#92.トン吉からの手紙
八重が、あの八重が、このセントアリア王国の王女。
確かに、ハンス王子と同じ赤毛だった。こんな偶然。
「頭が真っ白だろう。さあ、大叔父、【トン吉=吉田】殿からの手紙を読むときが来たようだ。フィリーネ、そして、従者のワシ之信とやら。」
フィリーネとワシ之信が僕あてのトン吉爺さんからの手紙を渡してくれた。
「ここに書いてあります。トン吉殿からあなたに最後のメッセージです。」
『【親愛なる翔太朗へ】
この手紙を読んでいるということは、おそらくそなたは、一族に見捨てられ、はるか彼方の場所にいることだろう。そして、儂もそなたの傍に居ないだろう。
儂は、予言の術で、自分が死ぬ予言を見てしまった。だからこうして、筆を執り、お前に手紙を渡したい。
まず、お前の予言を見た。
一族に見捨てられはしたが、そなたには違った才能があったようだ。はるか彼方の異国、セントアリアの地で、かけがえのない仲間とその才能を生かしていることは本当に良かった。そして、魔道武術大会とやらで、優秀な成績をお前と、その仲間たちが収めているのも予言しておる。本当に良かった。そして、『鷲眼の術』も開眼しておることに感動したぞ。儂の一番の幸せ果報者じゃ。
お前の成長を見ることは出来そうにもないが、こうして予言を通して知ることとなった。
願わくば、この予言が真実であることを願いたい。それが真実であることを願って、これ以降の文を添える。
そして、翔太朗と一緒に読んでいるかけがえのない仲間たちに頼みがある。
八重を、八重を君たちの仲間に入れてほしい。
薬草園の洞窟の時、なぜ、八重が狙われたのか儂は色々と調べた。
八重のこと、岩月家のこと、そして八重の母親のことだ。
結論から先に言おう、八重はお前の今いる、セントアリア王国の姫。王女なのだ。
おそらく八重を狙った謎の男は、砂ノ国の『砂ノ精神』と呼ばれる武装集団のひとり。
『セントアリア』と『砂ノ国』の外交関係はある時点で、断絶されておる。その武装集団が、王子を暗殺したことによって。
その、暗殺された王子の娘。それが旅芸人として世界中を旅してきた、八重の母親との間にできた娘。正当なセントアリアの後継者だ。
セントアリアには、同じ外務卿として、共に仕事したことのある、フィリーネ=オランドと呼ばれる人物がおる。どうか、フィリーネとともに、八重のことをよろしく頼む。
最後に翔太朗へ、本当にお前に出会えてよかった。感謝している。
そして、翔太朗の仲間になってくれた人へ。本当にありがとうございます。今の翔太朗がいるのは皆様のおかげです。どうか、皆様の未来に幸が多きことを願います。
追伸、これからもつまずくと思う、そんなときは、ワシ之信が力になってくれる。
その時その時の予言で、お前に手紙を残しておいた。どうか、役に立ててほしい。
吉田トン吉』
僕は、手紙を読んだ、一言一句丁寧に読んだ。
トン吉爺さん・・・・・・・。
トン吉爺さんは八重が狙われた理由も調べておいてくれたのだ。
トン吉爺さんの予言の術。確かに外れることもあったが、これは遠い未来の予言であればあるほど外れるのだ。
予言したときは、数か月から半年後の出来事、やはりこの短い期間での予言は本物だった。
僕は深く頷き、国王陛下を見た。
「許可する。ここにいる、君の学級の仲間たちに、君の出生を話しなさい。契約している二人のホワイトイーグルも召喚していいぞ。」
僕はポールさんを見た、ポールさんは頷いている。
「大丈夫、国王陛下も君の出生の秘密を知っている。」
僕はシロンとユキナを召喚し、そして、僕の学級の仲間たち、そしてボーラン士官学校のメンバーに僕の出生の秘密を話した。
「今まで黙っていてごめんなさい。」
と切り出し。
出生の秘密をむやみに明かさないように指示されていたこと。
そして、僕の出身、どのような生い立ちで、どのような環境で育ってきたか。
もともとは忍者だったこと、『鷲眼の術』は一族秘伝の術として、語られてきたこと。
そして、セントアリアに来た経緯を話した。
「そ、そんなことが・・・・・・。」
ルカは驚いている。
「すまなかった、翔太朗君。こんなにも君は苦労していたなんて。」
ルーベルトも驚いた。
「翔太朗様、本当に苦労されて、きっと貴方はもう、誰からも命令されるようなことはないでしょう。」
サファイアが優しく微笑んだ。
「私もそう思います。」
ラピスも頷く。
学級の他の面々、そしてボーラン士官学校の他のメンバーも同じだった。同じような顔をしていた。
全ての話を終えて、国王の顔を見た。
「那ノ国の出身の翔太朗君に、セントアリア王国からの極秘任務を命令します。君の学級の皆と、ボーラン士官学校のメンバーと力を合わせて、八重を我が娘を連れてきてください。翔太朗君の話や、トン吉という方の手紙によると、我が娘も同じように家族の者から、虐待を受けていると聞きます。どうか、八重を我が娘をここに連れてきてほしい。」
国王は、僕に向かって頭を下げた。
王国からの極秘任務。魔道武術大会上位者による特別任務が与えられた。
みんなの顔を見回す。みんな、頷いていた。
「承知・・・・・・・。」
バーン!!
僕が返事をしようとすると、突然謁見の間の扉が開いた。
「国王様!!」
兵士が血相を変えて、やってきた。
表情からして、慌てている。
「大至急、重大な報告が・・・・・・。皆様もいらっしゃるということで、丁度いいかと。」
兵士は国王に内緒話をする、そして、手紙らしきものを渡す。
国王は、話を聞くと血相を変えて、急いで手紙を読む。
「な、なんと、我が娘が、『砂ノ国』の『砂ノ精神』の残党どもに捕らえられた。」
僕は息をのむ、あのサングラス男の仕業だろう。
なんということだ、トン吉爺さんも僕も八重から離れてしまったからこのようなことが起きたのだ。
確かにいま、八重は『風ノ里』で独りぼっちだった。
「返してほしければ、セントアリアの国宝を持って来いと・・・・・・・・・。」
兵士は、国王に言った。
「渡してなるものか。君たちには危険な任務になってしまったが、『那ノ国』、つまり『那ノ大陸』出身で八重の顔を見たことがある翔太朗君を外すわけにはいかない。相手と戦うことになるが魔道武術大会で優秀な成績を残した君たちならば大丈夫かと思うが・・・・・・。」
僕たちは覚悟して頷いた。
僕も覚悟がある。ほかの皆も僕以上に覚悟があった。
なぜならば、ほかの皆はセントアリア王国の出身者。
「もちろんです。どこまでも行きますわ。セントアリア王国の祖国のためですもの。」
ミランダが言った。
そうだ、この国の王女を助けるのだ。みんな胸の高鳴りを押さえきれなかった。
「すまない。当時のことをよく知るものを同行させよう。ポール、ルーベルト君。」
「「はい。」」
ポールさんと、ルーベルトは返事をする。
「アルベルトと、ティーレマンに掛け合って、第一、第二師団の精鋭も同行してほしい。あの部隊にも当時のことを知るメンバーがいるのでな。」
ポールさんとルーベルトは頷いた。
こうして、国王から直々に僕たちの学級への任務。王女奪還作戦が開始されるのであった。
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