#82.双子のエルフ
魔道武術大会決勝戦、ルールは勝ち抜き戦。
前半、僕たちセディア魔道学院の1年5組はジョンの好プレーにより、ルカ、ルーベルト、ミランダと相手をしたが、ジョンの方が一枚も二枚も上手で、3人は倒されてしまい。相手に勝ち抜きを許してしまったが、アンソニーが反撃してジョンに勝利し、その後、マリアが二人勝ち抜いてくれた。
現在もマリアの素晴らしいバトルが繰り広げられている。
マリア3人目、ボーラン士官学校5人目の相手。残っているのは級長のサファイアと、双子のエルフの女の子だ。
闘技場のバトルフィールドに現れたのは、双子のエルフのうちのどちらかだった。
手には、エルフらしく弓矢を持っている。
「双子のエルフの長女。エミリアです。ここで、マリアさんに勝ちます。」
物腰の柔らかそうな言い方だが、やる気はありそうな雰囲気だ。
マリアは弓矢が武器ということは、結界魔法で弓矢攻撃を封じつつ、一気に至近距離で攻めていけばいいな。と、そう思った。
―前の戦いの魔神像を倒すよりはるかに楽できそう。そのうえで、魔力も消費を押さえつつ、双子のエルフを倒そう。サファイア戦で、魔力を使い切って、万全な状態の翔太朗君にバトンタッチできれば最高だ。―
マリアは、おそらく自分と同じかそれよりも強大な魔力を持つ、サファイア戦まで持ちこたえたいと思っていた。
ここでの勝利のカギは、魔力をいかに抑えて勝利するかだ。
魔神像を倒すよりはるかに楽だと思ったのだろう。
もちろん僕もそう思ったし、ここにいるすべての人がそう思っているに違いない。
―あの魔神像を倒したマリアならーと。
試合が開始される。
案の定、エミリアは弓を引いた。そして、矢をマリアに向かって射る。
「思った通りね。行くよ。『結界魔法』」
マリアは結界魔法で矢を防ぐ。
よし、マリアに軍配が上がった。矢は、結界にはじかれ、その場で落ちることになるだろう。
こちらが想定していた通り、矢は結界に当たり、落ちた。
「そう。じゃあ、これはどうでしょう。」
エミリアはそう言って、矢をもう一本放つ。
次も防ぐ。同じ手だ。マリアには通用しない。
同じ手は通用しない。しかも一度結界にはじかれているのだ。同じような威力で放った弓矢だ。
勝ったな。勝ったよ。
僕たちは、いや、1年5組全員が、心の中でガッツポーズしていた。
「「「「!!!」」」」
ところが、矢は、マリアの肩に命中していた。
命中した左肩の動きが鈍くなるマリア。
「な、なんで、結界は万全だったはずじゃ。」
僕は、素直に驚いた。
「マリアが結界魔法をミスっただと、そんなバカな。」
ルーベルトも息をのんでいた。
僕たちは、双子のエルフの長女、エミリアを見る。
「一体どうやって、どうやってマリアの結界を破ったと・・・・・・・。」
エミリアの目を見て僕は、驚いた。
「そ、そんな、まさか、僕と同じ。『鷲眼の術』が使える人物がいるなんて。」
エミリアの目の色が変わっている。
これは、慣用句とかではない。マジで目の色が変わっているのだ。僕と同じ、『鷲眼の術』と同じ目に。
「翔太朗殿、あれは『鷲眼の術』ではない。」
カミラさんがつかさずフォローに入る。
「ええ、翔太朗様、『鷲眼の術』なんかではありませんわ。」
ミランダも、つかさずフォローを入れる。そして。
「『伝説の風魔導士』のお話はしましたよね。『鷲眼の術』が使えた。」
ミランダは僕に問いかけてくる。もちろん知っている。セントアリアに古くから伝わる古い物語だ。
「その、『伝説の風魔導士』の他もいくつかこの国には、『伝説の風魔導士』とほぼ同じく、千年以上前から伝わる物語があります。その一つが『密林の賢者』のお話。その『密林の賢者』はエルフの男性。そして、森のエルフ族にひっそりと伝わる術。『密林の賢者』が会得できた、伝説の魔法。」
僕は、息をのんだ。心臓がバクバクする。
「『鷲眼の術』と並んで、かなりの効果を持つその術・・・・・・・・・・・・。」
ミランダがさらに続けた。
「「「『獣王眼の術』」」」
僕以外のチームメンバーが声をそろえて言った。
そんな、『伝説の風魔導士』の他にもおとぎ話があったなんて。
「これは恐れ入りました。双子のエルフは『獣王眼の術』の使い手だったとは・・・・・・・。」
司会の実況がさらにヒートアップしている。
『獣王眼の術』の効果はおそらく、結界を突き破れることがあるのだろう。
マリアは矢が命中して、鈍くなった腕を上げ、閃光魔法を放つ。
だが、上手く狙いが定まらない。
「痛い、どうしよう。このままだと、負けちゃう。」
マリアは腕の痛みをこらえて、魔法を発動する。
少しばかり、回復の結界の魔法も使えたので、そこで待機して、腕の痛みを取る。
しかし、『獣王眼の術』が結界を破れる、つまり、エミリアがこの結界に通用しないということを考えると別の方法をとったほうがいい。
「お互いに至近距離は苦手だよね。そしたら、少しでも至近距離の攻撃を持っている私の方が大胆に近づかないとだよね。」
マリアは、エミリアが至近距離が苦手と見定めたようで、エミリアに近づこうとしたその時。
「行くよ。『召喚魔法』」
エミリアの合図とともに、赤い虎が現れた。
赤い虎はかなりの大きさ。
僕も驚いている。すごい、虎と契約ができるとは。
「ああ、『密林の賢者』も虎と契約ができていた。しかも、あいつはその名の通り、『レッドタイガー』。森の奥深くに住まう、レアな魔物だな。」
赤い虎は、マリアに近づいてくる。
「結界魔法!!」
マリアはすぐに結界魔法で応戦するが。
この赤い虎も、『獣王眼の術』の効果が発動出来た。
マリアの結界に入り込み。そして、爪でひっかいて。
マリアが戦闘不能となってしまった。
マリアが戦闘不能。『密林の賢者』は恐ろしい。
「ごめんね、翔太朗君。翔太朗君を楽させてあげたかったんだけど、3人も残っちゃって。」
マリアは引き上げてきた。
「ああ、よく頑張ったよ。まさか、『獣王眼の術』が出てきたとはな。」
「マリアもドラゴンに育てられたから知らないけれど、あれも有名な童話に出てくるのです。」
カミラさん、ミランダがフォローする。
「大丈夫だよ。マリア。みんなも。僕、みんなの分を背負って、行ってくる。どこまでできるかわからないけど・・・・・。」
僕は、ここまで頑張ってくれたみんなに敬意を表したい。
そして、相手チームを見つめた。
『獣王眼の術』どこまで対応できるかわからないけど、頑張ってみよう。
僕は、深呼吸した。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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