#17.翔太朗の才能
パメラさんから長い時間抱きしめられ、やっと解放される。
「うむ。翔太朗君。行く当てがないのならば、儂らと一緒に来ないか。この家に居候、養子としてでも迎え入れるよ。パメラのことをお母様といったしね。」
ポールさんのことばに耳を疑った。
「いいのですか。」
「もちろんじゃ。助けてくれたお礼じゃよ。」
ポールさんは言っている。
「ありがとうございます。ありがとうございます。しばらくの間。お世話になります。よろしくお願いします。」
僕は頭を下げた。
「大丈夫だよ。君は儂らの家族だから。それに君は、那ノ国に戻るより、うちに来た方がいい。理由は二つ。」
「二つ。」
アルベルトさんのことばに僕は聞き返す。
「ああ。一つは、那ノ国に戻っても、君の家の人に馬鹿にされる日々が続き、このままでは、おそらく、忍者学校の卒業試験に落ちて、一生君は、何も抜け出せない状態にある。」
一つ目の理由は現実だった。
確かにそうだ。那ノ国に戻っても、あの家の奴隷として働かされ、落ちこぼれとバカにされる日々、そして、卒業試験に落ちて、さらにそれがエスカレートする日々が続く。しかも半永久的に。
現実すぎる理由にため息をついた。
「一つ目の理由に関しては、がっかりさせてしまって、申し訳ないが・・・・・・。二つ目の理由はとても素晴らしいことだ。」
アルベルトさんのことばに僕は再び顔を上げた。
「二つ目の理由。君には、ものすごい才能がある。その才能は、君が忍者という立場でいると、その才能を伸ばすことができない。でも、忍者以上のものすごい才能なんだ。僕たちには君のその才能を伸ばすことができる。これは絶対に保証する。僕たちは君の才能を伸ばすことが、絶対にできるんだ。」
アルベルトさんの熱意がこもっている。
「まあ、正確には才能を伸ばすことは君の努力次第だけど・・・・。でもそれの手助けは絶対できる。それは保証する。」
アルベルトさんは、さらに続けた。
モナリオ家の人たちが、全員うなずいている。
「しかも、その才能が輝けば・・・・」
アルベルトさんが言った。
「僕の、才能が輝けば・・・・・?」
僕はアルベルトさんに聞き返した。
「「「今まで、君をバカにしてきた人を一気に見返すことができるんだ!!!!」」」
「もちろん、あの家、吉田一族と言われている人でいちばんになれる。」
全員が声をそろえて言った。
君はできるんだ!!!
そのことを言ってくれたのがうれしかった。
いつもはお前は駄目だと言っていた人がほとんどだったのに。
そして、大丈夫、私たちを信用していいからね、という目をここにいる全員がしていた。
「ありがとうございます。やってみたいです。僕だけの才能を伸ばす修業を。」
僕は、涙を流し、その涙を拭いて、勇気を出していってみた。大丈夫。この人たちは信頼していい。
「でも・・・・。どうやって。どうして、才能があるとわかるのですか?」
僕は、聞いてみた。
少し怖かったかもしれないが聞いてみた。
なぜなら、お前は駄目だといわれてたからだ。
アルベルトさんはうなずいた。
「まず、君に力を感じる、普通の人とは思えない量の力だ。君の国や里、いや忍者の世界ではこのように言われていたはずだ。『チャクラ』と。そう、君は普通の人よりも何倍ものチャクラの量を持っている。しかも・・・・・・。おっと、これを言う前に、次のことを説明しよう。」
アルベルトさんは一息入れて、さらに続けた。
「僕たちの住んでいる場所、僕たちの立場では、『チャクラ』という言葉は、こう呼んでいるんだ。」
「『魔力』。と。」
「魔力・・・・・。」
僕はアルベルトさんの言葉を繰り返した。
意味ははじめよく理解できていなかったが、希望の言葉に感じた。
「ああ。そして、君の魔力は量が多いだけじゃない。古の魔獣、古竜とほぼ同じ、純粋で澄んだ魔力を宿しているんだ。」
古竜。神話の書物でしか見たことがない、獣だ。
そんな力が僕に入っていたなんて。
ただただ驚きだ。
そこへ、カミラさんがセリフに入ってきた。
