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#126.2人の母親


 魔道学院で、ルーベルトとアンソニーにもこのことを相談し、すぐにブルードラゴンの里を助けに行くことが決まった。


 「よし、行くぞ。ホワイトイーグル殿と、そちらの黒い鷲殿、1人ずつ背中に誰か乗せてもらえないだろうか。」

 エドラさんはシロンとユキナ、そしてワシ之信の方を見た。

 今日は、ワシ之信にも同行を頼んでおいた。


 僕とミランダとカミラさんがそれぞれ、シロンとユキナ、そして、ワシ之信の背中に乗り込む。

 その他のメンバーはエドラさんが背中に乗せてくれるということで、改めて、ドラゴンの大きさと力の強さがうかがえる。


 「飛ぶペースは、翔太朗殿の、鷲たちに合わそう。」

 当然、ドラゴンということで、鳥獣系の魔物よりも早く飛べるようだ。


 それでも、ブレゾラン山脈のふもとまで、普通の馬車でも1週間前後時間を要するところを、大幅に時間短縮し、途中休憩をしつつ、一日半でたどり着くことができた。


 「あそこに見える洞穴の入り口が、竜の里だ。」

 ブレゾラン山脈のふもと、山の中腹に洞穴が確認できた。


 「洞穴を進むと、再び出口が見える。そこから敵とおそらく遭遇することになるだろう。準備は良いか。」

 エドラさんの声が響く。


 僕たちは顔を見合わせる。

 そして頷く。


 ギエル、そしてジュダと再び戦闘を要することになる。大きな不安も残るが・・・・・・・。

 僕たちは覚悟を決めて、洞穴の中に入ることにした。


 一瞬の洞穴の暗闇。

 洞穴の中の水滴がしたたり落ちる音が、緊張感をさらに加速させる。


 「私たちの住んでいる場所みたいです。」

 ユキナがそっとつぶやく。

 「そうね。でもこれは戦いなのよ。」

 シロンがユキナの方をポンポンと叩く。


 「ええ、そうですね。でも、皆さんなんだが落ち着かない様子なので。特にマリア様が。」

 ユキナが的確に指摘する。


 「はい。すみません。私は大丈夫です。」

 マリアの声は、少し声が震えているのが分かる。

 マリアは今まで重要な戦力だった。結界魔法に何度も救われていたのだが、今回ばかりはマリアの対応が遅れてしまうかもしれないな。


 「いいぞ、ユキナ。流石じゃな。こうして、士気を上げるためにも、声掛けは的確だぞ。」

 ワシ之信はユキナの方を向いて、笑顔で笑う。


 「すまない、ワシ之信。今日は、最初から厳しい戦いになると思って、一緒に来てもらった。」

 僕が言った。確かに、ワシ之信も、トン吉爺さんの頃から一緒にいるとなると、かなりの年寄り。

 ピンチになったときに召喚しようとするが、今回は手ごわそうなので、最初から来てもらっている。


 「いいさ、久しぶりの翔太朗との戦いだ。まだまだ、元気だぜ、儂は。」

 ワシ之信は応える。


 「皆の衆、そろそろ静かにしてもらってもいいか。出口だ。」

 光が見える。光の先から、山間だが、のどかな風景が見える。


 「私のふるさと、ブレゾラン山脈の、ブルードラゴンの里です。」

 マリアが言った。


 僕たちは顔を見つめ合い、頷き、そして黙った。


 ブルードラゴンの里はシーンとしている。

 いくつかの建物が、目に入る。


 人間の家よりは雑な造りだが、巨大なドラゴンが入れるような大きな建物が点在していた。


 「驚いたか。」

 エドラさんは静かに言った。

 僕は頷く。

 「はい、とても、ドラゴンの巣ということは推測できますが、こんなに人間の家とよく似ているなんて。」

 率直な感想を言った。


 「まあな、ドラゴンは人間よりもはるかに寿命が長い。そのため、人間の古い文化を真似したくなるものさ。この建物一つ、一つも我々の家だ。いつもは出迎えてくれる者もいるのだが、やはり静かだな。みんな長老の家に囚われているのだろう。一番大きな屋敷だな。」

 エドラさんは一番大きな広い庭のある、屋敷を指さした。


 長老屋敷の敷地内に入る。

 案の定、人間の家の作りよりは煩雑だが、それでもしっかりとした塀と門。そして、巨大なドラゴンが入れるくらいの巨大な家がそこにはあった。


 エドラさんは深呼吸した。

 「長老様、エドラです。御助けに参りました。さあ、憎き、逆徒どもよ。表へ出てこい。我が娘、マリアもいるぞ!!」


 大きな声で、エドラさんは叫ぶ。

 長老の家から巨大なブルードラゴンが出てきた。エドラさんより、明らかに年老いた見た目だった。

 だが、その長老の体は紐でつながれている。魔力が大量にかかった紐であり、身動きが取れないようだ。

 その紐を先、つまり長老の紐を引っ張っている別の人物がそろって登場した。


 「これはこれは。まさか生きていたとは。そして、再び会えるとは・・・・・・。」

 ジュダだった。


 「ジュダ、貴方は一体。まだ悪行を積み重ねるつもりなの?」

 リリアンの口調が荒くなっている。


 「何を言っているのです、我が魔法、ライフリバイバルの腕を磨くための修業なのですよ。修業!!」

 ジュダはにやりと笑う。


 「これであなたももう一度、あなたのご両親に会えたのです。感謝しなければいけないのはどちらですかね。口の利き方を直して頂きたいものです。」

 リリアンがさらに怒りの表情をあらわにした。


 「お父様と、お母様は苦しんだのです。貴方によって。今度は、私の親友を苦しめるつもりなの?」

 リリアンの言葉にすでにマリアは涙もろくなる。


 「貴様、その修業を考え直せ、あの術は禁忌の魔法だ。やめないか。」

 カミラさんが落ち着いた口調で話す。リリアンとマリアをクールダウンさせるためだろう。


 「へっ。貴方のようなただランクが高い冒険者が偉そうに。私はこの世のすべてを手に入れたいのですよ。どんな手を使っても。さあ、本題に入りましょうか。」

 ジュダとは相容れなかった。当然だ。

 これ以上の議論は無駄だと悟ったジュダは、屋敷の中に向かって、手招きをした。

 


