#35.正式に養子になった
「お帰りなさいませ。ミラお嬢様。カミラ様、翔太朗様。」
屋敷のメイド、執事たちに迎えられ、僕らはモナリオ家の屋敷に入っていった。
「ポール様と、アレックスに話がある。読んできてもらえないか。」
すぐに対応してくれたようで。
メイドの一人が呼びに行ってくれた。
「おお、ミランダ。帰ったか。」
ポールさんは僕たちを出迎えてくれた。
「クルレ村での長い任務になると聞いていたが、もう帰ってきたのか。」
「お帰りなさいませ、ミラ様、翔太朗様。」
アレックスさんも出迎える。
僕たちは、一連のことに関して、報告した。
「なんと、あのギエル=ロドバンドと遭遇したと。」
ポールさんは目の色を変えた。血相を変えている。
「ミランダ、大丈夫であったか。」
「はい、お爺様、ダメージは受けてしまいましたが、翔太朗様がメガヒールをかけてくださって。翔太朗様がいなければ私は・・・・・。」
ポールさんは僕に向かっていった。
「一度ならず二度もうちの孫娘たちを助けてくれて感謝しかない。翔太朗君。」
さすがに困る。僕たちはパーティーを組んでこれからもギルドで仕事をするのに、ミランダがダメージを受けてメガヒールをかけるたびにこれだけ手厚くお礼を言われると・・・・・・。
「はい、これも、仕事ですから・・・・・。」
僕はありきたりの言葉しか見つからず、受け取っておくことにした。
「ポール様、アレックス殿。翔太朗殿のことに関しても、お耳に入れておきたい重大なことが。」
僕は、カミラさんとともに、『イーグル=アイ』のことについて話した。
「なんと、伝説の風魔法が使えるとは。」
「驚きました。以前翔太朗様に、使える人がそうそういない伝説の魔法について話しましたが、まさか翔太朗様ご自身が、それを使うことになるとは。」
「そして、従魔契約してここに新しく来てくれたのが、ホワイトイーグルのシロンと、ユキナというわけか。」
「シロン=イーグルです。」
「・・・・・ユキナ=イーグルです。よろしくお願いします。」
「ああ、よろしく。ようこそ我が屋敷へ歓迎するぞ。」
ふうっ。とポールさんはため息。
「そして、重大なのはここからです。那ノ国の翔太朗様のご一族は、ほぼすべて、この『イーグル=アイ』を使うことができます。」
「うむ、それも厄介だ。まさか、これを使える一族がいたとは。これがギエルを含めそういった悪いやからに情報が洩れると厄介だ。」
「今後の提案なのですが・・・・・。」
「わかっておる。翔太朗君を正式にモナリオ家の養子として迎えよう。そして翔太朗君には申し訳ないが、君の出生はモナリオ家とベンジャミン、王宮の一部の者しか知らないようにする。すまないが、今後はむやみに君の出生については、他人に吹聴しないでくれ。孤児でモナリオ家に引き取られたと。もちろん、戦闘や仕事の時は『イーグル=アイ』を使って構わない。君の個性だからな。」
ポールさんは重い腰を上げ、僕の肩をポンポンと叩いた。
「ありがとうございます。吹聴の件は大丈夫です。もうあの人たちは‘元’家族です。向こうが縁を切ったように、こっちからも縁を切りたいと思います。そして、養子のこともありがとうございます。今、とても幸せです。」
「そうか、それならよかった。そしたら、こちらの紙にサインをしてくれ。正式の養子の書類だ。私の方から、役場へ届けておこう。疲れただろう。部屋に戻って休んでくれ。もちろん、シロンとユキナもな。」
僕は、書類にサインをして、ポールさんに渡した。
ポールさんは書類を確認して、間違ってない大丈夫という意味でうなずいて、大広間を出て行った。
「翔太朗様、大丈夫です。私たちモナリオ家がお守りします。『イーグル=アイ』の件については、驚かれたかもしれませんが・・・・。」
「それは、あなたのかけがえのない個性です。大切に、大切に、その術を磨いて、これからも自信をもって修業や仕事をしてください。あなたを守るのが侯爵家の仕事です。」
アレックスさんの言葉に、少しウルっとして、深々と頭を下げる。
「それでは、シロン様とユキナ様にも部屋をご用意いたしましょう。」
「いいえ。それは大丈夫です。」
アレックスさんは驚く。
「しかし、寝る場所はいかがいたしましょう。ここは王都のど真ん中ですし、自然の洞穴も巣もありません。北の崖の上はわかりませんが、大きな鳥が町を飛び回ると、クルレの農村以上に目立ってしまいますが。」
「それも必要ないです。」
「そうなるとしかし・・・・・・。」
だが、シロンはもう決めたようだった。
「私たちは、ご主人様をお守りします。だから、寝る場所もご主人様と一緒の部屋で一緒のベッドで寝ます!!」
えっ。そんなのってあり?
