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#74.決勝前日の出来事


 さて、ミランダたち一行は、王都の中央広場へと向かっていった。

 その中に、翔太朗たちと同じ学級のリリアン=ウォッカとマリアも一緒にいた。


 リリアンは、マリアと約束をして、あとでこの広場で二人で再度、会うことにした。

 一行は、中央広場で別れ、各自で買い物をすることにした。

 リリアンも目当てのお店にたどり着く。

 しかしながら、その店の品ぞろえを見て、何を買えばいいのか迷ってしまったのだった。

 

 「これが、いいかな。どれにしようか。」

 わからないまま、お店の品ぞろえに手を伸ばす。

 しかし、どれがいいか見当がつかない。


 「どうしよう。困ったなあ。この後、またマリアと会わなければいけないし・・・・・・。時間もあまりないし・・・・・。」

 迷いに迷ったところに、店員がリリアンに気付いた。


 「お客様、何かお探しの商品はありますか。」

 リリアンは店員に伝えた。どのような商品を買いたいか、などを店員に伝える。


 すると、店員はきれいな羽ペンを差し出してきた。

 羽ペン。この、セントアリアの代表的な筆記具だ。

 あまりにもきれいな上質さに心を奪われるリリアン。しっかりした羽だ。


 だがしかし。


 「羽・・・・。ですか。」

 「ええ。筆記具であればこちらをと思いまして。」


 一瞬迷ったが、いいだろう。他にも何かインクと、ノートを何冊か買い込んで、この店を後にした。

 そして、きれいな包装紙に包んでもらった。


 「かなり買っちゃったな。マリアと会う前に一回家に戻ろう。」

 そう思って、一度家に戻ることにした。


 リリアンの家は、庶民街の遅い路地に面していた。

 その路地に、人影があった。


 いかにも怪しい、黒い人影だった。

 「どうも、こんにちは、リリアン=ウォッカさん。」

 その黒い人影は、リリアンの顔と名前を知っているかのように、不気味にリリアンに向かって微笑んでいた。


 「さて、私と一緒に来ていただきましょう。」

 その人物は、リリアンに歩み寄り、腕をリリアンの肩に回す。そして、もう一方の手で、短剣をリリアンの首に向けていた。


 その人物は、ギエル=ロドバンドその人である。セントアリア王国の超重要指名手配犯、殺人、暗殺、密輸。罪状はきりがない。


 しかし、リリアンは、このギエルという人物が、どれだけ危険な人物かはわからなかった。

 ただただ、襲われたことに足が震えていた。


 しかし、この人物がどのような目的で、リリアンのところに来たのかは、彼女には察しがついた。


 「あの、お帰りください。私は、以前の私ではないのです。」

 足が震えながら、かすかな声だったが、至近距離で接しているため、ギエルの耳にもリリアンのその震えた声は届いていた。


 「いや、いや、私は命令されるがままにこちらに来ているのですよ。変更はできませんなぁ。それに、あなたほどの方が、この国最大のイベントの一つ、感謝祭の真っただ中に行われる、魔道武術大会の本戦、しかも準々決勝に出場されているということで、まあ、目立ってましたよ。あなたの存在が、私もここへ足を運ぶのがとても楽でした。」


 ギエルは、リリアンが翔太朗と離れるタイミングを狙っていた。

 ギエルはクルレの農村、シロンとユキナの家族を襲ったときに、翔太朗とミランダ、カミラとの面識があったのだ。

 間近で見た『鷲眼の術(イーグル=アイ)』。この魔法で、ギエルの従魔の『グリフォン』たちにかなりのダメージを与えたのだった。翔太朗たちと再びあってしまったら、戦闘は必須だった。しかもかなりリスクの負う戦闘が。

 そして、モナリオ侯爵家の命令で、ギエルの懸賞金も跳ね上がっていた。懸賞金が上がったところは流石は悪党。ニヤニヤしながら喜んだが、その分当然だが狙われる。だからこうして、路地裏で待ち構えていた。



 「さあ、行きますよ。リリアン=ウォッカさん。お待ちしている人がいますからね。あなたを。」


 そういって、ギエルは場所を移動しようとして、転送の魔法をかけようとしたその時だった。


 光の閃光が現れた。

 「大丈夫?リリアン。けがはない?」

 そこにいたのはマリアだった。

  

 「マリア・・・・・・・。」

 マリアの姿を見てリリアンは安堵する。そして、その場に倒れこんだ。

  

