#2.赤毛の少女
今回の忍者学校の卒業試験で、不合格になった人は僕のほかにもう一人いた。
確かこの子は、学年とクラスは違うが、前回の試験でも不合格になった人だとすぐに分かった。
その子は、赤い髪の毛と青い目をしていた。
だからすぐに前回も確か不合格になって、違うクラスで授業を引き続き受けていたな。
一瞬彼女と目が合う。きれいな瑠璃色の青い瞳に吸い込まれそう。
その瞬間に、我に返り、お互いぎこちなく、ペコっと頭を下げて、緊張していた。
「あの・・・・。」
赤髪の女の子が声をかけてくる。恥ずかしそうな感じだ。
なぜだが知らないが僕はドキッとする。
どうしたらいいかわからない。
一瞬の沈黙。
「また、落ちちゃったね。」
ゆっくり、赤髪の女の子が声を変える。
「う、うん。そうだね。」
僕は緊張気味に声をかける。
彼女は、燃えるような赤髪を三つ編みヘアーにしている。きれいな色だ。
「あの・・・。よしだ・・・・。吉田翔太朗君だよね。」
どうやら、僕の名前を知っているようだった。
それもそのはずだ。クラスは違えど、人よりは長く忍者学校にいるし。
それにここまで卒業試験に落ち続けていれば、クラスからは落ちこぼれというヤジが飛んできて、よくいじめにも合う。
そして、卒業試験はもちろんだが、在学中の定期試験でもそれは顕著で、やはり、落ちこぼれとバカにされてきた。
それに僕はそれ以外にも、バカにされていじめにあう要素があった。
だから、忍者学校に在学すればするほど、僕の口数が減ってきて、最近はただただ、黙って、先生の話を聞いていた。
「そうだけど、君は・・・・。」
赤毛の女の子の話は僕も耳にしていた。
他のクラスで、同じように、赤毛と青い目、それに顔にはそばかすということでいじめを受けているようだった。
確かに、この僕の住んでいる那ノ国の風ノ里、いや那ノ国全域でも赤毛の青い目の人は珍しい。
僕も、初めて、赤毛で青い目の子に出会った。
この那ノ国では黒髪もしくは茶髪、それに黒か茶色の目の人しかいないのだから。
しかしながら、僕は普段口数が減ったために、この赤毛の女の子の名前が出てこなかった。
だから、とっさに君は聞いてしまった。
「岩月八重。吉田君と同じだね・・・・・・。私も・・・・・。」
八重は指さす。
指さした方向、今年の合格者の輪の中の一人の女の子がいる。
八重とは違い、この那ノ国ではよくいる、黒髪で黒い瞳の子。
顔も八重とは違い、そばかすはなく、その分、きれいに見える。
那ノ国の美人、というのはこのことだろう。
八重もそばかすを含めなければ、十分かわいい顔立ちだが、指さした彼女とは対照的だ。
顔立ちを例えるなら、多重が桜のような美しさ。八重は薔薇のような美しさだろう。
「あの子、多重・・・。私の妹。」
八重がつぶやく。
なるほど、妹に合格を先越されたということか。
僕も八重と同じだった。
僕らはトボトボと歩き、その場を後にした。
なぜか彼女もいっしょに歩きだし、お互いの家へと一緒に帰っていく。
きっと両親に報告するのが悔しいのだろうか。
それを和らげるかのように、僕たちは話しながら帰っていった。
今のこと、合格するに足りないところ。
話を聞いていると、八重も、僕と同じで、実技がどんくさいことが分った。
逆に妹の方は、学術も、実技もパーフェクトなのだそうだ。
僕と同じ境遇の人がほかにもいて、安心したように帰った。
久しぶりに笑った。そんな気がする。
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