#27.風ノ里のその後、その2~八重Side~
岩月八重。赤毛の少女こそ、翔太朗の死を唯一悲しんだ人物だ。
八重は翔太朗の大叔父、吉田トン吉の死後、翔太朗とともに修業することはほとんどなくなり、一人で、翔太朗と同じように、岩月家全員分の家事をやっていた。
しかしながら、学校では翔太朗とよく会うため、話はしていたし、むしろ忍者学校でいちばん話す人物だった。
夏休みに入る直前のある日、翔太朗が嬉しそうに話しかけてきたことを思い出していた。
「八重。やったよ、兄貴の上忍の昇進祝い旅行、僕も連れて行ってもらえることになった。」
八重も、一緒に喜んだ。
楽しんできてねと見送り、そして、夏休みが空けた。
夏休みが終わり、忍者学校の二学期の始業式、校長先生からのお話は衝撃的なものだった。
この日は、翔太朗は学校に来ていなかった。
不安に思った八重だが、クラス中は翔太朗が来なくても何もなさそうに和気あいあいとしている。
そして、翔太朗が来ないまま、朝の最初のホームルームが始まり、始業式というわけだ。
そして、校長先生のお話。
「まずは、夏休み中の悲しい事故の報告です。吉田翔太朗君が兄、龍太朗君の上忍昇進祝いの南ノ国での旅行中に、海王類に襲われて亡くなりました。」
八重は、背筋が凍り、ぞっとした。
校長先生も、みんなも、淡々と話しをし、淡々と聞いている雰囲気に、悲しみを覚えた。
「黙祷。」
すべての話が終わり、校長先生の黙祷の合図。
八重は必死に黙祷した。
「どうか、翔太朗君が天国で幸せになれますように・・・・・。」
必死に、必死に涙ながらに黙祷した。
次に、生徒たちの心のケアということで、面談があった。
八重の番が回ってきたが、先生に聞かれたことだけを簡単に答えた。
むしろ、それしか答える力がなかった。
一緒に修業をしていた、トン吉と翔太朗を同時に失ってしまった。
「これから、私、どうなるんだろう。」
八重の中に、いじめや家族からの虐待に一人で立ち向かうシナリオが浮かんだ。
「せめて、強くなりたい。」
八重はトン吉や翔太朗に教えられたこと、楽しい思い出を絶対忘れないと誓い。
忍者学校の帰り道。いつも三人で、修業をしていた場所に向かった。
「修業して、翔太朗君の分まで、合格するんだ。」
八重は、ここから修業に一人で励むようになった。
八重の心の奥底にある、美しい清い薔薇を咲かせるために・・・・。
トン吉や翔太朗が開きかけてくれたその蕾を再び閉じたくなかった。
読んでいただき、ありがとうございました。
まだまだ続きます。とりあえず番外編はここまで。
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