表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/136

#65.ワシ之信の目的


 「翔太朗、よくやったぞ!!」

 ワシ之信が僕を褒めてくれる。初めてだろうか。


 「いや、まさか、この爺さんが翔太朗君の知り合いだったとはね。」

 ルーベルトがワシ之信を見ながら言った。

 「そしてしかも、鷲だったなんて。」

 マリア、リリアンも目を丸くしていった。


 「うん、この人は鷲山ワシ之信。僕の古い友達で。僕の親戚の人の従魔だったんだ。もうその人は亡くなってしまったけど。」

 僕は、簡単に自己紹介をした。


 「翔太朗、あまりにも簡単すぎじゃないか。」

 ワシ之信は僕に、耳打ちをしてくる。


 「ごめん、ワシ之信。実はあれから色々あって、僕の出生は安易に外部に漏らしてはいけなくなったんだ。」

 「そ、そうか。それならいいや。」

 ワシ之信が再び、僕の耳元で話しかける。


 「改めて、鷲山ワシ之信だ。みんな、よろしく頼む。」

 「「「よろしくお願いします!!」」」

 学級のみんなは、自己紹介をそれぞれ始めた。そして。

 

 シロンとユキナは、この時ばかりは変身を解いた。

 「シロン=イーグルです。ご主人様、翔太朗様の従魔です。」

 「シロンの双子の妹のユキナです。同じく翔太朗様がご主人様です。」


 「おお。おお。かわいい鷲をパートナーにしおって、やったなぁ!!」

 ワシ之信が手をパンパンと叩く。

 シロンと、ユキナは再び人間の姿に変身して、真っ赤な顔をしてこちらを見ている。


 「さて、王都に帰るとしよう。ご老人も無事だったみたいだし。」

 「おお、そうじゃった。そうじゃった。王都に儂の荷物を預けておいたんじゃ。」

 ワシ之信が言った。

 

 「シロンちゃん、ユキナちゃんお願いできるかな。」

「「はい。」」

シロンとユキナは、もう一度変身を解き、みんなを乗せた。


僕も、変身する。純白の鷲の姿に。

「おお、変化も使えるようになったのか。見違えたのう。」

ワシ之信が声をかけてくる。


「じゃが、その様子だと、まだまだ身に着けたばかりじゃな。往路は人を乗せてきたのかな。」

「はい。だけど、人を乗せることだけが精いっぱいで、周りが見えなかったです。」

 ワシ之信の質問に素直に答えた。


 「おそらく最初に、一気に人を二人も乗せたからじゃろうて。そちらの御嬢さんとその護衛役のお方、帰りはすまぬが儂の背中に乗ってくれないか。」

 ミランダとカミラさんをワシ之信は指さした。


 「人を乗せる修業はまずは、一人を乗せることから始めないとな。そっちのリリアンという子だけを翔太朗の背中に乗せてみなさい。」

 ワシ之信が微笑む。

 

 「翔太朗、儂が後ろから付いてきてやるよ。思いっきり飛んでみなさい。」

 僕は頷く。そして、ミランダもカミラさんも頷いて、ワシ之信の背中に乗った。

 ただ、ミランダは少し残念そうな素振りを見せた。往路は僕の背中に乗ってきたためだろうか。


 僕たちは、王都に飛び立っていき、そして、王都の門の前にたどり着いた。


 「ご主人様。飛び方がスムーズでしたね。」

 「はい。最初人を乗せたときはどうかと思いましたが。」

 シロンとユキナは、僕に向かって笑顔で言った。


 「な。翔太朗。一人だけから始めると、スムーズだろ。」

 ワシ之信もシロンとユキナに同情するように言った。


 「はい。そうだね。ワシ之信、シロン、ユキナ!!」

僕も、自分の中で飛び方がきれいだったのに気付いた。そして周りを見る余裕もできた。


僕たちは、そのままギルド本部へ向かった。


「どうも申し訳ありませんでした。」

ワシ之信はベンジャミンさんに、素直に感謝と謝罪を述べた。


「いやいや、ご無事で何よりです。お荷物はこちらにお預かりしています。」

「ありがとうございます。」

ワシ之信は荷物を受け取った。


「ところで、ワシ之信様は翔太朗の古い知り合いということでしたね。やはりここへは翔太朗に会いに来られたのですか。」

「いや、確かにそれもあるが、もう一つ別の目的もあります。翔太朗、すまないが、今、お前が落ち着いている場所に連れて行ってくれないか、聞けば、そちらの娘さんの侯爵家にお世話になっているとか。」

