#62.満点合格者
「さあ、行くぞ、なぜおまえがここの級長になることができたか俺が見定めてやる。」
フロイが僕を睨みつけて高らかに言う。
「臨むところだ。」
僕は鋭い目つきで睨み返す。
『肉体強化~速さ~』の魔法を唱えて、魔法陣を出現させる。
両手に短剣を持ち、一気に畳みかける。
「速い。だが、僕は止まって見えるんだよ。」
確かに、僕の短剣は全てフロイの剣に受け止められている。
「シロン、ユキナ!!」
「はい、ご主人様。」
シロンとユキナは、上から、羽を降らす。
『フェザースコール』だ。僕は一気に加速していく。
『トルネードカッター』。これを発動しても、フロイはびくともしない。
「今度は、こちらから行くぞ、『ファイアーソード』」
炎となった剣が飛んできた。かなりの威力だ。
「どんどん行くぞ、『爆裂斬』」
今度は、地面が割れて、勢いのある火力が飛んできた。
僕はかわすのが精いっぱい、だが、カミラさんの『炎の鉄拳』と同じ内容で応用できるようだ。
すぐにかわすのに慣れていく。
フロイの剣の魔法はまるで自由自在だ。
確かにあの魔法ならここまで無双できる。
だが僕は、たとえそれを食らっても立ち上がらねばならない。ここにいる1年5組の、1年第5班の仲間たちのため。そして、フロイたちのクラスメイト、1年8組のメンバーのために。
こいつに勝てれば、フロイも改心して、1年8組の仲間が、もう一度頑張れると思うから・・・・。
大きくジャンプしてフロイの背中に回り込む。そして、ジャンプしながら魔法陣を発動する。
「『トルネードカッター』」
僕の風魔法はフロイに命中した。
「よし、シロン、ユキナ!!」
シロンとユキナが僕を乗せる。
僕は、一気に勢いをつけるべく、シロンとユキナに乗って、校舎の屋根へ。ここから一気に降りて、加速して大ダメージをと思ったが。
フロイは屋根の上に魔法で瞬間移動してきたようだ。
「おお、なかなかやるものですね。」
ドキッとする。まずい・・・・。
何かはわからないが今日いちばんの緊張感に襲われる。
「こんなうわさがあるのは、ご存じですかな。裏口入学の級長さん。」
何だ。心臓がバクバクする。
フロイはさらに続ける。
「満点合格で入学した人がいるって・・・・・。」
知っている。その入学者はマリアのはず。ドラゴンに育てられ、古い魔法を使いこなすマリアなら・・・・。
「それは、そこにいるマリアなのでは・・・・・。」
僕はフロイの言葉に応えた。
「入学試験はですね。魔法の科目があるのはもちろんですが、他にも剣術の科目があるのですよ。」
そういえば、マリアが剣術を使っているところは見たことがない。
フロイは威力の高い魔法を使いこなし、剣の腕も確かだ。
「まさか・・・・・。」
「そう、そのまさかですよ・・・・・。」
フロイは僕に剣を向けて行った。
「ここでくたばっていただきましょうか。そして、持っているオーブもいただきましょうか。満点合格したであろう、この僕が相手をしましょう!!」
フロイは一気に剣を振る。
「『風来斬!!』」
風が一気に吹き荒れる。風の刃が見える。
その風の刃をぎりぎりでかわす僕。
「どうです。あなたの得意な風魔法。その風にやられる気分は。」
まずい、風の威力でも上手を取られた。
フロイはさらに剣を振り回す。
「『風来斬!!』」
「『風来斬!!』」
「『風来斬!!』」
「『風来斬!!』」
風の刃が一気に襲い掛かる。
ついに僕は屋根から滑り落ちてしまった。
「「ご主人様!!」」
シロンが僕をキャッチする。
僕は、間一髪で落ちた衝撃から助かったようだ。
「お怪我はありませんか。ご主人様。」
学校の屋根の上、つまり屋上の周りを僕はシロンとユキナとともに旋回し続けている。
フロイもそれに気づいたらしく、僕たちの方に向かって、『風来斬』をひっきりなしに放ってくる。
僕は下を、学級のみんなの居る方向を見た。
「まずい。翔太朗君の得意な風魔法で上手を取られると不利だな。」
ルーベルトが冷静に分析している。
