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#123.試験の結果と手紙


 こうして、年明け最初の月は、期末試験三昧で過ごした。

 そして、試験の結果が提示されるが、僕も八重もそれほど悪くはなく、全ての科目で単位が取得できていた。


 「少し安心したね。」

 八重は僕に声をかけてくる。

 「うん、僕も安心した。」

 僕も胸をなでおろした。


 僕と八重は、海を越えて、初めて異国の地で、こういった試験を受験した身だ。

 文化の違い、忍術と魔法の違い、そのほかいろいろな違いがある、この国で、果たして対応できるのか不安だったが、僕と八重はその試験をパスすることができた。


 「忍者学校なら、あり得ないね。」

 「そうだね。まあ、仕組みが違うと言うことが、この試験をパス出来た一番のポイントかもしれないね。」


 そう、忍者学校の試験は基本的に、全部の科目に合格しないと、留年確定だったり、忍者になれなかったりしていたが、このセディア魔道学院の試験は仮に1科目単位を落としても、進級できるし、また次年度に受講できたりする。

 さらに、単位の数さえそろえていれば、何科目も単位を落としても何も文句は言われず、卒業できる。

 そういったところも、僕のモチベーションアップにつながったのかもしれない。


 僕たちにこれほど有利に置かれた状況は今までなかった。

 国や文化が変わればいろいろ出来るのだ、そう思って、自信をつけたひと時だった。


 学級の他の皆も試験をパスしていた。

 皆それほど悪くなく、胸をなでおろしていた。


 しかし、マリアだけはどこか腑に落ちない感じだった。


 「どうしたの?試験悪かった?」


 「まあ、そんな感じかな。」

 少し元気がない印象。

 マリアらしくない。最も、マリアは普段からおとなしい子なのだが、それでも覇気がないというか、そんな気がする。


 「成績、よかったら見せれる?」

 少し僕は、戸惑ったが、これは成績以外に何かありそうな感覚だ。


 「まあ、見せられるけど・・・・・・・・。」

 マリアの成績も、それほど悪くはない、むしろ、さすがは、入学試験の時、満点合格した人物だ。

 確かに、僕や八重よりも成績がいいが、少しばらつきがある。

 オールAでクリアできると思ったが、一部の科目は、単位ギリギリの科目もある。


 「これは確かに、何かあったな。勉強以外で何かあったよね。」

 それもそのはず。

 単位ギリギリの科目は、ほぼすべて、試験期間の後半に実施された科目だ。

 核心をついたかのように、マリアに聞いてみた。


 「はい。翔太朗君は、何でもご存じなんですね。」

 マリアは言ったが。

 何でもというか、ある程度は予測できた。


 「まあ、そうだね。話せる?」

 僕はマリアに言ってみた。


 「これを、見てください。」

 マリアが差し出されたのは一通の手紙だった。


 『マリアへ、

  突然ごめんなさい。私は貴方のお母さんです。

  魔道武術大会で、戦っている貴方をみて、確信しました。

  私の子だと。


  かつて、貴方を山に捨てたこと、後悔しています。

  どうか、私のところに戻ってきてくれませんか。

  私は貴方を愛しています。捨てたことを後悔しています。


  ああ、マリア、本当なら、貴方を今すぐにでも迎えに行きたい。

  迎えに行きたい。

  愛するマリア、迎えに来てもいいですか。


  どうか、私のところに来てください。

  貴方を愛しています。


  貴方を愛する母、アニス=ボナード』


 母親からの手紙。

 確かマリアの母はブルードラゴンの、エドラさんだ。

 となると、ここにいる母親は、生みの母親からの手紙だ。


 「生みの母親からの手紙ということ?」

 僕はマリアに聞いてみる。

 マリアは、こくりと頷く。

 「たぶん・・・・・・・・。」

 自身がなさそうにマリアは応える。


 「とても怖くなっちゃって、家に結界魔法を張っている毎日なのです。」

 マリアの体が少し震えている。


 どうしてもっと早く言わなかったのだ、と思ったが、マリアの結界魔法は実力がある。

 みんなの心配をかけたくない、と思ったのだろう。


 「なんでもっと早くいってくれなかったの?」

 ミランダがすぐさま言った。


 「ご、ごめんなさい。ミランダ。結界魔法があるから、大丈夫と思って。」

 ミランダの迫力に息を飲んだのか、戸惑うマリアの姿がそこにある。

 

 「まったく、マリア、貴方もこの班の一員で、近衛兵の一員よ。困ったときは相談して助け合うのが当たり前でしょ。」

 ミランダは、ため息をつきながら言った。


 「マリアも、私の屋敷で、しばらく、面倒見ます。いいわね。」

 ミランダの言葉に、マリアはホッとした。


 「やったね、マリア、これで一緒に暮らせるよ。それに・・・・・。」

 リリアンがはしゃぎながら僕の方を見た。

 そしてマリアも、何日かぶりの嬉しそうな顔をした。

 そう、リリアンも、ギエルやブレゾラン帝国の人間に狙われる羽目になって以来、僕と同じ、モナリオ家の屋敷で暮らしている。

 そして、例の年末年始のウィンター家の別荘の出来事があった直後だ。


 ミランダは、一瞬あっ。という顔をしたが、致し方ない。

 マリアの生みの親、しかも得体のしれない人物がマリアを奪おうとしている事実がある。

 背に腹は代えられない。


 「あの・・・・・。」

 八重が手を挙げた。

 「そしたら、私もモナリオ家の屋敷で夜だけ一緒に居てもいいですか?皆さん私の近衛兵ということで、モナリオ家にいらっしゃる方が、沢山いますので・・・・・・。魔道学院卒業後に追加予定の、夜の護衛任務を只今より、追加するという形で。私も、モナリオ家の部屋が余っているのなら。その・・・・・・。それに、お城の部屋はあまりに広すぎて、眠れないので。」

 八重の一言に、ミランダがしまった。という顔をしている。

 そのしまったという顔は、夜の護衛任務が追加される以外のことで、しまったという顔だった。


 そして、八重はルカの方を見た。

 ルカも八重の方を見てウィンクする。


 「ははは。そういうことなら、僕も部屋が余っているのであれば、モナリオ家の屋敷に引っ越そうかな。兄さんたちが、こっちに任務に赴くと、必ず勝手に押しかけてきて迷惑しているんだよ。部屋は散らかすし・・・・・・・。それに、みんなで、マリアを守りたいしね。そして・・・・・。」

 ルカは、僕の方を見た。


 ミランダはさらに口をあんぐり開けたままがっかりした表情で、そのまま立っていた。


 「ミラ様、立ち聞きして申し訳ない。」

 そのミランダの両肩にカミラさんの手が乗った。

 「しまったと思ったかもしれないが、仲間を守ろうとした行為はとても立派です。お前たち3人分の部屋は当然、余っているぞ。早速、ポール様に相談してみよう。夜の護衛任務しっかりな。そして、私も負けないからな。」

 そういって、カミラさんは笑いながらいつものように教室の後ろの方に待機して、さらにピエール先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。


 だがしかし、マリアの母親か。一体何者なのだろう。

 それに、とても今さら感がある。

 目的は一体・・・・・・。

 僕は席に座って、静かに考えていた。



今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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