 マリアは時間になっても現れない、リリアンを心配して、リリアンの自宅の方まで向かってきたのだった。

 実は、マリアはリリアンの家に行ったことがあった。二人でよくお話をするようになっていた。

 もしもマリアと約束をしていなければリリアンは今頃連れ去られていたのかもしれない。間一髪の軌跡だった。


 倒れこんだリリアンに、マリアは結界を施す。

 ギエルが一目散に倒れこんだリリアンのもとに駆け寄るが、結界が邪魔されて、リリアンに入ることができなかった。


 「くそっ、くそっ。」

 結界を叩き込む。

 が、結界はびくともしない、当然だ。


 ギエルはマリアの方を向いた。

 「おのれ、小娘。こうなったら、この小娘もいただいていきましょうか。」

 マリアの方にギエルは襲い掛かっていく。マリアは自分の魔法で応戦する。流石はドラゴンに育てられただけあって、すぐに負けるはずもなかった。

 マリアの左側から、ギエルの剣が入るがすぐに見極め、光魔法で応戦する。そして、ギエルの魔法にも、対応できた。


 「おのれ、ここだとグリフォンは召喚できないからな。せめて、王都の外だといいのですが・・・。」

 ギエルは、助けがきたことに一瞬戸惑ったが。

  

 「ええい。この小娘も、かなりいいパフォーマンスを魔道武術大会では見せてましたけど、所詮はまだまだ、一年生。ここで、叩きのめしておきますか。」

 ギエルの戦いのギアが明らかに上がっていった。

 闇魔法の魔法陣を施し、大きな闇の球をギエルの頭上で作り上げる。それを一気に放出し、マリアのもとに勢い良く投げていく。

 「『ブラックボール』と命名しておきましょうか、私のオリジナルですよ。」

 ニヤニヤしながら、ギエルはマリアは倒れたと思っていたが。


 結界で、ギエルの闇魔法『ブラックボール』を防いでいた。

 しかしながら、マリアの息が荒くなっている。

 「さすがに、きつい。でも、明日もあるし、リリアンも守らないと。」


 「ほお、結界で防いだが、少しその結界がもろかったようですね。多少ダメージを受けていますね。」

 ギエルがマリアに歩み寄る。


 当然だが、マリアも山脈の山奥の洞窟で、ドラゴンに育てられていたため、世間の情報には疎い。

 ギエル=ロドバンドという人物が、どのような人物かは詳しく知らなかった。

 ただ、マリアもドラゴンから魔法を教えられた身。戦ってみて、実際にやばい奴と肌で実感した。


 まずい。マリアはそう思った。このままだとやられてしまう。その時だった。


 魚。が現れた。

 「魚・・・・・。」

 魚。その魚は空を飛んでいる。そして、ギエルに襲い掛かってきた。


 よく見ると、その魚は水出てきている。特殊なシャボン玉のようだ。

 マリアは後ろを振り返ると、背の低い、小さな少年が立っていた。その少年には見覚えがあった。


 「やめろ、ギエル=ロドバンド。」

 その少年は、叫んだように言った。


 「あら、あなたは確か、予選でルーベルトに勝った。」

 「はい。クリフ=クロスラードと言います。」

 その少年が言った。

 「大丈夫ですか。僕のことと対戦相手のことを知っていると、セディア魔道学院の方ですよね。」

 「はい。マリアです。そして、そこに倒れているのがリリアン。」


 「なるほど、わかりました。マリアさん。とにかくあなたは、大通りに出て、警備隊を呼んできてください。どなたかいらっしゃいます。ギエル=ロドバンドが現れたと言えば、きっと駆けつけてくれるはずです。」

 「わかりました。ギエル=ロドバンドですね。」


 マリアは、ギエルの名前をばっちり記憶し、大通りに走っていった。

 すぐに警備隊の人が見つかり、ギエルの名前を出すと、血相を変えて、応援を要請し、現場へ一緒に急行したのだった。



 クリフは、その間にギエルに応戦していた。ギエルはリリアンを奪って逃げようとしたが、マリアの結界魔法が解けなかったため、クリフに応戦することになった。


 「よくも、よくも、僕の人生をこんなにしてくれたな。貴様。」

 マリアが警備隊を呼びに行った後、クリフは緊張しながらも、大きな声で、ギエルに向かって叫んだ。

 「知ったことですか。私は、私の道を行くまで、こんなこざかしい、あほらしい少年など眼中にないのですよ。あなたも自分の夢を追いかける努力をしなさい。きっと報われますよ。」