「翔太朗様・・・・・。これだと迂闊に近づけない。風魔法と同時に、素早さも封じられているなんて。」
ミランダが、悲しそうな表情をしながら、悲鳴と感情に近いような声を上げている。
「風魔法。素早さ。翔太朗君の特技を同時に封じられたか・・・・・。残念だが、フロイの方がリードだな。」
ルカが表情を変えずに、言った。
「でも、逆境でも戦うのが、騎士。翔太朗君もそれがありそうだね。」
ルカはさらに続ける。
「すごいね。5組の級長さんと、5組のみんなは。」
結界の中から、8組の女子生徒が言った。先ほど意味も解らず、『ファイアボール』を連発していた、生徒だ。
「ああ、逆境にあっても負けない。」
「ううん。みんなが彼を強くしているね。」
前衛で、アンソニーの壁を壊そうとしていた、男子生徒も2人も言った・
結界の中の8組の生徒の言葉に気付いたのか、学級のメンバー全員は8組のメンバーに視線を向ける。
「そうさ、これが僕たちの翔太朗君だよ。」
アンソニーは素直に答える。
「私、親がいなく、一人で育ったんです。私の境遇も理解してくれたのです。」
マリアが続ける。
「そうですわ。みんなにやさしいのが翔太朗様ですわ。」
ミランダも、アンソニー、マリアに同情した。
「僕たち、ずっとフロイ君が怖かったんだ。」
「うん。あの鷹のような鋭い目つきで睨まれて。入学してからずっと。」
なるほど、やはりそうだった。
「自分は頑張っているから、自分は優秀だからって。」
「そうなんだね。僕たちからしたらやっぱりねと思ったよ。」
ルーベルトが続けた。
「ああ。僕の目からもそれは明らかだった。彼を恐れて思うようにパフォーマンスができないみんなを見ていてね。」
ルカが続ける。
「何だろうな、翔太朗君は安心できるんだよ。何だろうな。僕たちのことをかけがえのない仲間と思っている。」
アンソニーも元気よく言った。
「でも、翔太朗君だっけ。このままでは僕たちの組が勝って、フロイ君に負けちゃうかも。」
8組の生徒が言った。
「大丈夫。ビックリするから。」
リリアンが不安そうなみんなをなだめるように言った。
「ああ、きっと翔太朗君はつらいことを楽しく乗り越える、そんなすごい体力が備わっている人だよ。しかも本人は気付いていないようだけどね。」
ルカはみんなを元気づけるように言った。
みんなは頷く。
「ははは。どうだ。僕に近づけないだろう。」
フロイは叫んでいる。
「シロン、ユキナ。いったん離れよう。」
僕たちは、その場を離れた。風来斬が届かないくらいの距離に離れた。
「どうだ、降参したじゃないか5組の級長は。どんどんどんどん、離れていくではないか。」
フロイの視界から、僕たちは見えなくなったようだ。
それを見たフロイは。
「さて、では、残りの皆さんを倒して、オーブをいただくとしますか。」
フロイが剣を上げた瞬間。
雷が落ちた。
そして、さらに羽が落ちた。『フェザースコール』だ。
「「「やった!!」」」
僕の学級のメンバーがガッツポーズをしながら、喜んでいる。
「『ウォーターサイクロン』!!」
僕が放った『ウォーターサイクロン』はフロイに命中した。
「な、なんで。」
フロイが僕を見た。
そして、彼が僕を見て判ったのだろう。
「そ、そんな、そんなことが・・・・・・・・。この魔法を使える人が僕の前に現れるなんて。なぜだ、なぜだ、なぜだぁぁぁぁ。」
僕は『鷲眼の術』を使い、遠くから、狙いを定めた。そして、一気に加速して、フロイの懐に飛び込んだのだ。フロイも『鷲眼の術』を発動した僕を見て、かなり困惑しているようだ。
「ご主人様、一気に行きますよ~。」
シロンが得意げに言った。
短剣に、カミラさんから教えてもらった、炎の魔力を込めて、一気にたたみこんだ。
フロイのパフォーマンス、威勢は、明らかに衰えて、学校の屋根の下に引きずり下ろすことに成功した。
マリアと、ルーベルトが落ちてきたフロイにとどめを刺そうとしている。
そして、マリアは剣を持っている。
