#67.大会初日の朝
モナリオ家の屋敷に朝日が差し込む。僕の部屋にも当然それは届いている。
感謝祭初日の朝を迎える。
今日から、魔道武術大会の本戦だ。セントアリア王国各地の学校から、優秀な生徒が集まる。 その学校の一つ。セディア魔道学院の代表に僕たちは選ばれた。
トントン。扉がノックされる。
「おはようございます。翔太朗様。よく眠れましたか。」
ミランダが、僕の部屋の扉を開けて入ってくる。
「おはようございます。ミラ様。よく眠れました。」
僕はミランダに元気に答える。
「その目は、ワクワクしているようですね。私もおんなじですわ。」
ミランダも元気そうだ。いつもよりもやる気満々のようだ。」
「おはよう、翔太朗殿。」
カミラさんも声をかけてくる。
「早速だ、今日に備えて、簡単に鍛錬しよう。」
屋敷の庭に移動して、朝の鍛錬が始まる。
カミラさんが相手になってくれて、それぞれ、体の動き方を確認する。
召喚する予定であろう、シロン、ユキナ、そして、ブラッドウルフたちの動きもすべて確認してもらった。
「うん。異常はなさそうだな。本番は戦闘の場面以外では、私と、ピエール先生もアドバイスできる。よく指示を聞いておけよ。まあ、最初のころと比べれば十分動きがよくなっているがな。」
「「はい。」」
僕らは、カミラさんの前で、うなずいた。
その日は、朝食をとり、屋敷の人たちがかなりの人数で見送ってくれた。
「しっかりね、ミランダ、翔太朗君。」
パメラさんが両手で、僕とミランダの頬を包んでくれる。
「まさか、学校の代表に選ばれるとはな。二人とも楽しんで来い。」
「ミランダ、気を付けてな。なーに、儂らも後で行くぞ。」
アルベルトさん、ポールさんにも親指を立てられながら、見送られる。
僕たちは、屋敷を後にし、いつもは行かない、広場とは反対方向の道へと向かっていった。
今日からは感謝祭、どこもかしこも飾りつけでいっぱいだ。王都の広場だけだと思ったが、この貴族街にも多くの飾りつけでにぎわっている。
「すごくにぎやかですね。」
「ああ、そうだろう。これが感謝祭だ。」
カミラさんがどうだ、という顔つきで、感謝祭がいかにすごいお祭りなのかを説明してくれる。
「セントアリアにはほかにもいろいろなお祝い行事があるぞ、また、いろいろと案内しよう。」
カミラさんが、笑いながら言っていた。
貴族街を抜けると、純白の王宮が一段と輝きを増してくる。
王宮の目の前に僕は来ていた。その、王宮、つまりお城に隣接している闘技場。ここが魔道武術大会本線の会場のようだ。
この闘技場は、いつもは軍の演習に普段は使用している。ほかにも、闘技の試合やいろいろなイベントで、使用されることはあるが、年季の入った建物であり、使用が制限されている。そのような関係もあり、普段のイベントはごく限られた観客しか闘技場に入ることはできない。そして、イベント主催側も他の会場を使用することがほとんどだ。
だが、この感謝祭に行われる、魔道武術大会は、それ以上の伝統があるのだろう。いつもの倍以上の観客が出入りし、出場する側も誇りをもって出場できるわけだ。
闘技場の出入り口で、学級のメンバーと待ち合わせをすることになった。
みんなが時間通りにやってくる。
「おはよう、翔太朗君、ミランダ。」
ルーベルトがやけに張り切っている。
「今日は絶対に負けない、勝つぞ。」
アンソニーと性格が入れ替わったのか。そんな感じで気合十分だ。
その他のみんなはいつも通り。ルーベルトに関しても気合がいいので良しとしよう。空回りしないことを祈るばかりだが。
「おはよう、みんな。今日は精いっぱい頑張ろう。気を楽にな。まだまだ、一年生。腕試しと思って。」
ピエール先生がこちらに来た。そして、カミラさんも一緒だ。
「では、翔太朗君に気合入れの言葉をもらおうかな。」
ピエール先生の一言で、みんなの視線が僕に向いた。
「おはよう。今日からいよいよ、本番だ。力を合わせて頑張ろう!!」
僕は、元気よく、ありきたりな言葉ではあったが、力を込めて言った。
僕たちは、受付を済ませて、闘技場の中へ入っていった。出場者は、闘技場のメインフィールドに通された。この場所をぐるっと囲むように客席が配置されている。
かなりの人数の観客がいる。普段は建物の老朽化を鑑み、この半分の観客しか収容しないらしいのだが、この大会は伝統があり、すでに満席近い観客であふれている。
「皆様。魔道武術大会へようこそ。この国の明日を担う若者たちが、この感謝祭の間、激闘を繰り広げます。どうぞ、観客の皆さま、明日ある若人のご活躍をとくとご覧ください。」
大会の司会者があいさつをした。
「それでは、国王陛下、カルロス=アリア三世より、開会のご挨拶です。」
一同が、貴賓席の中央に注目する。
僕は、国王陛下は初めて見る。どんな人物なのだろう。
貴賓席の中央に座っていた、人物が立ち上がる。
白髪白髭の年老いた人物だ。いかにも国王らしいマントを羽織っている。
「ただいまより、セントアリア王国、学校対抗魔道武術大会を開催します。」
低く、年老いた声で開催を宣言された。
観客の拍手喝さいを浴びる。
「それでは、早速最初の競技を開始いたします。それではスタッフの皆さま準備をお願いいたします。」
大会のスタッフが、どうやらハチマキを配っているようだ。
これは、もしかすると。
「ええ。最初の競技は、学校の予選会でもやった、ハチマキの争奪戦ですわ。これがこの大会の伝統なのでそれを想定して、学校の予選会の種目でも取り入れています。」
