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#45.ドラゴンとの模擬戦


 王都の崖の上。そこにドラゴンは待っていた。

 

 「よくぞ来た。改めて、マリアの母でブルードラゴンのエドラ、そして、我の夫と、マリアの兄二人だ。」


 崖の上には、4体のブルードラゴンのファミリーがいた。

 4体とも巨大だ。

 

 僕と、学級の仲間。そして、カミラさんはそのドラゴンの巨大さに改めて、緊張の面持ちで見ている。

 

 「翔太朗殿、準備は大丈夫か。」

 「もちろんです。カミラさん。」


 「あの、母様。一応、翔太朗さんも学級の大切な仲間なのですから、そこは加減してくださいね・・・・・。」

 マリアが願いでる。


 「よかろう、愛する娘の頼みだ。だが、力比べは力比べ。本当にマリアとともに学級で学べるか見るだけだ。」

 

 「翔太朗様、本当にごめんなさい。」

 マリアが切実に謝ってくるが、

 「気にしないで大丈夫。僕も孤児だったし、境遇が似てるからさ。僕がひょっとするとドラゴンに育てられていたかも。」

 気にしないように、マリアをなだめる。


 僕は、歩み寄り、ブルードラゴンのファミリー4人と向き合った。


 「翔太朗殿、無理をするなよ。たとえ負けて、学院をやめることになっても、お前はモナリオ家の養子だ。」

 「はい、ありがとうございます。カミラさん。」

 

 

 「では、試合を開始する!!」


 カミラさんの合図で試合が始まった。今日のエキシビジョンマッチだ。

 マリアの母、ブルードラゴンのエドラファミリーとの一戦。


 エドラは魔法陣をすぐに出現させ、炎の息を吐く。

 それをかわす。

 

 ほかの3体の竜も同じだ、エドラの夫、つまりマリアの父親と二人の兄も炎を吐く。

 

 「シロン、ユキナ。」

 「「はい、ご主人様。」」

 

 「敵を一人だけに絞りたい。上空へ飛んで何体かおびき出せないか。」

 「「はい。わかりました。ご主人様」」

 

 シロンとユキナは、大空を飛び、ドラゴンを上空へと誘導させる。

 

 僕と戦うのはエドラだけになった。マリアの父、兄二人がシロンとユキナを追い、上空へ飛んでいく。

 「シロン、ユキナ、そのまま攻撃をかわし続けていて。」

 

 「「お任せください。」」


 さすがにドラゴン4体相手は無理だ。まずは一人ずつ確実に。

 

 エドラは再び炎を吐く。

 「『ウォーターサイクロン』!!」

 先ほど覚えた複合魔法。ここで役立つとは。

 水と風の防御で、炎の威力を少し弱めることができたが、炎は完全に無力化とすることができず、僕の唱えた魔法よりも、ドラゴンの炎の威力の方が強かった。

 

 水の防壁が押され、僕の元へと炎が迫る。

 肉体強化の魔法をかけ、ジャンプしてかわす。


 「さすが、ドラゴン。すごいパワーですわ。」

 「ああ、ドラゴン一体の討伐依頼もランクAからだからね。翔太朗君もさすがに押されている。」

 ミランダとルカが言った。

 

 「俺は、ホワイトイーグルの二人も心配だよ。上空を縦横無尽に駆け抜けられるけれど、ドラゴン3体いつまでもつだろう。僕だって、防御魔法はそんなに持たない。」

 「ああ、裏口入学君とその従魔さんたちは、それでも必死に食らいつこうとしている。一体あいつの力は。どうなっているのか。僕の父上、師団長でもドラゴンの討伐であれば、1人でやらずに、複数で行うと言っている。」

 男子二人、アンソニーとルーベルトは上の方を見上げている。まったくその通りの見解だ。

 普通、ドラゴンはランクAの冒険者、現役の師団長クラスの人間でも複数で討伐をするものだ。


 「シロンちゃん、ユキナちゃん。・・・・。」

 リリアンも心配そうに上を見上げる。

  

