#24.カミラとの修業
翌朝、今日からセントアリアの屋敷内での魔法の実践修業が始まった。
「ここからは、カミラが、修業の先生であり、修業相手になります。おそらくこれからの翔太朗様の課題は実践でしょう。ミラ様とともに、カミラのもとでどんどん、強くなっていってくださいね。それでは私は、執事長なので、屋敷の業務に戻りますね。」
「ありがとうございました。アレックスさん。」
ここからは、カミラさんと、ミランダとともに修業をする。
「よろしく頼む、翔太朗殿。」
「よろしくお願いします。翔太朗様。」
二人が僕に挨拶をしてくれた。
「さて、翔太朗殿は、風属性魔法、回復属性魔法はおそらく、私とミラ様よりも上なので、そこは実践で極めてもらうとして、実戦に入る前にまずは、それ以外の属性魔法について教えて行こう。前にもアレックスが言ったように、風魔法に耐性のある敵を撃退するために習得していくことになる。」
カミラさんは、両手にグローブを装着し、拳を握った。
両手の拳の先から炎が現れた。
「炎の鉄拳魔法だ。こうやって、火とともに、拳でパンチを打つ。」
カミラさんは実際にパンチを放った。
「さあ、翔太朗殿も短剣を出して、短剣の先に魔力を集中させるのだ。短剣の先から火が出るように。途中、魔法陣が浮かび上がるから、忘れずに描けよ。」
カミラさんに言われたとおりにしてみる。
短剣の先に、炎が現れて。炎とともに敵を斬る。
魔法陣が浮かび上がってきた。
持っている両腕の短剣の先に炎が現れた。
「よし、成功だな。そのまま、同じようにやってみろ。」
カミラさんとともに両手を動かす。
確かに、感覚はつかめるが、まだまだ術の威力は出せそうだ。
それに、初めてなので魔力は早く消費されているようだ。
「呑み込みが早いようだな。ただ、もう少し練習して、消費魔力も押さえないとだな。」
僕は黙ってうなずく。カミラさんも同じようにうなずく。
どうやら、黙々とこなす人なのだろう。さすがは武道家系の魔導士といったところだ。
「さあ、今度はミラ様と一緒にやるぞ。」
ミランダが前に出る。
「実践ということで、まずは私が二人の相手だ。」
カミラさんが、武器を持ち帰る。
格闘系の武器、拳鍔だ。
「さあ、行くぞ。」
カミラさんが、拳を入れてくるので避ける。危うい。
魔法陣を作って、肉体強化魔法で速さを強化する。
「いい判断だ、翔太朗殿。肉体強化魔法だな。」
カミラさんが笑う。だがこの笑い方は想定通り、基本ができているといったところだろう。
「こちらも行くぞ、『肉体強化!!』」
カミラさんはさらに拳のパワーを上げていくようだ。
まずい。相手より早いといっても、迂闊に近づいてはカミラさんに一発でやられてしまうかもしれない。
「翔太朗様、大丈夫です。カミラさんを追い込みます。」
ミランダの声。
「前に披露した、召喚魔法。難しい方の召喚魔法をお見せしますね。」
ミランダが魔法陣を出して、召喚魔法を唱える。
ミランダの従魔、ブラッドウルフのクロが現れるが、それだけではなかった。
クロを含めて5頭のブラッドウルフがそこにはいた。
「召喚魔法は、群れで行動する魔物のボスを契約することができれば、その群れの魔物すべてと契約できる作用があります。クロはこの5頭のブラッドウルフの群れのボスなのです。だから、クロの群れ全体を召喚しました。」
すごい、クロが群れのボスだったなんて。
「では、クロ、みんな。実践の修業です。カミラを追い込んでくださいね。」
「ワン!!」
クロの群れが一気に走り出す。
カミラさんに攻撃しつつ、追い込んでいるようだ。
カミラさんが防御をしながら撃退している。
さすがに巨大な狼の魔物5頭と相手だろう、カミラさんは防御をしながらの動きがやっとだろう。
「今です。翔太朗様。トルネードです。」
ミランダの指示通り、カミラさんの足元に魔法陣を仕掛け、トルネードを放つ。
カミラさんが吹き飛ばされた。
後ろを振り返ると、ミランダが魔法陣で魔法を唱え終えていた。
次の瞬間、ミランダは氷でできた弓矢を持っていた。
「水属性の魔法の一つです。私の得意魔法です。カミラか習ったものをアレンジしました。行きますよ!!」
そういって、ミランダは後方に吹き飛ばされたカミラさんをめがけて氷の矢を放った。
カミラさんは、後方に吹き飛ばされたが、そのおかげで、ブラッドウルフたちの攻撃が一瞬止んだその瞬間に、本来の余裕のある動きが戻ってきたのだろう。
カミラさんは、拳鍔で氷の矢をはじいていた。もちろん、炎の魔力を拳に込めていたので、氷の矢ははじいた瞬間に溶けてしまった。
