#19.船の上で
翌朝、僕は目を覚ました。
モナリオ家の人々も、目を覚まし、荷物をまとめ、宿泊していた、高級のコテージを後にする。
南ノ国の港から、船に乗る。大きな船だ。
ここから船で4日ほど旅して、東の大陸、セントアリア王国へと目指すことになる。
船旅の間は、魔術の知識。つまり学術に関して、アレックスさんから教えてくれた。
もともと、学問は成績が良かったこともあり、忍術と魔法の差を覚えればよかっただけなので、そこまで苦労することはなかった。
それぞれ、火、水、風などの遁術はそれぞれの属性魔法と同じ。
その他、イコールの関係の者、魔法でしかできないことを学んだ。
その他の数学や、地理、理学などはほぼ同じであり、これまでと同じように学びを続けていけることも分かった。
そして、セントアリア王国の地理、政治に関しても教えてくれたが、これはおいおい、行けばわかることだろう。新しい情報に目を光らせておかないと。
そして、これから、異国で生活するうえで押さえてかなければならないのは、セントアリアのお金の単位だろう。アルベルトさんとパメラさんはそれぞれお金を出して見せてくれた。
小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、白金貨。と小さい順に続く。
値段の表記に、「銅貨〇枚」または、「マネー」という単位で表記される。
それぞれ、10枚で上の硬貨1枚に交換だ。
このような両替の場合は銀行で手数料なしで交換してくれるそうだ。
つまり、白金貨1枚は小銅貨で、100万枚または100万マネー。那ノ国で、10両。というところだろう。
勉強、そして、書物を一緒に読んだ後は、船の上の船室でもできる魔法の実技となった。
攻撃魔法は危ないので、回復魔法の魔法陣を教えてもらった。『ヒール』とヒールの上位魔法、カミラさんの治療の時にも使った、『メガヒール』。
ミランダもすぐに拍手をした。
「翔太朗様はすごいです。回復魔法は私は使えません。だから、あの時、カミラが盗賊に襲われて倒れていた時、どうしようもできなかったのです。だから、翔太朗様が来てくれてうれしかったのです。」
そうなのか。
こんな短期間で、ミランダを超えてしまった。確かに、風の里にいたときも、医療術の習得には時間がかかったし、トン吉爺さんも少ししか使うことができなかった。
しかしながら、両親と兄からサポートの術くらいは使えるようになれ、お前にはかばう時間がないから、自力で覚えろとしか言われなかったのだ。
だから、余計に時間を要した。
「翔太朗様の上達は見るものがありますね。回復魔法にしろ、攻撃魔法にしろ、上級魔法になればなるほど、誰かに師事する、もしくは何年も修業しないとうまくはなりません。魔力量が多いということもありますが、おそらく、風の里での医療術の習得もその魔力量がカバーしていたのでしょう。」
アレックスさんが分析して言った。
そうなのか。今まで誰も教えてくれなかった。ただ、ただ、才能がないと思っていた。
確かに、僕もトン吉爺さんと修業をしていたよな。と思う。
それに、医療術に関しては、風ノ里の忍者学校で使っている同級生は見たことがなかった。
ここからは自分に合った修業ができる。そう思って、僕は期待を膨らましていた。
薬草から薬も作れるということもあり、セントアリアの回復薬『ポーション』作り方を教わった。
体力、多少の怪我、魔力が少し回復するらしい。ほかにも多少の風邪の症状に効果があるとか。
「うむ。これも質のいいポーションですな。店に売っているもの、それ以上かもしれません。相当家族の任務のために、薬を作っていらっしゃったのですね。」
アレックスさんが言ってくれた。
「まったく、なんという家族だ。君だけにしかできない才能で準備してくれているのに。それを仇で返すなんて。」
ポールさんは再び僕の家族のことについて、言及する。