 手招きをしたところから、人が3人現れる。

 1人は年寄りの老人。2人目はマリアとそっくりだが、少し年が離れている人物。そして最後の1人は、マリアとよく似た人物だが、ただその人物はマリアとよりも表情は暗く、さらに太っている。


 生みの親。そして、マリアも僕と同じ双子ということで、幼い時に両親に捨てられたということか。


 「ああ。マリア。本当に戻ってきてくれたのね。ほら、私たちは似てるでしょ。」

 そういって、生みの親は駆け寄ってくる。

 「お手紙を読んでくれてありがとう。貴方を生んだ本当の母。アニスよ。」

 生みの母親は涙を流している。


 「あの、私の母はここにいるエドラです。やめてもらえませんか。」

 マリアは揺れ動く心を押さえながらも、毅然とした態度でふるまう。


 「ほら、双子の妹の、レイアよ。貴方は双子なの。ほらね。ほらね。ほらね。」

 マリアの表情を悟った、アニスは、双子の妹を紹介し始める。

 だが、明らかに体系が違う人物をマリアは見ないようにしていた。確かに、少しやせればマリアと同じうり二つの人物になるのだが・・・・・・・・。


 「お姉様お願いします。どうか、私もドラゴンの古い魔法を身に着けたいのです。どうか。」

 レイアは声が震えながらだが、母親の目にうなずいている。


 そして、一番年寄りの人物が口を開いた。

 「おお、すまなかったなマリア。私は、お前の生まれ故郷の長老だ。私たちの故郷は、この場所からブレゾラン山脈を沿って、半日くらい歩いた場所にある、デリフリ高原というところの、竜の里と呼ばれるところだ。」

 長老が言った。

 「竜の里に住む民は通称、竜の民と呼ばれており、強い魔力を宿しているのだが。この里にはしきたりがあっての、双子が生まれたら、どちらかを生け贄に捧げなければならない。というしきたりでな。マリア、お前が生贄になり、山に捧げものとして捧げたのだが・・・・・・。どうも、儂の目に狂いがあったらしい。お前の方が優秀だった。魔道武術大会でお前を見たとき、そう思った。だからな、そのな。」

 長老の顔が冷や汗の表情になる。

 長老のでっち上げた嘘に、マリアは悲しみと怒りの表情がこみ上げる。

 これを見ていた僕はマリアの前に出て、片腕を出した。


 「なるほどね。自分たちのご都合で、呼び戻す、というわけですか。そうですか。」

 僕は、睨むように、彼らを見た。


 「いい加減にしろ。突然、わけのわからない手紙なんかよこしやがって。マリアがどれだけ悩んだがお前たちにわかるか!!」

 僕は、強い言葉で言う。

 「自分たちの都合で、いらないとホイホイ捨てて、そして、修業してとんでもないものを得たら、また何事もなかったかのように呼び戻す。そんな虫のいい話がこの世にあるかよ!!」

 僕はさらに続ける。


 「翔太朗君・・・・・。」

 マリアが少し涙ぐむ。

 「翔太朗様。お気持ちはわかりますが、そのくらいで。」

 ミランダが言った。

 だが、僕は『肉体強化~速さ~』の魔法をかけて、短剣を両手に取り出していた。

 感情が高まっていた。マリアと僕の境遇が似ているからだ。優秀な双子の片方のみを溺愛し、もう片方は知らない場所に捨てられ、もう片方が生きていて、さらにそっちの方が優秀だとわかると掌を返したように群がる一族。


 そんな一族が、大嫌いだった。


 「おやおや、いけませんな。『鷲眼の術(イーグル=アイ)』の少年。そんなことをしても得るものはありませんよ。」

 ジュダが言った。


 「うるさい!!うるさい!!いい加減にしろ!!」

 僕は、一歩、一歩。ジュダに近づく。


 「やめろ。翔太朗!!」

 ワシ之信が止めに入る。

 僕はそのおかげで立ち止まることができた。自分と一緒にいる時間が長い人物のおかげで。


 「級長のお前が、感情に流されてどうする。世話掛けやがって、確かにお前と似た境遇で感情移入して、マリアさんの立場に立ったのは評価するがな。」

 ワシ之信がにやりと笑う。


 「よく止まったね、翔太朗君。」

 アンソニーが僕の肩をポンポンと叩く。


 「さあ、僕も燃えてきたぞー。そういうわけだよ。力づくでマリアを奪ってみろよ。」

 アンソニーが、魔法陣を発動する。


 「と言うことだ。翔太朗。まずは、囚われているドラゴンの方々の救出、そしてそれから、こいつらを相手しよう。わかったな。」

 ワシ之信が僕の代わりにみんなに声をかけてくれた。


 僕たちは頷く。

 「だが、救出するためには。」

 ワシ之信が声をかけ。


 「ああ、突破するしかなさそうだね。」

 そういって、アンソニーの魔法陣の発動が終わった。


 ジュダの魔法と、アンソニーの土壁が同時にぶつかる。

 戦闘開始の合図だった。




今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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