#68.タッグバトル
僕たちの学級の控室は、闘技場の地下1階にあった。
『セディア魔道学院1年5組』と控室の掲示板に貼ってある。
控室に入ると、ピエール先生、カミラさんが出迎えてくれた。
「よくやったお前たち。上出来だぞ。」
ピエール先生は笑顔で出迎えてくれた。
この部屋にはいろいろと設備があり、ソファーとテーブル。そして、飲み物を注文すれば持ってきてくれるし、そして部屋の真ん中には、大きな水晶玉のようなものがあり、それで大会の模様が配信されるようになっている。
その大きな水晶玉から、現在Bブロックのハチマキバトルの模様が配信されているようだ。
「この大会期間中は、ここを使えばいいということだそうだ。」
とピエール先生は教えてくれた。
「とりあえず、ミネラルウォーターを注文したので、少し休んでくれ、次の種目が行われるのは午後だから。」
カミラさんはそう言って、僕たちにソファーに座るように促した。
ソファーは年季が入っていたが座り心地は最高だった。というか、この建物自体全てが、年季が入っているようだ。
運ばれてきたミネラルウォーターのボトルを一人一本ずつ取り、学級のメンバー一人一人と話をすることにした。
「きっと、Bブロックとか、Cブロックとかなら作戦会議をしただろうけど、僕たちは次の種目がわかるまで、体のケアとしよう。」
僕は、そういって、いろいろと控室の中をうろうろし始めた。
「翔太朗様は、結構緊張してますね。」
ミランダが、言った。
「確かに、あんまりうろうろしている翔太朗君は見たことがないかもしれない。」
マリア、リリアンが声をそろえて言った。
「次も頑張るぞ。」
ルカは、控室の中の広いスペースを見つけて、一人剣を磨いていた。
ルーベルトもそれに加わり、ルカの剣裁きを見ながら、剣と魔法の練習をしている。
「とりあえず、腹ごしらえしたいな~。」
アンソニーは色々注文すれば持ってきてくれるシステムを聞いて、大喜びしているようだった。
アンソニーの注文した食べ物、飲み物が運ばれてきた。
かなり量が多いような気がしたが、少しお菓子をつまみ、飲み物を飲んだ。
「まあ、今日の分。みんなで食べるから。」
アンソニーは笑いながら言った。確かに、みんなアンソニーが適当に注文した、お菓子やジュースを食べたり、飲んだりしている。
そうこうしているうちに、Bブロックも、Cブロックも競技が終了したようだ。
これから昼休憩に入るようだが、僕たちはすでに、控室で緊張をお互いほぐしながら、話し込んでいた。
訓練をすればと思うかもしれないが、今さらここへ来たら、ということもあったので、緊張をほぐすことに優先していた。
「それでは、午後の競技を開始します。午後の競技はタッグバトルです。2対2のタッグバトルになります。それを各チーム二試合ずつ、こちら側の抽選で決めた相手のチームと戦ってもらいます。制限時間は10分。その10分以内に相手チームを倒せば自動的に100ポイント入ります。10分を過ぎた場合は判定とし、審判と会場の観客の皆さまで、どちらのチームがより優れていたか投票を行います。そして投票の結果、100ポイントを、投票数に応じて、割合換算して、振り分けていきます。引き分けであれば双方50ポイント、また勝った場合でも、99ポイント入るときもあれば、勝った時の最少得点である51ポイントしか入らないこともあります。逆に負けた場合も善戦すれば最大の49ポイント入る場合もあります。それぞれ何ポイント入ったかは、一試合ごとに公表は行いません、今日一日目の競技終了後にまとめて公表します。
それでは各チームの皆さまは、タッグバトルの2試合に出場する代表者を4名選んでください。必ず4名選出をお願いします。同じ人が重複して、2試合連続して出場することは認められません。」
なるほど、タッグバトルか。なかなか腕がなる。
「なるほどね。どうしようか。」
僕たちは考える。
「誰が出てもいいのではないか。みんな修業していたし・・・・。同じ力の人達で組めば・・・・・。」
簡単にモチベーションを上げるような言い方をしたが意外に迷う。
「それならば、翔太朗殿、お前が出てみないか。そして、ミランダも。」
カミラさんから提案される。
「名案ですね。カミラさん。」
ピエール先生もそれに続く。
僕はドキッとする。
「どうして。僕とミランダ。」
