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#57.武術大会の予選、その1


 魔道学院に入学して、学級のみんなと出会ってから、ひと月が立った。

 今日からは、魔道武術大会の校内予選大会が始まる。

 つまり、セディア魔道学院から代表を決めるのだ。


 この予選会は体育祭も兼ねており、かなり魔道学院が盛り上がる。

 一年次の生徒は出られない生徒が多いにもかかわらず、体育祭、つまり予選会を楽しんでいる。仲間たちの応援をするのだそうだ。

 

 予選会の開会式がこの学院の理事長ポールさんの挨拶により行われる。

 「皆様、正々堂々戦ってくれることを望みます。魔道武術大会を目指して、さらにその先の優勝を目指して是非、日ごろの成果を十分に発揮してください。」

 

 ポールさんの挨拶が終わると最初の種目に移る。

 全員にハチマキが配られる。

 「そのハチマキ、頭でもいいし首や、腕でも構いません。どこでもいいので身に着けてください。」

 と説明を受けたので、ハチマキを身に着ける。

 頭で良いかと思い、僕は頭にハチマキを身に着けた。

 

 「最初の種目は個人戦メインの戦いです。このハチマキを相手から多く奪ってください。ただし、奪われても脱落ではなく戦闘に参加することができます。つまり、誰かがハチマキを二個以上持っていれば、当然、二個奪うことが可能です。仮に、ひきつける魔法を使って、百個奪って持っていたとしても、百個誰かに奪われるリスクもありますので、ひきつける魔法を使える人たちは慎重になったほうがいいかもしれませんね。」

 

 なるほど、つまり、奪われても取り返すことができるわけか。

 

 「制限時間は1時間。ハチマキを多く持っていた上位の学級が次の種目を行うことができます。範囲はこの学院の校内すべてを使ってOKです。それでは今から20分後に開始しますので、各自シンキングタイムをどうぞ。」


 シンキングタイム。というより作戦会議だ。魔道学院の一年次。先生の推薦でこの大会に出られている。

 「先生とカミラさんの期待に応えよう。みんな、よろしく。」

 僕は、学級、つまり同じチームのメンバーの気合を入れた。学級のメンバーはピエール先生とカミラさんを除く7人。

 7人全員を集めて、円陣を組んだ。


 「いつでもいけますわ。翔太朗様。」

 ミランダが元気よく言う。

 「いよいよ、僕の出番だ。翔太朗君。期待していてくれ、絶対に勝ってやる。」

 ルーベルトが仲間を信じたように言った。なぜかはわからないが、ルーベルトが燃えている。

 

 「頑張ります。」

 「私も、頑張ります。」

 マリアと、リリアン。この二人はおとなしい方なので、小さく頷いている。


 「よし、見てろよ。俺の腕を。」

 「僕も頑張るよ。」

 アンソニーとルカも同じだ。


 さて、円陣を組んで気合を入れた後、残り時間もまだある。

 作戦会議と行こう。

 この種目は確かに個人戦だが、最終的には、取ったハチマキの本数がこの学級のポイントになる。

 つまり、全員、守に徹して一本も取られなければ7ポイントは確実に入る。

 それに、先ほどのルール説明にもあったように、多く奪えば奪うほど、奪われるリスクも高くなる。

 

 「作戦だけれど、個人戦といっても、最終的にはこの学級の得点となることから、別にここにばらける必要もないと思っている。何人かでペアを組んで、そのペア同士でばらけてみてもいいのではと思う。」

 僕が提案してみる。


 「うん。確かに一理ある。一人で行動して、一本狙われるリスクが高まるよりは、みんなで行動して、守りに徹しながら巡回するのが一番いいかもしれない。」

 ルーベルトが乗ってくれた。


 「確かにそうだね。」

 「いいですわね、翔太朗様。」

 

 ルカと、ミランダもこの作戦に乗ってくれた。


 「じゃ、行動するペアを決めましょう。2人、2人、3人の小チーム編成ですね。」

 「力関係はみんな同じような感じなので、簡単ですが、カードを用意しました。このカードを引いて一緒に行動する人を決めましょう。」

 マリア、そして、リリアンがカードを作ってくれた。

 

