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#33.新しい命と従魔契約


 ホワイトイーグルの卵にひびが入っている。

 まずい。さっきの衝撃で、ダメだったか。


 いや、違う。

 だんだんとひびの大きさが大きくなる。


 これは・・・・・。


 新しい命が生まれる。


 頑張れ。頑張れ。

 ここにいる、全ての人が一点を見つめている。

 

 頑張れ、もう少しだ。


 「ピーッ、ピーッ!!」

 鳥が鳴いている。生まればかりの雛が鳴いている。


 「生命の誕生ですね。魔物ですが、とても美しいですね。」

 ミランダが涙を流している。

 「ああ。そうだな。今まで私も魔物を討伐してきたが、こうして、誕生に立ち会うと感慨深い。もう、鳥獣系の魔物の討伐は出来なくなってしまうくらいだな。」

 カミラさんも素直だ。


 「ありがとう。皆さん。そして、シロン、ユキナ。」

 「皆さんのおかげです。シロン、ユキナ、二人のおかげだ。二人の弟だよ。」

 

 ホワイトイーグルの家族は、生まれたばかりの雛を囲んでいる。


 「感動した。さあ、帰るとしよう。依頼達成の報告と、ギエルのことを報告せねばなるまい。」

 僕たちは頷いて、立ち上がった。


 「皆さん、お世話になりました。お元気で。」

 ミランダは律儀なのか、ホワイトイーグルの家族に頭を下げた。

 

 「「お待ちください。皆様。」」

 ホワイトイーグルの両親が声をそろえた。

 僕たちは再び、振りかえる。

 

 「シロン、ユキナ。この目はもう、覚悟を決めているのでしょう。行きなさい。大丈夫。ここには私たちがいるわ。」

 「ああ、そうだとも、こんなことは滅多にない、気を付けてな。大丈夫。離れていてもいつでも会える。」


 「「ありがとう、父上、母上」」

 二人は声をそろえて、人間の姿になる。最初にあったときの、女の子の容姿だ。


 僕の目の前で、膝を立てて二人は座る。

 「「翔太朗様。伝説の風魔導士様。奇跡のめぐり逢い。あなたに会えるのをずっと待っておりました。」」

 「どうしたの、急に改まって。」

 僕は、目を丸くし、ポツンと立っている。二人が急に改まったのだからだろうか。


 「「どうか、あなた様をご主人様とお呼びし、私たちと主従の契約をしたいのです。」」

 この言葉に、バンッ。と胸を打たれた。


 なぜかわからないが、次の瞬間涙が出てきた。涙は止まらなかった。


 <翔太朗。お前さんにもきっと君をパートナーにしたいという鷲がきっと現れるのだ。その日を待つがいい。>


 トン吉爺さんの言葉が思い出される。

 そうか。シロン、ユキナ。君たちだったんだね。ありがとう。・・・・・。


 ありがとう。

 

 そして、女の子だったんだ。

 いままで、ワシノリや、サイゾウ、ワシ之信、吉田一族の人達はほぼすべて男の鷲と契約していたから、女の子の鷲と契約するということ自体が、眼中になかった。


 「どうしたのですか。ご主人様。」

 「・・・あ、あの、泣いておられるのですか・・・・・。」


 僕は、首を横に振った。

 そう、嬉しかった。吉田一族は代々鷲と口寄せ契約する。それができなかったから、今まで過酷な修業と奴隷にされていたひびが続いたのだ。

 

 一族の人とは頭の昔に縁を切ったが、今。今この瞬間。

 何かから解放された。あたたかな日差しの中にいた。


 「・・・ありがとう。・・・・う、嬉しくて。・・・ごめんね。・・・シロン、・・・ユキナ。」

 僕は泣いていた。涙声で言った。

 しばらく僕は、泣いていたが、涙を少し拭いて聞いてみた。

 「僕、その、男の人だけど大丈夫。その、女の子の魔物さんと契約してる人見たことなくて。」


 シロンと、ユキナは首を縦に振る。

 「「はい。ご主人様が良ければ。私たちは契約したいです。」」


 僕は、再び涙があふれ出ていた。

 

 「もちろんだよ。シロン、ユキナ。よろしくね。」


 「「はい、よろしくお願いします。」」


 どうすればいいのだろう。ここからが分らない。

 「おめでとうございます。翔太朗様。召喚魔法の、従魔契約ですね。」

 ミランダが、召喚魔法の魔法陣を教えてくれた。

 

 「翔太朗様の血が必要なのですが、痛くないようにこちらをお貸しします。」

 ミランダは、針をくれた。


 僕の指に針を刺す。少し痛く、血が出ている。

 だが、この痛さは自然と乗り越えられた。

 「では、その血を魔法陣に入れてください。そして、その魔法陣を二人の足元へ。ああ、お二方は一度、ホワイトイーグルの姿に戻っていただけますか。」

 シロンとユキナがホワイトイーグルの姿に戻ることを確認して。

 僕は、魔法陣を二人の足元に敷いた。


 不思議と言葉が出てきた。

 「我、ここに従魔契約を行いし者なり。このホワイトイーグルと主従の契約を行う。」

 二人の足元から魔法陣が消えた。

 

 「これで完了ですね。もう、人間の姿に変身して大丈夫です。」

 

