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#7.岩月家の人々 ~Side 八重~


 翔太朗が、試験に落ちた結果を両親と兄、そして叔父を含め吉田一族全員に報告しているころ。

 

 今日翔太朗と話した、赤毛の少女。

 岩月八重(いわつきやえ)も同じように、家で試験の結果を報告した。


 「お前はやっぱりだめだなあ。」

 と、八重の両親も同じように捨て台詞を吐いていった。


 「さあ、八重、掃除と夕食を作れ、お前は岩月家の恥なのだからな。」

 そう八重の父、耕三に言われて、彼女は台所に立った。


 「さあ、多重ちゃん、美人の多重ちゃん。今日は卒業祝いですからね。」

 八重が台所に立ったところを見て、八重の両親は卒業祝いを多重に渡した。


 八重の妹、多重(たえ)

 彼女は黒髪の美人だ。それに対して、八重は赤毛でそばかすがある。それに青い目。


 どうして、このような容姿に生まれてきたのだろう。

 赤毛と青い目の人間は、この里には八重以外にはいない。


 両親が美人の妹ばかり溺愛するところを見ると涙が出てくる。

 そして、八重は差別される。


 これで流した涙は何度目だろう。八重はそう思った。

 だが、今日は少し違った。

 

 翔太朗君が声をかけてくれた。

 

 吉田一族のことはよく知っていた。もちろん翔太朗君のことも。

 というか、この里、この那ノ国の出身で、吉田一族のことを知らないという人が珍しい。

 優秀なお兄さん龍太朗に期待していること。

 翔太朗は期待外れだったと、言われていることを里中が噂している。

 

 しかし、今日翔太朗君を実際に見て、優しい目をしているところを見ると、彼も苦しんでいるように見えた。

 

 頑張らないと・・・・。と八重も思う。

 そう思い今日も食堂に立った。

 


 やがて、八重は食事が出来上がる。

 両親と妹の多重に、それを持っていく。


 「相変わらず、まずいなあ。今日は多重の祝いの日なのに・・・・・。」

 そう愚痴をこぼしながら、両親は食事をした。



 食事の片づけをし、涙を流しながら、布団に入る。


 明日も、明後日も、食事を作って家の掃除を一人で行い、両親に朝昼夕食すべてまずいと言われながら、家の家事をすべてやる日が続いた。


 そうして、一日が終わること、涙を流しながら布団に入った。


 その日はなぜか八重は途中で起きてしまった。

 ふすまの向こうには明かりがついている。

 両親が何かを話しているのが聞こえた。


 「多重はこのまま下忍だな。早く上忍になる日も近そうだ。ありがとうよ富子(とみこ)。生んでくれて。」

 「ええ、ありがとう。」

 父と、母の会話だ。


 「それにしても、八重かあ。」

 「ええ。あんな子、引き取らなければよかった。やはり、私たちには似ないのね。しかも・・・。」

 

 引き取る・・・・・・。母のことば。八重は少し考えた。


 「舞子さんにも似ないのかといいたいのだろう。」

 「ええ、そうよ。いったい誰の子なのかしらね。私たちの子供ではないのは確かよ。あの子は養子なのだから。」

 養子・・・・・。


 八重はまた深く考えた。そんな、だから私はあんな扱いをされていたの。

 八重は声にならない叫びがこみあげてくる。


 「どっちみち、成人する年になったら、家を追い出せばいいさ。舞子さん、君の妹もそれで感謝しているよ。同じように忍者学校の試験に落ちて、芸者だったのだろ。」

 「ええ。そうね。芸者らしく、だらしなく生んだのだから。そして、自分もだらしなく病気になって死んだのだから、ふがいない私を許してと感謝してるわよ。」

 両親、二人はうなずいた。


 ふすま越しに、八重は聞いていた。

 

 八重は耐えられなくなり、涙を流して、布団に入った。

 布団の中は闇だった。闇に覆われた。


 涙が、一滴一滴、重く、鋭くなる。石のように、岩のように、とげのように。


 結局その日は眠れず。

 早めに起床し、家族の朝食を用意し、片づけを済ませた。


 そして、後先考えず、八重は家を飛び出していった。


 今日は両親も妹もいない、私だけが家にいる。

 こんなところ、居たくない。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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