#61.1年8組
二つのオーブをリリアンの鞄にしまい、次へ進むことにした。
「1年8組。黄色と、緑のオーブを獲得しました。」
アナウンスが流れる。
今、僕たちは、青と赤のオーブを持っている。これで、1年8組と戦えば、本戦に出場となる。
さらに・・・・・。
「2年6組は、青と、緑のオーブを獲得しました。」
とアナウンスが流れる。さらにアナウンスはこう続けた。
「これで、1年5組と、1年8組で、対決を、2年6組と、現在戦闘を行っている、3年生同士の学級のうち勝った方が、2年6組と対決して、それぞれ勝った方が代表として本戦に出場できます。それでは引き続き頑張ってください。」
なるほど、1年次生同士の対決となる。
「勝ちたいね、翔太朗君。」
アンソニーの目が燃えている。
「ここまで行けたのです。絶対に勝ちましょう。」
ミランダも強気だ。
廊下を進み、校庭に出た。
「おやおや、1年5組の皆さんですかな。」
大きな声がした。そして、僕たちの前に8人、生徒が現れた。
僕たちは、身構える。
「慌てなくてもいいですよ。僕は、1年8組の級長。フロイ=リンドでございます。」
背の高い眼鏡をかけた、いかにもその眼鏡の奥には、鷹のような鋭い目つきで、いやらしい瞳が怪しく光る人物が名乗り出てきた。
「ルカ君がいたのですぐにわかりましたよ。皆さんが1年5組とね。」
「リンド家のフロイ。お前もいたのか・・・。」
ルカが少し低い声のトーンになる。
「ああ、リンド家は、僕と同じような感じの貴族さ。しかも新興貴族。数年前一代で貴族になり、広い領土を持っていることが自慢らしくて、貴族の爵位を手に入れてからはこんな感じだよ。フロイとは同じような子爵家で小さいころからの腐れ縁。」
なるほど、ルーベルトと同じような性格だ。貴族というのはこういった人も確かに多い。
しかし、僕の勘なのかはわからないが、このフロイという人物は、ルーベルトのような貴族の中でも人一倍厄介な奴かもしれない。
そして、フロイの他の1年8組の生徒はというと、動揺したような目をしている。
よくもまあ、1つ目の種目を突破できたと感じる。
ほとんど、こいつのワンマンか。
「さて、皆さんの班からオーブを奪えば。僕たちの勝ちが確定しますね。やらせていただきますよ。全力で。」
僕たちは、構えに入る。
「よし、お前ら、こいつらが今からの相手だ、飛ばしてけよ。」
8組のメンバーはフロイの号令の下、おどおどしながら、武器を取る。
「行きますわよ。翔太朗様。」
ミランダが話しかける。僕も体制を整える。
8組のメンバーの男子生徒が2人、前衛の僕とアンソニーに向かって突撃してくる。
アンソニーは土魔法で、防御する。
「アッ。」という顔をする。
「土壁くらい壊してしまえばいいでしょうが。」
フロイに言われて、壁の向こうで、おどおどしているが、すぐに壁を壊そうと動作にかかる。
僕とアンソニーに攻撃してきた、男子生徒二人のうち一人は、アンソニーと同じくガタイがいい。もう一人はそこまでガタイがいいわけではないが、背が高くて、なかなかパワーがありそうな二人だった。
土壁が破られるのは時間の問題かと思ったが。
「まったく遅いんだよ。もっとパワーで押しきれよ。仕方ありませんね。」
フロイが、魔法を使い、土壁を爆発させる。
「ほら、僕にかかればこんなに手間が省けるのです。しかし魔力が消費してしまいました。感謝しなさい。魔力がなくなった分は働いてもらいますよ。」
フロイは男子生徒2人に言い残した。
さらに1年8組の女子生徒が炎の魔法を唱える。
炎の球が飛んできた。
とっさに僕たちは攻撃をかわしていく。
「何をしているんです。早く倒してしまいなさい。」
フロイは、魔法をかけた女子生徒にもきつく当たっている。
女子生徒は躍起になってさらに魔法をかけているようだ。
アンソニーは動揺している。しかし。
「慌てないで、アンソニー、翔太朗様。」
ミランダが声をかける。
「あの子たち、さっきから本来の調子を出していない。もっと、集中して、魔法陣と詠唱を少し長くして、余裕を持っていれば、さらに威力の高い魔法を唱えられるのに。」
確かにそうだ。あれだけの『ファイアボール』の『量』はカバーできているが、その『質』はさんざんたるものだった。
「なるほど、1年8組の実態がこれのようだね。」
ルーベルトが言った。
「この学級、フロイ君のワンマンプレイが目立ちすぎだ。フロイ君のテンポにみんなが合わせようとしている。フロイ君も学級のみんなを信用していないというかそんな感じだな。1種目目は相手からとにかくハチマキだけを奪う種目。ある意味で個人プレイでも対応できたが、この種目は団体戦がメインだ。ここまで連携がひどいとなると・・・・・。」
僕もうなずく。全員が共通理解したようだ。
「他の生徒さんに手を出すのはあれなので、敵をフロイだけにしてみよう。」
僕はそう言って、学級のメンバーに指示を出した。
ミランダのブラッドウルフ、つまりクロたちで、フロイ以外の生徒を一気に追い込む。
そして、ミランダの氷の弓矢で、足止めをする。
ルカは一気に剣を抜き、ファイアボールを唱えていた、女子生徒に向かって剣を振っていく。
ファイアボールの軌道が乱れた。
そして、マリアが結界魔法をフロイ以外の一人一人にかけて、フロイ以外の生徒を一時的に結界の中から出られないようにして、行動不能にした。
「なにしてくれてんだよ。お前ら、いい加減にしろ、なんで俺の足手まといになっているやつばかりなんだよ。この学級は・・・・・・。」
それを見たフロイは、狂ったように叫びをあげている。
「だいたい、なんでこんな裏口入学と噂されるバカが級長やってる学級に負けなきゃいけないんだ!!」
さらにフロイは叫んでいる。
「だったら、勝負して見ろ。仲間を笑いやがって、僕は許さない。自信があるんだろ。」
僕は、フロイに言った。
おそらく、この1年8組のメンバーが思うように力が出せないのはフロイのここまでの言動にあるようだ。
僕も風ノ里に居たからわかる。両親や兄、さらには使用人、里の人から罵詈雑言を浴びせられ、本来の力が出せなかった。
でも、今は違う。本当の仲間と出会ったから本来の力がだんだんと、出せるようになっている。
「ああ、そうだな。俺一人でこいつら、かたずけてやるわ。まずは、この減らず口の裏口入学の級長からな。」
フロイは僕を指さした。
一騎打ちか。
「シロン、ユキナ。行くよ!!」
「「はい。ご主人様!!」」
シロンと、ユキナはホワイトイーグルの姿に戻り、僕と一緒に鋭い目つきで、フロイを見つめている。
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