「召喚術が使えるからだよ。一年次、初めての経験だ。相手はお前たちよりも一年以上、このような学校でいろいろと戦闘を経験している人がほとんどだ。お前たちよりもギルドランクが上のチームもあるくらいだ。」
「ああ、そうだな。ランクがAの人間も出場者の中にちらほら見かける。いくらタッグバトルとはいえ、仲間は多い方がいい。2体以上の従魔を召喚できる二人が適任なのかもしれない。」
ピエール先生が言った。
「なるほど、そういうことなら僕が出ます。そしてミラ様とはペアを分けた方がいいですね。」
「そうだな、それがいいだろう。」
僕が答える。
「わかりました。私も頑張ります。」
ミランダも出るとわかった以上、覚悟が決まったようだ。
「そしたら、翔太朗君のサポートでリリアンを、ミランダのサポート役でこちらは前衛向きのアンソニーをペアとしましょうか。リリアンは常に、翔太朗君に回復魔法をかけて、アンソニーは前衛で防御する感じで。」
ピエール先生の提案をそのまま、受け取ることにした。
なるほど、お互い、いい感じになりそうだ。
「それでは、タッグバトルの試合を開始いたします。」
第一試合、第二試合と続き、僕の番がやってきた。
「それでは次の試合です。赤コーナーは何と1年生チーム。セディア魔道学院1年第5班。風魔導士の翔太朗=吉田君と、錬金術師のリリアン=ウォッカさん。対する、青コーナーはスティーブと、ザックのマッスルペアです。」
スティーブとザックと司会から紹介され、大柄の男子二人が現れた。
どうやら、この大柄の男子二人が相手らしい。大きなハンマーと斧をそれぞれ持っている。
「翔太朗殿、相手の身長は気にせず、ジャンプして上を取るように意識して。お前ならいける。」
カミラさんが試合直前、アドバイスを言ってくれた。
その指示通りいけるかどうか。
「それでは、10分間のタッグバトル、スタート!!」
号砲と同時に相手から先制攻撃を仕掛けてきたようだ。斧を大きく僕の方へ振り下ろして来る。
「肉体強化~速さ~」
素早さで肉体を強化する。
斧が振り下ろされた瞬間。会場からは一瞬悲鳴が上がったがそんなものは杞憂に終わっていた。
肉体強化の魔法を唱え終わり、間一髪で斧をかわした、僕の姿がそこにはあった。
「アンソニーでもないし、受け止めるのは流石にきつそうだな。」
僕はそう思った。
「シロン、ユキナ!!」
僕はシロンとユキナを召喚する。シロンとユキナで大柄な男子二人の後ろを取れれば。
「リリアン、シロンに飛び乗って、上へ。」
「はい。」
リリアンが飛び乗る準備をする。
「リリアン、行くよ~。」
シロンが翼を広げて、僕の後方で待機している、リリアンを迎えに行く。そうはさせまいと、もう片方の男子生徒がハンマーを振り下ろして来るが、シロンもさすが速さだけは抜けている。
攻撃をかわしつつ、うまいことリリアンを上空へ避難させた。
「ザック、上だ。」
「了解。」
斧を持ってた男子が、飛び上がる。どうやら、斧を持っている方がザック、そしてハンマーを持っている方がスティーブということだろう。
だがこのマッスルコンビ、さすがは校内代表に選ばれたチームだった。
ジャンプ力がすさまじく、勢いよく飛び立ったシロンに追いつきそうだった。
「まずい。リリアン、捕まって。」
シロンがそれに気づき急速に上昇していく。
リリアンも必死にシロンに捕まっていく。間一髪で、斧の一撃をかわすことができた。
「どうしよう、上空の高いところでしか、待機できないよ。」
シロンが困っている、もちろん、ユキナも上空の高いところで待機だ。
「体格で判断してはいけなかった。ご主人様と同じくらい早いかもしれない。簡単に上をとれないかも。」
シロンと、ユキナは考える。
「シロン、ユキナ、ずっと上空で待機するのもまずいよ。10分経過すれば試合が終了して、ポイントによる判定勝ちになるの、ずっと上空で待機すればするほど、戦意なしと言われて、こちらが負けてしまうかもしれない。」
リリアンが、シロンとユキナにルールを伝える。
確かにそうだ。相手が上を取って、速さに優れるとなると、迂闊に近づけない。このまま上空待機すれば、安全だ。だがしかし、待機すればするほど、判定負けになってしまう。かといって、攻撃を仕掛ければ仕掛けるほど、ノックアウトされる危険もある。
「へへ、これで俺たちの勝ちだな。」
対戦相手のザックと、スティーブは地上にいる僕をめがけて二人で一気に攻撃を仕掛けてくる。
