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#78.決勝開幕


 お昼休憩を挟んで、魔道武術大会最終日の午後。決勝戦が行われる。

 僕たちは、校内予選から始まり、セディア魔道学院の代表として、予選、準々決勝、準決勝と勝ち進み、ついに、決勝戦にコマを進めることができたのだった。

 

 決勝。相手は、準決勝に戦った、ラピスたちの班と同じボーラン士官学校の3年第2学級だ。


 闘技場のスタンドは超満員。そして、ライブ中継もされているのだろうか。闘技場の外まで熱気が広がっている。


 「そりゃ、感謝祭のメインイベントだからね。僕たちも去年までは一緒に盛り上がっていたよ。」

 アンソニーがいつにもまして、テンションが上がっている。

 「まさか、今年の感謝祭、ここに立っているとは思わなかったよ。」

 ルーベルトが続けて言う。

 「僕も同じだね。翔太朗君やみんなのおかげだね。」

 ルカも言った。

 「翔太朗様、本当にありがとうございました。決勝戦、頑張りましょう。」

 ミランダも元気がいい。笑顔の中に楽しみがあふれている。

 「私もとても楽しみです。こんな満員のお客さん、とても久しぶり。頑張りましょうね。皆さん。」

 リリアンは、彼らよりは笑顔がやや少ない表情だったが、楽しみたいという気持ちに変わりはなさそうだ。


 少しうらやましくなる。おそらく、生まれも育ちもセントアリア王国の彼らは、幼いころからこの魔道武術大会を感謝祭が来るたびに見てきたのだろう。

 

 「そりゃそうだよ。翔太朗殿。生まれも育ちもセントアリア国の人にとって、この魔道武術大会は誰もが憧れる夢舞台。その決勝に立っているんだ。胸をはって試合に臨めよ。」

 カミラさんがアドバイスする。


 別の大陸出身の僕、そもそも山奥でドラゴンに育てられたので、このような行事には疎いマリアは、初めてこの魔道武術大会が大きなイベントということを認識した。


 観客の盛り上がりと、同じ学級の仲間たちの盛り上がりを見ていると、事の重大さに改めて気づく。

 そして、自分も楽しもうという気になる。


 「頑張ろうね、翔太朗君。」

 どうやらマリアも同じ気持ちらしい。


 

 「レディース、エンド、ジェントルメーン、お待たせいたしました。魔道武術大会最終日、そして、最終種目。決勝戦の始まりです。それでは選手入場!!」


 司会の声で、僕たちはバトルフィールドに立った。


 「ご紹介いたします。1年生ながらここまでチームワークで乗り越えたゴールデンルーキーチーム。『セディア魔道学院1年第5班』」


 ワーッと大きな拍手に包まれる。


 「対するは、メンバー全員が冒険者ランクB以上。安定のチーム力で、余裕で勝ち進んできた。『ボーラン士官学校3年第2学級』」


 こちらもワーッと大きな拍手に包まれる。



 「決勝戦のルールは、簡単、チーム全員の勝ち抜き戦。両チームとも7人いますので、7人全員参加による、1対1の勝ち抜き戦です。先に7人全員負けてしまった方が負けです。試合時間は15分。15分経過すると判定で勝敗が決定します。それでは最初に順番を決定してください。順番の変更はできませんのでご注意を。」


 全員の総力戦だ。果たしてどこまで行けるか。

 勝ち抜き戦ということで、順番を決めなくてはならない。

 相手は全員、冒険者ランクB以上、しかも級長は、あの強大な魔力を持ったサファイアだ。

 

 「最初は私が出ます。きっと、攻撃できる人の方が後になったほうがいいと思うから。」

 そういったのはリリアンだ。確かに錬金術師、回復魔法が得意なリリアンはこの戦闘は不利な感じがする。

 そんな感じで、だんだんと攻撃を確実に加えることができる順番になった。


 リリアン、ルカ、ルーベルト、ミランダ、アンソニー、マリア、最後に僕という順番だ。

 

 「僕が最後で良いの?マリアの方が、結界とか防御とか。」

 と僕は問いかけたが。


 「大丈夫、級長は最後に登場がメインイベントで良いでしょ。」

 「そうよ。きっと翔太朗さまなら、できますよ。」

 マリア、ミランダが声をそろえて言ったので、そうすることにした。


 「みんな、決勝。楽しもう!!」

 アンソニーが元気よく言った。

 「そうだね。みんな。楽しもうか。」

 僕がそれに続いて勢いよく言った。


 

 「さあ、両チームとも、選手の順番が出そろいました。それでは試合を開始したいと思います。準備は良いですか?」

 司会は、僕たちと、そして会場に問いかけているようだ。


 観客からあふれるばかりの歓声。

 ここまで来たからには勝ちたい、勝って、優勝したい。


 「第一ラウンド、リリアン=ウォッカ選手対カルディオ=レスト選手。」

 

 カルディオという人物はかなりの大柄、鎧を着ている。同じ大柄の人物でも、アンソニーは素手の戦いがメインだが、カルディオは斧を持っている。

 しかもあの斧は上等品だ。

 

 どう戦うか。

 

 「よろしくお願いします。」

 「よろしく。リリアンさん。」

 声質からして、大柄だが、かなり品がありそうなしゃべり方、貴族のひとりなのだろうか。


 このように、セントアリア王国も、全員が大人びた貴族であればなあと思う。


 リリアンもこの喋り方に安堵したのだろうか。少し力が抜けてリラックスしているように思える。

 

