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#73.準々決勝


 大会3日目。準々決勝。僕は朝起きて、ミランダ、カミラさんと一緒にアップを始めた。気を引き締めないと、ボーラン士官学校の、ラピス、そしてサファイアたちの班と戦うかもしれないのだから。

 

 いきなり準々決勝で当たる可能性だってある。

 僕たちは、闘技場の控室に緊張しながら向かった。

 控室には昨日の喜びとは打って変わって、違う表情のみんなが待っていた。


 「おはよう。翔太朗君。」

 みんなが声をかけてくる。アンソニーは特に元気そうだ。

 そして、ルーベルトは深呼吸を繰り返している。



 「お待たせいたしました。ただいまより、大会3日目。準々決勝を始めます。それでは会場セッティングを行います。お願いします。」


 メインの、バトルフィールドの中央に大きな旗が現れた。


 「準々決勝は、班のメンバー全員参加の団体戦。全員でバトルフィールドに入り、中央の旗を先に取ったチームが準決勝に駒を進むことになります。そして、負けたチームは5位から8位までが順位として付くことになりますが、それに関しては旗が奪われるのに費やした時間の多い順に5位から8位までの順位が付きます。よってこの種目の制限時間は無制限。旗をかけたサバイバルバトルです。」


 全員で出場か。みんなの目を合わせる。

 いつでもいける、というサインだろうか。


 「みんな、やる気満々だね。」

 僕は言った。確かにみんなやる気満々だ。


 ルールの説明が終わり、みんなの状態を確認したところで、第一試合が始まった。

 ボーラン士官学校3年第2学級の試合だ。


 「お待たせしました、準々決勝第一試合。ボーラン士官学校3年第2学級対マクロ学園Aチームとの試合です。」

 バトルフィールドに入場してくる。

 選手は全員、旗の位置と反対側のスタートラインに立っている。ここから走ったり、相手を妨害したりして、旗を奪い合うわけだ。


 「この試合の注目は、なんといっても無双の快進撃を続ける。ボーラン士官学校の3年第二学級の級長、サファイア選手。しかし、サファイア選手以外も、冒険者ギルドランクB以上のメンバーがそろっています。優勝候補の一角と言えるでしょう。」


 なんと、サファイアの以外も、全員冒険者ランクB以上。すごい。すごすぎる。果たしてこの先、僕たちは勝ち進むことはできるのだろうか。


 「それでは、試合を開始します。」


 試合開始の号砲がなった。


 全員旗まで走っていく。走りに関しては、二チームとも同じくらいの実力だ。

 だが・・・・・。


 サファイアの魔法がここから始まる。

 光の結界のような波動が一気に現れ、相手チームを無双してく。そして、弓を持っている二人のメンバーだろうか、確実に、確実に相手に命中させていく。

 天才的な弓の腕だ。耳の形が少し違う。そこに違和感を覚えた。


 「ああ、翔太朗様はああいった、耳の形が違う方々を初めて見ますよね。」

 ミランダが優しく問いかけてくれた。

 「そうですね。初めて見ます。」


 「彼らは、森にすむ民族、エルフという方々ですね。森の狩猟生活がメインですから、弓矢の扱いに長けているのですが。これほどとは。」


 なるほど、森のエルフということか。

 あの弓矢の腕、ミランダ以上だ。ミランダもドキドキしながら試合を見ている。


 サファイアと、二人のエルフ以外にもほかのメンバーはとても優秀な動きだった。

 あっという間に、旗を取り。サファイアのチームの圧勝で終わった。決着まで2、3分というところだろうか。

 「決まりました。ボーラン士官学校、3年第2学級。級長サファイアが見事に旗を取り、準決勝進出です。圧勝、圧勝でした。」


 わーっと歓声が大きくなる。


 「それでは、勝ったチームの皆様には明日の準決勝の対戦相手を決めるべく、クジを引いていただきましょう。」


 サファイアたちの班はクジを引いていた。まだ第一試合なので、対戦相手が確定したわけでもないが、準決勝で対戦すると怖い相手だ。



 第二試合は僕たち、セディア魔道学院の番だ。


 「さあ、行ってこい。」

 カミラさんが僕たちの肩をポンポンと叩きながら、僕たちはバトルフィールドへ向かう。

 闘技場の歓声が一気に浴びる。

 昨日よりもかなりたくさんの観客がそこにはいた。


 「第二試合はセディア魔道学院1年第5班対プロディー学院3年Bチーム。注目は1年生ルーキーながらここまでたどり着いた、セディア魔道学院。『鷲眼の術』の使い手、級長の翔太朗と、古の結界魔法と、光魔法の使い手、マリアの二人でしょう。」


 観客から、あふれんばかりの拍手が沸き起こる。


 僕たちは、旗の向こうの位置に着いた。

 「それでは、試合を開始いたします。」


 号砲がなる。


 一気に僕たちは走り出す。だが、相手のチームに早い人がいるようだ。

 

