#84.セントアリアの大空は・・・・・
「妹のエレノア。お姉ちゃんなんかに負けないんだから。お前に勝ってお姉ちゃんを越えるんだ!!」
双子のエルフ、妹のエレノアが僕に宣戦布告をしてきた。
「決勝戦、翔太朗選手対エレノア選手。エレノア選手が勝てば、ボーラン士官学校が優勝です。」
司会の言葉とともに、試合開始がなされる。
案の定、エレノアも『獣王眼の術』が使えた。そして、またあの赤い虎を召喚出来た。
だが、赤い虎の容姿が微妙に違うことから、おそらく赤い虎の正式な魔物名、『レッドタイガー』を双子それぞれ違う個体と従魔契約をしているのだろう。
「変わり身の術か何だか知らないけれど、要は弓矢を一杯打って、それが発動できなければいいんだし。」
エレノアは、矢を無駄にしているかのように、たくさんの矢をこちらに向かって放つ。
僕は、『肉体強化~速さ~』の魔法で応戦する。
もう一回やらなければいけないか。だが、一度双子の姉との戦闘を見ている。一筋縄ではいかないか。
それならば、堂々と見せてしまおう。
もう一つの魔法陣はすでに思い浮かんでいる。
僕は杖を取り出し、エレノアの前で、魔法陣を描いた。
魔法版、『分身の術』だ。
僕の分身が、二人、三人と現れ、合計五人となる。
五人の分身で、一気に攻める。
「なるほど、分身ですか。って、どれが本物かわかんないじゃないの!!」
エレノアは少し混乱している。
どうやら魔法だとこういう戦い方は慣れていないようだ。
「すごいです、ご主人様。」
ユキナが言った。
「まあ、もともとこういう術を特訓させられたからね。こういう戦い方もあるよね。」
確かに魔法だと、こういった戦い方ではなく、結界を張ったり、炎とかではじいたりする方を優先するような雰囲気だと、このセントアリアに来て学んだ。
自分の身の守り方の根本的な基礎は同じでも、やり方が少し違うようだ。
「ユキナ、少し手を貸してくれる。」
「はい、ご主人様。」
頭のいいユキナならなんとか行けるかもしれないと思い、ユキナに僕の魔法を施す。
「シロン、そのまま攻撃を続けてて。」
僕はユキナと連携している間、シロンに攻撃の指示を出す。
「ふふふ、その鷲に術を施している時点で、あれが本物だとわかりましたよ。」
エレノアは、『獣王眼の術』でこちらにいることがお見通しのようだ。
僕たちに向かってエレノアは矢を放つ、分身の攻撃がエレノアに上手く入っていないようだ。
僕はさらに魔力を込め、分身を増やしていく。
「なんと、さらに分身を増やせるのですね。まったく、よりわかんなくなったじゃないの!!」
地団太を踏みながら、エレノアは矢を放っていく。
「こうなったら、こうなったら、たくさん矢を放ち、本物を見つけるまでですよ。」
エレノアは激昂しながら、力いっぱい弓矢を引き続ける。
僕の分身に命中しては分身が消えていき、命中しては消えていきの繰り返し。
「最後、一つ。つまりそれが本物だね!!ついでに二頭の鷲さんも倒しちゃおう!!」
弓矢は僕に命中した。そしてユキナにも命中。ユキナはシロンを庇うかのように命中した。
「ユキナ、ユキナ!!」
シロンは泣き叫ぶが。そんなのは杞憂に終わる。
ボン!!音を立てて、矢が命中している僕は消えた。そしてユキナも、気の丸太に変わっていた。
「分身、変わり身・・・・・。そんな、こんな短時間でその鷲に変わり身が使えたというの。さっきのわずかな時間で、あの鷲に教えたというの。」
エレノアは騒いでいる。
『鷲眼の術』を使いはるか上空から、僕とユキナはエレノアめがけて、下降した。
さっきと同じ先方にはなったが、ユキナに乗ることができていたため、より上空からの攻撃となる。
だからその分威力が増した。
『トルネードカッター』を一気に叩き込む。
エレノアに命中して、エレノアを吹き飛ばしていた。
どうやら、『獣王眼の術』はこのような動きを見極めるのは苦手なようだ。
僕たちは地面に着地する。
「ユキナ、ナイス。」
僕はユキナにウィンクを送る。
「そんな、ご主人様が手伝ってくれたからです。」
僕はユキナに術を施した時、速攻でユキナに変わり身の術の魔法陣を教えてフォローした。
「これで、ご主人様をもっともっと、助けられますね。」
ユキナは笑顔だった。
「ちょっとユキナ、何抜け駆けしているのよ。ご主人様、あたしにも教えてくださーい。」
シロンは元気よく、かわいい声でこちらに微笑みかけている。
「あとでシロンにも教えてあげるよ。でもまずは。」
「「はい!!」」
エレノアを一気に倒してしまうのが先だ。
エレノアがよろけて立っている時間があった分。僕たちは距離を詰めることができた。
僕たちの後ろをそうはさせじと、赤い虎が猛追してくる。
一気にエレノアの懐に飛び込む。
そして、3人で、風魔法。ウィンドカッターを叩き込んだ。
赤い虎を倒さなくても、エレノアさえ倒せば、こっちの勝ちだ。
エレノアは、その場に倒れこみ、負けを認めたようだった。
「す、素晴らしい。『鷲眼の術』VS『獣王眼の術』。今回も今回も、『鷲眼の術』が勝ちました。」
僕と、そして、シロンとユキナは勝利したは良いがさすがに息が荒くなっていた。
この後に、あのサファイアが控えている。でも、決してあきらめない。
エレノアは立ち上がり。
「ふん、どうせ今回勝てたのはまぐれよ。今度会ったら、あたしとお姉ちゃんでギタンギタンにしてやるんだからね。」