 ミランダもルカも、翔太朗だけでなく、ホワイトイーグルの発言に応じて、上空に視線が行く。

  

 シロンもユキナも、ドラゴンの攻撃をかわすのがやっとだ。

 しかも、シロンとユキナは2人に対して、ドラゴンは3体。

 今は、敵の攻撃をかわし続けているとはいえ、体力の消耗が著しく激しい。

  

 シロンとユキナの体力もいつまでもつか。


  

 僕は、短剣を持ち、ドラゴンに応戦する。

 エドラは爪で攻撃してくる。

  

 今は肉体強化を使っているが、それでも、僕の方が一歩一歩追い詰められている。

 後方に下がっている。

  

 至近距離。

 魔法陣を発動して、トルネードカッターを投げ込む。

  

 エドラを後退させる。

 「なかなかやるな。だがまだまだだな。」

  

 再び、ドラゴンのエドラはものすごい勢いで、僕の元へと飛ぶように走る。

  

 「今度は、氷の息をお見舞いしてやる。」

  

 一気に僕はかわす。氷の息、今使える魔法では対処の方法がない。

  

  

 「「あっ!!」」

 その時、声が聞こえて上を見上げた。

 シロンとユキナがダメージを受け、ヒョロヒョロと弱々しく降りていく。

  

 「シロン、ユキナ!!」

 「ああ、シロンちゃん、ユキナちゃん。」

 リリアンが駆け寄って、ヒールをかけてくれる。


 「うむ。二人は戦闘不能ということでよろしいですかな。ドラゴンの方々。」

 「よかろう。しかし、ヒールで体力が回復次第もう一度参加してもよいぞ。」

  

 やはり、体力の限界が来てしまったようだ。

 それに、もう一度参加してもいいと言ったが、二人の体力の回復には時間がかかりそうだ。

  


 「ご主人様のためにもう一度、すぐに参加したいです。」

 「お願いします、ご主人様。」

 シロンとユキナはお願いしてきたが、さすがに体力の回復を待ってもらうことにした。

  

  

 「二人は体力の回復を待って、入ってもらいます。しばらくかかりそうなので、僕一人でやります。僕との力比べですし。」


 「いいだろう。それなら、二人が戦闘を再開するまでに、お前と決着をつけるまでだ。」

 エドラは、僕を見つめて、突撃してくる。

 他の3人からは、魔法陣が発動し、ブレス、つまり炎の息や、氷の息の攻撃の準備をしている。

 

 行くか。さすがにドラゴン4体相手だと使わざるを得ない。

 本気で戦える術。いろいろと強化できるため、模擬戦では伏せてきたがさすがにドラゴン相手だ。

 

 

 僕は、目に魔法陣を出現させた。

 「行くぞ。『鷲眼の術(イーグル=アイ)』!!」

 同時に、肉体強化の魔法を行い、全ての能力をアップさせた。

 素早い動きが期待できる、イーグル=アイならではの動きだ。



 マリアの父と二人の兄、つまり3体のドラゴンのブレス攻撃を跳ね返し、突撃してきた、母エドラを、カミラさんの修業で身に着けた、パンチで、殴り飛ばす。

 ドラゴンの動きも止まって見える。

 さすがは『鷲眼の術(イーグル=アイ)』の効果だ。


 

 「な、なにが起きたんだ。」

 「翔太朗君がパワーアップした。」

 「翔太朗君・・・・・。」

 ギャラリーの面々も、唖然としている。


 

 事態を把握したのは、ミランダとシロンとユキナだ。

 「さすが、翔太朗様。ここで発動しなきゃだめですわ。さあ、ドラゴンたちに見せてあげましょう。」

 「何度見ても、憧れます。私のご主人様です。」

 「ご主人様、最高!!」


 

 

 エドラは、パンチで突き飛ばされていた。

 炎の息や氷の息が跳ね返ってきて、ダメージを受けている、実の夫と息子の姿も確認できた。

 「一体、何が起きたというのか。夫も息子たちまで、一体どうしたのだ。」

 

 エドラは、立ち上がり、僕の方を見てきた。

 

