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#77.落ち着いて戦えば・・・・・・・。


 「さあ、ここまで両チーム1勝1敗。続いてのメンバーを決めてください。まずは、セディア魔道学院から。」


 さて、誰にしようか。

 「私で、いいですか。」

 ミランダが手を上げた。


 満場一致で決まった。確かにミランダであれば、いろいろ攻めのバリエーションが組める。誰が来ても大丈夫だ。


 ミランダの相手は、リカルド=アズワードという、男子だった。

 眼鏡をかけ、冷静に相手を分析している素振りの男だった。


 「頭がよさそうな感じだね。」

 僕は素直に感想を言った。

 「うん。この班の戦略家だろう。よく、ラピスとダコタの仲を取り持っている感じだな。」

 ルーベルトが言った。ラピスとダコタは基本的には仲のいい親友同士なのだが、ケンカすることがたまにあるようで、そのケンカの仲介をしているのがリカルドなのだという。

 彼の頭脳をぶち壊す何かきっかけをミランダは作れないか、それが今回のカギだろう。


 「さあ、第3試合始まりました。貴族令嬢ミランダ対、知略家リカルド選手の始まりです。」


 試合開始とともにリカルドは頷いている。どうやらミランダから仕掛けていいようだ。

 だがここでミランダの得意な魔法をリカルドに披露してしまうと、痛い目を見る。


 かといって、自分をセーブするような攻め方だと、そちらもダメージを受けてしまう。

 

 まずは、ミランダ得意の召喚魔法、ブラッドウルフ5体を召喚する。その中にはもちろんミランダの相棒で、このブラッドウルフの群れを率いる、クロもいる。


 ミランダの号令の下、ブラッドウルフたちは、素早く、リカルドを囲む。

 よし、ミランダが一歩リードだ。


 ブラッドウルフたちは、あらゆる方向から、リカルドを攻めていく。

 リカルドはそれをかわしていく。

 

 「なるほど、召喚魔法ですか。素晴らしいです。そして、息もピッタリですね。」

 リカルドはミランダを称賛する。


 「ありがとうございます。さあ、もっと勢いよく行きますよ。クロ、みんな。」

 ミランダの号令の下、一気に攻めていく。


 「では、私も行きましょう。『ファイアーシールド』」

 リカルドの周りに炎が現れ、それがこの魔法の名前のように、炎が盾のように、リカルドの全方向に包囲していた。そして、多方向から攻めてきた、ブラッドウルフを炎の盾は弾く。

 クロたちは、その炎の魔法に吹き飛ばされてしまう。


 「多方向からの攻めに対してはこちらの防御魔法ですね。」

 リカルドが落ち着いて、言った。


 なるほど、ミランダの動きを分析していたというわけだ。これで、ブラッドウルフの集団攻撃は封じられたか。


 「冷静にミランダのデータを集めていますね。」

 マリアが僕に向かって言う。

 「そうだね。ミラ様はどう攻めるかだな。攻撃の一つが封じられた。時間ギリギリまで、氷の弓矢はとっておいた方がいいかもね。」

 僕は冷静に言った。


 おそらくこのリカルドという男、一発勝負で切り抜けないとまずいことになる。同じ攻撃で二回目は通用しないようだ。いや、通用しないどころか反撃を受けてしまうと言った方がいいだろう。戦い方はアンソニーのような防御魔法そっくりだ。


 僕の思った通り、ミランダは氷の武器の魔法、氷で弓矢を作る魔法をすべて使わないでいるようだった。

 水の攻めの魔法を使いつつ、カミラさんに教えてもらった、炎の基礎的な魔法で応戦している。


 「両者大接戦。残り1分を切りました。」


 司会のアナウンスが聞こえる。


 ―ここが、勝負。一発に望みをかけるしかない。まだ、リカルドに見せていない魔法―

 ミランダは魔法陣を用意する。その魔法陣がリカルドに見えないように、ブラッドウルフたちに指示を出して、攻撃をする。


 先ほどと同じように、多方向からブラッドウルフたちが、リカルドに向かって攻めてきた。

 そして、炎の壁でリカルドはその攻撃を防ぐ。


 「何度やっても同じこと、ブラッドウルフたちよ、我が防御魔法の餌食になりなさい。」

 リカルドは、炎に突っ込んでくるブラッドウルフたちを見て、これは勝ったと思ったが、ブラッドウフフたちは直前で攻撃をやめた。


 「どうした、それならばこちらから攻撃するまで。」

 炎の壁を解いたリカルドが見たものは、氷の弓矢を構えて放ったミランダだった。

 上手くリカルドの死角にミランダは、入ることができた。


 「何!!」


 「『氷の弓矢』!!」

 ミランダが氷の弓矢を放つ、そして炎に対抗すべく、その氷と一緒に水も矢のようにリカルドを襲った。当然、リカルドに命中。


 「ここで試合終了。判定に持ち込みます。」

 一瞬の沈黙。


 「判定の結果、ミランダ嬢の勝利。やはり最後のギリギリに放った、一番得意な魔法で命中させたのが勝因でしょう。これで、セディア魔道学院が決勝進出に王手です。」

 

