#42.複合魔法~級長決定戦、その2~
「翔太朗殿、本当に無理するでないぞ。」
カミラさんが言った。
「大丈夫。シロンと、ユキナもいるし。」
「そうか、わかった。」
「お手柔らかに頼むよ。裏口入学君。最も、僕が本気を出さなくても大丈夫なのだが・・・・・。」
僕と、ルーベルトはお互い向かい合って、立っている。
もう一戦できそうだ。大丈夫。
「はじめ!!」
カミラさんの合図で、模擬戦、第二戦目が始まった。
シロンと、ユキナがワシに変身する。
「行きますよ。ご主人様。一気に蹴散らしましょう。」
「ご主人様得意の速さの戦法で最初やってみましょう。」
二人からのアドバイス。行くぞ。
「肉体強化~速さ~」
肉体強化を行い。スピードを上げて、一気にルーベルトに突撃をする。
「ほお、魔法はそれなりに使えるのですか。肉体強化のスピードのだけに特化した強化をしたようですね。」
ルーベルトは冷静に僕の戦い方を見ていた。
「速さのある敵を倒すためにはまずは、これでしょう。『肉体強化~守備~』」
ルーベルトの身の守り、防御が上がった。
両手に短剣をもって、手数で勝負するが、ルーベルトの守備ではじいたり、攻撃をかわされたりして、決定的なダメージは受けずじまいでいた。
「ウィンドカッター!!」
シロンと、ユキナも翼を羽ばたかせて、攻撃している。
風魔法でルーベルトを圧倒しているが、うまくかわされている。
「甘いな。ホワイトイーグルよ。『ファイアーボール』!!」
その名の通り、火の球がシロンとユキナめがけて飛んでくる。
シロンと、ユキナは、かわしていく。
「先に、ホワイトイーグルから攻撃したほうがいいな。もう一回 『ファイアボール』!!」
シロンと、ユキナは攻撃をかわしながら、ウィンドカッタ―を翼を羽ばたかせながら放っている。
僕も、シロンとユキナに続いて行かないと思い、短剣を持ち、ルーベルトに突撃していく。
しかし、ルーベルトは短剣をかわしつつ、的確にファイアボールを打っている。
さすがは師団長の息子だ。こんな時でも冷静でいられる。
「ご主人様、ここは一度、彼から離れてください。遠距離で魔法攻撃を。」
ユキナが僕に指示を出す。
「わかった、行くぞ。」
ユキナの指示通り、僕はルーベルトから離れた。
敵一人なら・・・・・。
「トルネードカッター」
正面から、トルネードカッターをお見舞いする。
しかし、ルーベルトはかわしていく。
「ご主人様、大丈夫です。ずっとトルネードカッターをお願いします。」
「ユキナは頑張る。ご主人様のために・・・・・。」
ユキナは、自信を持ち、魔力を集中して。
「肉体強化~速さ~」
ユキナが自分の速さをあげた。そして。
「ユキナ、ご主人様のために行きます!!」
ユキナは、ルーベルトに向かって、突撃した。
『ウィングアイアン』つまり、鋼の翼で打つ攻撃を必死に行う。
一発、二発。
「この時を待っていたよ。ホワイトイーグルさん。」
ルーベルトの下から、魔法陣が現れる。
「まずい。ユキナ!!」
僕は、ユキナに声をかける。だが、遅かった。
ルーベルトの放った『サンダー』、ユキナの胴体はわずかに外れたが、ユキナの翼の片方に命中。
「飛んでいる敵には雷。常識だよ。」
「ご、ご主人様。申し訳ありません。」
ユキナが翼の片方の翼で、負傷した翼の片方を押さえている。
「うむ。ユキナは戦闘不能だな。戻って。」
カミラさんの合図。
「お疲れ様。ユキナ。」
「はい。ごめんなさい・・・・。」
「ユキナ。そのままで悪いが人間の姿に変えられるか。」
「はい。」
カミラさんの指示で、人間の姿に変身する。
案の定。片方の手にダメージを食らっている。
「うん。そのまま片方の手で押さえてろよ。翼は大きいし、人間の手で押さえていた方がいい。どうだろうか。」
「はい。鷲の姿より、少し楽になった気がします。」
確かにそうだ。手で押さえていれば、楽なのかもしれない。カミラさんの応急は適切だ。
「リリアン。そのまま、ヒールをかけてあげて。」
「はい。ユキナさん、じっとしていてくださいね。」
「ご主人様。心配してくれてありがとうございます。ヒールでもう大丈夫です。」
「よし、それでは、翔太朗と、シロンはそのまま続行しよう。」
カミラさんの合図で、再び戦闘が続行した。
「よくも、ユキナを、私の妹を、今度はこっちから行くわよ!!ナルシスト貴族!!」
