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第16話 どうせ聞くなら…

 


「フィクサー、助けてくれてありがとう。」

「勘違いするな、1回だけだ。1次試験のお前の功績が、今助けるに値する働きだったというだけ。じゃあな。」

 そう言って立ち去ろうとするフィクサーを追いかける。

「ちょっと待って! 少し質問したいんだけど。」


「おい着いてくるな。ギミックがより飛んでくるだろ。」

 と、走り出す。負けじと俺も着いていく。

「答えてくれたら離れるから!」


「チッ…なんだ。1つだけなら答えてやる。」


 1つだけか…どういう質問にするべきだ。

 走りながら考える。


「…ランドトロイアについて、俺たちに公表していない秘密を教えてくれ。」


「…秘密は教えられないから秘密なんだ。」


「じゃあ、《槍星の探索者達(ランスシーカー)》は何を隠してる?」


「それも同じことだ。」


「…どうして明かせないんだ。」


「明かすと、混乱を招くからだ。よく考えろ、50人以上じゃないとランドトロイア(ここ)へ入れないのに、アナザーデザイアを手に入れられるのはたった1人。初めから仲間割れ前提の性悪ダンジョンなんだよ。」


 炎を纏った小さい隕石がいくつも降り注いできた。急いで屋根のある家に逃げ込む。

 耳の近くで轟音が立て続けに鳴った。その中でもフィクサーは話を続ける。


「だから今、お前ら一般勢と俺たちギルド側はダンジョンをクリアするという目的だけでしか関係を保てない。秘密を明かせば、その均衡は崩れる。」


「そこまでして、俺たちを募集した意味はなんだよ。リスクしかないじゃないか。」


「…質問は1つまでと言ったはずだ。」


 そのまま窓からフィクサーは出ていった。追いかけようとしたが、体が動かない。

 …あいつ、俺に【固定】を掛けてから出ていきやがった。


 仕方ない。それに俺には別にやらなくちゃいけないことがある。

 そう、昨日俺はジャンが寝た後、シャルル、リリスと共に作戦会議を続けていた。


──────────────────────

 シャルルが取り仕切る。

「さて、明日のことだけど、とにかくランドトロイアの仕掛けに関する情報が必要だ。」


「具体的にどうするのよ。」


「ギルド側の人間に接触して、喋らせるんだ。どんなことでもいい。」


「接触するなら長髪眼鏡(フィクサー)がいいと思う。」


「そうだね、ライト君」


「え、なんでよ。説明しなさいよ。」

──────────────────────



 そう、接触するならフィクサー。2次試験前にあの長髪眼鏡はシャルルとの交渉に応じているはず、だから今回も話してくれるかもしれないということ、事実、話には応じてくれた。最も貢献した者にアナザーデザイアが与え他を出し抜く必要がある。だからこそ、バス内や、教会内では質問しに行けなかった。


 これは情報戦だ。まだ足りない。

 情報を聞き出すなら1番偉いやつ、ステラに聞くべきなんだ。


 多分、昨日シャルルもこれに気付いてた。シャルルは俺たちを出し抜くために言わなかったのだろう。くそ、一手遅れた。今頃彼は──





***


 シャルルはこの全盛期のランドトロイアを走り回っていた。


 目的は3つ。

 シャルルのデザイア“人の能力を使う”を生かし、昨日フィクサーに条件を満たすことで使用可能になった【固定】を自身にかけることで生き延びる。しかし、連続使用は体に負担がかかるというフィクサーが条件づけたデザイアの仕様により、走り逃げながらここぞという場面のみ使うことを余儀なくされた。


 2つ目は人間観察。結局これはアナザーデザイア争奪戦。ランドトロイアの仕掛けの次に警戒すべきは、その母数を減らさんとする野蛮な輩。他の攻略者の性格やデザイアを観察し、次に備える。


 ギルド側は大丈夫として、一般選抜の合格者41名。

「全員見たわけじゃないけど、その中で要注意なのは…8人だね。」


 まずは、向こうの4人組。4人で固まり、各々のデザイアでギミックに対抗している。個人個人のデザイアの質が高い。もし集団で襲ってこられたりしたら厄介なことこの上ない。


 次にさっきすれ違った、黒衣の騎士。ギルド勢と遜色ないオーラかつ殺意を醸し出していた。間違いなく攻撃系デザイア使いだろう。


 そして今目の前で、黒い狼型の化け物と戦っている2人組。見た目からして双子。双子のデザイア使いはコンビで同時使用し、不可避の理不尽コンボを叩きつけてくるケースが多い。


 そして─

「よ! シャルル!」

 ジャンに声をかけられる。

 デザイアによる圧倒的な身体能力。生存力で言えば、この中で1番だろう。


「ジャン、大丈夫か?」

「おうよ、ギミックは基本蹴り飛ばしてるぜ、お前は?」

「僕はこれで対処してるよ。」

 と言ってジャンを【固定】する。

「うお、動けねぇ。」

「これなら、攻撃を喰らっても影響はないんだ。」


「おお解けた、便利だなこれ。」

「ジャン、取引しよう。ジャンはその【身体強化】で僕たちを守り、要所で僕のこの【固定】を使う。交代しながらギミックに耐えるんだ。」

「おっけー。2人なら体力温存できていいな。」


「ジャン、これから行きたいところがある。」

「ん? どこだよ、観光でもするつもりか?」

 2人は、開始時の教会へと向かう。そこには、紺色の隊服を纏う、閃光のデザイア使いがいた。


 そう、3つ目の目的は、彼女から聞き出すこと。だが、()()()()()()()()()()()()()()()


「やぁ初めまして。いくつか質問してもいいかな。」


「…断る。」


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