僕たちに、悔しい表情を見せながら、フィールドを降りていった。
両チームとも、最後の相手に持ち込んだ。
ボーラン士官学校、最後の相手はここまで無双を続ける。ボーラン士官学校3年第2学級の級長、つまり、ここまで相手として戦ってきた、チームのリーダー、サファイアだ。
サファイアが出てくる。魔力の高さがうかがえる。
「サファイアです。ここまで必死で戦い抜いてきた、翔太朗さんとそのチームの皆様に敬意を表します。でも、勝負は勝負ですよ。」
サファイアが、僕に向かって言ってきた。
すでに、息が荒くなっているが、ここで踏ん張らないとすべてが無駄になってしまう。そんな風に感じた。
「ついに、ついに、決勝戦の最終ラウンド、翔太朗選手VSサファイア選手、この試合に勝った方が今年の、セントアリア王国学校対抗魔道武術大会の優勝チームとなります。」
試合が始まった。
「一気に行くよ、シロン、ユキナ。」
再び、シロンとユキナを呼び出した。一気に攻めて、サファイアの体力を削っていくしかないと思った。
『鷲眼の術』を最初から使い、一気に速い動きで攻めていく。
だが、サファイアの魔法はすさまじかった。
一気に津波のような波動がこっちに押し寄せ、彼女に近づくことも難しかった。
こうなったら、遠くからでも・・・・・。
「『トルネードカッター』!!」僕は遠くから攻撃できる風魔法を選択して、攻撃したが、サファイアはそれを上回るような、風魔法を使ってきた。
これは悔しい。その風魔法で、僕の風魔法の威力を奪っている。だから、サファイアに届く僕の魔法はそよ風と同じようだ。
バトルフィールドの中心は嵐が来たかのような、突風が吹き荒れ、観客をあっと言わせた。
だが、そんな余裕もなく、次の攻撃に僕は入った。
こうなったら上から・・・・・。
僕は、鷲に変身して、シロンとユキナとともに、上から攻めていくことにした。
羽ばたいてサファイアの方へと進む。しかし。
突如、頭上から三つの雷が落ちてきた。
「甘いですね。翔太朗さん。しかし、動きのセンスは大したものです。あまりにも素早い動きなので、さすがの私も、光の速さと同じ、この魔法をしかも、方向を予測して、打つことしかできませんでした。」
サファイアが感心して、僕に向かって言った。
三つの雷は、そう。それぞれ、僕、シロン、ユキナの頭上にことごとくストレートに命中したのだ。
サファイアの雷魔法だ。これは強力すぎる。
僕は、その場に落ちた。シロン、そして、ユキナもだ。
まだまだ。まだまだ。これから・・・・・・。
こうもあっさり、倒されてたまるか。絶対に、絶対にあきらめない。
「ご、ご主人様、あ、あ・・・・・、あんな奴・・・・・・、ぶっ飛ばして・・・・・・、絶対・・・・・、優勝・・・・。」
「そうです・・・・・。あ、あ、あたしも、ご主人様と一緒に・・・・・・。」
シロンとユキナは、落ちて、倒れこんだ瞬間、人間の女の子の姿に変えていた。
こっちの姿の方が、倒れた後、起きやすいのだという。
僕と同じような感じで、二本足で、頑張って立とうとしている。
「うれしいです。こんなにあきらめずに戦える、そんな素晴らしい人が、『鷲眼の術』を使えることができて。」
サファイアはあきらめようとしない、僕たちを見て、敬意を示しているようだ。
「でも、ごめんなさい。これは勝負。勝負は勝負。勝たせてもらいます。」
サファイアは魔法を発動した。
炎の魔法だ。火の玉が三つ。
起き上がろうとしている、僕とシロンとユキナに、三つの火の玉が命中した。かなり威力の高い火の玉だった。
僕たちはかわし切れなかった。
僕、シロン、ユキナの三人は、そのまま、大の字になって、フィールドに倒れた。豪快に倒れた。そして、そのまま僕たちは動くことができなかった。
闘技場からはセントアリアの空が見えた。秋の感謝祭、秋の大空。
大の字になって倒れている僕たちの目にしっかりとそれは映った。
セントアリアの大空は・・・・・・・・。今日も青かった。
今日も、青くて広かった。
「空、広いね。シロン、ユキナ。」
「私も・・・・・。見えるよ。すっごく。」
「はい・・・・・。広いですね。」
シロンとユキナは、涙ぐんでいた。
「悔しいなぁ。負けちゃったよ。」
「すっごぉぉく、悔しい。」
「はい・・・・・。私も、ご主人様を勝たせてあげたかった。」
「また、来年に向けて、頑張ろうね。頑張って、広い空を飛ぼうね。一緒に。」
「「はい。」」
「ただいまの試合、サファイア選手の勝利、予選からの圧倒的な強さで、優勝はボーラン士官学校3年第2学級に決まりました。セディア魔道学院1年5組が準優勝。しかし、彼らは、数か月前に入学してきた1年生。大健闘でした。今後の活躍に期待しましょう!!」
遠くで、声が聞こえていた。
「よかったぞー!!」
「おめでとー!!」
ワーッ!!、ワーッ!!、と遠くで、歓声が聞こえてきている。
僕たちは知らなかった。あふれるばかりの大きな拍手に包まれていることを。
僕たちは知らなかった。会場が大きな笑顔に包まれていることを。
僕たちは知らなかった。学級の仲間が悔しさもあるが、嬉しさの方が大きい涙を流していることも。
僕たちは、大空を大の字になって見つめ続けていた。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。
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