闘志むき出しのシロンがあふれんばかりの気迫で攻めていく。
「ご主人様。ユキナと同じように、遠距離で魔法を狙ってください。」
「まって、シロン。そんなことをしたら、シロンまで・・・・・。」
「大丈夫ですよぉ~。同じ手は絶対に使われませんから。」
「肉体強化~速さ~」
シロンも、ユキナと同じように、速さの肉体強化を実施した。
「ここまでは一緒ですけど、せーのっ!」
シロンは急速に上昇する。
肉眼でやっととらえきれるほどの高さまで、たどり着く。
体が白いためか、雲と間違うくらいだ。
そこから、ルーベルトの真下に向かって急降下する。
「何度やっても同じ。『サンダー』!!」
「まずい。シロン!!」
僕はシロンに向かって叫んだが。
「へへっ!!ありがとう。ご主人様。」
シロンはウィンクして、サンダーをかわした。
雷が、ルーベルトの真下に向かって落ちていく。
「まずい。」
間一髪で、雷をルーベルトが交わす。
「しまった。反省すべきだった。真上の敵をこの魔法で狙うなんて。」
ルーベルトがつぶやく。
「ありがとうございます。ご主人様ぁ~。声をかけてくれると信じてました。攻撃をかわしてナルシスト貴族を追い詰めましたよ~。」
「さあ、行くわよ~。ユキナの分までお姉ちゃんは頑張る!!」
さらに、闘志を高めているようだ。
「『分身魔法』!!」
シロンが、3人に分身する。おお、これが魔法版『分身の術』だ。
シロンとその分身が、ルーベルトに襲い掛かるが。
「『メテオ』!!」
ルーベルトが魔法陣を出現して唱える。
空から、炎の岩が振ってきた。隕石。
シロンの分身。シロン本体が、その炎の岩に直撃してしまう。
同じように、翼にダメージが出たのだろう。
「ご主人様ぁ~。ごめんなさい。」
シロンはものすごく涙目になる。
メテオ・・・。見たことがない・・・。炎の岩。つまり隕石。岩が炎になって振ってきた。
こういう魔法があるのか。
「うむ。シロンも戦闘不能だな。戻ろうか。」
カミラさんがいったん終了の合図を送る。
「ユキナと同じように、人間の姿になって、片方の手で、負傷したほうの手を押さえておくといい。」
シロンもユキナと同じように人間の姿になって、片方の手で押さえた。
「ごじゅじんざまぁ、ジロン。ずっごぐ、ぐやじいぃぃぃ~」
翼。今は手だが負傷したにもかかわらず、僕に抱き着いてくる。
「大丈夫だよ。シロン。早く治療してもらっておいで。ありがとう。」
「はい、ごじゅじんざまぁぁ。」
メテオという魔法か。初めて見た。
「おお、唖然としているようだね。メテオ、その感じだと、複合魔法も見たことがなさそうだね。だから困るんだよ。裏口入学というのは。」
ルーベルトが、ドヤ顔で僕を見ている。
「複合魔法・・・・・。」
僕は、つぶやく。
「翔太朗様、説明していなかったですね。」
ミランダが、声をかける。
「複合魔法。簡単に言えば、複数の属性を同時に持つ魔法です。さっきのメテオも炎属性と、土属性の二つを合わせた魔法。だから、炎だけでなく、岩も交えて空から降らせることができたのです。その分、飛んでいる敵にはかなりの効果かと。普通は土属性の魔法だと飛んでいる敵に不利と言われますが・・・・・。複合魔法を使えば飛んでいる敵にも効果が出てきます。」
ミランダがさらに続けて、説明してくれた。
複合魔法・・・・。複合魔法・・・・・。複数の属性を持つ魔法・・・・・。
僕の頭をよぎったのは、ミランダと出会ったとき、最初の修業の場面を思い出した。
複合魔法、いけるかもしれない。ルーベルトを追い詰められるかも。
「再開するぞ。翔太朗殿。準備は良いか。」
「はい。」
僕は自信をもって答えた。
「シロン、ユキナ。見ててね。仇、必ず取るから。」
「よし、再開!!」
カミラさんの合図。
「では、あなたに特別にもう一度複合魔法をお見せして、あの二頭のホワイトイーグルと同じようにしてあげましょう。」
ルーベルトがドヤ顔で言う。
僕は深呼吸した。杖を取り出す。大丈夫だ。
最初の修業の時の映像が頭をよぎったのだろう。魔法陣はすでに頭の中に浮び上っている。
問題は、一番最初に魔法を使う時は、一から魔法陣を描かないといけない。間に合うか。
風の魔法陣と、水の魔法陣が出現する。
「な、なんだと?ふ、複合魔法を使おうとしているのか?」
