#76.苦手な貴族たち
僕はこういう貴族が苦手だった。自分の立場を鼻にかけるようないかにも、自分のアドバンテージを鼻にかけるような。そう、ダコタのような。
ルーベルトの話でお見合いに至った経緯を聞いた。おそらく、きっと、自分の家がルーベルトの家より上手くいっていることをアドバンテージにして、ルーベルトを見下しているようだった。
「あら、『鷲眼の術』の級長様がお相手なの。これはこれは、素晴らしい試合になりそうね。いいわ、教えてあげる。ルーベルトの見合いは、あなたが関与しただけで破談にならないのよ。むしろ、ルーベルトと同じように、この試合が終わるころ、あなたは私に負けているはずよ。」
そう来たか。
「なるほど、僕は、絶対に負けません。チームのために。仲間や、そして何よりもルーベルトのために。」
「第二回戦は、『鷲眼の術』を持つ級長、翔太朗=吉田選手対、ダコタ=スプライト選手の対戦。」
試合開始の合図。
一気に攻めようか、それとも。
と思ったが、このダコタという貴族は、有言実行ができるようだ。
といっても、ほとんどの貴族が有言実行ができる。だが、悪い意味での有言実行がほとんどだが。
そんなことは気にしていられない。とにかく、このダコタという女は、攻めの姿勢がすごい。
見た目とは裏腹な、派手な肉弾戦。
まず、肉体強化魔法を施し、体をばねのようにして、激しく飛び回る。
その体のばねと、風魔法なのだろうか、追い風を吹かせるようにして、バトルフィールドを飛び回っている。
僕と同じような戦い方。だが、僕よりもかなりパワーがある。
ダコタは、バトルフィールドを飛び回りながら、僕に狙いを定めて、カミラさんと同じように、拳に炎をまとい攻撃してくる。カミラさんも同じような魔法を使っているので、攻撃をかわす、食らっても、どのように対処すればいいか、わかってはいたが、ダコタはそれに速さが加わり、勢いがありすぎる。
「おやおや、どうしましたの?私を止めて、ルーベルトとのお見合いを破断するのでしょう。どうしたのですかぁ~。」
ダコタはこちらを見下したような発言を繰り返しながら、僕に攻撃を仕掛けてくる。
いくぞ、『鷲眼の術』。
『鷲眼の術』を発動し、ダコタの動きが余裕をもって、見れるようになった。
「さあ、翔太朗選手。ここで『鷲眼の術』が発動したぞ。動きが読み取れるのか・・・・、会場は注目してこの一戦を見守っております。ちなみにここまでの途中経過だと、このまま判定に持ち込んだ場合、さく裂で戦うダコタ選手が勝つ予想です。」
司会の言葉が横切る。
そうだ、10分経過してしまうと、判定勝ちになるのだ。すでに3分以上経過している。残り時間は3分の2。
ダコタは、さらに、肉体強化魔法を行いながら、体をばねのようにして、バトルフィールドを飛び回り、追い風の魔法を利用して、炎、水、雷など、あらゆる魔法を使って、僕を攻めていた。
「ダコタ選手、いろいろな魔法を使って、会場にアピールもしている余裕ぶり、果たして、『鷲眼の術』はどこまで、見ぬけているのか。」
僕は、召喚魔法を実施した。呼び出したのは、シロンと、ユキナではなく、ワシ之信だった。
「おお、翔太朗、呼んでくれてありがとうよ。今日の狙いはあいつだな。」
「ああ。」
僕は、ワシ之信と目を合わせる。こういう初めての、自分よりも強い相手の時は、ワシ之信の経験が生きてくる、そう呼んで、ワシ之信を召喚したのだ。
「儂から教えるのは二つ、一つは、あいつの弱点。もう一つはお前に新しい力を試してみよう。」
ワシ之信が冷静に言った。
「敵の攻撃をかわしつつこの話をするのは、危ない、上に回避しよう。」
ワシ之信と息を合わせて、ダコタの肉弾攻撃を上によけた。そしてそのまま。
「あら、上に行くのですね。ジャンプ力も私の方がありましてよ。」
ダコタの声が聞こえる。
そして、すぐにダコタがジャンプをして、追いかける。
「翔太朗行くぞ、変身だ。」
ワシ之信の声に合わせて、僕は鷲に変身した。そして、一気に羽ばたきさらに上へと逃げる。
一方のダコタは、バネの力はあるが、さすがに鳥の上昇能力には劣ったのか、僕たちの居る上空の場所へは追いつけることができなかった。
「へえ、あのような動きができるとは、侮れませんね、あちら側の級長には・・・・・・。」
鷲に変身した僕たちを悠然とダコタは見上げている。
「あいつの弱点、器用貧乏な所だ、いろいろな魔法が使えることをアピールして、最後まで、極めていない。風魔法単体で見るならば翔太朗、お前の方が上だ。忍術もそうだろう。術を極めようとしないこととおんなじだ。」
ワシ之信の言葉に耳を傾け、僕は頷く。確かにそうだ。いろいろな魔法を使える分、単体の能力は確かに低い。ただ、それでもこの準決勝までくるような選手だ、各属性のパワーも申し分ない。