「ただし、自作の物を大量にお店に出す場合は許可が必要なので注意してくださいね。自分で作って、自分で使う、人にタダであげる場合はいいですが・・・・。特にこういった回復薬に関しては、かなり特別な許可がいります。また、一部の薬は作成すら禁止されているものもあります。くれぐれも売ったりしないようにご注意ください。セントアリアの法律で決まってますので・・・・・。」
アレックスさんがこのような法律に関しても簡単に説明してくれた。
破ると、何年か牢獄に入れられてしまうらしい。
そうなると、作ったポーションを人に渡す際、誰かの任務をこのような立場で、サポートする際、気を付けなければならないと感じた。
「緊張していると思いますが、薬以外でしたら、基本的にはすぐに許可が下りますよ。例えば、そうですね。この鉄の棒と、使えなくなった、古い銅貨を。こうして・・・・・。」
アレックスさんは魔法陣を使い、所持していた鉄の棒を剣に変えて見せた。
「錬金魔法と呼ばれています。武器や、物質を合成して、このような剣を新たに作成したり。」
もう一度魔法陣をアレックスさんは発動して、
「こうやって、剣をもともとの物質に分解することができます。」
剣が分解され、先ほどの鉄の棒と、古い銅貨が現れた。
なるほど、錬金魔法か。試してみる価値はありそうだな。
アレックスさんが見せてくれたのと同じようにやってみる。
しかし、できたのは先ほどのアレックスさんよりも、少し小さく、そして、少し錆びた、鉄の剣だった。
これに関してはもう少し練習が必要だ。
「さすがにできなくて安心したぞ。」
ポールさんとアルベルトさんは笑いながら、言っていた。
「私も、できなくて安心しました。」
ミランダも笑みを浮かべている。
最も、風魔法も、速さの強化魔法も、忍者時代に何度も習得しようと試みたものだからな。
魔法に切り替わると、こんなにも早くできるのかと感心していたのだった。
それに、他の属性の攻撃魔法もまだ試したことがない。
セントアリアにたどり着いたら、一通りやってみないと。
どうやら、属性魔法は適性がある、なしではなくて、修業を積めば全属性が使えるようになるとのこと。ただし、その分広く浅く極めることになるので、全属性をすべて極めるような修業をする人はほとんどいないらしいし、それぞれの属性の、得意不得意の差が大きく、大方の人は、まずはやろうとしないそうだ。ここも忍術の遁術と同じだ。
しかし、全属性の魔法が使えても、それぞれの属性の上位の魔法。これに関しては、上位魔法であればあるほど、適性がある人、使える人が制限されていく。
自分で編み出した、オリジナル魔法も存在するが、その大半が下位魔法に分類され、時代が少し進めば、誰でも使えるようになっているのだという。
それゆえに、オリジナル魔法をコピーして戦闘を行う、器用な魔導士もいるのだという。
しかし、上位魔法であればあるほど、使える人がそうそう居ない魔法も珍しくない。
古い時代に存在して、今では誰も使うことのできない伝説の上位魔法も存在するのだそうだ。
「その伝説の上位魔法を一度は見てみたいです。」
僕は、素直な気持ちを言ったが、
「それは難しいでしょうな。この私でも伝説の上位魔法は見たことがないですね。」
アレックスさんは、笑いながら言っている。
「最も、得意な属性の方が少なくて、苦手な属性の方が多いという人が大半ですから。」
アレックスさんは念を押すように、さらに続けて言った。
「うむ、私もミラお嬢様も回復魔法が苦手で、使えないのだ。あの時どうすることもできなかったのだ。」
カミラさんが安心するかのように言う。
それを聞いて、僕も安心している。実は。
「少なくとも、翔太朗様は、風属性魔法と回復魔法を極めれば大方、対応できるでしょう。興味がおありでしたら、セントアリアに着いてから、他の属性魔法もやってみましょう。風属性の耐性を持っている魔物もいますので。そちらを倒すときや護衛のためという意味でやってみましょうか。」
さらに楽しみが増えた。
アレックスさんは丁寧に接してくれる。さすが侯爵家の執事長だ。
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