 「そ、その目は、まさか。『鷲眼の術(イーグル=アイ)』!!」


 

 「な、なんだって、『鷲眼の術(イーグル=アイ)』だと?この、裏口入学の翔太朗君が。」

 ルーベルトは驚いていった。目の色が変わる。

 

 「そんな、本当に使える人がいたんだ。僕も初めて見る。」

 ルカも驚く。

 「翔太朗君がまさか。」

 リリアンも目を丸くしている。

 「翔太朗君、すげー。」

 アンソニーは相変わらず素直だ。

 「そ、そんな、母様に勝てる人、勝てそうな人が現れるなんて。」

 マリアは目を丸くしている。その通りだ。育ての母親、ドラゴンに一人であそこまで追い込む人間は初めて見た。しかも、4体のドラゴンを。



 「そ、その昔、我らドラゴンの長、万物の創造物で最強の生き物、古竜。そして、同じ空を司る、ドラゴンと鳥獣。長らく古竜とドラゴン、我が先祖たちが支配してきたが、ある時鳥獣が空を支配していた時代がある・・・・・・。鳥獣が空を支配できたのは、一人の人間が現れたからだ。その人間こそ、古竜とドラゴンの軍団に唯一勝てた人物。伝説の風魔導士。」


 エドラは驚いたように、言っている。


 「その伝説の風魔導士の魔術。『鷲眼の術(イーグル=アイ)』。そんな。その風魔導士と同じ眼をしていると・・・・・・。」


 エドラは立ち止まる。


 「ミランダ。君のお爺様がどうして、この魔道学院に翔太朗君を入学させたのか分かったよ。すごい奴だったとは。」

 「そうよ、ルーベルト。翔太朗様はとてもすごい、そして、とてもカッコいいですわ。」

 ギャラリーは、僕の『鷲眼の術(イーグル=アイ)』の発動に驚いているようだった。



 エドラは、吹き飛ばされたところに立ち止まり、そして、ダメージを受けた、同じドラゴンの夫と息子二人を見つめる。


 そして、エドラは僕の方へゆっくりと翼を広げ飛んできた。

 「伝説の風魔導士よ。今までの非礼。素直に詫びる。本当にすまなかった。我はここで降参だ。」

 

 「はい。ありがとうございました。エドラさん。」

 僕は頭を下げる。

 「我のことを恨んではいないのか。最悪の事態も覚悟しなくてはならないと思ったが。」

 「そんな、そう思うのは別に当然のことですよ。僕も、モナリオ家に養子に入ったばかりですし、この力を使えることが判ったのは最近でしたし。」


 「そうか、素晴らしいあなたの寛大な心に感謝する。最悪の場合、我は再びドラゴンと鳥獣の間で空の争いがおこると思っていた。そして、その責任を取り、我の命も終わりだと思っていた。本当に感謝する。改めて、娘をよろしく頼む。」

 「はい。わかりました。」

 僕は、そういった。これで本当に戦いは終わった。

 正直ほっとしている。

 

 「ところで、そんなにすごいのですか、僕の持つ『鷲眼の術』は。知っていることがあれば教えていただきたいのです。」


 「ああ。かつて、この世の空は我がドラゴンが支配していた時代があった。

空を飛べる魔物はみんなドラゴンの奴隷だった。

しかし、そこに伝説の風魔導士が現れ、ドラゴンと鳥獣の魔物同士の戦争が起きた。伝説の風魔導士の統率はすごく、戦争は鳥獣の勝ちに終わった。

恐ろしさを知った我々ドラゴンは、絶対的な空の支配をやめよう、己に高慢になるのはやめず、常にほかの生き物と同じく修業する日々を歩むことにし、山奥に隠居したり、その他人里離れた場所でこっそり過ごすことにしたのだ。

それが平和につながり、伝説の風魔導士には感謝している。そんな言い伝えよ。だから再び伝説の風魔導士が現れたら、怒らせてはいけないと我々は信じている。昔のことだから詳細にはわからないが。とにかく、伝説の風魔導士よ、本当にすまなかった。」

