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#46.風ノ里のその後、その3~Side 吉田一族~


 さて、那ノ国の風ノ里。

 翔太朗の‘元’父親、吉田半蔵は再び任務に出発しようとしていた。

 

 「行ってらっしゃい。あなた。」

 「ああ、行ってくる。」

 民子が広い屋敷の玄関まで見送る。


 だが、玄関には足りないものがいくつかあった。

 それは、半蔵の荷物だ。

 「いつも持っている常備薬はどうした。けがをしたり、体調を崩したら大変だぞ。」

 「おや、家政婦にお願いしたのですが・・・・。」

 半蔵は屋敷の家政婦をすぐに呼び出した。

 

 「おい、お前たち。薬はどうした。備えておけとあれほど言っただろう。」

 「も、申し訳ありません。半蔵様。こちらの薬で間違いなかったと思ったのですが。」


 「馬鹿野郎、足りなすぎるんだよ。俺の持病とかそういった薬がないんだよ。どうした?」

 「も、申し訳ありません。こちらの市販のものでよろしければ。私のを使いいただけると。」


 「もういい。これは使わなくていい。今回は短期の任務だ。すぐに帰ってくる。飲まなくても大丈夫だう。いつのも薬の方がいいんだよ。しっかりしてくれよ。何のための家政婦なんだ。民子、お前も注意してみてろよ。そして指摘してくれよ。いつもの薬と違うと。」

 「はい、あなた、皆さんには言っておきますし、私も注意して見るようにします。」

 民子はすまなそうに送り出した。


 同じように、長治の一族もこんな感じだ。長治の常備薬も不足し、長治も家政婦たちに怒鳴り込んで任務に出て行った。

 龍太朗や、翔太朗の‘元’従兄たちもそうだった。

 

 なぜ、そのようなことが起きたかって。

 答えはもちろん、翔太朗が薬の準備を全部していたからだ。そう、翔太朗は屋敷の家政婦からもいじめられ、家政婦の仕事もすべてやっていたのだ。

 つまり、翔太朗がいない分、翔太朗にわからないことを聞くことができず、家政婦全員、何も考えず、適当に用意してしまったのだ。

 

 任務に出発した半蔵。

 同じ班のメンバーと会話をする。


 「うまくやれますかね。」

 「まあ、半蔵さんがいれば大丈夫っすよ。」

 藩のメンバーは半蔵を期待している。『風の吉田一族』さすがだ。


 「まあ、期待していてくれよ。」

 半蔵はみんなの期待に応えるべく、そのように受け答える。


 やがて、昼時の時刻に差し掛かった。

 「昼食にするか。」

 街道沿いの広い場所で、休息をとることにした。半蔵も含めて、それぞれ、いい岩辺があったので、その岩に腰かけて、荷物をおろす。


 半蔵は、荷物から握り飯を取り出す。

 口にした瞬間思わず首をかしげる。

 「うーむ。塩が足りない。漬物も、なんかなあ。」

 

 「どうしたのですか、半蔵さん。」

 「いつもならおいしそうに勢いよく食べてますが。」


 「いや、味が劇的に変わったというか。うーん。これ以上は食べられんな。」

 半蔵は、握り飯を荷物にしまう。

 

 味が変わった理由は、もちろん翔太朗がいなくなったからだ。

 すべて味の好みを理解して、料理をしていた翔太朗。

 それに対して、家政婦が作った適当な料理、半蔵にとって、本当のまずい料理を食べさせられてしまった。


 今まで、翔太朗が気に入らず、翔太朗に対して、まずい料理だと言い続けた結果である。


 そして、弁当をしまう時に荷物を開けたとき、衝撃的なものを見る。

 

 「なんと、任務に重要な非常食もない。そして、水も少ない。」

 答えはもちろん翔太朗が全部準備していたからだ。

 

 半蔵は思った。

 まずい。このままだとこの任務中、自分の体力が持ちそうにない。

 だが、班のメンバーからは期待されている。

 