 「早速、ありがとう。」

 僕は2人にお礼を言って、カードを引いた。


 僕と一緒に行動する相手はルカに決まった。

 あとは、小チームごとにどうするか決めることにした。


 「みんな、しっかりね。」

 「「「うん。」」」

 スタートの位置はどこからスタートしてもいいということだった。

 というわけなので、僕たちはお互い見つめ合って、そして、うなずき合って、それぞれのスタートの位置へと別れて行った。


 一緒に行動する相手がルカならば・・・・・・・。

 一つやれそうな方法があった。


 「ルカは、ユニコーンを召喚できるから、乗馬は行けるはずだよね。騎士の家系だし・・・・。」

 「うん。乗馬ならできるよ。父上や兄上たちにしごかれた。」


 やっぱり、という返答が返ってきたので安心した。

 

 「翔太朗君は乗馬は出来るの?」

 ルカが質問する。

 「ごめん、乗馬は出来ないけど・・・・・・。」

 僕が、答えるとルカが納得したような表情になった。


 「ああ。何がしたいのかは大体わかった。大丈夫。兄上の一人はペガサスと従魔契約を結んで、召喚できる人がいるから、僕も一緒にペガサスに乗せてもらったし、操縦も一通りできるよ。だから、毎回洞穴で修業に行くときも、結構楽しかったな。自分一人でできたらなと思っていたし・・・・・。」


 ペガサス、言うまでもなく、空を飛ぶことができる、馬に羽の生えた魔物の一体だ。


 「ありがとうルカ。よし、じゃあ。それで行くよ。」

 「OK。任せて。」

 そういって、ルカは槍を準備した。

 僕も気合を入れて、魔法陣を思い浮かべる。何度もやったことがある魔法陣だ。大丈夫。


 「それでは、試合開始のカウントダウンです。」

 

 学院内にアナウンスが響く。


 「10、9、8、7、6、5、4、・・・・・・。」


 「「「3」」」

 「「「2」」」

 「「「1」」」


 

 ドーン!!


 試合開始の号砲がなった。


 

 「行くよ。シロン、ユキナ。」

 召喚魔法を僕は使い、シロンとユキナを召喚する。


 「ルカはユキナに乗って。シロンは僕が乗るから。」


 「わーい!!ご主人様が乗ってくれる~。残念だったわね。ユキナ。」

 シロンはとても元気だった。

 ユキナは少しうらやましそうな眼をしていたので。

 

 「ごめんね。ユキナ。おとなしくて冷静だから。ルカをお願いします。」

 「はい。行きます。ルカ様。」

 「ははは。ユキナちゃん。ごめんね。」

 ルカはよろしくお願いしますという意味と。意味深な表情を半分浮かべながら、ユキナに乗った。


 「時間がないので上に。・・・・・・・。二人にも状況を説明するから。」

 

 素早く、魔道学院上空に飛び立つ。


 僕とルカのハチマキは無事だ。

 上空へ来れば安心だろう。同じような魔法を使える人はあまりいない。万が一狙われてても、シロンとユキナのスピードで逃げられる。


 魔道学院全部の敷地が見渡せるくらい上空へやってきた。

 こうしてみるとかなり広い。ほかの相手はどこにいるだろうか。

 僕は、『鷲眼の術(イーグル=アイ)』を使い、確実に的を絞る作戦に出た。


 そして、シロンとユキナに状況を説明した。二人は魔道武術大会の校内予選が今日行われることを知っていたので、どのような種目なのか。どのようなルールなのか、どのような作戦を実施しているかを伝えた。


 「なるほど、つまりハチマキを死守すればいいんですね。」

 「そして、小チームにばらけて、一緒に行動するのがルカと。」


 「そう。ルカは乗馬が得意ということで、これもできると見込んで、二人を呼んだ。それにハチマキを守るためには人数が多い方がいい。」

 僕はシロンとユキナが納得してくれたようでよかった。



「最高ですぅ。ご主人様。」

 「はい。そうですね。仲間は多い方がいいかもしれません。」

 シロンとユキナは元気いっぱいにうなずいてくれた。


 「僕もすごく今嬉しいな。独り占めして、このホワイトイーグルに乗れてるわけだし。空を飛ぶって、こんな感じなんだね。すごく久しぶりだ。兄上のペガサスに乗ったのはかなり前だからね。」