やった!!やった!!

 僕たちは勝ったんだ。

 ミランダが笑顔でこちらに帰ってきた。


 「素晴らしいです。ミラ様。」

 僕は、素直に感想を言った。

 「相手がああだから、奥の手はとっておいたのよ。それが勝因ね。」


 「ああ、まさしくそうだ。ミラ様。翔太朗殿がいると落ち着いて戦えるな。」

 カミラさんもそういった。







 次の勝負に勝てば、決勝に進出できる。

 「次は僕の番だね。」

 ウィンクしながらルカが言った。


 相手に出てきたのは気の弱そうな背の低い少年だ。茶髪で少し長い髪。

 ルカは、フィールドの中央に向かう。


 その少年と目が合う。

 「クルトです。よろしくお願いします。」

 その少年はあまりにも緊張しているようだ。


 「ルカ選手が勝てばセディア魔道学院が、決勝進出となります重要な一戦です。」

 試合開始の合図が入る。


 クルトは、『肉体強化~速さ~』の魔法を唱えて、ルカの剣攻撃を見事にかわしてく。

 ルカが剣を振り上げたところで、風魔法をクルトは唱えていく。


 ―なるほど。翔太朗君と戦い方が似ているね。―

 

 僕、翔太朗との戦闘で身についていたのだろうか。クルトの動きをルカは読んでいく。

 

 クルトの速さに対抗すべく、狙ったところに、力強い剣技をルカは入れていく。

 ルカの剣が命中するたびに、クルトの動きは乱れている。


 「どうして、どうして僕は・・・・・・。こんなにも見地面だろう・・・・・。」

 クルトの感情がどうやら言葉に出てきたようだ。



 「どうしたのだ。少年。君の速さは素晴らしいと思ったぞ。自信をもってかかってくるのだ。」

 ルカは、クルトの感情に同情したのだろうか。



 「僕は、僕はいつだって、ラピスやダコタの下なんだ。ラピスもダコタもあんなに強くて。風魔法が好きで自信があったのに、今日会った、お前たちの級長は・・・・・・・。」

 クルトは僕の方を見た。


 なるほど、クルトはあの個性的なメンバーの中で目立たない存在だったのだろう。あの強い魔法を唱えるラピスがいて、個性的な貴族だかいろいろな魔法を人並み以上にこなせるダコタがいて。そして、参謀のリカルドがいて。



 「クルト、そう思うなら自分を超えてみろ。俺たちが応援する。」

 相手側からリカルドの声。

 「そうよ。クルト。あなたは大切なメンバーの一員よ。」

 ラピスの声。


 「だってさ。さあ。面白くなってきたね。深呼吸して挑んできなよ。僕も全力で戦うから。」

 ルカが最後のまとめの言葉を言う。


 「ラピス、みんな・・・・・・。そうだ、僕だってできるんだ。落ちついて、落ち着いて戦えば僕だって・・・・・・。」

 

 そう、落ち着いて戦えば・・・・・・・。


 クルトはもう一度集中して、自分が持てるすべての力をルカにぶつけていた。

 クルトの風魔法。僕の風魔法とやはり似ていたが、そこにはクルトらしい、知恵もあった。


 風魔法の基本、『ウィンドカッター』はルカの動きに合わせ、いろいろな角度から攻撃してくる。そして、魔法の研究が好きなのだろうか、水の魔法を使いながら、ルカを攻めていく。

 水の波動のような攻撃だ。

 

 「僕の最高の傑作魔法です。『サージ』」

 サージという水の波動のような攻撃は、ルカを確実にとらえていく。波動に意思があるようだ。


 「なかなかやるね。」

 ルカは、ユニコーンを召喚し、槍に持ち替え、さらに素早くフィールドを移動する。


 「水に相性のいいのは雷だよね。」

 ルカの槍から、雷があふれだす。

 「行くよ、『ライジングランス』」

 