 試合開始の合図だ。


 大人びた貴族の喋り方はここまでだった。豪快にパワーで攻めてくるのかと思ったら違っていた。

 リリアンの投げる、錬金術で作った爆弾を斧で打ち返している。


 リリアンは次々投げてきているが、体のバランスを変えながら、体をひねりながら、斧がまるでバットのように空を切って、爆弾を打ち返しているか、斧の刃の芯でとらえて、リリアンの爆弾を真っ二つにしている。


 「それだけですか。錬金術師さん。」

 カルディオは、斧を振り回しながら、少し余裕の表情をする。


 「では、私も行きます。」

 そういって、カルディオは斧を振り回すと、一気に地割れのようなものが起きた。斧と一体化した土魔法の一種だ。

 防御する意味で、リリアンは地面に爆弾を投げて、それを回避する。

 

 だが、土魔法だけではない。カルディオは風魔法も操れる。

 斧を振り回すと、空気の塊が刃のように現れ、風魔法で、リリアンにダメージを加えていく。

 

 「スピードだけでなく、パワーもしっかりしているね。防御も独特だし。」

 ルカが冷静にカルディオの動きを分析していく。

 

 確かにあの斧から放たれる、土魔法と風魔法。並大抵のものではない。流石は冒険者ランクB以上のチームだ。

 リリアンはダメージを回復魔法で回復すると、次の一手に出る。

 

 「爆弾がだめなら・・・・・。」

 

 リリアンは次の錬金術で作ったアイテムを投げる。煙幕球だ。

 煙幕を起こして、カルディオの背後に回り込む。


 背後に回り込んだリリアンは、カルディオの能力値を一時的に下げるアイテムを使おうとしたその時だった。ちなみに能力値を下げるこのアイテムも、リリアンお手製の物だ。

 

無情にも、煙幕が払われて、リリアンの位置が丸見えになった。

 「行けませんね、リリアン様。このような術で背後に回り込むことは読んでましたよ。すぐに対処しないと。」

 そういって、一気にカルディオは斧を振り回し、斧から放った、風魔法でリリアンを追い込んだ。

 さっきよりも大きなダメージを受けてしまい、リリアンはその場で倒れた。


 「リリアン選手戦闘不能で、カルディオ選手の勝ち、それでは、リリアン選手はフィールドの外に出ていただきまして、セディア魔道学院のチームの皆さまは、次のメンバーと交代してください。」


 相手に一人勝ち抜かれたか。


 「ごめんなさい、皆さん。」

 リリアンはこっちに引き上げてきた。


 「良く戦ったわ。元気出して。」

 ミランダが出迎える。

 「うん。頑張ったよ。」

 僕も握手を差し出す。

 


 次はルカの番だ。

 ルカはカルディオの動きをよく見ていた。


 「動きをよく見ていたからね、参考になればいいんだけど・・・・・。」

 ルカはバトルフィールドへ向かう。


 「続いての相手はルカ選手、カルディオ選手、2人勝ち抜いて、勢いをつけられるか・・・・・。」

 

 試合開始の合図。

 ルカは、普段は剣を用いて戦うが、この時は最初から槍を持って戦いを挑んだ。

 

 カルディオの斧とルカの槍が激しくぶつかり合う。

 

 「さすがは素晴らしいですよ、騎士の方。」

 カルディオは丁寧にな言葉遣いと、そして、丁寧な斧さばきでルカの攻撃を防いでいく。

 

 だが、武器の扱いはカルディオの方が上のようだ。

 斧を振り回してはルカに隙ができるその時に、風魔法を打ち込む。

 ルカは、その魔法をジャンプしてかわしていく。


 「うん。あれを食らえば僕もピンチだね。」

 斧から放たれる、風魔法。かまいたちにも見えるその魔法をルカは注意していた。


 「一気に行くぞ!!」

 ルカは思い切りいくことにしたようだ。


 ユニコーンを召喚して、一気に追い込む。

 「食らえ、『ライジング=ランス』」

 

 カルディオの足元にそれが命中した。

 もう一回。もう一回。

 ルカはそう思い込み、『ライジング=ランス』を打ち込んでいく。カルディオの足元めがけて、槍を振り回す。


 威力が足りないと思ったら、一度下がり、ユニコーンに乗って、一気に助走をつける。

 その分、カルディオの攻撃をかわしながらユニコーンに乗って、速い動きを見せている。


 ルカは試合の流れを一気に変えた。はじめはカルディオの優勢に見えたが、ルカの相手を観察しながら、相手の懐、相手の足元に飛び込んでいく先方が見事に的中した。


 だが、ここですぐに倒れないのが、冒険者ランクB以上の学級のパワーファイターだ。

 何度も、何度も足元を狙っては、命中したり、カルディオに阻まれたりしている。


 「ハア、ハア」

 ルカの息遣いが聞こえてくる。


 「まずい、ルカが疲れてきている様子です。」

 見守る僕たち。マリアが僕に向かって言う。

 「確かに、このまま時間いっぱいまで耐えてくれ。」

 

 この攻撃を繰り返しているうちに、制限時間いっぱいによる、試合終了のカウントダウンが始まる。


 「5」

 「4」

 「3」

 「2」

 「1」


 「そこまで、判定の結果は僅差でセディア魔道学院のルカ選手の勝ち!!」

 

 僕たちはその場でガッツポーズをした。

 だがしかし、ルカの息遣いが荒くなっている。


 そこまでルカはこのカルディオを倒すことに全力を注いだということだ。


 どんな逆境でもやり抜く。それが騎士道。

 ルカは、この魔道武術大会でもそれをやり抜いたのだった。


今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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