 ええい。ちゃちゃっと、任務を片付ければ問題のないこと。


 

 やがて、半蔵達の班の一行は、森の中に差し掛かる。

 ついに、森の中で、今回の任務の敵のアジトを突き止めた。

 

 「よし、しばらく見張るぞ。」

 半蔵の班は高い木の上で、見張りをすることにした。

 

 速く、動きたい・・・・。出ないと体力が持たない・・・・・。


 だが、見張りをしていても、一向に状況は変わらなかった。

 敵の動きがわからない。果たして何人いるのか、どのようなことをしているのか。


 

 時間が刻一刻と過ぎている。2時間、3時間、4時間。

 アジトに出入りする人は何人か確認できた。だが肝心の敵の大将と、状況証拠の密輸物などの物的証拠が確認できない。このままではアジトに突撃できない。


 さらに、5時間、6時間と待ち続ける。

 こんな時、非常食で体力を補っていたが、非常食も水もない状況。待ち続けるだけで体力が普段の倍以上奪われていく。


 見張りを開始して、半日が経過した深夜。

 やっと、敵の大将が周りに気付かれぬように、密輸物らしきものを持って、アジトへ入るところが確認できた。

 

 「よし、突撃するぞ。」

 だが、動き出した半蔵の体はフラッとした。

 水も思うように飲めず、非常食も食べていない。体力は限界だったようだ。


 それでも歯を食いしばりアジトに潜入する。

 敵の大将さえ確保できれば・・・・・・。

 半蔵は、そう思ったが。


 半蔵の想定、いや、半蔵の期待をはるかに上回る広い洞穴のアジトの中に、かなり多くの敵が大将を囲んで潜んでいたのだった。

 

 「まずい。戦闘開始だ。」

 半蔵も必死で応戦する。

 敵の攻撃を変わり身の術や分身の術で防ぐ。そして、手裏剣やクナイで応戦する。

 

 だが、ふらふらしていて、体力の限界だったのだろう。

 敵にダメージを与えられてしまう。


 「半蔵さん!!下がってくれ。その間に薬を使ってくれ。」

 「ああ。」

 

 敵から攻撃を受けて、ダメージを受けることはよくある。そのたびに、即効性のある薬を使って、戦闘に復帰するという動作を繰り返していた。


 しかし、薬の準備が不足していたため、薬は半蔵の荷物にあるわけがない。

 半蔵は目の色を変えて、血相を変えて、その場を下がる。

 

 「すまない。薬はちょうど切らしてて・・・・。」


 「マジかよ。現に突撃する時も弱々しかったじゃないか。あんた、大丈夫なのか。」

 「すまない、みんな。」


 「休んでてください。ここは俺たちがやりますから。」

 そういって、半蔵以外の班のメンバーは戦闘を続行したが。

 

 敵の大将に煙幕を使われ逃げられてしまい。

 退却を余儀なくされ、今回の任務は失敗に終わってしまった。


 風ノ里に帰還した半蔵たち一行は里長に、この件の顛末を話す。


 「申し訳ありません。里長、私が負傷したために、取り逃がしてしまいました。」

 里長に頭を下げる半蔵。

 

 「案ずるな半蔵よ。しかし珍しいのう。そして偶然もあるものだな。まずお前が任務に失敗するなんて、何年ぶりだろうか。それに長治も先ほど任務から帰って報告したが、彼もまた、任務に失敗した報告だった。吉田一族の二人が同時に同じ失敗をするとはな。風ノ里始まって以来かもしれないな。」


 風ノ里始まって以来・・・・・。前代未聞・・・・・。

 最悪だ。最悪だ。半蔵の中で複雑な思いがあった。


 「しかし、案ずるな。余計だったの。すまなかった。負傷したのだろう。ゆっくり休めよ。」

 里長にそういわれて、半蔵はトボトボ吉田一族の屋敷に帰っていった。



今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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