 ―僕が行かなきゃ。―

 一気に奮い立たせ、『肉体強化~速さ~』の魔法を使う。


 そして、今こそ、修業の成果を見せるとき。変化の魔法で、鷲に変身する。

 僕が変身する鷲は、シロンとユキナに似て、体が白い。


 飛んでいくぞ。

 一気に羽ばたいて加速していく。

  

 「なんと、『鷲眼の術(イーグル=アイ)』どころか、変化の魔法を完璧にマスターして、まるで鳥獣の魔物を見ているようだ。すごすぎる、翔太朗選手。一気に追いつくか。」


 司会の実況が響く。観客も歓声が上がる。

 

 「いいぞ、翔太朗君。」

 ルーベルトの声が聞こえる。


 「頑張れ、翔太朗君。」

 一番後ろを走っていた、アンソニーの声がかすかに聞こえる。


 「さあ、翔太朗様を守りながら生きましょう!!」

 ミランダがメンバーに声掛けをする。


 そう。やはり狙ってくる人がいた。


 相手チームにも、遠くの敵を攻撃できる人がいるようだ。

 弓矢で僕を狙ってくる。

 

 相手チームの弓矢が何本も僕に向かって、飛んでくる。それと同時に僕はかわしていく。

 だが、一本、よけきれない。右の翼、つまり右手に矢が当たり、飛ぶ力を少し失ってしまう。

 

 これを見た相手チーム。弓矢と、遠距離用の攻撃魔法で一気に仕掛けてくる。

 まずい。これだと確実にノックアウトされてしまう。


 だがしかし、ミランダの水魔法が、弓矢を放つその時に命中。遠距離魔法のメンバーもルカと、アンソニーで攻撃をしてくれ、弓矢のコースをそらすことができた。


 そのまま、旗に進んでいく。

 だが、相手チームの妨害もやはり止まらない。


 ミランダ達が援護してくれるが。旗に進むにつれて、その援護が間に合わなくなっていく。

 しかも、先ほどの弓矢攻撃で、右手が負傷している。ここはいったん変身を解いた。

 

 負傷している右手、右手に狙いを定めて、回復魔法。『ヒール』を自分で唱える。

 

 「ごめん翔太朗君、私が間に合わなかった。」

 リリアンが叫びながら、しかも、妨害している、相手を攻撃しているのが判った。


 「おお、弓矢が命中。これは大きなタイムロス。一度止まって、自ら回復魔法を行っているぞ。味方の援護が間に合うのか。先に進めば進むほど、それは難しそうだ。」

 司会の実況がヒートアップする。


 その間に相手チームが追いついてくる。

 

 「シロン、ユキナ。行くよ!!」

 僕は、召喚魔法を使って、シロンとユキナを呼び出す。


 「ご主人様!!頑張ります。」

 現れたシロンとユキナは僕に向かっていった。

 「あの旗を相手よりも先に取るんだけど、援護をお願い。相手がおってきて、みんなの魔法も届かない。」

 

 「「了解です。」」

 シロンとユキナは僕の援護をしてくれた。

 相手チームはシロンとユキナとの戦闘に移る。そうはさせないとして、旗に向かっている僕にも攻撃を仕掛けてくる。

 

 「ここは、一戦、加勢するか。」

 僕は振り返って、相手チームに風魔法を放つ。

 向かい風、相手を後退させればいい。今、旗に一番近い位置にいるのは僕だった。


 前方で戦っている僕に、ルカが追いつく。

 そして、ミランダもブラッドウルフたちを召喚したのだろうか。クロがやってきてくれた。

 

 前衛はこれでOKだ。一気に相手を追い込んで、旗に向かう。


 旗に手を伸ばす。そして、取った。


 「やりました、セディア魔道学院の1年生ルーキーたち。旗をゲットしましたよ~。」


 わーっと歓声が大きくなる。

 だが大きくタイムをロスしてしまった。ここまでのスタートからここまで、相手も旗を取らせまいとして、10分以上かかってしまったのだ。


 「ありがとう。翔太朗君。」

 アンソニーが駆け寄ってきた。

 「みんな、よくやったぞ。」

 ピエール先生が笑っている。


 「ああ。よくやった。しかし、スピードの面では今後の課題だな。今まで、速さという面では翔太朗殿に任せっきりだったな。」

 カミラさんがこの班の課題を改めて指摘する。


 「うん。翔太朗君が居なかったら負けていたよね。」

 「翔太朗様、ありがとうございます。援護が間に合わなくてごめんなさい。」

 ルカとミランダが声をそろえて言った。


 「ありがとう。後方でみんな援護してくれたから。よかったけれど。スピード要員がもう一人欲しいかも。」

 僕は正直に言った。


 「そうですわね。」

 ミランダも笑いながらうなずいた。


 僕たちは、試合後、準決勝の抽選くじを引いた。

 幸いにも、次の相手は前の試合で圧勝した、サファイアの班ではなかった。



 僕たちは控室に戻った。

 控室には大きな魔法の水晶玉のようなものがあり、その水晶玉から、試合の模様を観戦できる仕組みになっている。

 試合の映像は、水晶玉から、壁に投影もできるようになっているようだ。勿論、音も拾ってくれる。

 残りの2試合を観戦した。


 「準々決勝、第三試合は、ボーラン士官学校3年第1学級の皆さんです。」

 ラピスの班だ。


 ルーベルトが心配そうに見つめている。

 やはりラピスは先ほどのサファイアと同じような魔法を使い、一気に相手を蹴散らしていく。

 そして。


 「こちらも圧勝。ボーラン士官学校3年第1学級。第2学級に続いて、圧勝しました。」

 