 ギエルは、クリフに向かって威圧的に向かってきた。


 「人を殺して、何が自分の夢だ。ふざけるな。」

 「私の道に歯向かったものの末路ですよ。」


 「おのれ、覚悟しろ。」


 クリフは、得意な水魔法で、攻めていく。特殊なシャボン液を作り出し、グリフォンや、巨大な魚などを形作っては、それで攻撃している。

 「ふふふ、魔法の腕も上がりましたね。ですがまだまだですよ。そんな子供みたいな攻撃魔法なんかで勝てるとお思いですか。」


 再び、ギエルは、頭上で闇の球を作り出した。

 『ブラックボール』闇魔法。


 「行け!!」

 ギエルは一気に闇の球をクリフに向かって投げる。


 クリフはかわし切れそうになかったがその時、結界が現れた。


 「今度は、私たちが相手です。」

 間一髪、マリアが現れた。そして、警備隊も一緒に来ていた。


 「覚悟しろ、ギエル=ロドバンド。お前にはすでに、逮捕状も出ている、そして、捕まって、死刑か無期懲役としてやる。」

 警備隊の人はそう言った。警備隊は王国直属の兵士の一つ。警察のようなものだ。


 「すでに応援の要請もしている覚悟しろ。」

  警備隊は一気にギエルを追い詰める。


 「チッ。警備隊の人まで来てしまったら、こんなところにはいられません、引き上げますか。」

 ギエルは、出直すかのように、転送魔法を使って、消えていった。


 「リリアン。リリアン。大丈夫。」

 マリアは結界を解いて、リリアンに駆け寄る。


 「マリア。ごめんね。」

 リリアンは気が付いていて、マリアに言った。

 

 「無事でよかったよ。本当に。とりあえず、僕はこれで引き上げるね。何かあったら、また連絡して。」

 クリフはそう言って、去っていった。


 「あの。」


 「「ありがとうございました。」」

 リリアンとマリアはクリフに向かって頭を下げた。


 「あ、あの、お話を、ギエルと戦って今後の有益な情報をと思いまして。」

 警備隊の人は、クリフに向かっていったが、クリフは、

 「そういうことなら、また後日で。あの人の次の目的地は知りませんし、わからないです。それでは。」

 そういって、クリフは去っていった。

 警備隊の人は聞きたいこともあったが、怪我をしていなさそうなクリフを見て頭を下げた。


 そして、警備隊はリリアンのもとへと寄ってきた。

 「お話、聞かせてもらえますか。」


 「「はい。」」

 マリアとリリアンは、警備隊の人にギエルが待ち構えて、リリアンが狙われていたことを話した。


 「なるほど。狙われる理由について、心当たりはありますか。」

 警備隊の人が聞かれた。

 リリアンは一瞬戸惑った。しかし。

 「特に何も・・・・・。ギエルという男は初対面ですし、彼が私に恨みを持っていたとは思いません。」

 

 「うーむ。なるほど・・・・。」

 警備隊の人は黙ってしまった。


 「リリアンさんと言いましたよね。ここのアパートに一人暮らしですか。」

 「はい。そうです。」


 リリアンは答えた。


 「それは危険ですね。彼はギエル=ロドバンド。この国の凶悪犯にして、重要指名手配犯なのです。」

 それを聞いたリリアンとマリアは背筋が凍った。


 「そんな、重要指名手配犯だったなんて。」

 「私も驚きました。そんなに悪い人だったとは。」


 二人の口から素直な感想があった。しかし、警備隊の人は妙な顔をしていた。


 重要指名手配犯はすぐに町のポスターに張り出される。この人たちは掲示板を見ていないということで普通なら済まされそうだが、ギエルの起こした事件は社会をゾッとさせるものばかり。

 ゆえにセントアリア王国で知らない人はいないというのが、警備隊の想定していたことだったが。


 「珍しいですね。ギエルの名前を知らないなんて。かなりの重罪人なので、セントアリアにお住まいならばご存じだと思ったのですが。」


 「すみません。世間の情報には疎くて。」

 「はい。」

 リリアンとマリアは、警備隊のリアクションに、そのように答えた。まさか、ここで山奥でドラゴンに育てられていたので、世間の情報は初めて知ったということは伏せておきたかったし、信じてもらえないだろう。