ワシ之信が僕の方向へ向かってうなずく。真剣なまなざしだ。


「わかったよ、ワシ之信。」

「すまんの。」

僕は頷いた。


「よし、翔太朗、何はともあれ、依頼は達成だ。お前に頼んで正解だった。こちらの爺さんの相手は任せたぞ。」

ベンジャミンさんはそう言って、僕たちに報酬の額を支払った。


そして、学級のみんなと別れ、ワシ之信をモナリオ家に連れて行った。


モナリオ家に着くと、みんなが待っていた。

「お帰り、ミランダ、翔太朗君。」

ポールさんが出迎えてくれる。その隣にはアレックスさんも一緒にいる。


「お帰りなさいませ、して、そちらのご老人のお方は。」

ワシ之信は再び変身を解き、鷲の姿で、自己紹介をした。


「お初にお目にかかります。私は、鷲山ワシ之信。翔太朗の古い友です。詳しいお話をしたいので、お許しがあれば屋敷の中に入れていただきたいのですが。」

「なんと、翔太朗君の古い友達と。そうですか。翔太朗君、この人は、君をいじめていた里のメンバーではないのだね。君の一族の従魔とかでもなく。」

ポールさんが僕に向かって、確認してきたが。


「大丈夫です。この人は、僕の故郷で唯一味方してくれた親戚の人の従魔です。」

僕はポールさんに話した。


「なるほど、嘘は付いていなさそうだな。どうぞ、お入りください。長旅、お疲れさまでした。」

ポールさん、アレックスさんはワシ之信を屋敷に通した。


僕はワシ之信に話した。

「ワシ之信。大丈夫。ここの家の人は、僕の生い立ちを知っている人達なんだ。正直に話して大丈夫だよ。それに、僕もなんで、ワシ之信がここまで来たか、知りたいし。」

「そうか。それならお言葉に甘えるとするか。」


僕たちは応接間に通された。ミランダ、カミラさん、そしてポールさん、アルベルトさん、パメラさん、アレックスさんと屋敷の主要メンバーが応接間でワシ之信を出迎えてくれた。


「さて、翔太朗君の友達で、ワシ之信という方、いろいろとお話をお聞かせ願えませんでしょうか。」

ポールさんは僕たちを椅子に座らせて、メイドたちに紅茶を出させて、ワシ之信をもてなしていた。


「どうも、ありがとうございます。私は、鷲山ワシ之信。黒い鷲で、ここにいらっしゃる、翔太朗君の大叔父に当たります。吉田トン吉の従魔として、トン吉様とともに、世界中を旅し、そして、翔太朗君の故郷で、共に翔太朗君と修業をした仲であります。」


ワシ之信が自己紹介をした。


「なるほど、翔太朗君の、大叔父様の。」

アルベルトさんが応える。


「はい。トン吉爺さんは、風ノ里、僕の故郷で唯一味方してくれる大人でした。もう一人、赤髪の八重さんという僕と同い年くらいの女の子がいるんですけど、その三人で、修業してました。」

僕は、ワシ之信の自己紹介に付け加えた。


「なるほど、ワシ之信様はどうして、このセントアリアに。それに翔太朗君の居場所をなぜわかったのですか。確か風ノ里では、翔太朗君は死んだ人と思われているとか。」

パメラさんが質問する。ポールさんも頷いている。


「ええ。我が主吉田トン吉様は、予言の術が得意なのです。どうやら、我が主は自分が死ぬことを予言していたようで。それを把握したうえで、自らの死後、その後の翔太朗君の対応も予言していました。そして私に、東の大陸。つまりここを目指すように言われたのです。私に手紙を通してですが。」

ワシ之信は手紙を見せた。この手紙は明らかにトン吉爺さんの字だった。


【ワシ之信よ。


 儂のかけがえのない友へ最後の手紙を送る。

 数日前、儂は予言の術で、自分が死ぬところを見た。だから、ここにすべて書き記したい。この後起きること、そして、どうすればいいかを。


 まず、翔太朗のことだ。翔太朗は、儂が居なくなった後、里の者から死んだものとみなされ、遠くの地へと捨てられてしまう。

 これだと翔太朗があまりにも不憫だ。そう思った。だがしかし、翔太朗には幸運にも、素晴らしい人に拾われて、海を越えて、そこで才能を開花しているところを見たのだ。

 翔太朗の新しい場所、その国の名はセントアリア王国。

 お前も儂と一緒に行ったことがあるじゃろう。王都の街並みが美しいあの国だ。


 そして、この大陸は忍者ではなく魔導士の国なのだ。どうやら儂らの使っている『チャクラ』と、魔導士の使っている『魔力』は同じ存在の物らしい。それは、最近の研究で明らかになったようで、儂も知らんかった。翔太朗は、チャクラの才能ではなく、魔力の才能を開花させたようじゃ。

 本当に幸せそうにしている翔太朗を見て、儂はとても、とても安心した。


 ワシ之信よ。最後に、お前に頼みがある。

 家族、つまり翔太朗のことを大切にしない、吉田一族はもう終わりじゃ。風の里の長年の責任だ。自らの立場を鼻にかけた、吉田一族は、とうとう、人を勉学、忍術という基準でしかものを見れなくなっていた。あまりにも不幸なことだ。

