第9話 シャルルの能力
なんで能力が発動しない。やはり嘘を吐いていたのか?
しかし、確かにあの瞬間奴の命令通り俺の体は動かなくなった。
シャルルは能力を解いたのか、俺はよろよろと立ち上がることができた。蹴られた衝撃がまだ身体中に響いている。腹の奥が痛い。
いや、おかしい。俺を操作できるなら、停止じゃなくて、負けを認めさせるとかいくらでも方法はある。
全部嘘だ。
しかもなんで試合開始で操る能力を使わないんだ。
開始と同時に使っていれば俺の攻撃を喰らわずに済んだのに。
またシャルルがスナップと共に言う。
「─停止しろ。」
立ち上がってすぐに止められた俺の身体は、間抜けな案山子のようだった。
…くそっ、また止められた。
─いや待て、違う。使えなかったんだ。攻撃をわざと受けて俺に触るために! つまり、この停止はシャルルの操る能力ではなくてさっきの長髪眼鏡の固定能力!
つまりシャルルのデザイアは──
「『コピーする能力』だと思った?」
蹴りが腹に突き刺さる。
「いい線いってるけど、違うよ。」
俺は床に倒れ込んだ。今にも口から何かが飛び出そうなくらいに気持ち悪い。
でもコピーじゃないとしても、人の能力を使う系統の能力に違いない。でないとブラフを張る理由がないだろ。
じゃあ奪う?借りる?
まいった選択肢が多すぎる。
落ち着け、冷静に考えろ…
こいつは今日、何手先も読んで行動してる。
ブラフを貼りつつも、強かに自分の本当の能力の条件を満たそうとしていたに違いない!
その証拠に、あの長髪眼鏡も条件を満たしてしまっている。
シャルルの言動を思い出せ。そこにヒントがある。
シャルルは長髪眼鏡と何やら話していた、そして
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「ここは交換条件で穏便に済ませませんか?」
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この言葉。
そこから導き出される結論!
「お前のデザイアは、能力の【交換】だろ!」
「惜しいね、でも僕のデザイアはもっと難解さ。」
シャルルのこの余裕、能力を把握されないだけの自信。わかってはいたが【解除】は条件が複雑な相手には無力だ。
「これで止めにしてあげるよ。」
まずい、次にまたいい蹴りをもらえば俺はお終いだ。
くそっ、まだ手はあるはず。
諦めるな!
脳をフルで使え!
「停止しろ。」
また身体を固定された。
…また?
見えたぜ突破口。
短くなったのでなるべくすぐに10話も更新します。
今回ライトの解除が発動しなかった点について簡単に説明すると、シャルルの能力発動条件を完全に推測しておらず、シャルルの“能力の交換”はシャルルの能力の一部でしかないため、解除が決まらなかったという訳です。