ルーベルトが驚く。
「だが、初めて使うのだろう。魔法陣が完成するまでに。行くぞ『ボルケーノ』」
地割れが置き、その地割れが一直線に僕の方向へ向かってくる。
地震と火山の魔法。つまりこれも炎と土の複合魔法。
「えっ?翔太朗様。さっき複合魔法を見たばっかりなのに・・・・。」
「何をするんだろう。間に合うかな。翔太朗君。」
「まずい。もうすぐそこまで地割れが・・・・。」
「こ、これはすごいです。」
ギャラリーの女性陣も驚いている。
間に合え。間に合ってくれ。
風と水、両方の魔法陣を一気に描いた。
地割れの到達が超スローに見えた。
「『ウォーターサイクロン』!!」
風と、水の複合魔法を間一髪で発射した。
「なに・・・・・・。」
ルーベルトは慌てて、かわす。
だが、それと同時に、僕は地割れ攻撃を食らってしまったため、飛ばされてしまった。
仰向けに倒れた僕。はあ、はあ、と息遣いをする。
青い空。昼過ぎから、試合をしたので、午後の澄み切った空が見える。
試合には負けたんだ。確かに悔しかったが、そこには達成感があった。複合魔法が使えた。
モナリオ家のやさしさに触れたその時、海辺での修行。水が風に反応して、海が切り裂いたとき、この風と水の複合魔法を思いついた。すぐに魔法陣も書くことができた。
忍者時代。印も早く結べなかった。だけれど、僕は今、魔法陣を素早く描けた、素早く発動出来たのだ。
「大丈夫ですか。翔太朗君。連戦で疲れたでしょう。メガヒールをかけておきますね。」
リリアンの声。メガヒールをリリアンにかけてもらう。
それと同時に僕は起き上がった。
そして、ものすごく大きな拍手に出迎えられた。
「うん。今回の勝者はルーベルトだ。」
カミラさんが改めて、試合終了の合図を送る。
「だが、翔太朗殿。初めて複合魔法を見ただけで、あんなに威力の高い複合魔法を自分で会得するとはな。」
「翔太朗様。すごいですわ。いったいどこで・・・・。普通は、複合魔法はやはり複数の属性を使うという作用があるためか、一方の属性は得意だけれど、もう一方の属性はとても苦手という場合に遭遇するなどして、苦手な人もかなり多いし、魔力のコントロールも難しいのですよ。」
カミラさんとミランダが興奮している。
最初から、魔法の修業を見てきた人だ。驚いているのだろう。
「最初の修業の時、浜辺で、海に向かって風魔法を放った時を思い出したのです。今でも鮮明に覚えてます。運命を変えてくれた、カミラさんとミラ様に出会った時なので。」
僕は、正直に答えた。
「いや、それでもすぐに、複合魔法の魔法陣を浮かばせて、実際に、しかも高威力で放つというのはとても難しいことなんだ。」
ルカは僕の言葉に対して、尊敬のまなざしで答える。
「翔太朗君は、魔力が高いのはもちろんなのですが、新しい術を瞬時に思いつく力もあるのかもしれませんね。」
リリアンが、ミランダとルカの意見に付け加える。
確かにそうかもしれない。トン吉爺さんと修業をしていた時がここで活かすことができたようだ。
トン吉爺さんも新しい術を生み出すのが得意だったな。
「試合は僕が勝った。その時点で、君はまだまだだが、たった一回見ただけで、複合魔法を思いつく力。ミランダのお爺様が推薦した理由もわかる気がするね。その点は僕も評価するよ。ほら。」
ルーベルトが握手を求めてきた。
「おお、仲直りだね。よかったね。翔太朗君。二人ともすげーしびれる試合だったよ。」
アンソニーが元気そうに言った。
僕はルーベルトと握手をした。
「さっすがは私のご主人様ですぅ・・・・。」
「ご主人様ぁ~。ご褒美にもふもふタイムしましょ。」
シロンとユキナもリリアンのヒールですっかり元気を取り戻してくれた。
「ごめんね。シロン、ユキナ。負けたのは事実だから・・・・・・。」
「「ご主人様。ありがとうございます!!すごかったです!!」」
「さあ、次はどうするかな?」
カミラさんが言った。
「そうですね。男性陣、特に翔太朗様はお疲れのようなので、ここからは女性陣の番ですわね。」
ミランダが得意げに言った。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。
まだまだ続きます。
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