#23.冒険者ギルド
銀行を出た僕たちは、広場の東の通りを挟んで、銀行と向かいにある建物へ。
役所と銀行より、この建物がきれいに感じる。開かれたエントランスが出迎えてくれ、階段を上がる。
「翔太朗様、これから今まで修業した分の魔法とかを簡単で良いので見せてもらうことになりますが、大丈夫でしょうか。」
僕はうなずいて、はいと答える。そして。
「この建物は何ですか?」
「『冒険者ギルド』のセントアリア本部ですね。
セントアリア王国では『ギルド』に登録して、仕事を行うことが一般的です。もちろん、個人や店などで、雇う場合もありますが、雇う側も雇われる側もギルドに登録していることが一般的ですね。
ギルドはこの国にたくさんあり、13歳以上であれば誰でも登録資格があります。先ほどのようなお店を行う場合に登録することになる、『商業ギルド』。魔導士専門の『魔導士ギルド』。ほかにも、『治癒術師ギルド』、『土木工事ギルド』、『研究者ギルド』などなどいろいろありますが・・・・・・・。
『冒険者ギルド』は登録者数が他のギルドと比較して、断トツで一番多く、より多くの仕事依頼が回ってきます。ミランダお嬢様も、カミラも、そして私もこの冒険者ギルドに登録しています。
そして、登録者が多いので、多くの情報が入ってくるためか、日々の情報収集目的で登録する人もいます。ただ、登録する前に少々ギルド登録のテストがあるのですが。」
なるほど、そういうことか。
ギルドに登録すれば、仕事が来て、いろいろとお金を稼ぐことができるわけだ。
ただ、テストが怖かった。忍者学校の試験で落ち続けたように、テストでは嫌な思い出しかない。
ましてや冒険者ギルドなら、戦闘能力もあるのだろう・・・・・。
「テストが怖いという表情をされてますね。大丈夫ですよ。翔太朗様。」
皆は、安心した顔をおしている。
「冒険者ギルドは登録者も多く、まずは冒険者ギルドに登録しろと言われるほどです。テストは簡単ですよ。ただ、入ってからが難しいです。そこは登録してから説明しましょう。」
先ほどの役場と、銀行と同じように、アレックスさんはギルドの受付へ行き、受付の方と話している。
話し終えると、受付の方に連れられて、ギルド本部の広い一室に案内された。
数分ののちに、部屋の扉がノックされる。
ガタイのいい髭を生やした男性がやってきた。
「お久しぶりですね。ベンジャミン。」
「これは、これはアレックスさん。そしてカミラにお嬢様も。」
「こちらの方が今回登録したいという。」
「ええ、翔太朗=吉田殿です。」
ガタイのいい男性が、僕の方を見た。
「初めまして、翔太朗=吉田です。」
「俺は、セントアリア王国『冒険者ギルド』のギルドマスター、ベンジャミン=ゴメスだ。よろしくな。」
ベンジャミンさんがごつごつした手を差し出す。
僕はそれにつられて、握手をする。
「では早速翔太朗には、ギルド登録に当たり、この訓練室で、テストをしてもらうぞ。」
ベンジャミンさんは、訓練室の一角、木の人形の前で立ち止まった。
「とりあえず、魔法のテストから実施してみよう。使える魔法を、一通り見せてくれ。攻撃魔法はこの人形に向かってやってみてくれ、回復とかの魔法は魔法陣とかを出してくれ。魔法が使えなければ、パスと言ってくれよ。」
いわれた通り、一通り、今覚えている、魔法を実施してみた。
風の魔法、『ウィンドカッター』、『トルネード』、『トルネードカッター』。
回復魔法は、『ヒール』、『メガヒール』、『キュア』。
そして、自分の作ったポーションを見せた。
「うむ。風魔法と回復魔法が得意なのだな。しかも、下位魔法なのになかなかの魔力だ。」
ベンジャミンさんはうなずいて、次のテストの準備を始めた。
「次のテストは、武術だ。持っている武器で、この人形に向かって攻撃してみてくれ。」
両手に短剣をもって、木の人形に攻撃を仕掛けていった。
そして、遠投用の短剣で、木の人形に向かって投げた。遠投用の短剣は木の人形に命中した。
「よし、いいだろう。では最後に総合の戦闘能力を見せてもらうぞ。」
ベンジャミンさんは、訓練室に、ゼリー状の体をした魔物を三体連れてきた。
「この魔物は『スライム』だ。最下位ランクのモンスターで、東の大陸にはどこにでも生息している魔物だ。打撃攻撃しかしてこないので、こいつらと戦ってもらおう。」
ベンジャミンさんは、試合開始の合図を送る。
僕はスライムと戦うことになった。
こちらの大陸の魔物は初めてなので、まずは相手の動きの観察から入る。
どうやら、スライムは体当たりのような、打撃攻撃しかできないようだ。
まずは、集中攻撃を受けないように、風魔法を使用し、スライム三体を散らばらせる。
一体目、風魔法でいちばん遠くまで飛ばされたスライムは、よろけていたので、そのまま、『ウィンドカッター』で倒していく。
二体目はすぐに体制を立て直して、こちらに体当たりしてきたので、体当たりを一発食らってしまったが、すぐに短剣をもって、迎え撃った。
同時に背後から三体目のスライムが近づいてきたので、もう一度、風魔法の『トルネード』で遠くに飛ばし、よろけた瞬間に、『ウィンドカッター』でそのまま二体目を倒す。
三体目は風魔法でかなりのダメージを受けているが、それでも再度近づいてきたので近づいてきたタイミングで、遠投用の短剣を投げて、倒すことにしたが、結局すべてかわされ外してしまったので、風魔法で吹き飛ばして倒した。
