#50.変身魔法の修業、その1
帰宅後、ポールさんやアルベルトさんたちに、魔法武術大会の予選に出場できることを話した。
「素晴らしいじゃないか。よかったね。」
「頑張るのよ。ミランダ、翔太朗君。」
ポールさんとパメラさんは喜んでいる。
アルベルトさんは無言で拍手をして、続けた。
「きちんと修行しないとだな。1年次だから今回は良いやと思うと、いつまでたっても出られないぞ。」
アルベルトさんは僕とミランダに向かってそういった。
戒めというほどではないが、まさに理にかなっている。
「ミラ様、班のメンバーを集めて、さらなる修業というわけだな。私もお供しよう。」
カミラさんが言った。
「はい。頑張ります。お父様、お母様、お爺様。」
ミランダは笑顔で答える。
「はい。僕もミラ様と一緒に頑張ります。」
僕も答えた。
「翔太朗様。もう少し自信を持ちましょう。あなたが、級長ですわ。なんとしても勝ちましょう。」
ミランダが背中を押している。
自信につながっているのか。
「ミランダのいう通りかもしれないぞ。翔太朗殿。もっと自分に自信を持つ。そういう修業も必要だな。そういう心構えでいないと勝てないと思う。」
カミラさんも、背中を押している。
「はい。頑張ります。」
僕も頑張ろう。
「ところで、そういうことになると、どこか毎日修業ができそうな場所が欲しいな。いや、日中は授業なので、週末にまとめて時間が確保できるような場所が欲しいな。誰も来ないような場所で、学級のみんなで本格的に修業したいものだ。」
カミラさんが提案する。
「あの、ご主人様。それでしたら、修業の傍らお手伝いしてほしいことがあります。」
「はい。ご主人様。お手伝いしていただけるなら、修業場所の確保もお任せください。」
シロンとユキナが言った。
「おお、シロン、ユキナ、いい場所があると申すか。」
「はい。お願いしたいことがありまして。明日、この家に学級のみんなを連れてきてもらってもいいですか。」
シロンとユキナの提案に僕らは頷いた。
翌日。
学級のみんながモナリオ家の屋敷に到着する。
シロンと、ユキナは、二人の父、スノーさんを呼んでいたようで、スノーさんが家にやってきた。
「翔太朗様、伝説の風魔導士様。お久しぶりでございます。娘たちはご迷惑をおかけしていませんでしょうか。」
スノーさんが言った。
「いいえ。迷惑ではなく、むしろとても役に立っています。本当にありがたいです。」
僕は、スノーさんにそう答えた。
「翔太朗様には修業のついでに、お手伝いしてほしいことがありまして、お迎えに上がらせていただきました。そして、翔太朗様の学級の皆さま、お話は聞いております。魔法武術大会に向けての修業場所を私がご用意いたしました。私たちにお乗りください。お連れ致します。」
スノーさんの合図で、シロンとユキナは、ホワイトイーグルの姿に戻り、ライスさんと一緒に、学級の仲間を乗せて空を飛び立った。
着いた場所は、シロンとユキナを従魔契約した、二人の家族の住みかだった。
通常、徒歩で半日以上かかり、さらに自力で崖を登っていかないとたどり着けない場所なのだが、シロンとユキナそして、スノーさんに乗って、ものすごい速さで空を飛んできたからだろうか。
2時間弱でここまでたどり着くことができる。
「おお、こんなに速くここまでたどり着けるとはな。ここはもう、クルレの方が近いというのに。」
「さすが空をものすごい速さで駆け抜けることができる二人だね。」
シロンとユキナ、そして、二人のご両親と生まれたばかりのショーンが住んでいる洞穴の巣だ。
「おお、ここなら、修業の場所に持って来いだな。毎回、シロンたちに連れてきてもらってもらう必要はあるが。」
カミラさんが感心したようにいう。
「はい。毎回、特訓のたびに必要があれば皆様をお連れ致します。そのために、今、お連れしましたので。」
ユキナが言った。
「それでは、ご主人様。ご主人様には一緒にやっていただきたい特訓の内容がありますので、まずは、父上、母上のお話をお聞きください。皆様もご一緒に。」
シロンと、ユキナ、そして、スノーさんに案内され、洞穴の奥にいる、シロンとユキナの母親、ホワイトイーグルのライスさんと、シロンとユキナの弟のショーンと面会した。
「おお、伝説の風魔導士様。シロンとユキナがお世話になっております。」
ライスさんも相変わらず元気そうだ。
「風魔導士様。ショーンのお名前ありがとう。」
ショーンも立派な体格になり、少し幼稚ではあるが喋れるようになった。
僕たちは、ショーンの出産。つまり、ホワイトイーグルの卵の孵化に立ち会い、名前を付けたのだ。
ショーンが自分でしゃべったとき、少し感動した。
「翔太朗様、ご一行の皆さまが、魔道学院の一年次で、感謝祭の花形行事、魔法武術大会にご出場されるということで、私たちも何かお手伝いをしたいと思い、お呼びした、次第です。」
ライスさんは説明した。
「翔太朗様には、伝説の風魔導士ができたもう一つの魔法を会得していただくべく、ここにお連れしました。それが、翔太朗様における魔法武術大会に向けての特訓の内容として、提案したいと思いまして。」