「風魔法を極めているお前に次のステップの修業を今から始めるぞ。いいか、風を感じろ、風を読め。相手を観察し、風の力を感じて、次はどこに来るのか気配を感じるんだ。魔力を研ぎ澄ませるぞ。」
なるほど、風を感じる、相手の動きを風で感じる。
確かにそうだ。相手が少し動けば、風は少しざわめく。そのわずかな風を読むということだな。
ダコタは今、追い風の魔法を使いながら、体をばねのようにして動いている、それならば・・・・。
風の動きもわかるはずだ。
僕たちは改めて、作戦を立て直し、地上に降りた。
「もういいのですか。」
ダコタは、僕に向かっていった。
「はい。気が変わりました。行きます。」
僕は、ダコタに向かって言い、そして、短剣を取り出して、一気に相手を攻める。
ダコタは、案の定、パワーを駆使して向かってくる。
「翔太朗、力の方はダコタの方が上だ。正面からぶつかれば、ダメージを受けることは必須だぞ。忘れるなよ。」
ワシ之信が叫ぶ、それと同時に僕はかわして、ダコタの後ろを取り、一気に『ウィンドカッター』を仕掛けた。
背後から襲われた、ダコタは無防備であったため、吹き飛ばすことができた。
ようやくダメージがまともに入った。
「へえ、やりますね。」
ダコタは、僕の方を向き直り、もう一度突撃してくる。
「翔太朗、さっきみたいに行くぞ、パワーは相手が上だが、速さのすべての面においてはお前の方が上だ。速さ、総合的な足の速さはもちろん、キレとか、瞬発力とか、そういったものもお前が上だ。さっきみたいに、キレや瞬発力でもう一回かわしてみな。」
ワシ之信の指示通りに攻撃をかわして、背後を取ったところに、攻撃をしていく。それを繰り返していく。
「よし、翔太朗良いぞ。」
さすがは、経験豊富なワシ之信だ。さっきまで劣勢だったが、一気にこちら側のペースになってきた。
「あ~うるさい鳥ですわね。決めました、あの口うるさい、じじい鳥から先に蹴散らしてあげましょう。」
ダコタは、体をばねのようにして、ワシ之信に突撃する。
背後を取りやすくなった。だがしかし。
「と、見せかけて・・・・。」
一気にダコタは体を反転させ、僕の方へ向かって突撃してきた。
「そーれ!!」
炎と雷をまとった、ダコタのパンチがもろに直撃した。
「翔太朗!!大丈夫か。」
ワシ之信が叫ぶ。
「翔太朗君。」
「翔太朗様。」
ミランダ達も叫ぶ。
辛うじて、僕は無事だった。すぐに回復魔法、『ヒール』を自分にかけていく。
「さーて、仕上げと行きますわよ。これでとどめだ。」
ダコタは体を再びバネのようにする。そしてフィールドを駆け回る。
速い。さっきより速い。今までで一番速い。
「さあ、愚かなルーベルトと同じようにして差し上げます。」
どこから来るのか、どこから来るのか。
<風を感じろ、風を読め>
『鷲眼の術』を使いながら、そして体を使いながら、ダコタの動きを感じる。
風がやんだ。ダコタが消えた。より速い動きになって見えなくなったからか。
いいや違う。風魔法や速さは僕の方が上。
―風を感じろ、風を読めー
風がやんだ答えはこれだ。
変身魔法を使って、上に上がる。ある程度のところまで行ったところで、変身を解き、『肉体強化~速さ~』の魔法を仕掛ける。
変身が解けたことによって、僕の体は落ちていく。しかし、地面に向かっていく。方向を恐れず僕は見た。
土の下から、ダコタが現れた。
そう、地面の下にワープして、ダコタは隠れていた。
ダコタが飛び出してきたところで、『ウォーターサイクロン』を思いっきりぶち込む。ダコタはよける余裕もなく、そのまま、ダメージを受け、フィールド上に倒れた。
僕は無事に着地する。
そうすると、大きな歓声が鳴り渡っていた。
「な、なんと、勝負ありました。見事にダコタ選手をうち破り、勝利したのはセディア魔道学院1年第5班の級長、翔太朗選手。『鷲眼の術』とキレのある速さの動きにもう一度拍手を。」
「ありがとう、ワシ之信。」
僕は、アドバイスをくれた、ワシ之信に礼を言った。
「ああ、よく頑張ったな。とても良かったぞ。」
ワシ之信はほめてくれた。
「翔太朗様!!」
仲間のところに戻ると、ミランダがハグをして出迎えてくれた。
それを見て驚く、他の女性メンバー。
「ナイスだよ、翔太朗君。」
次に言葉を発したのはアンソニーだった。
「翔太朗君、ありがとう。」
ルーベルトもすっかり元気を取り戻していた。
「ま、いいですわよ。少し認めます。」
ダコタは、そういいながら、自分たちの学級の待機場所へを帰っていった。
ほかの女の子たち、つまり、ミランダ以外の僕の学級のメンバーは何も言わず、ただただ、ミランダと僕の方を見ていた。
「みんな、同じようだね。翔太朗君は頑張ったよ。」
ルカが、笑いながら言った。そしてみんな頷いていた。
なかなか更新できず、すみません。
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