#85.表彰式と感謝祭
「翔太朗君。」
「翔太朗様。」
僕の目に、ルーベルトと、ミランダの姿が映った。
「シロンちゃん、ユキナちゃん。」
同じように、シロンとユキナの視線の先にも、ルカ、マリア、アンソニ―、そしてアンソニーの姿が映った。
「みんな大丈夫?すぐに手当てをするからね。」
リリアンの回復魔法が癒される。
『メガヒール』だろうか。体だけではなく、心までも癒されていく。
大の字になって横たわっていた僕たちを心配して、フィールドの中央まで駆け寄ってきてくれたのだ。
僕はまだ、涙を浮かべていた。
「悔しいか?」
一緒にフィールドに来たカミラさんに聞かれる。
「はい。とても。」
僕は答える。
「そうか。その借りは来年の魔道武術大会に取っておくんだな。」
カミラさんが言った。
「だが、お前たちは本当によく戦った。1年生ながら校内の代表をつかみ取り、そして、準優勝だ。胸を張っていい。周りをよく見てみろ。」
やっと、僕に会場の音が入ってきた。
まだ、大きな拍手がやむことはなかった。
「伝統ある、冒険者や魔導士、その他そのような職業を目指す、全ての子供が憧れる大会だ。これは。この結果に恥じないように今後も努力して、堂々としていろ。」
カミラさんがさらに続けた。
「本当によくやったよ、皆。これからも頑張ろう。そして、来年は絶対に優勝だ。この班、この学級の担任を持てて誇りに思う。」
ピエール先生も駆けつけて、僕たちに言った。
学級の仲間は、とても笑顔だった。魔道武術大会準優勝という肩書の重さを理解して、そして心に刻んだようだ。
僕も、それに続くかのように涙を拭き、いつもの表情に戻った。
「「よいっしょっと。」」
ルーベルトとアンソニーに両腕を持ってもらい、ようやく起き上がった。
シロンとユキナも同じように、学級の女子たちの手を借りて、起き上がることができた。
「皆様、感動の中、水を差すようで申し訳ありませんが、表彰式の準備をしますので、控室にてしばらくお待ちください。準備ができ次第お呼びしますので。」
司会にそういわれたので、僕たちは一度、控室に戻った。
退場の際に、拍手が一段と大きくなった。
そして、表彰式。白髪白髭の国王、カルロス=アリア三世がそこに立っていた。
開会式の際は、貴賓席は遠くて、白髪白髭ということしか特徴をつかめなかったが、優しい老人という顔立ちで、白髪の中に、うっすらと赤毛のような色を残していることが判る。
若い時は赤毛だったのかなと、若い時の面影を感じる、そんな優しい国王の顔立ちだった。
バトルフィールドの中央、表彰台に進み出で、国王の前に向かい合って立った。
「表彰状、準優勝セディア魔道学院1年5組、翔太朗=吉田殿、あなたは学校対抗セントアリア魔道武術大会において優秀な成績を収めたのでここに表します。セントアリア王国国王カルロス=アリア三世。」
国王は、賞状を読み上げた。
「はい、おめでとう!!『鷲眼の術』感動しました!!」
表彰状を渡してくれた。それは立派な表彰状だった。そして僕が初めてもらった表彰だった。
双子の兄、龍太朗は表彰をたくさんされ、屋敷に飾ってあったのだ。
兄が表彰されるたび、僕は両親に怒られていた。
だが、そんなものは過去の話だった。初めて自分の名前の表彰状を見たとき、目頭が熱くなった。
賞状をもらったとき、本当に多くの人が拍手と歓声でこちらを見ていた。
国王はその後、学級のメンバー全員分の表彰状を渡した。
そして。
「記念品をどうぞ。」
準優勝ということで、銀の盾、表彰の盾ではなく本物の盾だ。セントアリアの国の紋章が入っている。
「その盾は、実戦で使うこともできます。魔道武術大会で準優勝したチームの証です。今後もその誇りを胸に頑張ってください。」
国王は、僕たちにエールを贈った。
そして、盾の他にもう一つ。こちらも準優勝ということで、銀でできたトロフィーが送られた。
リンゴの木をモチーフにデザインされており、リンゴの花、リンゴの実がトロフィーについていた。
「セントアリアの国花は薔薇、そして、国樹はリンゴだ。薔薇とリンゴ、かなりこの国では大切にされている。来年は金色のトロフィーと盾がもらえるように努力してくれ。」
