#97.突入、砂ノ精神の塔
八重の公開処刑当日未明。
僕たちは、準備を整えて、出発する。
「翔太朗、お前は、誰も乗せなくていいからな。俺たちがやる。」
ワシ之信が念を押すように言った。
「ご主人様は、一緒に、変身して、ついてきてくださいね。」
シロンが念を押した。
僕、シロン、ユキナ、ワシ之信、そして、シロンの背中に、ミランダとカミラさん。ユキナの背中には、双子のエルフ、エミリアとエレノア、そして、ワシ之信の背中には、マイコフさんと、サファイアの学級で、僕たちの班を無双した剣士、ジョンが乗ることになった。
このメンバーが先発隊。つまり突入部隊。砂ノ精神の塔の屋上から侵入し、内部を目指す。
「よろしく頼むぜ、少年!!」
ジョンは魔道武術大会と同じように気さくな人だった。
「ジョン殿の軽い身のこなしがあれば、忍者との戦闘ができるかと思います。前衛はカミラ殿とジョン殿にお願いして、一気に攻めましょう。」
マイコフさんが冷静に言う。
残ったメンバーは、砂城市の城壁から、正面突破をして、塔の最上階を目指すことになった。
「それじゃ、翔太朗君。姫様を頼むぜ。塔の中で、会おう。」
アルベルトさんが手を振る。
「おうよ。絶対に死ぬなよ。負けんじゃねーぞ。」
アンソニーが言った。
先発隊には、マリアの結界魔法が施される。
「守護の結界です。何かあっても、守ってくれます。」
僕は、マリアにお礼を言った。
先発隊といっても、先に【砂城】市に突入するのは、アルベルトさん、パメラさん、そして、ラピスとサファイアの学級の残りの皆と、僕たちの学級の皆だ。
僕の学級はアルベルトさんが指示を出してくれる。その他の学級は、ラピスとサファイアが指示を出してくれるそうだ。
「じゃあな。絶対に連れ戻してこい。」
「期待しています、頑張ってくださいね。」
「よろしくお願いします。」
アンソニーそして、ラピス、サファイアの言葉に元気をもらい、正面から突入するメンバーは一気に崖を降りていき、町の城壁へ向かった。
彼らの少し、後方上空を僕たちは飛行している。
城壁、そして、町の門に到達し、一気に突入を開始したようだ。
何人かの町の見張りをしていた人が彼らに襲い掛かってくる。
上手く、アンソニーとマリア、そして、ラピスとサファイアが、防御魔法を使いながら、応戦しているのが視界に入ってくる。
「よし、翔太朗先生、短期間ではあるがわずかな修業の成果が出ているようだ。」
カミラさんが、僕に教えてくれる。
突入メンバーは、上手く砂ノ国の忍者の攻撃をかわしながら、少しゆっくりではあるが、進んでいる。
コーン!!コーン!!コーン!!コーン!!