僕はそれをかわし続ける。幸いにもジャンプ力はあっても、この体格の差。スピードは僕の方が若干上だった。だが二人を相手にいつまでもつだろうか。
短剣を使いながら、二人に向かって投げたり、攻撃をかわしたりしていく。
汗が出てきた。一気に行くか。
相手との距離を取り、目を閉じて、心を落ち着けもう一度、目を開く。
『鷲眼の術』だ。
僕のスピードが一気に加速する。
「おいおいマジかよ!!」
「聞いてないぞ、『鷲眼の術』なんて。」
ザック、スティーブが戸惑う。
「おっと、風魔導士の翔太朗選手。『鷲眼の術』だ。すごい、すごい逸材に出会ってしまたぞ。これなら一年生でこの大会の代表になったのもうなずけます。」
司会の声がする。
「マジかよ、あいつ、何者だ?」
「伝説級の魔法が使える奴が本当にいたんだ。」
客席もそのような声でざわついている。
だがしかし、驚いたは、驚いたが。
「すごいぞ。一気に行けー!!。」
「伝説の風魔導士、待ってました!!」
というような、盛り上がる声に会場が変わってきた。
そして、会場が一気に盛り上がっているようだ。観客もヒートアップしている。
そんな声に後押しされながら、僕は風魔法、『ウィンドカッター』を叩き込む。
「逆風がすごすぎる。こっちも近づけない。」
ザックとスティーブの声。かなりの威力で叩き込んだため、強風が吹き荒れている。
「ご主人様!!」
上空から声がする。シロンとユキナだ。この合図とともに、風魔法を止めた。
風魔法を止めた瞬間、空から炎が振ってきた。
「翔太朗君、私もいるよ!!」
リリアンが、赤い大きな宝石をもっている。その赤い宝石から、炎があふれ出ていた。
「おっと、これも錬金術師の超逸材が現れた。この魔道具は普通の人では作れないぞ。恐るべし、セディア魔道学院の1年生コンビ。」
司会の実況がさらにヒートアップする。
そして、シロンとユキナも『フェザースコール』で刃のような羽を降らす。
一気にたたみこんだ。その勢いに乗って、僕はウィンドカッターをもう一度唱えて、ザックの斧が空を切ったところで10分経過、試合終了の合図があった。
「試合終了。判定に移ります。いや~前半はマッスルペアが優勢でしたが、後半は1年生チームの素晴らしい才能により、形成が逆転したように思います。どちらでしょうか。」
一瞬の沈黙。
「結果が出ました。ただいまの試合の勝者は、セディア魔道学院1年第5班の翔太朗=吉田選手と、リリアン=ウォッカ選手のペアです。」
観客が拍手で盛り上がっている。
ザックと、スティーブがこちらに歩み寄り、僕たちは握手を交わす。
「いやー、恐れ入ったよ。君、『鷲眼の術』が使えるんだね。今後が楽しみだよ。」
そういわれて、少し照れたが。
「僕ももっと修行して強くなるべきだと思った。最初かなり苦戦したから。」
僕も笑顔で返した。
僕たちは控室に戻った。
「ナイスファイト!!」
ピエール先生の祝福の声が聞こえた。
「翔太朗君、はじめはかなり苦戦したと思うけど、本当に機転を利かせてよく戦ったよね。」
ルカが拍手をしながらこちらに駆け寄ってくる。
「翔太朗殿、よく頑張った。まさかここまで成長するとは思わなかったぞ。」
カミラさんが、言った。
「今の相手は、私もアンソニーも力負けするところだった。流石、学校代表だけはあるな。どのチームも。」
カミラさんが付け加える。
「翔太朗君、本当にありがとう。やっぱ『鷲眼の術』は別格だね。」
リリアンがホッと一息つく。
「ありがとう。リリアンが上から攻撃してこなければ、どうなることかと思った。」
こちらも、リリアンの健闘をたたえた。
その後、僕たちは続きの試合を観戦した。
ミランダとアンソニーの試合が始まったが、こちらの試合も、ミランダのブラッドウルフの5体の召喚魔法から始まり、アンソニーの防御魔法で、攻撃準備に少し余裕を持てたことがきっかけとなった。
ミランダの氷の弓矢がいつもよりも正確だった。
こちらの試合も、ミランダとアンソニーの判定勝ちで、戦えることができた。
「翔太朗様に負けないと思って、頑張りました。」
ミランダがウィンクをしながらこちらの控室に戻ってきた。
「防御魔法が通じて本当に良かったぁ。」
アンソニーは素直に嬉しそうだった。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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