「今日、私のけがを助けたとき、治療の術を使ってくれていたな。忍者の立場だと、これは単なる、中位程度の医療術でしかないかと思うが、私たちの立場だと、この医療術にはこのような名前があるのだ。」
「『メガヒール』と。」
「メガヒール・・・・・。」
僕は、カミラさんの言葉を繰り返した。メガヒール。とてもかっこいい響き。
「そう、しかもかなり純度の濃い、かなり高い回復量を宿したメガヒールだった。」
カミラさんは笑顔で、そして真剣なまなざしで、僕に語ってくれた。
感謝の気持ちを示すかのように。
「そして、君の世界の忍術。忍者が使うすべての術は、僕たちの立場ではこう呼ばれている。」
アルベルトさんは、言った。
そして、全員が声をそろえた。
「「「魔法!!!」」」
と。全員が叫ぶ。
「僕たちは、このような術が使える者を、『忍者』ではなく、『魔導士』や『魔術師』と呼んでいる。そして、君もおそらく魔導士向けの才能だ。」
ここにいる全員が、うなずいた。
ポールさん、アルベルトさん、ミランダ、カミラさん、アレックスさん。
全員が笑顔でうなずいている。
「あの。魔法。僕もやってみたいし、修業してみたいですが、実技が全然だめで、僕もおそらく実技で躓くのでは・・・・。」
僕は、ドキドキしながら、聞いてみた。でも、確かに、希望が湧いてきたのは事実だ。
確かに仕組みは理解できても、印を結んだり、これまでと変わらないようなら実技関連で躓いてしまうだろう。
「大丈夫じゃ。君の言っていることはほぼ間違いなく解消されているよ。」
ポールさんが優しく言った。
「まず、君は左利きだ。左手で文字を書く、武器を扱う人のことを言う。おそらく保守的な国や家柄で育ったのだろう。右利きの人が大半であるから、右手で扱うように矯正されたのだろう。矯正して、右手でうまくできるようになる人もいるが、君の場合は上手くいかなかった人だろう。」
確かにそうだ、手裏剣の修業や、体術など、今まで右手を意識させて使っていた。
印を結ぶ時も、左手がどうしても前に出てしまい、失敗していることがあるから、意識して、ゆっくり過ぎる結び方にしていた。
「うん。君がナイフとフォークを使う時、アルベルトに教えてもらっていた時、左利きかなと思ってみていた。そして、薬草園の泉で、普段は的にも届かない武具が、敵に届いたエピソードを話してくれただろう。おそらく、突発的で、目の前に敵がいる状況じゃ。その時、意識せず、その武具を左手で投げたのだと私は思うぞ。」
そうかもしれない。確かにあの薬草園の泉の時、道具の使い方について、意識していなかった。
うん。とうなずいて見せる。
そうだろう。という顔をポールさんはしている。
「魔術師の修業であれば、左利き向けの修業もある。それに、苦手な体術も補える。」
ポールさんは続けて言った。
「とはいえ、今日はもう遅い。疲れただろう。早めに眠りなさい。また明日、詳しい話と、魔法を見せてあげよう。」
ポールさんにそういわれて、今日は休むことにした。
皆に、おやすみなさい。ありがとう。と言った。
モナリオ家の人たちは温かく、挨拶を返してくれた。
アレックスさんに、部屋に案内される。
「どうぞ、ここをお使いください。翔太朗様。」
案内された部屋はとてもきれいだった。
すごく素敵な眺めだった。そして、大きなベッドがある。
ただでさえ、高級な宿泊施設の最上位のコテージ。
そのコテージはさらに2階構造であり、さらにいくつかの小部屋に分かれている。その一つが空いていたので、僕が使うことになった。
とてもありがたかった。
もう、両親と兄を家族ではないことにすると決めた。僕の本当の家族はモナリオ家の人たちだ。
実の両親に捨てられた後、本当の家族に出会った今日一日。
とても疲れて早く眠ってしまった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
冒険はまだまだ続きます。
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