#26.風ノ里のその後、その1~吉田一族Side~
「♪Yeah、Yeah、泣き虫、弱虫、お邪魔虫、おぱらったぜ!! Yeah、Yeah♪」
鷲田ワシノリは背中に、翔太朗の兄、龍太朗を乗せて上機嫌で飛び回っていた。
鷲田ワシノリ、龍太朗の口寄せ契約をした、従魔でその名の通り、大きな鷲だ。
「こら、ワシノリ、まだまだ、喜ぶの早い。クソ太朗の死を告げるまでは口を慎め。」
隣を一緒に飛んでいる、鷲野サイゾウがワシノリを戒める。
「そうでした。龍太朗の兄貴と、半蔵様と民子様、そして、風ノ里の吉田一族の皆様のためですから・・・・。」
ワシノリは慌てて冷や汗をかいていた。
「大丈夫だ。ワシノリ。まだここは南ノ国の領土だ。お疲れ様。協力してくれてありがとうよ。」
ワシノリの背中に乗っている半蔵、龍太朗と翔太朗の父は、優しくワシノリに接する。
「ありがとごぜーやす。半蔵様。龍太朗の兄貴。」
「ありがとう。ワシノリ、そしてごめんよ、誇り高いお前の背中にあんな出来損ないの弟を往路は乗せてしまって。」
「平気っすよ。いまこうして、ストレス発散ができてるんすから。」
ワシノリと、サイゾウは上機嫌で、南ノ国から、那ノ国までの復路を順調に飛行中だった。
そして、背中に乗っている。吉田一族、翔太朗の“元”家族も上機嫌だった。
「おっと、そうこうしているうちに、那ノ国の国境が見えてきたな。ここからはみんな静かにな。」
国境の関所で通行手形を見せて、今度は那ノ国の領空内をさっきよりは静かに、厳かに飛び立っていった。
風の里に帰還した。半蔵と民子と龍太朗は、すぐさま半蔵の弟である長治のもとへと向かった。
「お帰り。半蔵、民子、龍太朗。龍太朗よ。上忍の昇格祝いはどうじゃったか。」
「ああ、途中まではよかったのだが・・・・・。」
龍太朗は、明らかな作った表情をしていた。
「途中まで、そういやあの出来損ないの双子のもう一人はどうした?」
「死んだよ。長治。」
長治は、目を丸くし驚いた。
すぐに、喜助と治美を呼び、翔太朗の死のいきさつを聞いた。
「旅行の最終日だろうか、遊覧船に乗って、南ノ国の海を楽しんでいたら、突然、海から巨大な、蛇の姿をした海王類が現れて。俺たちの乗った、遊覧船を襲って・・・・。」
「翔太朗は俺たち家族を守ろうとして、上忍である兄や、吉田の誇りである親を守ろうとして、それに、偶然にも翔太朗は船の外に出ていて。海王類に襲われて死んだんだ。翔太朗の体も切り刻まれてしまって、今残っているのはこの遺品しかない。」
「確かに、翔太朗は出来損ないだったが、俺たち吉田の誇りを守ってくれた。だから、知らせようとして急いで帰ってきたんだ。」
「なんと、そのようなことが・・・・・。」
長治は黙って話を聞いた。
「確かに、あいつは吉田家にとって、恥ずべき人だが、最後は吉田の誇りを守ったようだな。」
みんな頷いた。
喜助と治美もただただ、黙って話を聞いていた。
「今は、なんとも言えない気持ちだが、いずれ時が来るだろう。特に龍太朗は上忍だ、また上忍として、国の誇りとして、任務に行かなければなるまい。」
「それに、私も吉田一族の忍びとして、言わせてもらうが、言葉が悪いかもしれんが、あの出来損ないがいなくなったんだ。翔太朗が成人して、吉田一族の歴史に泥を塗らずに済んだとの見方もあるだろう。あいつにとっては、天でトン吉爺さんと仲良くしていた方が幸せだろう。」
長治や喜助、治美も翔太朗のことはよく思っておらず、最後にはこの言葉でまとめた。
長治、おそらくすべての吉田一族全員が、翔太朗が死んでも何とも言えないどころが、死んでよかったと思っているようだった。
沈黙の中、長治が口を開いた。
「ああ、そうだな。そうだとも。」
半蔵と民子、竜太郎の三人は、長治の部屋を出て行った。
出て行った瞬間に胸をなでおろした。
大丈夫だ。翔太朗の死を誤魔化せた。第一関門通過だ。
その後、翔太朗の死は、まず、吉田一族に伝わった。
半蔵や長治が思った通り、確かに、吉田一族の中には、
「あんな奴、一族の顔に泥を塗るくらいだったら、こうなったほうがマシだよ。」
と言いながら、半蔵たちを慰める者もいた。
すぐに翔太朗の葬儀が、家族葬のみで、行われた。
葬儀は、簡単に済ませて、すべてを片付け終わったら、あとはいつも通りの吉田一族に戻っていた。
風ノ里にも翔太朗の死は伝えられた。大方の人は残念でならないというコメントをした。
しかし、一部の里の人間は、
「一族の邪魔者がいなくて安心しているのではないですか?」
という反応も存在していた。
そして、吉田一族が、翔太朗の死は風ノ里の一部の物にしか伝えていなかった。
そのため、忍者学校の生徒に、正式な知らせが届いたのは夏休みの後になった。
夏休み中の痛ましい事故として、忍者学校の生徒に、校長から報告した。
忍者学校では、生徒の簡単な黙祷と心のケアが、便宜上、行われただけで、あとは、卒業試験に向けて、授業がすぐに再開された。
何年も試験に落ちている、一族や、里の忍者の落ちこぼれと思われていた、翔太朗の死に対して、誰も負の感情が出てこなかった。
一人、岩月八重を除いて。
しかし、半蔵たちが嘘の報告をしていると疑う者も誰もいなかった・・・・・・。
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