#20.召喚魔法
船の上、夜。
ミランダはデッキの上に立っていた。
僕はそれに気づいて、ミランダに声をかける。
「こんばんは。」
「・・・・。こんばんは・・・・。」
弱々しいミランダの声。
船酔いなのか。波の縦揺れに慣れていないのだろうか。
僕は、一族の口寄せした鷲に乗ったこともあるので、こういった酔いというのには慣れていた。
「気分はどうですか。ミランダ様。」
「少し、船酔いが・・・・・。」
夜、何も見えない水平線で、ただただ揺れるだけ。これはさすがに・・・・・・。
覚えた魔法陣で、『ヒール』をかけてみる。
彼女の船酔いは少しだけ改善されたが、まだまだ、船酔いが激しいようだ。
ポーンと、魔法陣を思いつく。
指で魔法陣を書いてみる。
確かこういった、毒や麻痺、そして酔いなどの症状だと・・・・・。
なるほど、これが、新たに魔法陣を思いついたり、新しく魔法を思いつく感覚か・・・・・。
回復魔法は忍術の時からやっていたので、このような状態を治癒するのもすぐに思いついた。
早速ミランダに思いついた魔法をかけてみる。
「ありがとうございます。翔太朗様。『キュア』の魔法陣を使って、すぐに覚えられるなんて・・・・。」
なるほど、毒や麻痺、そして、このような状態異常を治す即効性の魔法は、『キュア』というのか。
「いえいえ。似たような人を、忍術、医療術ではありますが、治したことがあったので、すぐに思いつきました。」
「どうして、風ノ里の皆さんは、翔太朗様のこのようなすごさをわかってくれなかったのでしょうか。」
「いろいろと決まりがうるさいのです。特に僕は、由緒ある一族で育ったのですから、保守的に自然になっていくのは当たり前かと。」
僕は、思ったことを口にしてみた。由緒ある忍びの家系ならば、忍者を継ぐのが当たり前。それができない人は出ていくのだろう・・・・・。
「あの、私も、侯爵家ですけど、セントアリアは身分も寛容ですし・・・・・・。その・・・・。私も、お父様も、あなたのことを・・・・・・・。」
僕のことを・・・・・。
ミランダは少し頬が赤いが、
「あなたのことを、よく思っていますわ。」
声が裏返る。
「大丈夫ですよ。僕は、今、今までで一番幸せです。」
ミランダが両手で、口元を覆い。そして、クスクスとお互いに笑った。
「あの・・・・。カミラは、私の執事でもあり、メイドでもあり、そして、私の魔法や武術の先生なのです。盗賊に襲われてしまいましたが、実は、カミラは、とても強いのです・・・・。実はあの路地裏は盗賊のアジトだったようで、実は10人くらいの盗賊がいたのです。カミラはただ、盗賊に襲われたといっていましたが・・・・。」
なんと、10人の盗賊と戦って、怪我をしながらも追い払ったのか。それは強い。
確かに、動きやすい、強そうな身なりをしている。
「だから、盗賊達に襲われたとき、とても怖かったのです。私が誘拐されてしまったのがそもそもの原因なのですが・・・・。翔太朗様、ありがとうございました。」
ミランダが、あの時のことを語ってくれた。少し、顔を赤くなりながら頭を下げる。
その後、僕らは夜通し、デッキで話した。
ミランダはにこやかに接してくれた。
「あの、前にも言いましたけれど、私のことはミラでいいですよ。」
笑顔で言った。
「では・・・・・。ミラ様。」
「はい。」
ミランダが笑う。
「あと、様もいりませんよ。」
ミランダがつけ足したように言ったが、そこはまだまだ抵抗があった。
「そうですか。おいおい、そうさせていただこうかと。」
「はい。お待ちしてますね。」
社交的なのかはわからないが、僕はこのように答えた。
船の上の、海の上の夜はとても冷え込むようだった。
ただ、星はいつもよりきれいに輝く。
「ところで、ミラ様はどのような魔法が使えるのですか。」
「えっと、水と炎と土、あとは召喚魔法とかですね。」
炎の魔法、そして、召喚魔法か、見てみたい。
素直に見てみたいといった。
「えっと、水が一番得意なのですが、攻撃魔法を船の上で使うのは危険なので、そうですね。召喚魔法なら、二種類ありますが、簡単な方法でよければ・・・。」
ミランダがそう言って、魔法陣を発動する。
魔法陣を発動して、額に角を持った、赤と黒の毛色をした巨大な狼が一頭現れる。
「ブラッドウルフという魔物です。東の大陸に生息する、魔物、なのですが、従魔契約をしていつでもどこでも呼び出せるようにしました。これが召喚魔法です。」
なるほど、魔法版、口寄せの術ということか。
「ワオーン」
ブラッドウルフは尻尾を振りながらミランダのもとへ駆け寄る。
そして僕の方を見る。
「私の新しいお友達の、翔太朗=吉田様です。仲良くしてあげてね。」
「ワン!!」
ブラッドウルフはうなずく、そして、ブラッドウルフ自体から魔法陣が現れて。
一人の背の低い男の姿に変身した。
背の低いといっても、体格は横に大きく、いつも運動している感じだ。
「翔太朗殿か、よろしく頼む。ブラッドウルフのクロ=ウルフだ。普段の姿では、鳴き声しか聞こえないが、変身魔法が使えるので、人間の姿であれば、こうしてお前とも話ができる。」
クロは握手を求めてきたので、僕は手を差し出す。
「では、これで。」
クロは、変身を解除し、もとのブラッドウルフ、狼の魔物の姿に戻る。
ミランダのもとへクロは戻り、再び僕に向かってうなずいた。僕もうなずく。
なるほど、かなり魔力も知能も高いようだ。人間の言葉を話せる、理解できる魔物はかなり魔力も高く、知能も高いのだそう。ゆえに従魔の契約も難しくなるのだ。
これは、忍者の時もそうだった。ワシノリやサイゾウもかなり知能が高く、魔力も高たかいのだった。
「これが召喚魔法なのですね。」
「はい。」
ミランダも笑顔で答える。クロもワンとうなずいている。
しばらくはミランダ、クロ、僕の三人で話して、やがて、クロは魔法で元居たところに戻っていき、僕たちもこのタイミングで、お互いの部屋に戻った。
「おやすみなさい。」
船の中、確かに酔いもあるが、ぐっすり眠ろう。
そして、船の中での3日間、僕はまた、書物を読みながら、魔法の勉強をしていた。
ここまで、読んでいただきありがとうございます。
いよいよ。冒険に出ましたね。
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