 クルトが連発している、サージ、水の波動に向かって槍を振り回していく。

 槍から放つ、雷が水を砕いて、あっという間にクルトのもとへたどり着く。


 そのまま、雷の槍をクルトに、一発、二発。とルカは叩き込む。


 「すごい」

「いいぞ。ルカ。」


 僕たちは、ルカを見ている。すごい。こういう雷属性の魔法をルカは使えていたなんて。

 

 「へへ、ここから一気に行くよ。僕は騎士だ。騎士は最後まで気を抜かない。相手に敬意を示しながら、最後まで。最後まで。」


 ルカは一気にユニコーンを加速させ。クルトに攻撃する余裕を与えず、一気に叩き込んだところで試合終了の時間になった。


 「判定の結果、この勝負はルカ選手の勝利。セディア魔道学院が決勝進出。」

 司会のアナウンスが流れた。


 「やった、やったよ。」

 「僕たちは決勝に行けたんだ。」

 僕は、ミランダ達とともに喜びを分かち合う。


 クルトは涙を浮かべていた。

 僕のせいで負けてしまった。おそらく、最初に感情が乱れて集中できなかったこと、後半、ルカに追い込まれてしまったことが原因だろう。

 

 「ナイスファイト。また頑張ろうよ。」

 ルカはクルトに握手を求めた。


 「ありがとうございました。」

 クルトは涙を浮かべていたが、きちんと立って挨拶をした。



 「よかったぞ、クルト。戻っておいで。」

 リカルドに促される。

 「クルト、大丈夫よ。よく頑張ったね。」

 ラピスはクルトを出迎える。


 ダコタだけは無言だったが、

 「帰るわよ、クルト。」

 そういって、迎え入れた。

  

 いつもであればダコタにこっぴどく叱られる場面なのだが、ダコタは今日同じように負けている。

 人のことを責められるのと、ラピスに諭されるのが目に見えていたのだろう。


 落ち着いて戦えば、僕も戦える。ラピスと、ダコタみたいに。クルトは、試合には負けたがそう思った瞬間だった。


 ルカが僕たちのもとへと戻ってきた。

 僕たちはルカを抱きしめ、決勝に進出できたことを素直に喜んだ。


 再び、試合終了の挨拶のためフィールドにメンバー全員が集合した。

  

 「皆さん、ありがとうございました。最後、クルトは負けたけれど、清々しい表情をしているのは本当に久しぶりです。もともと目立たない子だったので、最後の試合、クルトらしさをぶつけてほしいと思って、クルトを持ってきたのですが、皆さんのチームワークのおかげでクルトは頑張れたような気がします。」

 ラピスが口を開いた。

 そしてクルトの方をラピスは見た。そうよね、クルト。そんな表情でクルトを見る。


 クルトは涙をこらえながら、くすん、とうなずく。

  

 「ふん。私はあんたたちのこと、ちょっと認めてもいいわよ。」

 相変わらず、ダコタの表情には不満そうな感じもあったが、少し和らいだ感じがした。



 「それでは、準決勝まで進んだ、両チームに敬意を表して、盛大な拍手を。」

 司会の言葉で、歓声がワーッとなる。

 


 こうして、僕たちの準決勝は終わった。

  

 「すごいぞ、お前たち。ラピスの班に勝ったんだ。」

 ピエール先生が僕たちに向かって言った。


 「はは、だが僕のせいで、申し訳ない。ラピスには負けてしまったが。」

 ルーベルトはホッとしたかのような、笑いながら言った。


 おそらく、ラピスたちの班は、ラピスやダコタ、リカルドの3人で成り立っているのだろう。ゆえにクルトみたいに目立たなくて、ずっと悔しい思いをしている人もいる。

  確かに、ラピスを見ているとものすごく強い。だが、今後いいチームになるといいなと願うばかりだ。そして、卒業後も連絡を取り合える仲だといいなとつくづく思う。

  それはもちろん、この班にも言えることだ。


  決勝の相手は、案の定、サファイアのチームが準決勝を勝ち上がり、決勝にコマを進めた。

  

「決勝は、セディア魔道学院対ボーラン士官学校となりました。」


サファイアのチームは冒険者ランクが全員Bランク以上のチーム。並大抵ではない。

しかし、ここまで来たからには楽しまないといけない。


決勝。果たしてどこまで通じるのか。



僕たちはお互いの目を見つめ合いながら、うん。とうなずいた。




今回も読んでいただきありがとうございました。

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