 ましてや、翔太朗たちの班もドラゴンのエドラ、マリアの育ての母親のドラゴンが現れるまで、事実とは知らなかったのだから。


 「まあ、いいや。とにかく、またギエルが来るかもしれない。しばらくの間、リリアンさんは独り暮らしではなく、どこか安全な所にいてもらいたいのだがどなたか、ご実家とか、お父さんとかお母さんとか連絡が付きますか。」


 リリアンはこの言葉を言われた瞬間に目を見開いた。そして。


 「父も、母も亡くなりました。魔道学院には、以前、自分で仕事をしたお金で、通っています。」

 それを聞いてマリアは哀れに思った。


 「なるほど。ほかに、どなたかお知り合いの方は・・・・・。」

 

 「少しお待ちください。」

 マリアは、翔太朗たちそして、ミランダやモナリオ家の存在が頭に浮かんだ。その人達なら。と思った。

 「連絡してみます。」

 マリアは言ったが。

 「どういった方でしょうか。」

 警備隊に聞かれたので。


 「ミランダ=モナリオという方です、私たち魔道武術大会で同じ班で出場していて。モナリオ侯爵家と言ったらわかるでしょうか。」


 「ああ、もちろんモナリオ侯爵家は知っているよ、そしてごめん、そうだったね。ミランダお嬢様と一緒に武術大会にみんな出ていたね。通りで、ギエルも追い払えるわけだ。わかった、モナリオ家には私から連絡を入れてあげるよ。」


 

 「「ありがとうございます。」」


 マリアと、リリアンは声をそろえて言った。






 僕とミランダは慌てていた。そして、カミラさんも同じような反応だった。

 警備隊の人がモナリオ家の屋敷に来て、リリアンがあの凶悪犯ギエル=ロドバンドに襲われたということを知らされた。


 急いで、ポールさんとミランダ、カミラさんを含めた4人でリリアンを迎えに行った。

 

 「リリアン、大丈夫?怪我はない?」


 「翔太朗君・・・・・。ありがとう。」

 リリアンが無事な様子に一安心する。


 「ああ、リリアン、リリアン。あなたがいなくなってしまったら、私はもう・・・・。」

 ミランダはリリアンに抱きしめた。

 「ごめんなさい、ミランダ。私は平気だから。」

 リリアンはミランダに安心させるように言った。


 「リリアン君。本当に無事でよかった。」

 「ああ、リリアン殿が無事でなければ一体どうなっていたか。マリア殿も感謝する。」

 ポールさんとカミラさんは同じように優しく微笑んでいた。

 そして、ポールさんとカミラさんは、居合わせ、リリアンのことを助けてくれたマリアにも頭を下げた。


 「あの、私は、当然のことをしたまでです。実はもう一人助けてくださった方がいらして。」

 

 「ああ、そうだったのか。もう一人は?」

 僕は、つかさずマリアに言った。


 「もう、立ち去ってしまってて、ただお名前はわかります。昨日、ルーベルトの対戦相手の方でルーベルトに勝った、クリフさんという方ですね。」


 「なんと、クリフが。わかった、今度会ったらお礼を言おう。また会えるといいのだけれど。」

 僕はそう言って、マリアにも助けてくれた感謝を述べた。


 「あの、ポール様。ギエルがまたこの子を狙うかもしれません。しばらくの間、モナリオ家の屋敷で保護できませんか。」


 「もちろんじゃ。」

 警備隊の人の提案にポールさんは、うなずいた。


 「やった、リリアンと一緒にしばらくいられますね。」

 ミランダが言った。


 「あの、ありがとうございます。」

 「何を言っている、当然のことだ。それにミランダの同じ学級のお友達で、うちの学院の生徒ならなおさらだ。」

 リリアンはポールさんにお礼を言ったが、ポールさんは当然だよ。というような返事で返していった。


 と、言うわけで、リリアンを加え、助けてくれたマリアにお礼を言って、マリアと別れて、屋敷に戻った。アルベルトさんとパメラさんも、リリアンを心から歓迎してくれた。無事で本当に良かった、と安堵した瞬間だ。


 「さて、今夜はもう遅い。それに、リリアン殿はかなり傷を負っている。明日の最終日に備えてみんなで休もう。」

 カミラさんの提案で、休むことにした。リリアンはしばらく、ミランダと同じ部屋にいることになった。

 一人部屋も提供できたが、お泊り会をしよう。と、ミランダとリリアンが提案してきたので、そうすることになった。



今回も読んでいただき、ありがとうございました。面白いと思った方、少しでも続きが気になる方は是非、高評価、いいね、ブックマーク登録をお願いいたします。

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