表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/136

#89.『伝説の風魔導士』と『密林の賢者』


【伝説の風魔導士】


 昔々、あるところに、一人の若者が居ました。


 若者は風を操る魔法が使えました。

 風を操っては、風と対話をし、村の仲間たちと過ごしながら、幸せな日々を送っていました。


 しかし、その幸せな日々は長く続きませんでした。

 

 陸では、戦争や反乱が相次ぎ多くの人々が死んでいきました。

 空では、古の魔物古竜と呼ばれる、最強のドラゴンを筆頭に、ドラゴンたちが暴れまわりました。


 そんなある日、悪い王様が居ました。

 その悪い王様は、この世界のすべてを自分のものにしたいと考えました。


 そうして思いました。

 ドラゴンと手を組んで世界のすべてを手に入れようと。


 悪い王様は、自分たちの手下を引き連れて、ドラゴンたちに挑みました。

 そうしてドラゴンたちは、悪い王様と手を組むことを許してしまいました。


 そして、ドラゴンたちは勢いよく、攻撃をし、野山をますます暴れまわりました。

 戦争はますます悪化し、さらに多くの人が犠牲になりました。


 そして、若者の村にも、そのドラゴンは襲い掛かり、若者の村を焼け野原にしてしまいました。


 若者は泣き崩れました。お父さん、お母さん、恋人、友達、全てをドラゴンと悪い王様に殺されてしまったのです。


 若者は立ち上がりました。そして、新しい場所を求めて旅立ちました。


 若者の目に、一人の鷲が罠にかかっていました。おそらくドラゴンたちにやられてしまったと若者は思いました。

 若者はその鷲を助けました。


 鷲は言いました。

 「助けてくれて、ありがとうございます。お礼に、お供させてください。」

 その鷲は、若者の仲間になりました。


 またあるところで、若者は鷲同士でケンカしているところを見かけました。

 どうやらケンカしている鷲二頭は、二頭ともドラゴンに自分の住みかを奪われてしまったようです。


 若者はケンカを止めました。

 そうして、ケンカしていた鷲二頭も若者の仲間になりました。


 そんなことを繰り返しているうちに、鷲たちの間で、若者の心優しい評判があふれるようになり、ドラゴンたちに傷ついた、鷲が若者のところに集まるようになりました。

 そして、世界中のすべての鷲が、若者のもとに集まりました。


 鷲たちは若者の寛大さに感謝し、若者に不思議な力を与えました。

 『鷲眼の術(イーグル=アイ)』と言われる、この術で、若者と鷲たちはドラゴンに戦いを挑みました。


 それを見た人間たちは、希望を持ち、最後には、ドラゴンと悪い王様を倒すことができました。


 人々はこういいました。

 「『伝説の風魔導士』が現れた。」

 