なるほど。そのような話が伝説で残っているのだな。


「そうですわ、それがこの国、この大陸の伝説の風魔導士のおとぎ話の一部ですわ。」

ミランダが付け加えた。

なるほど、ドラゴンとの争いを止めたんだね。

「はい、ドラゴンとの争いの他にもいろいろな争いごとを止めて、伝説の風魔導士が、王様になった話です。」

リリアンが付け加える。

 

 「俺の店にも、子供向けの絵本で売ってるよー。」

 アンソニーが得意げに言う。


 「伝説の風魔導士よ。そなたが魔道学院に入学した理由も判った。名は何という。」

 ドラゴンのエドラは言った。

 「翔太朗=吉田です。今は、モナリオ家の養子なので、翔太朗=吉田=モナリオ、といった方が正しいかもしれませんが。」

 「翔太朗殿か、改めて、我はマリアの育ての親にして、ブルードラゴンのエドラだ。困ったことがあればマリアを通して尋ねるがよい。力になろうぞ。」

 「はい。ありがとうございます。エドラさん。」

 

 「マリア、翔太朗殿や学級の仲間たちと楽しく魔道学院の生活を送るのだぞ。そして、またこうして連絡を取り合ってくれると我はとてもうれしい。これからも近況を待っておるぞ。」

 「はい。お母様。」


 「では、我らはこれで帰るとしよう。皆の者世話になった。感謝するぞ。」

 そういって、エドラさんと、マリアの父、兄二人は翼を広げて空に飛び立っていった。




 「翔太朗君。すごかったよ。」

 ルカが第一声を上げる。

 「ええ、母様に勝てる人を初めて見ました。」

 マリアが言った。

 「ほんとすげーしびれたー。もっと頑張るぞー。」

 アンソニーが大声で笑う。

 「素晴らしです。伝説の『鷲眼の術』を使えるなんて。」

 リリアンが拍手をしている。


 そして、

 「翔太朗君。今まで、君をバカにしてきて本当にすまなかった。僕は今、猛烈に感動している。僕の父上でもドラゴンの討伐は誰かに手伝ってもらうくらいなんだ。」

 ルーベルトが頭を下げた。


 「ふふ。みんな翔太朗様の戦い方を見て感動したようですわね。」

 「初のドラゴンを相手に、見事だった翔太朗殿。」

 ミランダとカミラさんが笑顔だった。

 「ご主人様ぁ~。ごめんなさい。シロンにもっと力があれば。」

 「はい。ユキナももっと頑張ろうと思いました。」


 「「でも、私たちは、ご主人様と契約できて幸せです!!」」

 シロンとユキナもすごく喜んでくれている。


 

 そして、ルカがみんなの顔を見合わせてうなずいた。みんなもルカに合わせてうなずく。

 「翔太朗君。満場一致だ。この学級の級長は翔太朗君にお願いしたい。」

 ルカの一声に驚く。


 「そうですわ、翔太朗様。『鷲眼の術(イーグル=アイ)』が使える時点でお見事ですもの。」

 ミランダが続く。


 「それに、みんなのことを冷静に分析していてましたね。みんな級長に向いているって。」

 「本当。リーダシップもあるんじゃない。」

 マリアとリリアンも同じだ。


 「もちろんだ。本当にすまなかった。僕は認めるよ。もちろんサポートもするさ。」 

 ルーベルトも認めてくれた。

 

 「決まりだな!!」

 アンソニーの念の押し方。


 「うん。わかった、みんなありがとう。一生懸命頑張るよ!!」

 僕は元気よく返事をして、級長の件を承諾した。


 

 「それでこそ、私のご主人様ですぅ~。」

 「一件落着でよかったですね。ご主人様。さあ、皆様を王都までお送りします。」


 僕たちは、シロンとユキナに乗って、王都に戻っていった。

 上から眺める王都も、かなり幻想的だった。


 王都の広場で降り立ち、みんなと別れ、僕とミランダとカミラさん、そして、シロンとユキナはモナリオ家の屋敷に戻っていった。


今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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次の投稿も頑張ります。よろしくお願いいたします。


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