第8話 秘密裏一対一
「今から皆さんに、一対一をしてもらいます。どちらかが戦闘不能状態になるか負けを認めれば試合終了。勝者は3次試験に進めます。」
「このホテルの地下に専用の部屋がございます。まずはそちらにお越しください。」
階段を降りていくとそこは真っ黒のフロアだった。そしてそこで番号のついた鍵をもらった。番号は44番、…なんか不吉だな。
「皆さんにお渡ししたのは、部屋番号です。まず指定された部屋に入ってください。そこが待機ルームです。」
天井から声が聞こえた。またスピーカーか。
「待機ルームには、戦闘ルームへ向かう扉があります。互いの準備が完了したら、戦闘ルームに入ってください。戦闘ルームはマイク、カメラ等ついておりません。ですので、存分に戦って頂けます。」
なるほど、それで秘密裏ってことか。
俺は鍵の番号に示された待機ルームに入った。
4畳半くらいの広さで、横に戦闘ルームへの扉がある。正面の壁にはルールが掲示されていた。
・勝利条件 相手を戦闘不能にするか相手が負けを認めること、もしくは相手が戦闘ルームの外へ出ること
・武器の持ち込みは禁止
・デザイア使用可能
・勝者は3次試験へと進める(6階大ホールに移動)
もう負けられない。どんな相手が来たって勝つ。
呼吸を整えて、対戦ルームに入る。
反対側の扉が開き、見慣れた顔が入ってきた。
「お、ライト君じゃん。」
そこにいたのは…シャルル。
まずい…
シャルルは自分と握手した人を操る能力を持つと自称している。そして俺はその条件を満たしてしまった。その場合【解除】で対応可能だが、意識まで操られたらどうしようもない。
でもシャルルの性格からして、あの場で本当の能力を言うとは思えない。だから他の能力も警戒しなければならない。厄介だ。
だからこそ、先手必勝!
『試合開始です。』
開幕と同時にシャルルに向かって走る。
王国で鍛えた武術を思い出せ。
王国に伝わる武術は回転の力を利用するもの! 力の流れを繋げるように連続的に攻撃する!
シャルルは迎え撃つ姿勢を見せる。
俺は近づいた所で左足を踏み込み、右手を大きく振りかぶる。
そして素早く殴る!
「やるね。」
シャルルはギリギリで俺から見て右に避けた。
「まだ終わってねーよ!」
殴った勢いをそのままに、踏み込んだ左足を軸にして素早く回転する。そして左手の裏拳をぶちかます!
王宮武術“旋空拳”‼︎
シャルルは掌で受けるも吹き飛ばされた。
よし、通用する…!
「さすが王子、武術もいけるみたいだね…でも忘れているよ。君は既に僕の操り人形だってね。」
立ち上がりながら不気味に笑う。
パチンっと指を鳴らした。
「停止しろ。」
…なんだ…これ…動けない…言葉も発することも出来なくなった。
まさか本当に自分の能力を言っていたとは。いやだがむしろ好都合!
逆に俺はシャルルの能力を把握してる!
【解除】!
「残念でした。」
動けないまま俺はシャルルに蹴り飛ばされる。