメイカー家の四男、ルーク・メイカーだ」


 静寂。


(決まった)


 ルークは笑みを堪える。権力者の息子であることがわかったら、彼らも手出しはできないだろう。


 ――しかし、3人は懐から指揮棒めいた杖を取り出し、ルークを睨んだ。


「誰だか知らねぇが、見られたからには殺すしかねぇ」


「……ほぅ」


 ルークは不敵な笑みを浮かべるも――内心ではめちゃくちゃ焦った。


(やべぇ、どうする!?)


 虎の威を借ることができない絶体絶命のピンチだった。

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