「翔太朗君、ごめんね、私も剣が使えるんだ。」
その言葉に安堵した、なるほど、これでマリアが満点合格で受かった人物だと確定できた。
そして、マリアの剣術の初披露。
光の魔力を解き放った、マリアの剣術。そのひと振りで、フロイを校舎の壁の方に向かって突き飛ばした。
このままでは、校舎の壁が壊れる。と思ったが・・・・。
魔法陣が発動した。そして、その魔法陣が、フロイの衝撃を和らげた。
8組の、『ファイアボール』を意味も解らずに発動していた、女子生徒がその魔法陣を発動していたらしい。そして、彼の治療魔法を行った。
先ほどのファイアボールと違って、それは的確で優れた魔法だった。
「な、なぜ、助ける。この僕を。」
フロイは、その女子生徒に向かっていった。
「フロイ君も私たちの学級の一員だよ。」
その女子生徒は言った。ほかの生徒も、うなずく。
フロイの治癒術が終わると、女子生徒は僕たちの前に出た。
「5組の皆さん、ありがとう。私たちは大切な何かを教わった気がします。」
そういえば、マリアの結界がこの生徒たちにはなかった。
「ああ、結界は、私が解除しました。フロイを助けたいという気持ちが、上回っていましたし、何よりも。」
「私は、1年8組のディーリアと言います。」
「同じく、1年8組のボブ。」
「同じく、1年8組のマルコ。」
ファイアボールの女子生徒と、前衛で、土壁を壊そうとした男子生徒二人が名乗った。そして、それ以外のメンバーも自己紹介を済ませた。
「本当に5組のみんなは、素晴らしかったよ。はい。これ。」
ディーリアは、二つのオーブを取り出した。黄色と、緑のオーブ。
「もらっていいの。」
僕は、8組のみんなに声をかける。
「「「もちろん。」」」
みんなは声をそろえて答えた。
「そもそも、そこにいるマリアさんに結界魔法をかけられた時点で僕たち、負けたし。」
「フロイ君を倒せたんだもの。すごいよ。」
彼らは、僕たちに敬意を表してくれたようだ。本当にうれしかった。
「ありがとう。1年次同士、お互い頑張ろう。」
僕はみんなに声をかけて、その二つのオーブを手に入れることにした。
「勝負、ありました。1年5組。4つのオーブを奪い。代表決定です。数年ぶりの1年生の学級が代表になりました。」
アナウンスが、流れる。
見ていた場内も盛り上がっていた。
理事長のポールさん、そして、カミラさんとピエール先生が駆け寄ってくる。
「すごい。よくやったミランダ、それに翔太朗君も。」
ポールさんは笑顔で、声をかけてくれた。
「すごいぞ。お前ら、胸を張って今日は帰ろう。1年次で代表は本当にすごいことだ。」
ピエール先生も太鼓判を押した。
「うん。翔太朗殿、ミラ様。そしてみんなもよくやった。」
カミラさんもうなずいている。
8組の担任の先生らしき人物が8組のみんなのところへ駆け寄ってきた。
「大丈夫か。フロイ。」
「せ、先生。」
フロイは、ゆっくりと答えた。
「フロイ、信頼関係はとても大事だ。この班はとても見込みがある。そして、フロイには何よりも、それを学んでほしかった。だからこの魔法武術大会に出場させた。結果はどうだったか。5組のみんなと、8組のみんなの違いは分かっただろう。」
「は、はい。」
フロイは、涙ながらに応えた。
「では、何をすべきなのか、今後どうするのか分かったね。」
先生はフロイを諭すように言った。
その後、フロイはみんなに謝っているようだった。
8組のメンバーが、次年度の武術大会でさらにパワーアップできることが楽しみだ。
「さあ、疲れただろう、ミランダ。翔太朗君。家に帰って休もうか。そして、感謝祭の時の本戦も楽しみにしているぞ。」
ポールさんは、優しく声をかけてくれた。
「そうですわね。みんな。頑張りましょう!!」
「みんな、今日はありがとう!!」
ミランダと僕は、元気よく声をかけて、今日の校内予選。セディア魔道学院の校内予選は終了した。
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