なるほど、そういうことか。
僕たちも、大会のスタッフからハチマキを受け取った。
全員分のハチマキを配り終えたところでルールが説明された。
「最初の種目は、恒例のハチマキ争奪戦です。どうぞ皆様、思う存分、自分以外のチームのメンバーのハチマキを奪い合ってください。制限時間は30分です。バトルフィールドの範囲は当然この闘技場のみです。なので、皆さん全員でバトルするのは少し無理なので、3つのブロックに分けています。ハチマキの色で、赤いハチマキのチームはAブロック、青いハチマキのチームはBブロック、黄色いハチマキの人はCブロックです。」
なるほど、確かに学校代表とはいえ、セントアリアにはいくつもの魔道学校のようなものがあるようだ。出場者の人数も結構いる。この闘技場のメインのフィールドはかなり広いのだが、それでも全員が同じようにバトルするとなるとかなり無理がありそうだ。
僕たちのハチマキの色は赤だった。なるほど、Aブロックか。
「それでは、Aブロックの人から争奪戦を始めます。BブロックとCブロックの方は控室の方へ移動してください。各チームごとに一つずつ、控室をご用意しています。」
Bブロック、Cブロックのチームの人たちが退場していく。
Aブロックのチームだけが闘技場のメインのバトルフィールドに残った。
その中に僕たちもいる。Aブロックのチームの数は合計20チームくらいだろう。
「それではAブロックの皆さま。試合を開始します。といっても、5分少々準備をいただきますので、それまで作戦会議をどうぞ!!」
司会のアナウンスが消える。沈黙が流れる。
「ドキドキする?みんな。」
僕は聞いてみた。
「はい。とても緊張します。」
リリアンがどこか不安そうな表情をしている。
「はい。こんなに大勢の人に囲まれるのは初めてです。」
マリアも同じだ。
「大丈夫だよ。リリアン、マリア。俺たちの全力、思う存分出し切ろう!!」
アンソニーが二人に喝を入れたようだ。
「そうだよ、二人とも、きっと大丈夫さ。」
ルーベルトが先ほどの気合と不安の表情はどこへ消えたのだろうか、冷静さが保っている。逆に不安になっている、リリアンとマリアに元気を入れていたようだ。
「そうですわ。みんな。行きましょう。」
ミランダがまとめ上げる。
「とりあえず、緊張している人もいるし、場所が狭くて、制限時間もあまりないようだからね。みんなで行動しよう。それでいいかな。」
僕が作戦を伝える。
「そうだね。とりあえず、守備魔法に長けている、アンソニーとマリアが前衛で、奪いに来たら奪い返すという戦法で。」
「「「了解。」」」
うまくまとまったようだ。
「皆様お待たせいたしました。それでは第一種目目、予選Aブロックの試合開始でございます。よーい。」
ドン!!
号砲が高らかになった。
あたりを見回すと、一人一人がバラけて行動したり、全員が一つになって動いているチームも様々だ。
そうなってくると、早速一人、僕たちのところへ攻めてくる人が来た。
「土魔法!!」
アンソニーがタイミングよく土魔法を放つ。
その土魔法にマリアの結界魔法が上手く乗った。
簡単には破れない土の壁が現れる。
「頼むぞ、翔太朗君、ミランダ。」
アンソニーの合図で、僕は土壁を飛び越え、相手の懐へと飛び込む、当然、マリアの結界魔法の付与付きだ。
そしてミランダも、素早く弓矢で対応して、攻めてきた人を氷の弓矢で射る。弓矢が土壁を突き抜け、そして、僕の風魔法と短剣とともに、命中。
ハチマキを一つ奪うことができた。
「よし、この調子だ。」
すると多方面からも、人が攻めてきており、一気に数人を相手にしなければいけない展開に。
「まずいな。・・・・・。」
「大丈夫です。」
マリアが結界魔法で、僕たちを包んでくれる。そして、マリアが閃光魔法を放ちまた一つハチマキを奪うことができた。
ルーベルト、リリアンも、『メテオ』そして、錬金術で作成した、爆弾の連射でハチマキこそ奪えなかったが、追い払うことに成功した。
「追い払うだけが精いっぱいだな。流石はそれぞれの学校の代表だけある。」
ルーベルトが言った。
「それでもハチマキを二つ奪うなんて、すごいよ。」
ルカが僕を励ましてくれる。
ルカはこの大会の直前に、リリアンの錬金で、持っている剣を強化してもらったようだ。魔力付与がされている。剣を振りかざすと炎が現れ、その炎で追い払っているようだ。
「一人で攻めてきたやつから確実にハチマキを奪おう。集団で来た奴らは追い払うのを優先で。」
僕は、みんなに指示を出す。
するとどうだろう、集団出来ても先ほどのようなハチマキを奪うことに悔しさを覚えず、みんなが次へ次へと切り替えることができた。
あっという間に制限時間の30分が経過した。
僕たちはこの後、1つハチマキを奪ったが。
結局合計して、3つしか奪うことができなかった。ただ、こちらは一つもハチマキを取られなかったので、良しとしよう。
「それでは、Aブロックの皆さまは控室へとどうぞ。ハチマキはスタッフが回収し、集計しますので、回収が済むまでそのままお待ちください。回収後に控室に移動できます。」
僕たちは、司会者と、スタッフの指示に従い、指示されたスタッフにハチマキを渡して、控室に移動した。
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