カミラさんがトロフィーの意味について説明してくれた。
続いて、バトルフィールドの反対側に待機していた、ボーラン士官学校のチームに優勝の表彰を行った。
記念品は、優勝らしく、金の盾と、金のリンゴの木がデザインされたトロフィーだった。
「最後に決勝を戦ったメンバー同士で、握手か何かしようか。」
国王の提案に驚いたが、もう一度お互いに健闘をたたえ合った。
「とても強かったです。サファイアさん。」
「いいえ、『鷲眼の術』よかったです。」
僕は、サファイアと、そしてサファイアの学級全員と握手をした。
第3位入賞には、準決勝で負けた2つのチームが3位ということで表彰された。
サファイアのチームも、3位に入った、ラピスのチームも、最後はボーラン士官学校同士、仲が良かった。
「以上で、今年の魔道武術大会は終了です。また来年、皆さんとお会いしましょう。そして、感謝祭はまだまだ続きます。どうぞ、皆さん楽しんでください、それではさようなら!!」
司会の言葉で、武術大会が閉幕した。
闘技場を僕たちは出た。
決勝で負けて、悔しい思いがあるかと思ったが。
表彰式と言い、準優勝でも十分大健闘したと言うことで、解放感というか、ホッとした気持ちが強かった。
「やったな!!」
アンソニーが口を開いた。
「うん、ずっと憧れていた大会に出場、そして準優勝出来て本当に良かった。みんなありがとう!!」
ルカが僕たちにお礼を言った。
「翔太朗様、私からもお礼を言います。本当にありがとうございました。」
ミランダはとても礼儀正しくお礼を言った。
「みんなありがとう。こちらこそだよ。」
僕は、この仲間たちのおかげでここに集うことができているのだ。感謝しないといけない。
「今日だけは、余韻につかろう。明日からはまた忙しくなるぞ!!来年いや、この成績を収めたものとして清く正しく行わなければならない。」
ルーベルトは、この余韻に水を差すかのように入ってきたが、確かにそうだった。
今日から僕たちは、他の学校やセディア魔道学院の他学級の人達に追われる立場となる。
来年もシード枠で、本戦に出場できる。だが、来年の目標は優勝しかない。
常に緊張感を持たないと。
「それだけじゃないぞ。この成績を収めたんだ、君たち専用に方々から特別な依頼が来ることだってある。それだけ期待されているということだ。気を引き締めていけよ。」
ピエール先生も、ルーベルトの意見に同情するかのように言った。
そんな話をしながら、闘技場を出て、王都の坂を下っていくと、盛り上がっているような音楽が聞こえてきた。そして、たくさんのがやがやした声がいつも以上に聞こえてきており、おいしそうなにおいもしてきた。
「とはいえ。今日は余韻に浸ろう。セントアリアの、王都の感謝祭だ。少し遅くなってしまったが、目いっぱい楽しんでくれ!!」
初めて見る感謝祭の光景に僕は感動した。
セントアリアのお祭りだ。
僕たちの学級はやっと自分たちの感謝祭をお祝いすることができた。
気づけば僕は、セントアリアの感謝祭に巻き込まれていた。
出店もいろいろある。少しずつ、見ることにした。
みんな収穫したばかりのブドウでワインを飲んだり、収穫したばかりの野菜で料理を食べたりしている。
収穫感謝祭ということもあって、どこの出店も、収穫したばかりの食べ物を扱っている。
そんな中、『射的ゲーム』と書いてある出店を見つけた。
こんなのがあるんだ、那ノ国のお祭りとかではよく見かけたが、セントアリアにも。
そして、射的ゲームのお店の主人と目が合い。
「おお、君は魔道武術大会の今日の決勝に出ていた『鷲眼の術』の少年!!」
驚いた。まさか、大会を見ていたなんて。
「さあ、早速腕前を見せてくれ!!」
出店の主人は、僕に銃を渡される。
「もちろん攻撃魔法は禁止で頼むよ。」
そういって、僕は射的台に案内された。
ギャラリーが注目している。
「魔道武術大会に出ていた人だ。」
「すごい、決勝に出ていた人だよね!!」
改めて、魔道武術大会がどんな大会だったのか、知った気がする。
緊張するが狙いを定める。
ポン!!
