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#16.モナリオ家の人々


 「どうぞ、翔太朗殿、入ってくれ。」

 カミラさんに促され、頭を下げて入っていった。


 そのコテージの中には、豪華なシャンデリアがつるされ、専用の庭があり、その庭にはプライベートのプールまで完備されていた。

 さらに、二階建て構造で、二階に上がることができる。


 部屋の中には、何人かの男性と、一人の女性が並んで立っていた。

 

 「こちらは・・・・。翔太朗=吉田殿・・・、です。本日、ミラ様が強盗に襲われて、私が助けに入ったのですが、そのせいで、怪我をしてしまい、怪我をしていた私めを介抱してくださった。また、そのために帰りが遅くなりまして、・・・・。申し訳ありません。」

 カミラさんは僕の紹介をしてくれた。

 さすがに、ここでは報告なので、敬語を使ったのだが、その敬語が、たどたどしかった。


 「あの、吉田、じゃなかった。翔太朗=吉田です。よろしくお願いいたします。」

 僕は部屋の方々全員に頭を下げた。


 一番年配らしき人が僕とミランダ、カミラさんのもとへとやってきた。

 白髪と口の上の髭が印象的だ。

 その人は、明らかにカミラさんの報告を聞いて、目の色が変わっている。


 「大丈夫であったか、ミラ。そして、カミラも。」

 「はい、大丈夫です。お爺様。」

 ミランダは、安心したように答える。

 その横で、カミラさんもうなずいている。

 「こちらの翔太朗様が・・・・・。」


 ミランダのことばで、一番年配の白髪の男性は、僕の方を向いた。


 「この度は、うちの護衛隊長兼メイドを助けてくれてありがとう。ポール=モナリオ。ミランダの祖父で、モナリオ家の当主じゃ。」

 ポールさんは手を差し出す。

 僕は自然に彼の手に合わせて、握手をした。

 

 次はポールさんよりも一回りくらい若い人があいさつをする。明らかに兵士という感じの服装。

 こちらも金髪の人だ。

 「ミランダの父で、ポールの息子の、アルベルト=モナリオだ。うちの娘を助けてくれてありがとう。」

 アルベルトさんも、手をさしだしてきたので、握手をする。


 その隣にいる。ミランダと、カミラさん以外の唯一の女性が口を開く。動いやすいワンピースを着ている。

 「アルベルトの妻のパメラ=モナリオです。本当にありがとうございました。」

 パメラさんも、ミランダと同じく、スカートの裾を上げて、会釈をして、握手をする。


 最後は、白髪で、眼鏡をかけた男性。

 おそらく、ポールさんに続いて、二番目に年上な人と感じた。

 服装は燕尾服で、手袋をし、その片方の手を胸の前に当て、頭を下げる。

 「この家の執事長をしてます。アレックス=ジャスパーです。部下を助けていただき、感謝の気持ちでいっぱいであります。」

 アレックスさんは頭を上げて、同じように握手をした。


 「お食事がまだだと伺っております。どうぞ、こちらにご案内します。」

 アレックスさんは、僕に向かって言って、さらにモナリオ家の皆さんを促し、このコテージの一番のロケーション。海が見渡せる、テラス席に案内してくれた。


 たくさんの食事が並べられる。

 どれもおいしそう。

 こんがり焼いたグリルチキン。フライドポテト。サーモン、鰹、鯛、それぞれの魚のカルパッチョ。エスカルゴのムニエル。たらこスパゲッティ、チーズのピザ、温かいパン。


 「どうぞ、翔太朗殿。遠慮なさるな。」

 そこには、服を着替えたカミラさんの姿があった。料理を運んできてくれる。

 メイド服、というものなのだろうか、先ほど外出していた服とは全然違う。

 「これがメイドの服だ。食事の配膳の時にしか着ない。それ以外の時はミラ様の護衛のため、服を着替えるのだが・・・・。すまない、似合わないだろう。・・・・・。」

 顔を赤らめている。

 カミラさんはメイド服を着ているとぎこちなく、外に出る護衛用の服、動きやすい、長袖とダウンベストを着ている方が、似合っているようだった。


 「ありがとうございます。」

 素晴らしい食事だった。

 確かに、吉田家にいたころは飯抜きで、しかも家族の分全員の食事を作っていたのに・・・・・・。

 今思えば、南ノ国の孤立はとてもいいのではと思う。


 ただ、一つだけ難点があった。

 ナイフとフォークは初めて使う。今まで、このような洋食というのは吉田家でも調理していたが、食べるときは箸を使い、茶碗にご飯とみそ汁が盛られていた。


 モナリオ家の皆さんの見よう見まねで、ナイフとフォークを使った。


 「ナイフとフォークは初めてかい。」

 「はい。」

 アルベルトさんが声をかけ、簡単ではあるが、持ち方や食事マナーを教えてくれた。

 そのおかげかもしれないが、上達が早く、すぐに使えるようになった。

 那ノ国で、ナイフとフォークを使って、食べる人はあまり見たこともない。トン吉爺さんがよその国で出張したとき、もしくはそれに準ずるお店で食事をするときに、使用すると聞いていて、実際に書物で見たことはあるのだが、使ったことはなかった。