「さすが、翔太朗殿も加わったからだな。ミラ様が落ち着いて判断できているよ。今までは、私と一対一だったから、どこかに余裕がなくて、このような判断をすることができなくなっていたからな。私とパーティーを組んで仕事に行ったり、屋敷の業務も、的確な指摘で素晴らしいのだが、実戦を一人でするとな。」
カミラさんはミランダと、僕を感心したような目で見つめていた。
「ナイスファイト、ここまで追いつめられるのは初めてだった。」
カミラさんは、ガッツポーズをして、僕とミランダの肩をたたいた。
「さあ、修業を続けるぞ。今度は接近戦だ。」
カミラさんは、拳鍔の先に炎を表せた。
僕は短剣を持ち、その都度風魔法で戦うことにした。
ミランダは今度は氷で、剣を作り、それで接近戦を戦った。クロたちも、額の角で一生懸命にやっている。
数の面ではブラッドウルフたちの群れも含めて僕たちの方が有利だが、さすがはランクAの冒険者で、侯爵家の護衛隊長のカミラさんだ。
持久戦だった。
カミラさんとの勝負は、ミランダの魔力が尽きかけてきたところを、カミラさんが拳鍔でミランダを寸止めし、ミランダは脱落。ミランダの脱落に伴い、ブラッドウルフたちの群れは脱落。そしてクロたちの体力もぎりぎりだった。
僕の方は魔力は多く、尽き欠けることはなかったが、接近戦はカミラさんの方が上手で、一瞬のスキを突かれて、脱落。
カミラさんの勝ちで終わった。
「翔太朗殿は初めての実践修業にしては上出来だ!!追いつめられるところも多々あったし、なかなか良かったぞ。ミラ様ともうまく連携している。そのためか、ミラ様の的確な判断力が戦闘でも生きてきた。ミラ様も今日がいちばん成長したと思う。」
「はい。ありがとうございます。カミラさん。」
僕は魔力は確かにまだ余っても、心の中ではさすがに疲れていたが、カミラさんの最後のことばで、何か吹っ切れたような気がした。
「翔太朗様のおかげですわ。本当にありがとうございます。」
「いえいえ、ミラの指示があったから・・・・・。」
「い、今、ミラって。うれしいです。」
ミランダは顔を赤らめる。確かに先ほどの実践の修業でたくさん連携したので、そうなっても不思議なことではない。
「よかったですね、ミラ様。」
カミラさんがミランダに耳打ちをそっとしていた。
「お前たちもお疲れ様だったな。」
カミラさんがブラッドウルフたちの群れに水の入った皿を差し出す。
ブラッドウルフたちは、勢いよく舌を伸ばして、水を飲み始めた。よほどのどが渇いたのだろう。同然だ。
「さて、翔太朗殿、明日からは実践ということで、ギルドの仕事をしてみよう。もちろん、私とミラ様も一緒なので、安心してくれ。私もミラもギルドの仕事はやったことがあるのだから大丈夫。しかもミラ様はギルドのランクはお前より一つ上のFだ。」
なんと、カミラさんはともかくとして、侯爵家のお嬢様である、ミラ様もギルドの仕事を・・・・・。しかもランクを一段階ではあるが、上げているなんて。
「驚かれましたけれど大丈夫ですよ。私たちモナリオ家は、必ず、ギルドに登録して、実際に依頼を皆さんと同じようにこなしていく風習があります。代々、王宮に使える魔導士や軍人が多く、そういった面で勲章や爵位を国からもらった家系なのです。」
なるほど、そういうことか。だから、ミランダも両親やみんなに負けないように修業しているわけだ。
「それに、こうでもしないと、庶民の皆さんの気持ちもわからないですわ。いざ有事の時は私たちが先頭に立たなければいけませんので。」
確かに、ミランダのことばには説得力がある。
貴族、侯爵家の責任か。とてもすごいなと思う。僕も吉田家にいたころはそのように、されていたっけか。
僕はとても悲しくなる。ミランダはそれを察してくれたのか。
「でも、翔太朗様の家はひどいですわ。私たちの家の先祖でも、やはり軍人や戦闘面では合わない人もいましたが、捨てられることはありませんでしたよ。私も、お父様や、お爺様よりは全然ですし。」
ミランダのフォローは少し安心した。
「何はともあれ、翔太朗殿、明日、早速、ギルドの仕事に行ってみよう!!」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
魔法の修業素晴らしいですね。翔太朗の鱗片が垣間見えたかな。
冒険は、まだまだ、続きます。
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