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#90.ファンレターの山


 セントアリアの感謝祭期間が終了した。

 感謝祭後半は思い思いの時間を各自過ごした。


 僕は、シロンとユキナ、そして、ミランダやリリアンとともに王都の散歩に出かけたり、屋敷で本を読んだりと過ごしていた。

 ミランダもリリアンとともに屋敷で過ごせることがうれしく、時々僕抜きで女子会をすることもしばしばあった。


 そして、今日から学校の授業が始まる。

 あと少し、ひと月強頑張れば、冬休みの期間になり、また別のお祭りが開かれる。

 秋冬と、行事が目白押しだ。


 セディア魔道学院にミランダ、リリアンとともに、登校する。

 するとどうだろうか、学院のみんなが僕たちの方をチラチラとみてくる。


 「やっば、あれ、翔太朗君じゃない。」

 「ミランダさんもいるよ。」

 「リリアンさんかわいいなぁ。」


 と、校内のどこを歩いても騒がしくなる。


 「あの・・・・・・。握手してください。」

 という感じで、握手を求められ、僕たちは素直に応じた。

 握手を求められた、生徒は顔を赤らめ、

 「あ、ありがとうございます。」

 と恥ずかしそうに、去っていった。



 教室に入ってもそのようなことは続く。

 「おはよう、みんな。これを見たまえ。」

 ルーベルトは鼻を高くし、笑っていた。


 「君たちあてにファンレターが届いている。勿論、この僕にもだ。」

 ファンレターの山、ファンレターの山。

 ありとあらゆるところにできていた。


 どうしてこのようなことが起きたのかは容易に想像できる。

 僕たちは感謝祭期間中に魔道武術大会の校内代表として出場し、そこで準優勝したのだ。


 当然、この活躍は学校内でもちきりとなり、このようにして、ファンレターが届いたのだった。


 早速僕たちは、誰宛かを仕分けした。

 そして・・・・・。


 「うん。翔太朗君宛が一番多そうだね。」

 確かにそうだ。僕あての物が一番多く、次に多いのがマリア宛。

 試合に勝っている人が多いイメージだ。



 早速、一つ、開封してみる。

 明らかに女子生徒らしい文字だ。


 「やっぱり、女の子に人気なのですね。翔太朗様は・・・・・・。」

 ミランダは少し、どこか不機嫌な様子。

 マリアと、リリアンもだ。


 確かに、ファンレターの宛名を見ると。『翔太朗=吉田様』とどれもあるが、明らかに、女の子が書いた字だ。しかも、どの字にも力が入っているのがわかる。

 


 そういうミランダも、どうやら男子生徒からもらっているファンレターが多かった。

 「お付き合いとかは丁重にお断りします。そんなのはあまり・・・・・・・。」


 なるほど、確かに、今は魔法に打ち込みたいし、僕もお付き合いはやめておこうか。

 それに、今の学級のみんなの方が大切な気がする。


 とりあえず、手紙をもらったのには変わりがないので、これからも応援してくださいと簡単に返事を済ませておこう。



 「改めて、準優勝おめでとう、来年は優勝が狙えるように精いっぱい努力しよう。」

 ピエール先生が入ってきて、今週のホームルームが開始された。

 学級単位の授業は和気あいあいと進んだが、大教室単位の授業大変だった。


 まずはどこに行くにも、みんなの注目の的だった。

 少し恥ずかしくなる。


 そそくさと授業を済ませ、そそくさと大教室を退場していく。

 

 「僕のところもこんな感じだよ。」

 「私もだよ。」

 ルーベルトと、リリアンに行き会うが、そんな感じで、他の生徒の視線が気になる一週間だった。




 そんなこんなで、今週もいよいよ金曜日。学級の仲間と演習の時間だ。


 「今日はみんなにお客さんが来ているんだよ。どうも合同で訓練がしたいと申し出がありまして。」

 ピエール先生が、言った。


 早速ピエール先生が通した。

 

 演習場に入ってきたメンバーを見た。


「げっ。」

 ルーベルトが驚いた。


 そこに来たのは、ボーラン士官学校の、ラピスとサファイアの班だった。

 ルーベルトの婚約者のダコタも当然いる。


 「魔道武術大会でも戦った、ボーラン士官学校のラピスの班と、サファイアの班の面々だ。しばらく合同で演習をすることになった。」


 そして、ラピスと、サファイアの学級のメンバーに交じって、老婆らしき人が混じっていて、その老婆が挨拶をした。老婆といっても清潔感があふれる感じであり、見た目は50代前後に見える。

 だが、実年齢はもっと上だよな、と、見て取れた。



 「セディア魔道学院の、1年第5班の皆さん初めまして。まずは、この度の魔道武術大会、素晴らしかったです。」


 第一声の挨拶をする。


 「私はボーラン士官学校、理事のフィリーネ=オランドと申します。今回は合同で演習をしてみたいと思い、こちらに参りました。」


 フィリーネ=オランド。どこかで聞いたことがあるような。


 「フィリーネ=オランド様。お会いできて光栄です。」

 ルーベルトが頭を下げる。そしてミランダ、アンソニー、ルカ、ピエール先生、カミラさんがそれに続く。

 僕とリリアンとマリアも、少し出遅れるが、皆に習い頭を下げた。


 「いえいえ。あなたの御父上のことはよく聞いています。ルーベルト殿。私は以前のような政治家、そして、外務大臣ではないのですよ。隠居したのは良いですが、同窓の頼みで、母校の理事として、アドバイザー的な立ち位置でこうして、生徒たちを見守っているのです。」