 若者は『伝説の風魔導士』になり、新しい国の王様になり、幸せに暮らしました。



 ―――おしまい――――




【密林の賢者】


 昔々、森の奥のそのまた奥に、賢者と呼ばれる魔法使いが済んでいました。

 すべての魔法と出会いたい賢者は、いろいろな研究をしていました。


 そんな時に、森の民族たちが狙われる戦争がやってきました。


 森の民族たちはおびえて、密林の賢者に助けを求めに行こうとしました。

 だが、密林の賢者は人々の願いに応えることなく、自分の研究に打ち込んでいました。


 そうこうしているうちに、森が焼かれ始めてきています。

 森の民族たちはもうおしまいだと、思い、逃げ惑うようになりました。

 あるものは森の奥のさらに奥へ、あるものは、森を抜けだし、別の森へ山へ、海へ。

 バラバラになった民族たち。


 しかし、密林の賢者は、そんなことは気にしていないように、森を動かずじっと耐えていました。


 ですが、森は燃え続ける一方です。そうしているうちに、逃げているのは人間だけでなく、森の魔物たちも逃げるようになりました。


 そうして、賢者の居る場所に、一匹の森の奥に住む虎が迷い込んできました。

 その虎は、いかにも炎の火傷でひどく傷ついていました。


 賢者はその虎を見て哀れに思ったのか、虎の手当てをしました。

 自分の研究していた回復魔法で。

 虎はたちまち元気になりました。


 虎は賢者に感謝しました。そして、賢者に言いました。

 「お前はなぜ、逃げないのか。」


 賢者は答えました。

 「逃げたい気持ちはある。だが、逃げても無駄だ。長らく私は、人と関わっていない、さげすまれるだけだと。」


 虎は言いました。

 「それならば我とともに行こうではないか。そなたの勇気を多くの人に見てもらおうではないか。」


 虎の粘り強い説得に賢者は折れ、共に戦う覚悟を決めました。

 この虎は、この森の守り神と呼ばれる虎でした。

 守り神の虎は、賢者に力を与えました。『獣王眼の術(ティーガー=アイ)』です。


 そうして、不思議な力を得た賢者は、炎を見事沈めることができました。


 森の民族が戻ってきました。そうして、人々は賢者に感謝しました。

 それ以来、賢者の周りにはいつも人があふれて、幸せに暮らしました。


 ―――おしまい――――






 感謝祭の後半。僕はミランダに連れられて、王立図書館に来ていた。

 魔道武術大会の激闘もあって、感謝祭の後半は修業や実践などは完全オフとなった。


 この図書館は静かだった。当然、図書館は静かなのが当たり前だが、今は感謝祭。

 そして、この図書館は、王都の中央広場、中央の噴水を対照にして、冒険者ギルド本部とちょうど反対側にある。つまり、冒険者ギルドが東にあれば、この図書館は広場の西にあるということだ。


 つまり、外に出れば感謝祭真っただ中の騒がしい中央広場なのだ。

 図書館は静かでも、外からはかすかに、感謝祭の騒がしい声が聞こえる。


 僕の他にはミランダの他に、シロンとユキナ、そしてリリアンが来ていた。

 ワシ之信は調べ物があるというので引きこもり、執事のアレックスさん、カミラさんは昨日のパーティーの後片付けがあるからといって、僕たちだけでここに来ていた。

 ちなみに、ポールさんやアルベルトさん、パメラさんはほかの場所で、感謝祭を楽しんでいるようだ。


 「これを翔太朗様に見せたかったのです。」

 ミランダは、この『伝説の風魔導士』と『密林の賢者』の本を僕に見せてくれた。

 その本はどちらも古い本で、千年以上前から伝わる物語であるということがうかがえる。


 「千年以上前の文字なので、訳し方やより詳細なものなどもあるのですが、これが一番わかりやすいかと、それに、どれも同じような内容で書かれていますので。」

 ミランダは説明してくれる。


 「なるほど、確かに『鷲眼の術(イーグル=アイ)』ってあるね。」

 「はい。」

 僕は、少しドキドキする。


 「すごい、こんな昔からの古い魔法だなんて。」

 リリアンも感動しているようだ。


 「ご主人様に会えるのを私たちはずっと待ってたんだよ。鷲たちを代表してお礼しちゃおう。」

 「ご主人様。本当にすごいですね。この風魔導士は。」

 シロンとユキナもこの話は知っているようだ。


 「でも、どうして・・・・・。」

 僕は、口を閉じた。

 「どうかしたのですか、翔太朗様?」


 ミランダは、僕に尋ねてくる。


 「ううん。何でもないんだ。」


 そうだ、ここにはリリアンがいる。僕の素性は安易にばらしてはいけないのだった。


 僕の疑問はこうだ。

 なんで、この大陸のおとぎ話なのに、僕は違う大陸の出身なんだろう。ということ。


 しかも、那ノ国にはこのお話の本なんて、一冊もなかった。

 『鷲眼の術(イーグル=アイ)』の伝説は口頭で伝わっていただけだった。

 ただ、僕の先祖はかつて、全ての鷲を契約し、口寄せ(召喚)できた人物としか、聞いていなかった。


 ここには、それ以上に詳細が残っていて、驚いていた。



 「まあ、細かいこと考えても仕方ないよね。」

 僕は、ミランダに開き直ったように言った。

 

 「そうですね。とにかく、翔太朗様はすごいということです。」

 「うん、翔太朗君は最高だね。」

 「「すごいです、ご主人様。」」


 感謝祭の後半。昨日の誕生日パーティーの余韻にまだ僕は浸っていた。

 昨日は本当に最高の時間だった。

 パーティーが明け方近くまで続いたので、目が覚めたのは昼頃だった。


 ミランダ達も同時に目が覚めたようで、王都を一緒に散歩することになり、この図書館に連れてきてもらったのだった。

 


 「シロン、ユキナ。」


 「「はい。」」


 「ジュース屋に行ってもいい?」


 「「もちろんです。」」


 僕たちは本を棚に戻して、図書館を出た。細かいことを気にしていても仕方がない。

 僕たちは広場を南下し、ジュース屋に向かった。昨日、シロンたちからくれた無料券を使って、タピオカドリンクを楽しんだ。


 ミランダとリリアンは向かいの店で、クレープを買って食べていた。

 

 「ジュース、好きなんですね。翔太朗様。」

 ミランダが聞いてきたので、僕は頷く。


 一日の午後のひと時。それは心温まる時間だった。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

少しでも続きが気になる方は、ブックマーク登録、高評価、いいね、をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