「いいよね。ユキナ!!」
「う、うん。お姉ちゃんがいうなら私もいいけど・・・・・。」
ユキナが赤くなっている。
そして、ミランダも赤くなっている。さらに湯気みたいなのが立っているような・・・・・。
「そ、そんな、翔太朗様。私は認めませんわ。シロン、ユキナ、やっぱりあなたたちにも部屋が必要です。アレックス、部屋を用意して・・・・・。」
「いいえ、伝説の風魔導士様である、ご主人様をお守りするのが私たち、ホワイトイーグルの役目です。ねー。」
「う、うん。そうです。ご主人様。あの、ご迷惑でなければ、一緒にいてくださいませんか。」
「ご主人様ぁ、私たち、ホワイトイーグルです。羽毛で軽くてあったかいですよぉ。自慢の羽毛で温めてあげますぅ。」
シロンがすごい誘惑している。
「だ、ダメですよ、翔太朗様、翔太朗様からも自分で寝れるとおっしゃってください。」
ミランダが、恐ろしく、僕の服をつかんで言った。
僕は目が回る。まずい、一体何が起きているのだろうか。
「へ、部屋に関しては、その、広いし、シロンとユキナが一緒にいるスペースはあるけど・・・・。」
「決まりですね、ご主人様。」
シロンが、勝ち誇った顔をしている。
「さすがに、二人にもプライベートがあってもいいんじゃない。部屋を用意してもらえれば。」
僕がこのように言うと、ミランダが勝ち誇った顔を今度はしている。
カミラさんがミランダの肩をその時たたいた。
「ミラ様、大丈夫ですよ。彼女たちは所詮、『ホワイトイーグル』。一言で言えば、翔太朗様と同じ種族、人間である、ミラ様が圧倒的優位です。ここは彼女たちの願いをかなえるのも侯爵家の役目とか言って、彼女たちの願いを叶えてあげましょう。そして・・・・・・・。」
カミラさんが内緒話をする。
ミランダの表情が自信を取り戻した。
「いいですわ。彼女たちの願いをかなえるのも侯爵家の務め、シロンとユキナも翔太朗様の一緒の部屋がいいというのであればそうしますわ。確かに、あの部屋は翔太朗様一人だと十分広いですし。ねえ、アレックス。」
「そうですね、お二人がそう言っておられるわけですし、翔太朗様も別に大丈夫そうなので、翔太朗様のお部屋にお二人をお連れしましょう。」
そういって、僕の使っている部屋に案内した。
「ただし、アレックス。」
「はい、ミランダ様、お嬢様の気持ちようやくこの私にも伝わりました。長いこと気付かず、お許しください。」
僕のベッドの隣に、同じようなベッドが二つ。アレックスさんの収納魔法から現れた。
そして、さらに部屋の一部を遮るカーテンが現れた。
「寝るときは、このベッドを使うこと、着替えるときはこのカーテンの向こうでやることをルールにしましょう。」
一瞬にして、僕の部屋の模様替えのようなものが終わった。
物が少し増えたが、その分、きれいな内装に仕上がった。
「いいですね。もしも、寝るときと、着替えるときのルールを破るとどうなるかわかってますよね。」
ミランダの背後からものすごく、恐ろしいほどのオーラを感じる。
「翔太朗様にお伝えしていませんが、あなたたち二人には、この場でわかるように言っておきます。私はあなたたち二人のライバルです。いつでもあなたたち二人に宣戦布告しますよ。いいですね・・・・・。」
ミランダが怖い。そして、シロンとユキナはミランダの言葉がわかったのだろう。
シロンとユキナからも恐ろしいほどのオーラを感じる。
「と、いうわけで翔太朗様。私とも一緒に、これからも修業したり、遊びましょうね。」
ミランダが、ものすごい笑顔で僕に言ってきた。
「うん、もちろんだよ。ミラ・・・・・。」
「うふふ。ありがとうございます。」
ミランダは僕に向けてウィンクをしてそのまま、去っていった。
「翔太朗殿、これにて失礼。また明日、修業をしたりしよう。」
カミラさんもミランダとともに出て行った。
「ほー、翔太朗様も大変ですな。しかし若いっていいですな。これからもセントアリアの暮らしを楽しんでくだされ、それでは。」
アレックスさんは頭を下げて、去っていった。
部屋に残された、僕、シロン、ユキナ。
「ご主人様ぁ。どうしますかぁ。」
「・・・・あの、ご主人様のしたいこと、何でも言ってくださいね。」
どうしようか迷ってしまう。
「とりあえず、セントアリアに来たばかりなので、いろいろとお話を聞かせてほしいな。二人のこととか、みんなのご両親のこととか。」
「はい、わかりました。」
「・・・あの、これからよろしくお願いします。」
今日はゆっくり二人と話そう。
二人がものすごい速さで空を飛べるからだろうか。
重要指名手配犯と遭遇したのも、新しいホワイトイーグルの命が誕生したのも、養子になったのもすべては今日一日だ。
激動の一日だったな。と持っていた日記に記録をつけた。
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