 翔太朗はやさしさと勇気に満ちた少年だった。どうか、そなたも海を越えて、セントアリア王国を目指し、翔太朗に会いに行ってもらえないか。

 そして、もう一つ。セントアリアに行ったら、私の旧き友、フィリーネ=オランドという人物を訪ねてほしい。渡してほしい手紙がある。


 そして、翔太朗にも手紙を書いた。セントアリア王国で翔太朗にあったら、翔太朗宛の手紙を渡し、一緒に読んでほしい。ただし、翔太朗に手紙を渡すのは再会して、数週間後の方がいいだろう。そっちの方が翔太朗も、そして、翔太朗の友も精神的に、落ち着いている時期だ。翔太朗宛の手紙には、翔太朗とその仲間たちをかなり巻き込むような、儂からの重大な頼みもあるので、そうしてほしい。

 まずは、翔太朗とともに落ち着くところが見つかったら、フィリーネに手紙を渡すのを優先してくれ。最後の頼み。お前には苦労をかけて本当にすまない。


 儂はお前と一緒に旅ができて幸せだった。】


 僕は、トン吉爺さんの字の手紙を最後まで読んだ。


 「なるほど、翔太朗君の他に、ワシ之信様は、フィリーネ=オランド様を訪ねてこられたと。」

 アレックスさんも手紙を読み、ワシ之信に尋ねた。


 「はい。そうですね。何かお心当たりはございますでしょうか。」

 「うーむ、今どこにおられるのかわからないですね。お名前ならば存じ上げておりますが。」

アレックスさんが、ワシ之信に向かって、言った。


 「知ってるんですか。アレックスさん。」

 僕は、アレックスさんに聞いてみた。


 「知ってるも何も、何年か前まで、セントアリア王国の外務大臣を務めていた方です。優れた魔法の使い手でした。いろいろな占いの魔法だったり、それこそトン吉さんという方が得意としていた、予言の魔法も得意としています。」

ミランダが答えた。


 「ですが、外務大臣の辞任とともに、表舞台からは引退されてまして。どこにいらっしゃるのか。」

 アレックスさんはミランダの話に続けた。


 「そうだ、確かにトン吉爺さんも那ノ国で、外務大臣と同じような外務卿という職に就いていたっけ。多分その時に知り合いになったのだと思う。」

 僕は、とっさに言った。


 「なるほど、吉田トン吉様は那ノ国の外務卿でしたか。」

 アレックスさんは言った。

 「面識はありませんが、こちらも西の方の大陸に行ったときに、優れた方だと聞いていました。そうですか。」

 アレックスさんはうん、うんとうなずいた。


 「ワシ之信様。訪問、歓迎させていただきます。どうか、ここを拠点として、休んでいってください。フィリーネ様のご連絡先と、居場所も調べるのをお手伝いさせていただきます。」

アレックスさんは改めて、頭を下げた。

ポールさん、アルベルトさん、パメラさんも同じだった。


 「そうですな。ワシ之信よ。どうか、翔太朗君とともにここを東の大陸の拠点としてくだされ。翔太朗君の部屋の隣に空き部屋が一つありますので、そちらをご用意する。」

ポールさんは続けて言った。


 「お心遣い感謝します。ポール様。」

 ワシ之信は頭を下げた。


 「恐れながら、翔太朗に今すぐ手紙を渡してはいけないというと。一体どういうことなんだろうか。ミランダさんもカミラさんも、すぐに翔太朗の頼みを手伝ってくれるかけがえのない友に見えるが。」

 ワシ之信は僕と、ミランダを見て尋ねた。


 「おそらく、武術大会の本戦が終わるまで待っていてくださいということなのでしょう。ちょうど、本戦は数週間後に控えています。いよいよ。この国は、感謝祭の準備に入ろうとしているところですわ。」

 ミランダが答えた。


 「なるほど、それに翔太朗とその仲間たちも出場するのか。よかろう。それまで待とうかの。」

 ワシ之信も安心したように言った。


 僕とミランダ、そして、シロンとユキナは、ワシ之信を部屋に案内し、僕たちもワシ之信のとなりにある、自分の部屋へと戻っていった。


 「ええのう。翔太朗は、儂も一度でいいから、こんな別嬪の二人と一緒に寝てみたいのう。」

 ワシノ信は、シロンとユキナを見て笑っていた。


 「ちょっと、おじいちゃん。私たちのご主人様は翔太朗様なのよ。」

 「あの、そちらの部屋で大丈夫です。私たちが守りますので。」

 シロンとユキナは、ワシ之信に向かって笑いながら言った。同じ仲間なのかすっかり打ち解けたようだ。

 「冗談じゃよ。冗談。シロン、ユキナ、翔太朗を頼むぞ。おやすみ。」

 

 「もーっ、言われなくてもわかってますよーっだ。」

 「おやすみなさいませ。ワシ之信様。」

 

 僕たちは、そういってお互いの部屋へ入っていった。



今回もご覧いただき、ありがとうございました。

少しでも続きが気になる方は、ブックマークと、高評価をお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