 外務大臣ということで、ピンときた。

 確か、トン吉爺さんの手紙に記されていた人で、ワシ之信が会いたいと言っていた・・・・・。

 僕は驚いていた、まずい、早くワシ之信に知らせないと、と思ったときだった。


 「偶然ではないよ。私が無理を言って来ていただいたのだ。」

 ポールさんが僕たちのもとへやってきた。その後ろにワシ之信の姿もあった。

 フィリーネは僕のもとに歩いてきた。


 「初めまして、翔太朗君。魔道武術大会の、『鷲眼の術(イーグル=アイ)』本当に素晴らしかった。あなたの大叔父様の若い時を感じます。あなたのことは、事前に大叔父様の従者、ワシ之信殿から聞いています。いろいろと大変だったことでしょう。私の消息を知り、事前に、ポール様とともにボーラン士官学校に訪問に来たのです。」

 フィリーネは僕に向かって深々と挨拶をした。僕も頭を下げた。


 「お会いできてうれしいです。感謝します。」

 と、握手を交わした。


 「ありがとうよ。翔太朗。お前が魔道武術大会で準優勝したおかげで、すぐに会うことができた。」

 ワシ之信が言った。


 「と、言うわけで、1年5組の皆さんと、ボーラン士官学校の今年の魔道武術大会の、優勝学級と、第3位の学級に、国王陛下直々の特別任務があるそうだ。詳細は来週の演習の時間に王宮に行ってもらい、そこでお話があるそうだ。」

 ポールさんがそう言った。


 「私も、いろいろとその特別任務に準備しています。皆さんとはまた来週、国王様とともにお目にかかれればと思います。」

 フィリーネもそのように語る。


 「今日のところは、これから任務をするということで、お互いの親睦会とする。お互いの学校をまずは案内してあげてほしい。幸いにもボーラン士官学校も王都にあるのでな。」

 ピエール先生は僕たちに向かって言った。


 特別任務か。かなり緊張するが頑張ろう。


 ということだったので、まずは、ボーラン士官学校のみんなを、このセディア魔道学院を案内することにした。

 いろいろな施設を案内する。しかし気になったのは、施設ではなくて、生徒たちの視線だった。


 魔道武術大会の優勝、準優勝、三位のチームが一堂に会しているのだ。こんな光景は目に焼き付けたいだろう。


 「素晴らしい場所ですね。」

 サファイアが僕に向かって言った。


 「まあ、入って間もないので、あまり施設とかの利用はしていないのですが・・・・・・。」

 僕は素直に答える。


 「それでもいいのですよ。」

 サファイアは笑顔で答える。


 ダコタと、ルーベルトは、合同の特別任務と聞いて、さらに不機嫌になっていた。


 「ふん。安っぽい施設ですこと。」

 「うるさいな。こっちだって、頑張っているんだよ。少しは。お前のために。」

 二人の言い合いが続く。


 「せいぜい合同の任務では足を引っ張らないで下いね。」

 「それはこっちのセリフだ。」


 それを最後にしゃべらなくなった。ケンカするほど仲がいいということもあるが、少し心配ではある。


 小一時間ほどで、セディア魔道学院の見学を終え、次はボーラン士官学校へ行くことになった。


 セディア魔道学院が王都の貴族街の東側にあれば、ボーラン士官学校は王都の貴族街の西側に存在した。


 歴史の古い建物が並ぶ。

 サファイアが案内してくれているのだが、学校の敷地内には、かなり古い重要文化財の建物もあるのだという。

 食堂、遠くからきている人たちのための寮、自分たちの教室をそれぞれ見せてもらった。


 「どう、素敵な学校でしょ。」

 ダコタは、ルーベルトに向かって言った。

 「ああ。とてもいいと思うよ。」

 ルーベルトはタジタジになりながら、ダコタに言った。



 やがて、授業は放課後ということで、食事会になった。

 魔道武術大会でも、剣を交えたが、それぞれ和気あいあいと、している。

 だが、心配なのはルーベルトと、ダコタだった。


 ラピスと僕の配慮で、二人には離れた席に座ってもらった。


 「フォローありがとう。すまなかったね。翔太朗君。」

 「大丈夫だよ。僕もあの人の性格、苦手だから。」

 ルーベルトに内緒話をした。


 そこからは、淡々と進み、解散になった。

 やはり、一度会ったときと同じような性格をしていた。


 王様と会う。合同任務がある。それがとても楽しみだった。



今回もご覧いただき、ありがとうございました。

少しでも続きが気になる方は、ブックマークと高評価をお願いいたします。


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