弾は勢いよく飛び出して、いろいろなフルーツのグミが入っていたセットに命中した。
「いやー、さすがに質が違うね。おめでとう、グミケース獲得。」
見ていたギャラリーが拍手する。
「おーい、兄ちゃん今度はこっちの店に挑戦してくれよ。」
大きな声で呼び止められる。その店には、『輪投げ』と書いてある。
輪投げかあ。いけるかな。
だが、ギャラリーの期待に応えないと思い、輪投げに向かう。
輪投げ。輪投げ。とりあえず、いずれかの棒に入ればいいか。
ギャラリーも輪投げの方に付いてきた。
輪投げのチャンスは、3回。
1回目を投げる。入らない。ギャラリーはがっかりしたような顔をするが、1回目ぐらい練習させてほしいのが正直なところ。
だが、1回目の挑戦で感覚を少しつかんだ僕。
2回目は、一番低い棒に入った。得点は1点と書かれている。
3回目は、大きくねらって、一番高い棒に輪が入った。得点は4点。
「ほい、5点の景品はこちらだ。」
そういって、輪投げの出店の主人はビスケットの箱を渡してくれた。
見ていたギャラリーと出店の主人に頭を下げて僕はその場を離れた。
次に、王都の広場に出ていたこともあって、冒険者ギルドマスターのベンジャミンさんに挨拶しに行った。
「お前は、すごいな。いや、お前たちの学級のメンバーも気に入ったぜ!!侯爵家の人間がお前を連れてきたのがよーくわかった。準優勝を記念して、ギルドからいいプレゼントがあるから、また後日寄ってくれよな。今日は、というか感謝祭期間中はあれだ。みんな飲んで叫んで酔っぱらってるから、細けえ話は、また今度な。」
僕の頭をポンポンと撫でて、ベンジャミンさんは去っていった。そして、ギルド内部の感謝祭のために設けた席に座っている、酔っぱらった人たちの対応に追われているようだった。
そして、最後に、セントアリア王国に来てからすっかりハマってしまった、タピオカの店に行くことにした。
『ジュース屋、タピオカトッピング無料』と書かれている看板。そして、感謝祭期間中はその店も、外に出店を出しているようだった。
パラソルが出ており、パラソルの下に、販売台が置かれている。
店員が僕に気付いた。そして。
「あれ。今日の決勝に出ていた。」
「あっ・・・・・はい。」
「来ていただけるなんてありがたいです。今日はサービスでジュースも無料です。それにいつも来ていただいてますよね。今後もごひいきに。」
そういって、僕はマンゴーのジュースを注文し、タピオカも増量してくれ、いつも頼んでいるサイズより一回り大きいサイズに、ジュースを入れてくれた。
「ありがとうございます。」
僕は感謝してもしきれないような笑顔で、それを受け取った。
ジュースを口にする。
大好物だ。心に染みる。
「それ、お好きなんですね、ご主人様。」
「ジュースいいな。」
一緒に来ていたシロンとユキナが楽しそうに見つめている。
「あの、人間の姿に変身していて、わからなかったのですが、確か、ご一緒に出場されていた、ホワイトイーグルの方々ですよね。お二方も本日は無料でジュース、サービスします。」
「わーい。やったー。」
「あ、ありがとうございます。」
シロンとユキナにも、同じような感じで、ジュースを大きなサイズのカップに入れて店員は2人にジュースを渡した。
3人でジュースを飲む。
「はあ。」
「ふー。」
二人は同時にため息をつく。
「どうした、何かあった。コレ、まずかったりする?」
僕は聞いてみる。
「何でもない!!」
「大丈夫です、気にしないでください。」
シロンとユキナはそれぞれ答える。
―どうせだったら、ご主人様のジュースを一緒に飲みたかったのに!!―
これがシロンとユキナの心の声だ。翔太朗にはこの声は届かないようだ。
ジュースを飲み終えた僕たちは、店員に空いた容器を手渡し、回収してもらい、モナリオ家の屋敷に戻ることにした。
すっかり夕暮れ時だ。暗くならないうちに戻ろう。
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