#63.謎の老人
セントアリア王国、フィオナゲートの港町。王都まではここから歩いて半日ほど。朝に出ればどんなに遅くとも、日没までには王都につく計算だ。
「やっと着いたな。フィオナゲート。随分と変わったな。」
黒の着物に袴。そして白髪交じりの老人。
そして・・・・・。
「爺さん、これで全部かい?」
船から船員が、大きな荷車を担いできた。
「おお、そうじゃよ。ありがとな。」
その荷車にある大量の荷物は、全てその老人の荷物だった。
老人は感謝の気持ちでいっぱいの表情になり、笑顔で船員からこの荷車を受け取った。
「爺さん。そんな荷物をもって、どこまで行くんだ?」
「王都までな。」
船員に聞かれたので、その老人は答えた。
「そうかい、気を付けていきなよ。」
老人は船を降りて、そそくさと大きな荷車を引き、王都へと向かっていった。
別に、フィオナゲートから王都までは頻繁に利用者も多いし、街道も整備されているため、行きかう人の需要もかなりある。
それは不思議なことではない。ただ、あまりにも大量の荷物だったため、一体どうしたのだと船員は思ったのだろう。
老人はフィオナゲートの街を少し散策した。
「ここはいつ来てもいい港町じゃ。」
老人は少し涙目になりながら、歩いていく。
さて、少しばかりこの老人に対しては、この荷車の重さは、体に負担がかかったのだろう。
当然である。
少しばかりこの老人はお金を持っていた。
だが、持っている所持金の数が足りなそうと見たのだろう。フィオナゲートの銀行で、セントアリア王国の通貨に交換してもらう。
身分証も所持していたため、簡単に交換してもらうことができた。
だが、その身分証はとても古いものだった。有効期限が切れていたので、更新してもらうことにした。
「古い身分証があって助かった。流石にこの荷物を王都まで運ぶとなると・・・・・。」
老人は少し考えた。そして、このセントアリアの国、いや東の大陸にはギルドという存在があったことを思い出す。
セントアリアの冒険者ギルド、フィオナゲート支部。ここに老人は入っていった。
「爺さん。大丈夫か?」
フィオナゲートの冒険者ギルドの支部長だろうか。声をかけてくる。
「ああ。大丈夫。大丈夫。慣れないことをしたので、疲れただけじゃ。ところで、仕事を頼めるかの。」
老人は支部長に向かって、仕事依頼を出した。
「おう。なんでもいいぜ。依頼内容によってはお金が掛かるかもしれないが。」
「簡単な依頼じゃよ。外にある、儂の荷車を王都まで運んでほしいんだよ。」
老人はそう言った。
そして、支部長は、老人の荷車を見た。
「爺さん、こんなバカでけえ荷車を王都まで運ぼうとしたのかい?」
「ああ、そうじゃよ。」
ギルドの支部長は驚いた。あまりにも荷車が大きかったからだ。
「ここから王都は確かに近いけど、爺さんの体力じゃそれは無茶だぜ。お安い御用だぜ、爺さん。王都まで運んであげるよ。爺さんはゆっくり休みながら来てくれよ。これくらいの依頼であれば、最低ランクのGで行けるし、すぐに受注できる冒険者がいるはずだよ。報酬も格安にしておくぜ。今からなら最速で明日中には届いているからな。明日から、1週間以内に王都の冒険者ギルドで受け取ってくれよ。」
「おー。ありがとう。」
老人はそう言って、フィオナゲート支部の冒険者ギルドを去っていった。
老人はゆっくり、ゆっくりと王都を目指した。
さっきの荷車は別に運ぼうと思えば王都まで一人で運べた。だがしかし、王都までの距離が判らなかったため、冒険者ギルドに依頼したのだった。
「久しぶりとはいえ、思えば遠くに来たもんだな。」
老人はそう言って、ため息をつきながら、街道を進んでいく。
だがしかし、老人の進んでいる、この街道は王都への直通の街道ではなく、一度クルレの農村を経由して、王都へ向かう街道だった。
それゆえに、街道も王都へ直通する街道よりも整備されておらず、行きかう人もやたらと少ない。
「おかしいな。フィオナゲートから王都まではかなり需要があって、多くの人が行きかうのだけれど」
老人はつぶやく。
やがて街道は森の中へと入っていく。
「森の中か。しかもかなり深い。この道、王都へ向かっているのだろうか・・・・・・・。」
と、森の中に入っていく。しかし。
「おい、爺さん。高そうな服と高そうなものをしょってるじゃないか。」
盗賊が現れた。
「しまった。」
老人の顔が真っ青になる。
しかも、盗賊は一人、二人ではない。かなりの大人数に、この老人は囲まれていた。
一気に切り抜けようか。いや、この人数で、この老人にしては知らない土地だ。仮に逃げても一瞬離れられるだけで、すぐに捕まるだろう。
それに、老人は安易に自分の素性を明かしてはいけなかった。
仕方ない、ここはひとまず盗賊達のアジトにお世話になろう。
そういう意味でも、荷車を冒険者ギルドに預け、仕事を依頼したのだから。
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