 早い。そして、相手チームはラピスの魔法についてこれないようだ。

 マジか。こちらもほんの数分で決着がついた。


 そして、運命の準決勝の抽選くじ。


 なんと、ラピスたちの班が僕たちの相手に決まった。


 「勝てるのかな。俺たち。」

 アンソニーが言った。


 「大丈夫。みんなで力を合わせれば絶対いけるよ。」

 僕は、みんなをまとめる。


 「そうだよね。きっと、あきらめたらそこでダメ。」

 ルカが僕と同じような感じでみんなを鼓舞してくれる。


 

 そして、準々決勝の最終試合も終わり、5位から8位までの表彰式に入った。


 予定よりも何倍も早く、今日の日程が終了した。早く終了した原因は、もちろんラピスとサファイアの圧勝劇だろう。


 「それでは、明日の準備のため、本日はこれにて終わりです。明日は最終日。午前中に準決勝2試合、午後に決勝が待っています。お楽しみに。」


 司会の言葉で、大会3日目。準々決勝が閉じられた。


 「今日はここで解散にしよう。各自気を付けて自宅に戻って、明日に備えてください。」

 僕はみんなにそういった。


 みんなも頷いた。


 僕たちは、闘技場を後にした。

 闘技場の入り口で、ポールさん、アルベルトさん、パメラさん、そしてアレックスさんが出迎えてくれる。そして、そこには珍しく人間の姿に変身した、シロンとユキナそしてワシ之信の姿もあった。

 「すごいぞ、ミランダ、翔太朗君。そして、1年5組のみんな。準決勝進出は何年ぶりだろうか。ありがとう。ありがとう。」

 ポールさんがみんなを拍手で迎えた。


 「よく頑張ったわね。」

 パメラさんが抱きしめてくれる。


 「はい。でも明日の相手がかなり強くて。」

 僕は正直に今の不安な気持ちを二人に言った。


 「なに、大丈夫だ。あきらめない。まずはチャレンジだ。」

 ポールさん、アルベルトさんは笑っている。


 改めて全員で闘技場を後にして、屋敷に戻る。

 やがて、闘技場からの道を下って、貴族街の中心部へたどり着く。いつもならここでみんなと別れて、ミランダやカミラさん、そしてモナリオ家の人々だけになるのだが。


 「翔太朗君。一人で屋敷に戻れるかね。」

 ポールさんが言った。

 「すまんの。儂らちょっと、用事があることを思い出してね。先に屋敷に戻っていてくれるかな。使用人が屋敷で待っているから。」

 ポールさんの言葉に少し驚いたが、まあ、何か用事があるのだろう。


 ミランダの方はどうだろうか。

 「ごめんなさい。私も少し、感謝祭をのぞいてみたくて。」

 「そうそう。僕たちも感謝祭を見たくてね。」

 ミランダとルーベルトも同じようなことを言う。そして、学級の他のみんなも同じことを言っていた。


 「それだったら僕も一緒に、まあ、みんな知っての通り、明日もあるので、本当に少しだけだけど。」

 と返したのだが。


 「ああ。ごめん、今日は、みんな各自で回ることになっているの。みんなで、感謝祭を回るのは明日にしようかと思って、最終日に大会が全部終わってからね。」

 リリアンが僕に向かって笑いながら言った。


 「そう。今日はみんな、その、各自、買いたいものがあるからそれを買って早く帰って休むのさ。翔太朗君はどう?買いたいものとかある?」

 ルカが言うと。


 「買いたいもの・・・・・。特にないかも・・・・・。」

 僕は、返事をした。確かにそうだ。買いたいものなんて特になかった。


 「そうか。それなら翔太朗殿は早く帰って、明日に備えた方がいい。お前の相手はひょっとするとラピスかもしれない。おそらく『鷲眼の術(イーグル=アイ)』の使い手ということで、お前との試合にラピスが出てくる可能性はある。」


 カミラさんも言った。


 カミラさんの一言はかなり説得力があったので。

 「そうですよね。じゃ、そうさせてもらいます。みんなも遅くならないように帰ってね。」

 

 そういって、僕はみんなと別れて、一人で屋敷に戻っていった。

 みんな、相変わらず、元気で、笑顔で手を振っている。その表情を見ると仲間外れとかではなさそうだ。

 僕は、知っているから。仲間外れにしそうな人の表情を。その表情を見て安心した。





今回も読んできただき、ありがとうございました。

少しでも続きが気になる方は、是非登録と高評価をお願いいたします。

そして、新しく、『いいね』の評価も追加されたとのことです。是非そちらもよろしくお願いいたします。

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