スノーさんが付け加える。
「おお、素晴らしい名案ですわ。ホワイトイーグルの皆さま。」
「ああ、そうだな。」
どうやら、伝説の風魔導士ができたことについて、みんな知っているようだ。さすがはセントアリア王国に伝わるおとぎ話の内容だ。
そして、何をするのか僕にも想像がついた。
吉田一族に伝わる三つの術。一つは『鷲眼の術』、二つ目は鷲と実際に従魔契約し、口寄せ、つまり召喚魔法を行うこと。
そして、三つ目。鷲に変身して、実際に空を飛び、鷲にしかできない忍術、つまり魔法を身に着けること。
忍者の名門一族、吉田一族の家系の僕。幼いころから、この三つのことを会得しようと、厳しい修行に耐えてきた。だが、この三つのことを、一つも会得できないどころか、忍術試験の実技がすべてダメで、ついには‘元’家族に捨てられてしまった。
そして、セントアリア王国にモナリオ家の人達と移住して、魔法を勉強して、この三つのうち、二つを会得することができたのだ。
「伝説の風魔導士ができた三つ目は、実際に私たち、鳥獣系の魔物に変身して、鳥獣系の魔物にしか使えない、魔法、特技を身に着けたということです。翔太朗様にはそちらをしていただきます。」
思った通りの結果がライスさんの口から返ってきた。
「ちなみに、三つのうち一つは『鷲眼の術』、二つ目は、鳥獣系の魔物との従魔契約、召喚ですわ。二つはクリアしておりますわね。翔太朗様。これも、セントアリアの伝説の風魔導士の物語にあるのですが。」
ミランダからも思った通りの言葉が返ってきた。
「はい。ミラ様きっとそうだと思いました。」
僕は返事をする。
ミランダも納得したのだろう。学級のメンバーがいるため、ここで詳細なことは話さないでおく。
「よし、では、翔太朗殿の特訓の内容はこれで決まりだな。大丈夫か。翔太朗殿。」
カミラさんが言った。
「はい。お願いします。」
問題ない、僕は大丈夫だ。
「ありがとうございます。伝説の風魔導士様。こちらのショーンとともに、羽ばたきの練習から始めましょう。翔太朗様のフォローは私たちホワイトイーグルが行います。もちろん、シロンとユキナも。」
ライスさんが提案してきた。
なるほど生まれたばかりのショーンと一緒に修業か。
それが、スノーさんとライスさんの言う、修業のついでに手伝ってほしいということか。
確かにショーンと一緒に訓練すれば上達は上がってく。
彼も生まれたばかりなので、これからホワイトイーグルの行動を身に着けていかなければならないのだ。
「他のみんなも課題を見つけて、特訓を開始するぞ。各自、目標をもって取り組もう。」
カミラさんが、学級のメンバーに声をかける。
「大丈夫ですよ。翔太朗様。私も一緒にいますわ。」
ミランダが言った。
ミランダを含め、学級の他のメンバーも目標をもって、特訓を始めたようだ。
僕の修業は、ホワイトイーグルの家族が見てくれるようになった。
「早速ですが変身魔法を使ってみましょう。魔法陣は思い浮かべられますか。」
変身魔法の魔法陣。すぐに浮かび上がってくる。
魔法陣を描いて、シロンとユキナと同じくらいの背丈の鷲に変身することができた。
ここまでは問題ない。
風ノ里ではここまででも苦労したが、魔法陣や魔力のイメージのおかげで、難しく考えることなくクリアすることができた。
少し感動する。
体は同じ純白。手が翼の羽になり、それに違和感を覚える。
しかし、問題はここから、変身したうえで、鳥獣系の魔物にしか使えない特技、魔法を身に着けていく。
今のこの状態は、簡単に言えば、飛べない鷲の状態だ。
「では、羽を広げて羽ばたいてみましょう。人間だと腕を振る感じですかね。」
ライスさんに言われた通り、羽を動かす。
「もっと早く動かしてみましょう。」
さらに羽が早くなる。
「もっと早く。」
・・・・・・・。
「もっと。」
・・・・・・。
体が浮いてきた。なるほどこれが羽ばたきの練習ということか。
「すごいですよ。ご主人様。次は実際に羽ばたきの角度を変えて、飛んでみましょう。」
横で見ていたシロンが、言った。
「こんな感じで、この角度から羽ばたいて、飛びます。」
シロンと、ユキナが手本を見せてくれた。
確かにこんな感じで羽ばたいて、二人はいつも飛んでいる。
羽を広げて羽ばたいて、飛んでみた。
おお、意外とすんなり行ける。あまり体の負担はかからないようだ。
確かにそうだ。シロンとユキナも長時間飛んでいても、あまり姿勢はブレない。
しかも、今日も僕たちを乗せてきてくれた。
「すごいですわ、翔太朗様。」
「翔太朗君、やるね。」
ミランダとルカもギャラリーに加わっている。
生まれたばかりのショーンはどうだろうか。
うん、確かにショーンも慣れた手つきで、翼を羽ばたかせ。宙に浮いて、飛んでいるようだ。
「よし、ご主人様も、ショーンも基本は行けたようなので、次は実戦形式でやってみますよ。」
シロンとユキナに案内されて僕たちは付いていった。
実戦形式の訓練も楽しみだ。
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