 「はい。ルカ様。よろしくお願いします。」

 「ごめんね。ユキナちゃん。翔太朗君の方がよかったかな?」

 「そ、そんなことないですぅ。」

 ルカは嬉しそうだ。そして、ユキナは顔が赤くなっている。


 「まあ。ね。ユキナちゃんのこういう性格を翔太朗君は高く評価しているよ。シロンちゃんはおそらく翔太朗君が信頼している人は乗せないんじゃないかな。なんせ、シロンちゃん、ああいう、性格だから。そこは自信もっていいんじゃない。現に翔太朗君もさすが級長さん。みんなの性格を把握しようと努力しているよ。そういう場面や状況で、二人のうちどっちに乗ろうか判断しているね。この間の討伐の時もそうだったように。」

 ルカは、内緒話をユキナにしていた。

 ユキナはますます顔が赤くなる。

 

 その、赤くなった顔をルカは察したのか。

 「さあ、集中していくよ。ユキナちゃん。翔太朗君に振り向いてもらうにも頑張らなきゃ。」

 「はい。ルカ様。」


 

 僕は、『鷲眼の術(イーグル=アイ)』で目を光らせる。

 対象は、校庭に出ている生徒で良いだろう。そして、上空に意識を集中していない生徒の方がいいのだが。


 今は地上から肉眼で、一応見える範囲にはいるが、ハチマキを所持しているか否かは、相手も『鷲眼の術(イーグル=アイ)』を使わない限り、わからないだろう。


 やがて僕は、ハチマキを所持している人物が二人。校庭にいることに目を付けた。

 彼らは上空を警戒していないので、すぐにハチマキが狙えそうだ。


 「行くよ。シロン。」

 僕は、声をかけた。

 「はい。ご主人様。シロンもばっちり確認できました~。」

 

 「ユキナ、ルカ。これからハチマキが狙えそうな二人を取りに行くよ。」

 「はい。私にも見えます。」

 

 「僕は、確認できないが、付いて行けばわかるよね。」

 「はい。私がルカ様を確認できる場所までリードしていきますので。」

 「よろしくね。」


 僕たちは、彼ら二人がいる場所まで降下した。


 「しまった。上から来たぞ。」

 ハチマキを持っている二人は対応するがもう遅い。

 剣を抜くが、僕たちのスピードに対応することもできず・・・・・・・。

 

 シロンが足で、わしづかみして、ハチマキを一つ奪う。

 残り一つ。

 後ろからついてきたルカが、槍を振り回して、剣を吹き飛ばす。

 

 そのすきに、シロンと僕が、もう一つのハチマキを奪って、上空へと戻った。

 

 「やったね。ハチマキを二つ奪えたぞ。」

 「ナイス!!翔太朗君。シロンちゃん。ユキナちゃん。僕は3人の速さに助けられたかもしれない。」

 

 僕と、ルカが喜んでいる。

 「ご主人様ぁ。ほめてくださいよ~。」

 「よく頑張ったねシロン。」

 僕はシロンを撫でる。


 「ユキナもありがとうね。」

 「ユキナちゃん、ありがとう。リードしてくれたから、あの二人から正確に武器を払い飛ばすことができたよ。」

 僕の言葉の後にルカが、追加でお礼を言われる。

 すると。

 「そ、そんな。ただ、私はルカ様とご主人様をお守りしようと・・・・・・。」


 「大丈夫。そこが君のいいところだから。」

 「は、はい。」

 ルカが再びユキナと内緒話をしている。

 ユキナは初めての人でも冷静に対応できるようだ。


 ハチマキを奪ったのは良いが、今度は奪われるリスクがあるというもの。果たして、他のメンバーはどのくらいハチマキを奪うことができたのだろうか。

 

 競技時間終了まで、僕とルカは、このような戦法を繰り返した。

 奪っては上空へ逃げ去り、奪っては上空へ逃げ去りを繰り返して、他に3つハチマキを奪うことができた。

 所持しているハチマキは7つ。

 

 競技終盤は流石に上空へ退却するときに、狙われたが、防衛で、トルネードカッタを上空から放って、狙ってくる人たちを追い払うことの方が多かった。


 やがて、僕とルカの小チームは、競技終了時間となり、学級のメンバーと落ち合うことになった。



 


今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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