 「ありがとうございます、ご主人様。」

 シロンは僕に向かって抱き着く。

 「・・・・あの、よろしくお願いします。ご、ご主人様。」

 ユキナは僕に頭を下げて、握手をしてくる。


 それを見ているミランダが、表情を硬くしている。

 確かに、従魔契約の魔法を教えてくれているところから、ミランダは何か、いつもと違う、物足りなさげの言い方をしている。


 「あの、ご主人様。私たち常にご主人様の傍にいることを許していただいてもいいですか。」

 シロンの提案に息をのむ。

 「大丈夫です。町にいるときはこうして、人間の姿になっています。ねー、ユキナ。」

 「・・・・は、はい。」

 それは、確かにそうだが、常に召喚している状態だから、魔力は・・・・・。


 「あの、僕の魔力は・・・・。」

 ミランダの方を向く。ミランダは、驚いていて、声が出せないようだ。

 「あの、魔力なら大丈夫です。別の場所に召喚するときに魔力が必要で、一緒にいるときは魔力は使いません。それにご主人様は多くの魔力をお持ちです。たとえ、絶えず魔力を使うような状態に仮になったとしても大丈夫だと思います。」

 なるほど、口寄せと一緒か。口寄せを実施して呼び出すときに魔力チャクラを使うが、こちらの召喚魔法も、召喚して呼び出すときのみ魔力を使うらしい。


  「それなら、大丈夫だよ。」

  「「ありがとうございます。」」

 

 「すみません、ミラ様、カミラさん。一緒に、モナリオ家の屋敷にいることになると思いますが。」

  「問題ない。大丈夫だ。」


  「・・・・あ、そうですわね。問題ないですわ。」

  カミラさんは二つ返事で、返したが、ミランダは返事をするのに時間を要している。


 

 「翔太朗様、伝説の風魔導士様。」

 シロンと、ユキナの母親が呼んだ。

  

 「改めまして、わたくしは、シロンとユキナの母、ライス=イーグルです。あなた様にお仕えすることができ、私たち家族も光栄に思います。シロン、ユキナ、しっかりね。」

 「「はい、母上様。」」


 「伝説の風魔導士様。私たちも奇跡のめぐり逢いを感謝いたします。申し遅れました、私は二人の父のスノー=イーグルです。従魔契約は初めてだということなので、簡単に私から説明します。」

 シロンとユキナの父親、スノーさんが説明してくれる。


 「召喚魔法は、群れの上位の魔物と契約できていればその群れ全体の魔物と契約したものと同じです。なので、その群れ全体を呼び出すことができます。

 しかし、これには、一部例外がいくつかありまして。

 群れの下位の魔物と契約しても上位の魔物が同意していればその群れ全体と契約しているものをほぼ同じものとみなします。つまり・・・・・。」


 つまり・・・・・。

 「わたくしも、私たち家族も、伝説の風魔導士様、あなた様にお仕えいたします。我が娘たちを通して、召喚魔法でお呼びください。本来であれば、わたくしたちも常に傍にいてお仕えしたいのですが、生まれたばかりの息子がおりますのでお許しください。」

 「ありがとうございます。スノーさん、ライスさん。感謝します。」

 僕は、頭を下げる。

 戦いに困ったときは、この家族も召喚できる、ありがたい。


 「もう一つ、お願いがございまして。魔導士様。この子のお名前をあなたが考えていただけないでしょうか。」

 「えっ、本当にいいのですか。」

 「はい、是非お願いしたいのです。」


 「わ、わかりました。」

 どうしよう、こっちの大陸の名前はあまり知らないからなあ。


 「どうしたのだ、翔太朗殿。」

 カミラさんが、聞いてくる。

 「こっちの大陸の人の名前、あまりわからないんです。」


 「そうでしたね。そしたら、翔太朗様からとって、『ショーン』、というのはどうでしょう。美しいとかの意味になりますわ。」

 知識豊富なミランダがフォローしてくれた。


 「ショーン。ショーンでお願いします。僕の、翔太朗から一部を取っただけですが。」

 スノーさんとライスさんに伝える。


 「ありがとうございます。翔太朗様。」

 「ショーンという名前、使わせていただきます。」



 スノーさんと、ライスさん、そして生まれたばかりのショーンに見送られ、僕たちは、洞穴を後にする。

 シロンと、ユキナの背中に乗って、まずはクルレ村の村長のもとへ。


 依頼達成の報告を行った。

 「よかったです。感謝します。このままだと村はグリフォンに、そして重要指名手配犯につぶされるところでした。」


 村長さんに見送られ、クルレ村を後にする。


 シロンと、ユキナの背中に僕たちは乗って、大空を飛び立っていった。

 往路は徒歩で半日を要したが、復路はシロンとユキナのスピードで、王都まで2時間足らずで帰ることができた。


 純白のレンガの王都が見えてくる。

 僕たちは無事に帰れたことに安堵した。


 つい、数時間前まで、僕らは重要指名手配犯と生きるか死ぬかの戦闘をしていたのだ。


 王都の門の前で、着陸。

 シロンとユキナも人間の姿に変身して、王都の中へと入っていった。




読んでいただき、ありがとうございました。

まだまだ、続きます。


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今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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