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#87.風ノ里のその後、その5~Side 吉田一族~


 さて、ここは、那ノ国の風ノ里。

 

 「バカヤロー!!お前はクビだ。出ていけ!!」

 翔太朗の父、吉田半蔵の怒号が飛び交う。

 今日も家政婦を一人クビにしたのだった。



 「半蔵さん、また屋敷の手伝いをクビにしたらしいよ。」


 「それゆえ任務の成功率も格段に下がっているそうじゃないか。」


 「半蔵さんだけじゃないよ、吉田一族のほぼ全員が今年に入って任務に失敗しているじゃないか。」


 「これで何度目かねえ、クビどころか、半蔵さんの暴言を聞くのは・・・・・。」



 近所の人間から白目で見られる半蔵。

 その視線に気づき、野次馬を睨みつける。


 「「「ひぃっ!!」」」

 

 ―見んじゃねえよ、人の家の事情なんて、そんなくだらないもの。失せろ。ー

 半蔵は心の声を押しこらえる。


 一体いつからこうなったのだろう。半蔵の常備薬が不足しており、ここぞという時に体力を奪われ、任務失敗が相次いでいた。


 「畜生、こうなったら、こうなったら・・・・・・・。」


 もうすぐ風ノ里は那ノ国の選挙の時期に差し掛かろうとしていた。

 毎年秋の初めに実施されるのだった。



 今年実施予定の、その選挙の一つに風ノ里の里長選挙があった。

 吉田一族は、風ノ里の創始者一族だ。


ゆえに里長選挙の出馬は一族の誰かが、当たり前のようにしてきた。

 そして、当たり前のように里長に当選して、その人物が死ぬか病に倒れるまで、吉田一族が里長をしてきたのだ。

 半蔵の父、つまり翔太朗の祖父がこの世を去って、2年半が経過、里長在籍の任期途中の急逝であったため、ナンバー2にあたる人物が今の里長に着任したが、この任期も、ここで終わり。

 

 ―里長に出馬するのはこの私だ。そして当選するのもこの私だ。―

 半蔵は意気込んでいた。里長選挙に立候補する。と。


 だがしかし、ここ数か月の任務の失敗を批判されているのも事実だ。

 任務を成功させないとだな。


 だが、この時半蔵は勘違いしていた。少しばかり信頼を取り戻せば大丈夫だろうと高を括っていた。



 任務を成功させる、少しでも成功率を上げるには・・・・・・・。

 これしかない。


 半蔵は里長の屋敷へ向かった。

 里長の屋敷は風ノ里の役場のようなものも兼ねている。生活には里長の屋敷と、風ノ里の役場のような施設が併設されているのだ。



 「お願いがあります。」

 半蔵は、里長に申し出た。

 「どうした半蔵。」

 里長は、半蔵の頼みを聞いた。


 「次の任務は龍太朗の班と同行願えないでしょうか。少しでも、任務の成功を上げたいのです。」

 半蔵の頼みだった。その言葉には真剣さがあふれていた。

 表も裏もない頼みだったので、里長はすぐに了解した。


 ―龍太朗と任務に赴いて、必ずや吉田一族が再び里長になってみせる!!―


 そうして、龍太朗、半蔵は任務に赴いた。

 盗賊団の討伐、山の調査。パートナーの鷲、サイゾウ、ワシノリも手伝い、任務がどれも成功した。


 ―よし、これでなら。―

 半蔵はそう決意して、吉田一族を集めた。

 そして、次の里長選挙に立候補することを伝えた。


 「頑張れ。」

 「やるからにはしっかりな!!」


 立候補に関しては誰も反対する者がいなかったので、よし。できると思った。



 そして、半蔵は予定通り里長選挙に立候補した。

 候補者は自分も入れて3人。半蔵は思った。これなら指示が得られると。吉田一族だ、負けたことがない。そう自負していた。


 候補者のひとりに服部という人物がいた。

 服部、確か忍者学校で龍太朗の担任をしていた人物の父親だったかな。忍者学校の前校長で人材育成に取り組んでいたよな。

 おそらくこいつと競り合うことになるが、まあ、競り勝つだろう。


 半蔵は、政策を発表した。その政策は吉田一族らしく、保守的で、無駄がなさそうに安定していた。

 そして、服部という人物が次いで政策を発表したが、驚いた。


 「若者教育にも力を入れたい、政策の一つに忍者学校の修学旅行の実施を検討します。」


 少し民衆は驚いたが、半蔵は思った。

 ―馬鹿か?こいつは、そんな財源どこにあるんだよ!!―

 それと同時に、これは勝った。競り合う相手の候補が自滅したような演説だったのだ。勝った。そう思った。


 3人目の候補者も中身のない演説だった。

 その演説を聞いて、しめしめと思い、これは行けると半蔵は確信した。


 そうして、風ノ里は里長の選挙戦に入っていった。

 半蔵は、確信した。

 「絶対に吉田一族は里長になって、風ノ里でいちばんになれる。過去もそうだったじゃないか。」


 半蔵の目には自信というものがあふれていた。

 ありとあらゆる場所で、演説を繰り返した。

 

 「これからもこの吉田一族はこの里ともにあります。どうかよろしくお願いします。」


 「これからも、今後も吉田一族は・・・・・・・。」


 「吉田一族は・・・・・・・。」



 安定の吉田一族、これまでの政策を継続する形の保守的な内容で問題ないだろう。



 そして、投票日になった。


 開票作業。これで、これできっと俺も、今までの任務失敗を返済できる。



 開票の結果、吉田半蔵は惨敗した。

 里長に選ばれたのは、修学旅行の取入れなど、教育熱心な政策を打ち出した、服部だった。


 しかも、半蔵は2位の得票ではなく、3位。つまり3候補者中最下位であった。

 そして、服部とは桁が違っており、2との候補者とも2倍以上離されていたのだった。


 「なぜだ、なぜだ、なぜだ・・・・・・・・・・。」

 半蔵は頭を抱えていた。


 支援者たちに礼を言って渋々、家に帰宅し、自宅にうずくまっていた。



 今回の投票を受けて、すでに先代の里長になった人物は。


 「半蔵が負けたか。当然だ。」

 先代の里長はそう思っていた。

 家政婦を務めていた人物から相次ぐ半蔵のパワハラ。

 ほかの班員からの、任務失敗の時の横暴や言い訳、さらには任務が成功したときでも体罰あり。


 確かにベテラン上忍として、訓戒をすべきところもあるが。

 同じ国の忍者として、同じ里の仲間に、ここまでやっていいものかというような内容の報告が数多く寄せられていたのだった。


 「半蔵よ。昔、昔といっても、つい数か月前までは、安定した温厚な人物だったではないか、そのままの調子でいけば、服部に競り勝って里長になれたものを・・・・・・・」


 先代の里長はため息をついた。


 「とにかく。半蔵が自分を見つめなおして、次の里長選挙に立候補してくれることを願おう。」


 里長はそう思っていた。

 だが、このことはまだまだ序章。那ノ国の一大事になるまでそうは時間がかからない。


今回もご覧いただき、ありがとうございました。

続きが気になる方は、是非登録と高評価をお願いいたします。

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