スライムという魔物を始めてみたので、余裕のある人は一発で倒せるのかもしれないが、僕は一体ずつ確実に倒していった。
そして、魔法で倒すことができたことにうれしさがこみ上げた。今までは術の印を結ぶのが遅く、印を結んでいる間に攻撃を受けていただろう。
それに比べると、魔法を覚えてから、ここまで倒すのに、ものすごく進歩したのかもしれない。
「よし、そこまでだ。」
ベンジャミンさんは手をバシッと叩いて。僕のもとへ来た。
「翔太朗君は合格だよ。ギルド登録をしようか。ただ、実戦の経験はまだまだなので、次からの修業はそこが課題だな。」
一緒に見守ってくれた面々、ミランダ、アレックスさん、カミラさんもうなずいていた。
「よかったです。翔太朗様。」
「初めての魔物との戦闘にしてはよく頑張りましたね。」
「よかったぞ!!」
みんな、僕のもとに駆け寄ってきて、肩をポンポンと叩いてくれた。
その後、ベンジャミンさんは、僕にギルドの建物を案内してくれた。
玄関を入り、正面の階段を上ったところに、大きなボードがある。そのボードには大小いろいろな紙が、所狭しと並べられている。
「これが、仕事依頼のボードだ。引き受けられそうな仕事があったら、張り付けられている紙をもって、受付に行ってくれ。」
ベンジャミンさんは受付の場所を指さす。
「そして、仕事が終了して、成功したら受付へ行って報告だ。報酬は現金手渡しか、銀行振り込みかその場で選べるから、その都度申し出てくれ。ただし・・・・。」
ただし・・・・・。
もう一度、ベンジャミンさんはボードの方を向き。
「お前さんはこのボードのすべての仕事ができるわけではない。ギルドの登録者にはそれぞれ、ランクがある。ギルドは入ってからランクを上げるのが難しいから、しっかりと修業を続けてくれよ。お前さんは登録したばかりなので、お前のランクは最低ランクのGだ。」
ベンジャミンさんは、ボードの仕事の紙を一枚とって、一か所に指さす。
そこには、『G』という文字が押されたスタンプがある。
「この『G』と書いてある、紙の仕事しか受けられない。仕事をして、成功すれば、ランクが上がっていき、ランクの低い順に、G、F、E、D、C、B、A、そして一番上がSランクまで最大で上がることができる。Sランクまで上がれば、ここに貼ってある、すべての仕事ができるというわけだ。ただし、すべての仕事をする、失敗するなどのリスクが高い危険な仕事もランクを上げるごとに出てくるから、自重すること。失敗が続くと、仕事の受注制限やランクの降格、違約金などのペナルティもある。そして命を落とす場合もある。いいか、命の保証はできないぞ。命は大切にしなきゃだめだ。」
『命』というキーワードで真剣な顔になる、ベンジャミンさんの姿がここにあった。
ここは肝に銘じておかなくてはならないな。
「それでも、基本は楽しんで仕事をしてくれ。それにある条件を満たせば、お前も、ランクAまでの仕事ができるぞ。」
ベンジャミンさんが先ほどとは打って変わって表情を変える。
「その条件は、アレックスかカミラのパーティーに参加することだ。二人のランクはAだぜ。二人をパーティーに入れて、仕事をしてくれるのなら、ランクAまでの仕事ができるぞ。ただしだ。」
別の仕事の張り紙を取り出した。スタンプには『AA』と表記されている。
「これは『ダブルエー』ランクの仕事なのだが、この『ダブル○○』とスタンプが押してある仕事は、パーティー全員が該当ランク以上でないとだめだ。主に、セントアリア以外の国での仕事となり、外国の、最悪の場合、敵国の秘密組織なんかと遭遇する確率が極めて高い。戦争地帯に行かされることもあるからな。」
なるほど。確かにそうだ。
外国の兵士とやり取りする、もしくは敵国に潜入し、最悪の場合、戦争に発展したりする可能性もある。
ある意味、セントアリア王国の、外交の信頼が失われる危険性もある。そうなると国家にもかかわってくる。
「わかりました。ありがとうございます。」
ベンジャミンさんに、僕は頭を下げる。
「わからないことがあれば、俺かカミラかアレックスまで聞けよ。最初は二人の依頼のサポートからしてみてもいいからな。」
アレックスさんとカミラさんがランクAの冒険者。すごい。やっぱり魔法や戦闘に精通しているわけだ。
やはり実際に依頼を受けるよりは、まだまだ魔法の勉強をする必要があるようだ。
ベンジャミンさんは僕の手をポンポンと叩き、それと同時に、僕の身分証のカードをくれた。
「それじゃ。ギルド登録しておいたからな。お前の銀行口座のデータもその身分証の中にあったので、報酬はその口座に振り込みか、現金手渡しのどちらかから選べるからな。身分証は絶対に無くすなよ。」
僕に手を振って、ギルドの建物の奥へ去っていった。
「お疲れさまでした。翔太朗様。今日の王都の見学は以上ですね。家に帰りましょうか。」
確かに、疲れがある。しかし、程よい疲れだ。風ノ里にいたころとは全然違う。
セントアリア王国の王都を初めて見た。ギルドの登録をした。
明日はどのようなことが待っているのだろうとワクワクする。
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