緊急事態を知らせる鐘だろうか。一気に町全体に知らせている。
それを聞いて、【砂ノ精神】の忍者たちが、アルベルトさん突入部隊の方へと集まっている。
「よし、狙い通りだ。翔太朗殿、私たちも行くぞ。」
多くの敵が、上空で待機している僕たちに気付いていないようだ。
この間に、一気に塔の屋上を目指し、八重の奪還、そして、余力があれば、砂ノ精神の大将を襲撃する。
敵の兵力が、アルベルトさんたちの方に傾いている間に、僕たちは、空から侵入することに成功した。
塔の上の最上階、屋上。
やはり、処刑台が準備されており、皆に見えるようにしているようだ。
そこから、入り口のようなものがあり、そこから塔の内部に侵入する。
だが、案の定、入り口に、鍵がかけられているようだ。
カミラさんがパワーをためる。
「おりゃぁ!!」
カミラさんの拳、そして、体当たりが強烈だ。
魔法でさらにパワーを加えたのだろうか、入り口の扉の形が変わって、吹き飛んだ。
「翔太朗殿、こんなもんでいかかでしょうか。」
さすがは、冒険者ランクAのカミラさんだ。パワーもある武闘家というのはこのことだろう。
かなり本気である。
「みんなを生きて、セントアリアに帰す。それが私だからな。」
カミラさんはそう言って、前に進む。
僕たちも前に進んだ。
前衛はジョンとカミラさんがマイコフさんに指示されたとおりに進んでくれる。
だが僕は、気配を感じた。忍者の気配だ。僕はわかる。忍者だったから。
「カミラさん、皆さん、左後ろです。」
僕は、とっさに声を出す。
つかさず、エミリアが矢を放つ。
「気付かれたか。」
「よりによって、屋上からも侵入者だ。どうやって。」
砂ノ精神と思わしき忍者が二人。
「行くぞ!!」
カミラさんが、一発パンチを加える。
「へへへ、忍者の動き、こいつから学んだことが生きてるぜぇ。」
ジョンは一気に素早い動きで切りつける。
ノックアウトか・・・・・・・。
いいや、違う。変わり身だ。どこだ、どこだ。
僕は、魔力を使い神経を研ぎ澄ます。
カミラさんを狙って、飛び出してきたところを僕は短剣を投げ、『ウィンドカッター』でとどめを刺した。
「やりましたね。ご主人様。」
「はい。ご主人様が居なければ今頃、こういう戦法になれていませんから。」
シロンとユキナも安堵してくる。
「うん、今の翔太朗なら、忍者相手にも通用するな。」
ワシ之信が言った。
「さーて、ここからは儂の出番だな。」
「私もお供します、ワシ之信様。」
ワシ之信とマイコフさんが言った。
先ほど倒した忍者たちはまだ意識があるようだ。
「おい、お前たち、牢屋の場所はどこだ、今日処刑されることになっている、姫君はどこだ。」
ワシ之信とマイコフさんが尋問をかけているようだ。
マイコフさんは結界魔法で彼らを動かなくしている。ワシ之信もトン吉爺さん譲りの尋問の術で相手の手首を縛っているようだ。
「さあな・・・・・。そんなものは、知らねえよ。ぐっふ。」
「お前たちも・・・・・、どうせ、死ぬことに、なるのだからな。」
なかなか口を割ろうとしない。
「居場所さえわかれば楽なのですが・・・・・・。」
マイコフさんはため息をついて、さらに結界に圧力を加えて、尋問を続けようとするが。
「いたぞ!!侵入者だ。」
「全員取り押さえろ。」
まずい、別の忍者たちに発見されてしまった。
「尋問を中断するしかなさそうです。」
マイコフさんと、ワシ之信は尋問を中断し、敵との戦いに応戦する。
「こうなったら、いたるところすべてを調べる必要がありますね。」
マイコフさんは言った。
「ですが、儂らの戦力的に、手分けしてやるのは少々無理があります。」
「そうですね。このまま、翔太朗様と、ワシ之信様中心に忍者と応戦しつつ、片っ端から調べましょう。アルベルト様達の影響で、いささか手薄になっているようです。」
ワシ之信の指摘に、マイコフさんが対応する。
確かに手分けして探すのは無理がある。自分たちに土地勘もなければ、相手の戦法も読めない、ここは一人も失わないためにも、全員で進むしかない。
僕たちは、必死に応戦し続けた。
その結果、突破口はすぐに見つかった。
「まずい、屋上から侵入してきたのを月影様達に知らせなくては。」
一人の若い忍者が必死に逃げる。
僕はワシ之信、そして、ミランダ、カミラさんを見てうなずいた。
ほかのメンバーも僕を見てうなずく。
あの忍者を追う。
そうして、忍者を追って行くと、大きな立派な扉の前で、彼は立ち止まり、扉を開けた。
バーン!!
「月影様、大変です。屋上から・・・・・」
バシッ!!、バシッ!!