 洋食のお店は那ノ国では高級料理屋に入ってくる場合がほとんどだからだ。

 学校の成績の悪い僕には、そのような場所に行くときは、兄だけを連れていき、必ず留守番させられ、行かせてもらえなかった。


 ほかにも、会話をしながら、さらに楽しんだ。


 だが、しかし、この食事のあと、どのようにするべきなのだろう。

 帰る場所もない。ただ、ただ、独りぼっちである。


 やがて、食事の時間が終わる。食後のデザートも最高だった。

 パイナップルのアイス。これはとても最高。

 確かに、南ノ国に来てから、おいしいもは食べたのだが、今日の食事が一番おいしかった。


 一日中何も食べずに、歩いたからか。いや、そんなのは修業の時に何度もやってことはある。

 そうすると、モナリオ家の人たちに笑顔あふれながら、食事を共にしたことだろう。


 「さて、食事も終わったことだし、君を送っていかないとだね。君の家は?親御さんはどこかな?もしくは泊まっている宿泊場所はどこかな?」

 ポールさんは、にこやかに僕に尋ねた。


 ドキッとした。


 どうしよう、どう答えればいいんだ。

 迷ったが、僕は口を開いた。

 「・・・・・帰る場所は・・・・・。ありません・・・。」


 モナリオ家の人たちの目の色が変わった。

 「ない?どういうこと、それじゃ、君の出身は?孤児なのか?」

 ポールさんの切羽詰まった口調に僕は瞬時に答える。


 「那ノ国の風ノ里、というところです。」


 さらにモナリオ家の人たちの目の色が変わる。


 「な、那ノ国。」


 「那ノ国というと、馬車でも休む間もなく飛ばしても最速で2日はかかりますね。しかも、あの山を越えないと・・・・・。いったいどうやってここまで、このような少年の足で来たのですか。」


 馬車で2日。そう、往路は那ノ国からここまで、鷲に乗って、何の障害物もなく飛んできたのだ。

 だから、往路は1日で来ることができた。


 「どういうことなのか、話を聞かせてもらえないかね。」

 ポールさんは目の色を変えていった。

 そして、優しい目に戻り。

 「大丈夫、君を信じるよ。」

 ポールさんはゆっくり、丁寧に話していた。


 「私を助けてくれた時、忍術の印を結んで、治療してくれたな。忍者大国といわれる那ノ国のご出身というのは本当のことのようですし、ぜひ話してもらえると助かる。」

 カミラさんが続けた。


 「はい・・・。わかりました・・・。」

 僕は観念したのか、わからないが、話した。

 いや、このように親切にしてもらったのは初めてだ。この人たちには知ってもらいたい。そのような気持ちが、強かった。


 僕はゆっくり、今日まであったことを離した。

 

 双子の兄ばかりを溺愛する両親のこと。

 成績が悪く、落ちこぼれと言われ続けていたこと。

 一家では奴隷のように扱われ、炊事洗濯、すべてをやらされていたこと。

 

 そして、今日、死んだ者扱いされて、置き去りにされたこと。


 1時間、2時間くらいしゃべっただろうか。

 うんうんと、うなずいてくれるモナリオ家の皆さんが優しすぎて、すべて話した。

 すべて詳しく話した。


 すべてを話し終えたその時だった。

 バシッ!!机をたたく音が聞こえた。

 ポールさんが机を激しくたたいた。

 

 「まったく、なんという親だ。そして、なんという里だ!!」


 怒りに震えながら、ポールさんは言った。


 パメラさん、ミランダ、そしてカミラさんまでも、女性三人は涙を流していた。

 「よく頑張ったわね。翔太朗君。もう大丈夫よ。」


 パメラさんは、僕を抱きしめてくれた。

 

 初めて触れる母親の感覚。これがお母親の愛なのか。


 「ありがとう、パメラさん・・・・。」


 「大丈夫よ。大丈夫だから・・・・。そして、お母様と呼んでもいいんだよ。・・・・。」

 

 「ありがとう、お母様・・・・・・。」

 

 いうのは恥ずかしかったが、言った瞬間、これが本当の家族だとわかった。


 パメラさんは、さらに強く抱きしめてくれた。


 これが、家族の愛情・・・・・。初めて感じた。



今回も、読んでいただきありがとうございました。

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