若い忍者は、僕の投げた短剣とミランダが放った氷の矢が命中して、その場に倒れた。
「ご案内ありがとよ。」
ワシ之信が言った。
「役に立ったぜぇ兄ちゃん。」
ジョンも得意気に言う。
扉の奥は大きな部屋だった。
部屋の中には4人すでにいた。
4人のうち3人はよく知っている顔だった。
まず1人。部屋の中央。八重が手を後ろに組まされ手足に手錠をかけられ座っている。
その八重の前の両サイド。まず右側に、薬草取りに行ったときに、八重に襲い掛かったサングラス男。
そして、左側・・・・・・・・。
まさかと呼ばれる人物がそこにはいた。一番最初に声を出したのはその人物だった。
「龍太朗、なんでお前がここにいる。言っただろう。この件に関しては。」
吉田長治。実の父の弟。僕にとっての実の叔父だ。
「ん?龍太・・・・。」
ミランダが口を静かにつぶやいたが僕は阻止する。
「あっ。」
ミランダは思わず口を両手で覆う。
どうやら長治は僕のことを双子の兄だと思っているようだ。
「ぎゃー、ハハハハハハハッー。」
部屋の奥、リーダーらしき人物が腹を抱えるように笑っていた。
年は50代くらい、白髪でガタイの良い男だった。
そのガタイの良い男の奥には、泉がある。壁伝いにきれいに上から下に水が静かに流れていた。
「も、申し訳ありません、月影様。我が一族がとんでもないことを。指示が行き届いていなかったようでして・・・・・・・。」
「言い訳はいらねーんだよ。長治。」
その男は、長治に向けて怒鳴る。だがしかし表情は、急に笑顔になる。
「フッ。」
そして、失笑していった。
「まあいいや、那ノ国の上忍が俺様にたてついたらどうなるかわかってんだろうな。お前は、那ノ国でも特に優秀な上忍と聞いている。そんなお前が、一族の命令を無視したとなりゃ傑作だぜ。風ノ里や那ノ国の二重スパイってとこかなー。だとしたら容赦しないぞ。長治、貴様も上忍なんだろう、罰として、こいつを殺せや。」
男は、長治の肩をポンと叩く。
「承知しました、月影様。龍太朗、二重スパイになったことを後悔するんだな。風ノ里は我が吉田一族がいただく。新しい里長を失脚させようとした我が一族の計画を邪魔しおって。お前も、黙ってみていれば、ゆくゆくは、里長や宰相になれたのに。すべてはお前の親父と、お前の家を守るために行動していたのだぞ。」
僕は冷静に見ていたが一体何のことかわからなかった。
長治が敵に寝返っている。ということだ。だが、長治に僕のことを気付かれてはならないと思い、考えるのをやめていた。
今はただ、長治とあいつらを仕留めて、八重を連れて帰る。
「ハハハ、面白いなあ、八重姫さんよ。実に最高傑作じゃねーか。特別にお前にだけは教えてやろう、なんでおんなじ里の、長治さんがここにいるかな。里長選挙があって里長が代わっただろう。だが、新里長をいいと思っていない人達がいてな、それがこいつらの、那ノ国と、風ノ里の創始者吉田一族だ。里長選挙に吉田一族も出馬したが、残念ながら落選、納得いかず、新里長を失脚させようと目玉政策の忍者学校修学旅行導入で、失敗させようとしたんだよ、俺たちに賄賂を贈ってな。誰か一人、修学旅行中に誘拐しろってさ。だから、那ノ国の連中は誰も助けに来なかった。でも見てみろよ、来やがったぜ。来やがったぜ。何が死にたいだよ。殺すなら殺せだよ。里の人が迎えに来たじゃねーか。」
男は、八重をつかみ、こちらに無理やり視線を向けさせる。そして、椅子に座り、酒瓶を開けた。
「まあ、でも何人来ても同じことだぜ。八重に見せてあげよう、あいつらが殺されるのをな、そして、絶望して、処刑開始としようかな。やれ、長治、必要があれば手伝え、寅丸。」
「承知しました。」
「承知しました、月影様。龍太朗、お前とは残念だがお別れだ。新里長に味方したことを後悔するといい。覚悟するんだな。」
長治は僕に襲い掛かってきた。
因縁の対決、ここで決めて、見返してやる。吉田一族を。
僕はそう決めて、短剣を取った。
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